・救急業務等の実施に当たつてのAIDS
  感染防止対策の確立について
              昭和六十二年四月三十日 消防救第三十八号
              各都道府県知事あて 消防庁次長

  標記の件については、これまでにも「救急業務遂行中における感染防
 止対策について」(昭和六十一年十月三十一日付け消防救第百十八号各
 都道府県消防主管課長あて消防庁救急救助室長通知)等により種々御配
 慮を頂いているところであるが、最近、AIDS(後天性免疫不全症候
 群)が重大な関心を持つて議論され、またその感染に対する社会的不安
 が高まつている現状にかんがみ、消防庁としては、消防機関、学識経験
 者等の協力を得て、救急業務に即した救急隊員のAIDS感染防止対策
 等について調査研究を行い、このたび 「AIDS感染防止対策研究委員
 会報告書」(以下「報告書」という。)を別添のとおりとりまとめたとこ
 ろである。

  ついては、報告書を十分に参考の上、特に下記事項に留意して、救急
 業務等の実施に当たつてのAIDS感染防止対策の確立について格段の
 御配慮をお願いする。

  また、管下市町村(消防の事務を処理する一部事務組合を含む。)に対
 してもこの旨周知するとともによろしく御指導願いたい。

      記

 1 救急業務の実施に当たつてのAIDS感染防止対策は、従来より各
  消防機関において実施されてきたB型肝炎感染防止対策をさらに徹底
  することを基本として、その推進を図ることとし、AIDSのみをい
  たずらに特別視するあまり、B型肝炎等他の感染症に対する必要な感
  染防止に配慮を欠くことのないよう十分留意すること。

   なお、AIDSウィスルの感染様式は、B型肝炎ウイルスと類似し
  ており、主として血液、精液等を介し伝播するものであるが、感染力
  はこれより弱いため、B型肝炎防止対策をさらに徹底することを基本
  としてAIDS感染防止対策を講ずれば、AIDSはもとよりB型肝
  炎についても十分にその感染の危険を回避できるものであること。

 2 消防機関においては、AIDSの感染防止を図る上で必要な救急用
  資器材(手動式又は自動式人工呼吸器、ディスポーザブルのビニール
  手袋又はゴム手袋、紙又は布マスク、ポケットマスク等)、消毒用資器
  材(エチレンオキサイドガス滅菌器等の滅菌器、ホルマリソガス消毒
  器等)及び消毒用薬剤(次亜塩素酸ナトリウム、グルタールアルデヒ
  ド、エタノール)等を整備すること。

 3 消防機関においては、救急業務の実施に当たつてのAIDS感染防
  止対策の効果的な推進を図るため、その体制をあらかじめ整備し、こ
  れを要綱、規程等の形で明確化しておくこと。

   この要綱、規程等には、救急隊員の教育に関する事項、応急処置等
  を行う場合における感染防止方法に関する事項、救急用資器材及び救
  急自動車等の消毒方法に関する事項、感染のおそれのある事故が発生
  した場合における事後処理に関する事項等AIDS感染防止に関し必
  要と認められる事項を規定しておくものとするが、特に感染のおそれ
  のある事故が発生した場合における事後処理体制の整備については、

  (1) 救急隊の搬送に係る傷病者が医療機関においてAIDS患者又は
   AIDSウイルスの感染者(以下「AIDSウイルス感染者等」と
   いう。)と診断された場合における当該医療機関から消防機関への
   救急隊員の感染防止の観点から適切な連絡通報体制、

  (2) 上司への報告、救急用資器材・救急自動車等の適切な消毒、必要
   な場合における関係機関への連絡その他AIDS感染防止に必要な
   事項について迅速に対応できる組織体制、

  (3) 救急隊員の感染防止の観点から適切な医学的指導を受けるための
   医療機関又は専門医の協力体制、

  (4) 救急隊員が感染した可能性がある場合、適切に検査を受ける体制
  等を盛り込んでおくべきであり、これらの体制を整備するに当たつて
  は、都道府県の消防主管部局、保健衛生担当部局、医療関係機関等と
  事前に十分協議しておくこと。

4 消防学校及び消防機関においては、専門医による講習等を実施する
 ことにより、救急隊員に対しAIDSに関する正しい知識を習得させ
 るとともに、応急処置等を行う場合における感染防止方法、救急用資
 器材及び救急自動車等の消毒方法その他感染防止に必要な教育の充実
 に努めること。

  なお、AIDSに関する正しい知識を有し、また救急業務に当たり
 適切な感染防止対策を遵守することにより、救急業務に帰因してAI
 DSに感染する危険は十分回避し得るものであることから、この旨救
 急隊員に周知徹底し、傷病者への接触の忌避や志気の低下を来たすこ
 とのないよう十分配慮すること。

5 消防機関においては、万一、救急隊員が感染した場合には、原因の
 究明と再発の防止に努めるとともに、当該救急隊員のプライバシーの
 保護と必要に応じた健康管理が実施されるよう十分配慮すること。

  なお、「HIV医療機関内感染予防の手引き」(厚生省エイズサーペ
 イランス委員会作成「エイズ診療の手引き」)によると、医療機関内の
 AIDSウイルスに感染している職員への対応については、「感染職
 員本人にとつて業務に支障のある症状がない限り、通常の業務に従事
 することは差し支えない。しかし、必要に応じて、適切な指導を行う
 とともに、従事する業務の範囲など、業務上の指導を行うものとす
 る。」 とされているところであるが、救急隊員についても同様に取り
 扱つて差し支えないものであること。

6 消防機関においては、救急隊の搬送に係る傷病者がAIDSウィル
 ス感染者等であると知つた場合、当該傷病者のプライバシー保護に関
 し万全の配慮をなすべきものであること。

7 消防機関においては、報告書及び本通知を参考の上、救助隊員等に
 ついても必要に応じ適切なAIDS感染防止対策を講じるよう配慮す
 ること。

8 消防機関においては、住民に対する応急手当の普及啓発活動に当た
 り、応急手当の知識、技術の普及と併せ、住民が、AIDS感染の危
 険にさらされるおそれを否定できない状況において応急手当を行う場
 合に係る感染防止上の留意事項についても報告書を参考として適切な
 指導を行うべきであること。

 別添 〔略〕

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