・集団的に発生する傷病者に対する救急医
 療対策について

             昭和四十年六月九日 自消甲総発第六十六号
             全国都道府県知事あて 消防庁長官

  このたび災害等により集団的に発生する傷病者に対する救急医療対策
 について消防庁、厚生省、警察庁、日本医師会等の関係機関が協議した
 結果、別紙の内容に示す方策に沿って、救急医療対策の強化を図ること
 になつた。

  都道府県における集団的に発生する傷病者に対する救急医療対策につ
 いては、すでに地域防及計画等に基づいて推進されているところである
 が、さらに下記の事項に留意し、救急医療体制の整備につとめ、集団的
 に発生する傷病者の救急医療の確保に一層の配慮をなされたい。

  なお管下市町村にも、この旨通知し、よろしくご指導願いたい。

      記

 1 地方防災会議の救急医療部会の設置
   救急医療対策を検討するため、都道府県および市町村の防災会議に
  救急医療部会を設置すること。

   ただし、市町村防災会議において、救急医療部会を設置することが
  不適当または困難である場合には、設置しないでよい。しかし、この
  場合においても消防、警察、医療機関等の関係機関が緊密な協力のも
  とに救急医療対策を検討し、市町村地域防災計画に反映するようにつ
  とめる。

 2 救急医療部会設置の手続き
   地方防災会議の救急医療部会は、都道府県または市町村の防災会議
  条例の定めるところにより設置すること。

 3 都道府県防災会議の救急医療都会の構成

  (1) 委員の指名
    救急医療部会を構成する委員は、防災会議の会長である知事が、
   指名することになるが、おおむねつぎの防災会議の委員が考えられ
   る。

   ア 師団長、連隊長等方面総監の指名した部隊もしくは機関の長
    (二号委員)
   イ 警視総監または警察本部長(三号委員)
   ウ 知事がその部内の職員のうちから指名したもののうち、総務部
    長、衛生部長等救急医療に関係ある者(五号委員)
   エ 市町村長および消防機関の長のうちから知事が任命した者(六
    号委員)
   オ 指定公共機関または指定地方公共機関の役員または職員のうち
    から知事が任命した者で、日本赤十字社関係者、日本国有鉄道関
    係者等救急医療に関係ある者(七号委員)

  (2) 専門委員の任命
    救急医療部会を構成する専門委員は、都道府県知事が任命するこ
   とになるが、おおむねつぎの者が考えられる。

   ア 都道府県の医師会関係者
   イ 国立、公立病院関係者
   ウ 大学教授等の学識経験者

 4 市町村防災会議の救急医療部会の構成

  (1) 委員の指名
    救急医療部会を構成する委員は、防災会議の長である市町村長が
   指名することになるが、おおむねつぎの防災会議の委員が考えられ
   る。

   ア 警察署長
   イ 都道府県職員のうちから市町村長が任命した者、保健所長等救
    急医療に関係ある者
   ウ 消防長または消防署長並びに消防団長
   エ 市町村長がその部内の職員のうちから指名した者で、救急医療
    に関係ある者

  (2) 専門委員の指名
    救急医療部会を構成する専門委員は、市町村長が任命することに
   なるが、おおむねつぎの者が考えられる。

   ア 市町村の医師会関係者
   イ 国立、公立病院関係者
   ウ その他学識経験者

 5 救急医療部会設置までの体制について

   地方防災会議の救急医療部会の設置にあたつては、委員の指名、専
  門委員の任命等、手続き上相当な時間を要すると思われるので、さし
  あたつて集団的に発生する傷病者の救急医療対策について救急医療関
  係者と協議し、一応の体制を確立しておくこと。


 別 紙

    救急医療対策について
     −集団的に発生する傷病者に対する救急医療対策−
                        昭和四十年五月十三日
                        救急医療対策打合会
 1 趣 旨

   集団的に発生する傷病者に対する救急医療対策については、一昨年
  七月救急医療対策打合会において決定された「救急医療対策につい
  て」に示されたところを基本とするが、傷病者が短時間に大量に発生
  するという特殊な事態に対処するため、主としてファースト・エイド
  及び初期診療を適切に確保するとともに、さらに災害が長期化する場
  合等を考慮して医療体制を組織的に整備する必要がある。

   この対策は、現在これらの事態に対して適用されている災害対策基
  本法・災害救助法による医療に関する措置の適切な実施に資すること
  を考慮するものとする。

 2 対象と範囲

   ここにいう災害とは、地震、津波等災害対策基本法に規定する災害
  及びこれに準ずる災害又は事故とし、これらによつて集団的に発生す
  る傷病者に対する医療の範囲は、傷病発生と同時に行なうファース
  ト・エイド・初期診療及び傷病者の病状に応じて行なう本格的な救急
  医療とする。

 3 災害救急医療体制の整備

 (1) 関係機関・団体の連絡協力に関する組織
    集団的に発生する事故に対処する救急医療体制は、特に通報・輸
   送・警備及び医療関係の諸機関の連絡と協力が組織的に計画され、
   また、必要に応じ隣接の市町村・都道府県に対しても協力が得られ
   るよう常に即応の体制を整備しておく必要がある。

   ア あらかじめ都道府県及び市町村ごとに消防・警察・公・私立各
    医療施設等による災害救急医療に関する連絡協力の機構を設置す
    る必要がある。
     この機構は、災害対策基本法に基づく都道府県及び市町村防災
    会議の救急医療の専門部会として運営されることが適当である。

   イ 災害発生に際しては、前記機構において作成した具体的計画に
    基づき、都道府県及び市町村災害対策本部に救急医療の部門を設
    置することを考慮すべきである。

   ウ 災害の規模・態様に応じ、中央防災会議においては救急医療の
    専門部会を設置する等適切な措置について考慮すべきである。

  (2) 関係機関・団体における活動体制

   ア 関係行政機関
     災害時における救急医療を迅速・適確に行なうために、現場に
    おける医療対策の遂行が効果的に行なわれるよう、前記関係行政
    機関による救急活動の協力体制を積極的に確保する必要がある。
     特に事故現場の医療面における命令系統等に関する諸事項につ
    いては、事前に明確にしておく必要がある。

   イ 関係団体
     地域医師会は、災害事故発生に即応するため、積極的に傘下医
    師・医療関係者及び医療施設の動員計画をあらかじめ策定してお
    く必要がある。

     国・公・私立の医療施設は、ファースト・エイド、初期診療及
    び本格的な救急医療につき、それぞれの役割を果たすため、地域
    医師会と緊密な連絡を図る必要がある。
     なお、当該医師会長は、事故の規模等を考慮L、適宜歯科医師
    会及び薬剤師会等の協力を求め、救急医療の万全を期するものと
    する。

 (3) 民間の協力

    災害時における救急医療活動は、災害が突発的に発生する関係
   上、現場附近における民間人の通報・連絡・傷病者の移送等の協力
   に待つところが少なくないので十分な協力が得られるようあらかじ
   め配慮するものとする。

 4 具体的方策

  (1) 通報
    災害発生の第一報の受信機関から、医療施設等に対する通報及び
   医療施設相互間の連絡の迅速・適正化を図る必要がある。

  (2) 医師等医療関係者の出動
    都道府県知事又は市町村長は、事故の通報を受信したときは、直
   ちに規模・内容等を考慮して、当該地域医師会長に対し、医師等の
   出動を要請すると同時に、災害の長期化等その態様に応じ隣接の都
   道府県・市町村に対しても協力が得られるよう配慮することが必要
   である。

  (3) 傷病者の搬送
    災害現場における医療関係者と近隣の医療施設との輸送に関する
   連絡を密にするとともに、搬送中における医療の確保についても十
   分な配慮をはらうものとする。

  (4) 傷病者の収容
    傷病者の収容施設については、医療施設のほか、学校、公民館等
   の収容可能な施設をあらかじめ明らかにしておく必要がある。
    この場合、傷病者に対する看護体制の確保について配慮する必要
   がある。

  (5) 医療用器材等の確保
    傷病者に対しては、大量の医療用器材を必要とするので、都道府
   県及び市町村において、これが確保についての計画を樹てるととも
   に、その運用及び医療施設に対する供給等に関し、あらかじめ地域
   医師会等と協議して、円滑な運用を図る必要がある。
    なお、地震等による災害長期化に対処して現場における臨時の診
   療所設置に必要な天幕、医療用器材等の確保についても配慮する必
   要がある。

 5 費 用

   救急医療活動は地域医師会等の民間活動にまたなければならない現
  状であるが、交通事故・産業災害等は、社会・経済の進歩発展に伴な
  つてきわめて深刻な社会問題となつているので、これらの災害の処理
  について、国及び地方公共団体がとるべき方策を積極的に検討するこ
  とが必要である。

   とくに、従来軽視されていたきらいのある救急医療に関する費用
  の問題については重要視する必要がある。

   従つて、出動した医師等に対する謝金・手当・不慮の死傷の場合に
  おける補償・医療材料等の消耗品費その他救急医療活動に伴なう直接
  ・間接の所要経費等の負担及び支払方法並びにその支払責任者を明確
  にしておくとともに、災害の規模・態様に応じ隣接の地方公共団体の
  協力を得た場合の費用負担区分についても明確にするよう配慮すべき
  である。現在これらの費用に関しては、現行関係法の適用により処理
  しうるものがあるが、さらにその制度の拡充・改善について検討する
  とともに、これらの法律の適用のない場合に対処するための方策を考
  慮すべきである。また、金融・税制についても併せて検討する必要が
  ある。

   なお、この場合、関係者の好意と奉仕に期待している現状を改め、
  特に医療担当者としての医師の立場を尊重するよう配慮すべきであ
  る。

 6 その他
   都道府県において集団事故発生時の救急医療に関する記録の収集・
  報告を迅速・適確に行なわせるものとする。


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