医政指発第 68 号
                           医政医発第 118 号
                            平成13年12月4日

名都道府県衛生主管部(局)長 殿


                        厚生労働省医政局指導課長
                        厚生労働省医政局医事課長


          救急救命士の業務の適正化について


 救急救命士が行うことができる救命救急処置の範囲については、「救急救命処
置の範囲等について」(平成4年3月13日指第17号厚生省健康政策局指導課
長通知。以下「17号通知」という。)において示しているところであるが、今
般、秋田県内において、病院搬送中の患者に対する気管内挿管が疑われる事例や
救急救命士相互で点滴を行った事例が判明した。このような事例は保健衛生上看
過し得ないものであり、類似事例の再発を防止するため、下記の事項に十分御留
意の上、管内の関係機関、関係団体等に関連通知の内容について、改めて周知徹
底を図られるようお願いする。

                  記
 
第1 救急救命士の業務範囲

 (1) 救急救命士が行うことができる救急救命処置の範囲は17号通知に示した
  とおりであり、その範囲を逸脱する行為については、反復継続する意思の下
  に行えば医師法第17条に違反するものであること。また、このことは実習
  や研修の場合にも留意する必要があることから、「救急救命士養成所の臨床
  実習施設における実習要領及び救急救命士に指示を与える医師の確保につい
  て」(平成4年11月27日指第81号厚生省健康政策局指導課長通知。以
  下「81号通知」という。)に基づき適切に行われたい。

 (2) 気管内挿管は医師のみが行える行為であり、仮に医師の指示の下であって
  も救急救命士が業として行うことはできないものであること。

 (3) 救急救命士が行うことができる点滴は、乳酸リンゲル液を用いた静脈路確
  保のための輸液に限られ、しかも心肺停止状態の重度傷病者が病院又は診療
  所に搬送されるまでの間に医師の具体的指示を受けてなされる場合に限定さ
  れるものであること。なお、実習や研修において行われる点滴についても
  81号通知に基づき適切に行われたい。

第2 違反行為を認知した場合における措置
  違反行為に関する情報に接した際には、厚生労働省医政局指導課に速報する
 こと。その上で各都道府県消防防災主管課と連携して実態把握に努め、その内
 容を速やかに厚生労働省医政局指導課に報告するとともに、再発防止に向けた
 厳正な措置を講じること。


[関連通知]

・救急救命処置の範囲等について

                  平成四年三月十三日 指第十七号
                  各都道府県衛生主管部(局)長あ
                  て 厚生省健康政策局指導課長

 救急救命土法(以下「法」という。)の施行については、平成三年八月
十五日健政発第四百九十六号をもって通知したところであるが、今般、
法第二条第一項に規定する救急救命処置の範囲等を下記のとおり定める
こととしたので、関係方面への周知徹底及び指導方よろしくお願いした
い。

     記

1 法第二条第一項に規定する救急救命処置とは、「その症状が著しく
 悪化するおそれがあり、又はその生命が危険な状態にある傷病者(以
 下「重度傷病者」という。)が病院又は診療所に搬送されるまでの間
 に、当該重度傷病者に対して行われる気道の確保、心拍の回復その他
 の処置であって、当該重度傷病者の症状の著しい悪化を防止し、又は
 その生命の危険を回避するために緊急に必要なもの」であり、その具
 体的範囲は、別紙一のとおりであること。

2 法第四十四条第一項及び救急救命士法施行規則第二十一条の規定に
 より、心肺機能停止状態の患者に対する別紙一の(1)〜(3)に掲げる救急
 救命処置は、医師の具体的指示を受けなければ、行ってはならないも
 のであること。

  なお、これらの救急救命処置の具体的内容及び医師の具体的指示の
 例については、別紙二を参照されたい。



 別紙一 救急救命処置の範囲

 (1) 半自動式除細動器による除細動(別紙二参照)
 (2) 乳酸加リンゲル液を用いた静脈路確保のための輪液(別紙二参
   照)
 (3) 食道閉鎖式エアウェイ又はラリンゲアルマスクによる気道確保
   (別紙二参照)
 (4) 精神科領域の処置
   精神障害者で身体的疾患を伴う者及び身体的疾患に伴い精神的不
   穏状態に陥っている者に対しては、必要な救急救命処置を実施す
   るとともに、適切な対応をする必要がある。
 (5) 小児科領域の処置
  ・基本的には成人に準ずる。
  ・新生児については、専門医の同乗を原則とする。
 (6) 産婦人科領域の処置
  ・墜落産時の処置・・・臍帯処置(臍帯結紮・切断)、胎盤処理
           新生児の蘇生(口腔内吸引、酸素投与、保温)
  ・子宮復古不全(弛緩出血時)・・・子宮輪状マッサージ
 (7) 聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取
 (8) 血圧計の使用による血圧の測定
 (9) 心電計の使用による心拍動の観察及び心電図伝送
 (10) 鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去
 (11) 経鼻エアウェイによる気道確保
 (12) パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定
 (13) ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定
 (14) 自動式心マッサージ器の使用による体外式胸骨圧迫心マッサージ
 (15) 特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持
 (16) 口腔内の吸引
 (17) 経口エアウェイによる気道確保
 (18) バッグマスクによる人工呼吸
 (19) 酸素吸入器による酸素投与

 別紙二 医師の具体的指示を必要とする救急救命処置
項目 処置の具体的内容 医師の具体的指示の例
(1)半自動式除細動器による除細動 ・心室細動を半自動式除細動器により除去する。 ・除細動の適否、除細動のエネルギー量、除細動 が不成功の場合 の対応方法等 ・緊急を要する 状況であるので、 医師は、必要な事項を的確に 指示する。
(2)乳酸加リンゲル液を用いた静脈路確保のため の輪液 ・留置針を利用して、上肢においては@手背静脈、 A橈側皮静脈、@尺側皮静脈、 @肘正中皮静脈、 下肢においては@大伏在静脈、@足背静脈を穿刺 し、乳酸加リンゲル液を用い、静脈路を確保するた めに輸液を行う ・静脈路確保の適否、静脈路確保の方法、輸液速度 等
(3)食道閉鎖式エアウェイ又はラリンゲアルマスク による気道確保 ・食道閉鎖式エアウェイ又はラリンゲアルマスクを 用い、気道確保を行う。 ・気道確保の方法の選定、(酸素投与を含む)呼吸 管理の方法等
 〔共通事項〕   @ 医師が具体的指示を救急救命土に与えるためには、指示を与えるために必要な医療情報    が医師に伝わっていること及び医師と救急救命士が常に連携を保っていることが必要であ     る。     なお、医師が必要とする医療情報としては、全身状態(血圧、体温を含む。)、心電図、    聴診器による呼吸の状況などが考えられる。   @ 上記(1)〜(3)の処置は心肺機能停止状態の患者に対してのみ行うことが認められるもので    あるが、心肺機能停止状態の判定は、原則として、医師が心臓機能停止及び呼吸機能停止    の状態を踏まえて行わなければならない。   ・心臓機能停止の状態とは、心電図において、心室細動、心静止、電導収縮解離の場合    又は臨床上、意識がなく、頸動脈、大腿動脈(乳児の場合は上腕動脈)の拍動が触れな      い場合である。   ・呼吸機能停止の状態とは、観察、聴診器等により、自発呼吸をしていないことが確認さ      れた場合である。



○救急救命士養成所の臨床実習施設における実習要領及び救急救命士に指示を与える医師の確保
  ついて
                                                                 (平成四年一一月二七日)
                                                                 (指第八一号)
                            (各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省健康政策局指導課長通知)

 救急救命士養成所に対する指導等については、「救急救命士養成所の指導要領について」(平成
三年八月一五日付健政発第四九七号厚生省健康政策局長通知)等に基づいて行われてきたところで
あるが、今般、別紙の「臨床実習施設における実習要領」を策定するとともに、選定している臨床
実習施設について別紙様式により報告を求めることとしたので、救急救命士養成所等に対してご指
導方よろしくお願いする。なお、当職からも救急救命士養成所あて通知することとしている。
また、救急救命士が業務を遂行するに当たっては、医師の指示が必要不可欠であるので、医療機関
消防機関等と十分に連絡をとり、救急救命士に指示を与える医師が確保できるよう併せてお願いし
たい。

別紙 臨床実習施設における実習要領 1 施設について 原則として次の条件を満たす施設とすること。 なお、これらの施設以外の施設であって、これらの施設に準ずる施設を臨床実習施設とする場合に あっては厚生省健康政策局指導課まで協議すること。 (1) 二次又は三次救急医療を担うものとして都道府県により位置付けられた医療機関であること。 (2) 病床数は二〇〇以上であること。 (3) 二年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設の病院又は臨床研修指定病院であ   ること。 (4) 内科、循環器科、小児科、外科、脳神経外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、麻酔   科等を有すること。 (5) 救急部門が独立していること。 (6) 救急入院患者が年間概ね三〇〇人以上であること。 (7) ICU、CCU等の集中治療室を有すること。 (8) 除細動器、酸素吸入装置、人工呼吸器、血管連続撮影装置、大動脈バルーンパンピング装置、   血液浄化装置(血液透析装置、持続的血液濾過透析装置等)その他救急医療に必要と判断される医   療機器が整備されていること。 (9) 救急医療を担当する常勤の医師を複数有しており、うち少なくとも一名は救急部門の専従であ   ること。 (10) 実習担当管理責任者(病院長又は救急部門の管理者等)を定めていること。 (11) その他、臨床実習施設としてふさわしいこと。 2 実習指導医について (1) 救急医療に五年以上従事していること。 (2) 実習指導医の数は、学生一〇名当たり一名以上であること。 (3) 救急医療に関する学会や生涯教育に参加していること。 3 実習の内容 (1) 実習時間  救急救命士>法第三四条第四号の厚生省令で定める救急救命士養成所にあっては、八〇時間以上と  し、その他の養成所にあっては、一六〇時間以上であること。 (2) 内容  救急医療に関連した知識の応用と、救急救命処置に係わる技能の習得を主体とすること。さらに、  医療現場の見学と医行為の介助等を通じて、診療の補助に対する理解を深めること。  実習の内容は概ね次の通りとし、検査や手技に係わる細目及び標準目標数を別表1及び別表2に示す。 (ア) 心肺機能停止患者に対する観察及び救命処置を理解すること。 (イ) 骨折、心筋梗塞、脳血管障害、出血、異物等に対する観察及び救急処置を理解すること。 (ウ) 心電図、パルスオキシメーター値、血圧測定法、心音・呼吸音聴取等諸検査について理解すること。 (エ) 救急患者に対する手術を見学すること。 (オ) 医師、看護婦等医療従事者の業務及びその連携について理解すること。 (カ) 症例検討会に参加すること。 (キ) 救急患者及びその家族に対する接遇について理解すること。 (ク) インフォームド・コンセントの重要性を理解すること。 (ケ) その他、救急救命士として必要な事項を理解すること。 (3) 評価 (ア) 実習生は経験した症例ごとに、実施された救急処置の要点を整理し、実習指導医に提出すること。 (イ) 実習生は、提出された前記の報告に基づき、総合的な評価を実習担当管理責任者より受けること。 4 報告について 臨床実習施設を選定し、又は変更した場合は、厚生省健康政策局に速やかに報告すること。 5 契約について (1) 実習生を受け入れてもらう場合は、契約書を交わすこと。 (2) 謝金、諸経費について明記すること。 (3) 生徒数は実習内容が十分保証される範囲内とすること。 6 その他 臨床実習施設は養成所の近隣にあることが望ましいが、止むをえない場合は、臨床実習施設の実習指導医 との連携を特に密にして実習内容が十分把握できるようにすること。

(別表1) 臨床実習施設における実習の細目 A:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの B:指導者が介助する場合、実施が許容されるもの C:指導者の指導・監督のもとに、医行為を行う者を介助するもの D:見学にとどめるもの
 
実習細目
実習水準
1 バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など) A
2 身体所見の観察(視診、触診、聴診など) A
3 モニターの装着(心電図、パルスオキシメータなど) A
4 酸素投与 A
5 バッグマスク法 A
6 気管内挿管 C
7 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク B
8 気道内吸引 B
9 喉頭鏡の使用 A
10 人工呼吸器の使用 D
11 胸骨圧迫マッサージ A
12 開胸心マッサージ D
13 末梢静脈路確保 B
14 点滴ラインの準備 A
15 中心静脈確保 D
16 輸液 C
17 輸血 C
18 除細動 B
19 緊急薬剤の使用 D
20 循環補助(ペースメーカー、IABP) D
21 創傷の処置 C
22 骨折の処置 C
23 胃チューブ挿入 C
24 胸腔ドレナージ D
25 ナーシング・ケア(清拭、体位変換など) A
26 精神科領域の処置 A
27 小児科領域の処置 A
28 産婦人科領域の処置 B

(別表2)
臨床実習項目別の標準経験目標数
  実習項目 標準目標数(回)
実施するもの バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数など) 15
身体所見の観察(視診、触診、聴診など) 15
モニターの装着(心電図、パルスオキシメータなど) 15
酸素投与 10
バッグマスク法 3
食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク 3
気道内吸引 10
喉頭鏡の使用 3
胸骨圧迫マッサージ 3
末梢静脈路確保 3
点滴ラインの準備 10
除細動 3
ナーシング・ケア(清拭、体位変換など) 10
精神科領域の処置 3
小児科領域の処置 3
産婦人科領域の処置 3
介助に留めるもの 気管内挿管 3
輸液 10
輸血 3
緊急薬剤の使用 3
創傷の処置 3
骨折の処置 3
胃チューブ挿入 3
(備考) 実習期間中の経験数が標準目標数に満たない場合は、救急救命士の資格取得後、 勤務先において行われる就業前の病院内実習等の機会等を通じて、養成課程中の病院内実 習における経験数と合わせてこれを満たすよう努めること。


(別紙様式)

 

    [救急救命士養成所名]                

臨床実習施設名

(病院長名)

 (              )

(1)

救急医療体制

 

(2)

一般病床数

 

(3)

大学附属病院

臨床研修指定病院

 

(4)

標榜診療科目

 

(5)

救急部門

 

(6)

救急入院患者数

 

(7)

集中治療室の有無

 

(8)

医療機器の設備

 

(9)

救急医療専従者名

 

(10)

実習担当管理責任者

 

(11)

その他 (特記事項)