・救急隊員の行う心肺そ生法等について

          昭和六十三年十二月二十一日 消防救第百五十五号
          各都道府県主管部長あて 消防庁救急救助課長

  救急隊員の行う心肺そ生法等(人工呼吸法・心肺そ生法)について
 は、従来から日本医師会における「救急蘇生法の指針」(昭和五十八年九
 月一日発行)に示された方法にのっとって、実施されているところであ
 るが、このたび従来の方法のほかに日本救急医学会による「救急蘇生法
 の新指針」が示されるとともに日本医師会においても本年九月九日「救
 急の日」のポスターに新しい心肺そ生法を従来の方法に併せた形で掲載
 し、普及を図りつつある。この心肺そ生法は、従来の心肺そ生法に比
 べ、胃の膨張と逆流による合併症の発生が起こりにくい等改善が加えら
 れたものとされている。

  ついては、救急隊員の行う心肺そ生法についても従来の方法の他に新
 しい心肺そ生法を採用することとしたので、下記事項に留意のうえ、そ
 の実施に遺憾のないよう貴管下市町村(消防の事務を処理する一部事務
 組合を含む。)の指導を願いたい。

      記

 1 新しい心肺そ生法は別紙のとおりであり、採用する場合は十分教育
  訓練を実施すること。
 2 日本医師会における従来の「救急蘇生法の指針」による心肺そ生法
  が否定されるものではないので、誤解のないよう御留意願いたい。

 別 紙
   心肺そ生法等の実施要領等について
 (1)口対口人工呼吸法
  (ア)頭部後屈法及び頭部後屈おとがい挙上法により気道確保を行う。
  (イ)母指と示指で傷病者の鼻をつまむ。
  (ウ)深く吸気をし、息を止め、そこで傷病者の口を完全に覆い、800〜1,200ml の呼気を1〜
    1.5秒かけて、傷病者の胸が軽く膨らむまで吹き込む。
  (エ)最初の1回は静かに送気し、胸が元の位置まで沈んだら、2回目の吹き込みを行う。以後
    成人では5秒に1回、小児では4秒に1回、1歳ぐらいまでの乳幼児では3秒に1回の割合
    で繰り返す。
  (人工呼吸実施上の注意事項)
    ア 呼吸が停止しているのを確認したら、寸刻を争って人工呼吸を実施する。
    イ 人工呼吸を行うときは気道確保を確実に行い、実施中に抵抗が感じられるとき、又は胸
     の膨らみの悪いときは、気道確保が不十分か異物による閉塞であることが多いのでよく調
     べる。
    ウ 心停止があれば心マッサージを併用する。
    エ 手動式人工呼吸器(バッグ・マスク)、人工そ生器(デマンド型、手動引金式)等使用す
     る場合も上記に準じ人工呼吸を実施するが、人工そ生器(デマンド型、手動引金式)を使用
     する場合は、傷病者の胸が軽く膨らむ程度とする。
 (2)心マッサージの実施要領
  (ア)成人の場合は毎分80〜100回のリズムで胸骨を3.5〜5.0cm押し下げる。
  (イ)1歳から10歳ぐらいまでの幼小児では片方のての手掌根部で、1分間に80〜100回のリズム
     で胸骨を2.5〜3.5cm押し下げる。
  (ウ)1歳くらいまでの乳児では、左右の乳頭を結んだ線と胸の中央を縦に走る胸骨とが交差す
    る部位より指1本下側の所を(図1参照)2〜3本の指で、1分間に100〜120回のリズムで
    胸が1.5〜2.5cmへこむぐらい押し下げる。
                     (図1)

 (3)心肺そ生法(人工呼吸法と心マッサージの併用)
   ア 1名で行う方法(呼気吹き込みによる人工呼吸と心マッサージを併用する場合)
    (ア)傷病者の肩甲部に位置する。
    (イ)意識、口腔内の観察を行い、必要があれば口腔内の清拭・吸引を行う。
    (ウ)気道確保を行い、呼吸の観察を約5秒程度実施する。
    (エ) 前(1)(ウ)により人工呼吸を2回実施する。
    (オ)脈拍を5秒程度観察後、心マッサージを毎分80〜100回のリズムで15回実施した後、人工
       呼吸を2回行いこれを繰り返す。
   イ 2名による方法
    (ア)傷病者を挟んで相対する。
    (イ)前記ア(イ)(ウ)(エ)に準じて行動するが、人工呼吸を実施する者は、傷病者の側頭部側に移動
      する。
    (ウ)1名は1分間に80〜100回のリズムで心マッサージを行う。
    (エ)他の1名は、心マッサージ5回に1回のリズムで人工呼吸を反復する。
  (心肺そ生法実施上の注意事項)
   ア 心肺そ生を開始したら、例えば傷病者を移動したりするようなときでも、原則として中
     断することなく継続する。
   イ 心肺そ生実施中でも、傷病者の顔色、脈拍、体温、身体の動き、瞳孔等の観察を継続す
     る。特に、心マッサージや人工呼吸が効果的に行われているかどうか、呼吸や心拍の再開
     がないかどうかを常に確認しながら心肺そ生を続ける。
   ウ 心肺そ生は、呼吸や心拍が再開するか、又は医師に引き継ぐまで続ける。

 (図 省略)


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