・救急救命処置検討委員会報告
            平成四年二月七日
            救急救命処置検討委員会

 救急救命処置検討委員会委員名簿
  大塚 敏文  日本医科大学理事長
  荻田 幸雄  大阪市立大学医学部教授
  上嶋権兵衛  東邦大学医学部教授
  清野 誠一  信州大学医学部教授
  計見 一雄  千葉県精神科医療センター長
  小濱 啓次  川崎医科大学教授
 ○竹中 浩治  社会福祉・医療事業団副理事長
  谷口  繁  岩手医科大学救急センター教授
  佃  篤彦  自治医科大学教授
  坪井 栄孝  日本医師会常任理事
  戸川  清  秋田大学医学部教授
  中根 一由  東京消防庁参事
  南  裕子  聖路加看護大学教授
 ○:委員長

  この研究は、厚生省衛生関係者養成委託費の中で、日本救急医療研
 究・試験財団が実施し、厚生省に提出したものである。


 はじめに
  救急患者を医療機関に搬送する途上における医療の充実を図るため、
 救急救命処置を医師の指示の下に行うことができる新しい国家資格制度
 として、救急救命士法(平成三年法律第三十六号)が本年四月二十三日
 公布された。

  救急救命士制度を円滑に運用し、搬送途上の医療の充実を図っていく
 ためにも、また、救急救命士の学校・養成所において効果的な教育を
 行っていくためにも、救急救命士法第二条第一項において定義されてい
 る救急救命処置の範囲を明確にすることは大変重要なこととなってい
 る。

  さらに、救急救命処置の範囲を明確化するとともに、一般国民の行う
 応急手当、救急隊員の行う応急処置範囲等についても考え方の整理を行
 う必要がある。

  このため、救急救命処置検討委員会は、救急救命士が実際に業務を行
 う上で必要となる救急救命処置の範囲の明確化及びそのための条件、一
 般国民の行う応急手当、救急隊員の応急処置範囲の拡大部分の考え方等
 について検討をすすめてきたところである。これまで、四回にわたり検
 討を重ねてきた結果を取りまとめたのでここに報告する。

1 応急手当、救急救命処置等の範囲

  一般国民の行える応急手当から、救急救命士の行うことができる救
 急救命処置の内容について、別紙一のとおりに整理した。

  一般国民の行える応急手当については、用手法による気道確保、人
 工呼吸、胸骨圧迫心マッサージ、圧迫止血、骨折の固定、体温・脈
 拍・呼吸数などの観察等とするのが適切である。

  救急隊員については、従来から消防庁告示において規定されていた
 百三十五時間の教育訓練を修了した者は、一般国民が行える応急手当
 に加え、口腔内の吸引、経口エアウェイによる気道確保、バッグマス
 クによる人工呼吸を行っているが、平成三年八月に改正された同告示
 により今後基本となる救急標準課程二百五十時間以上の救急業務に関
 する講習の課程を修了した者においては、聴診器の使用による心音、
 呼吸音の聴取、血圧計の使用による血圧の潮定、心電計の使用による
 心拍動の観察及び心電図伝送、鉗子、吸引器による咽頭、声門上部の
 異物の除去、経鼻エアウェイによる気道の確保、パルスオキシメータ
 による血中酸素飽和度の測定、ショックパンツの使用による血圧の保
 持及び下肢の固定、自動式心マッサージ器の使用による胸骨圧迫心
 マッサージの施行、特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持を追加
 して行うことが可能であることとされた。

  救急救命士が搬送途上で行うことができる救急救命処置について
 は、医師の具体的指示の下に行うことが規定されている半自動式除細
 動器を使用した除細動、厚生大臣の指定する薬剤を用いた静脈路確保
 のための輪液、厚生大臣の指定する器具による気道確保の特定行為、
 医師の包括的な指示の下に行うことができる精神科、小児科、産婦人
 科の領域の処置、救急隊員であれば行うことができる応急処置とする
 ことが適切である。

2 救急隊員の行う処置範囲の拡大内容について

  救急隊員の救急業務に関する講習の課程が、百三十五時開から二百
 五十時間以上に増加するのにともない、新たに九項目の応急処置が可
 能となつたが、教育訓練時間が限られていること及び処置の中にはか
 なり高度な医学的知識、判断が必要なものがあることから、別紙二の
 とおり、その内容及び条件を明確にすることが必要である。

  その中でも特に、特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持に関し
 ては、在宅療法が広範にわたつているため、その内容について詳細に
 検討し別紙三のとおりまとめた。

  特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持についての基本的な考え
 方は、特定の在宅療法中に在宅療法とは別の原因で救急搬送が必要と
 なつた場合と在宅療法そのものの異常で救急搬送が必要となつた場合
 を対象とし、いずれの場合も必要に応じて一般的な応急処置を行うと
 ともに、その在宅療法に異常がない場合は、現在継続中の在宅療法を
 維持し、在宅療法自体の異常がある場合は、保存的処置を原則とする
 こととした。

3 精神科、小児科、産婦人科領域の救急救命処置

  医師の包括的な指示の下に行うことができる救急救命処置の中で、
 聴診器の使用による心音、呼吸音の聴取、心電計の使用による心拍動
 の観察及び心電図伝送、経口エアウェイによる気道確保等以外に可能
 と考えられる精神科、小児科、産婦人科領域の処置について、別紙四
 のとおりまとめた。

  精神科領域の処置については、精神障害者で身体的疾患を伴う者及
 び身体的疾患に伴い精神的不穏状態に陥っている者に対しては、必要
 な救急救命処置を実施するとともに適切な対応をする必要がある。

  小児科領域の処置については、処置自体は成人に準ずるものとなる
 が、各年齢に応じた適切な医療資器材を準備しておく必要がある。ま
 た、新生児については、ほとんどの場合、病院間搬送であり、原則と
 して医師の同乗が必要である。

  産婦人科領域の処置については、墜落産時の母体及び新生児の処
 置、弛緩出血時の母体の処置が必要となる。

4 救急救命士の行う特定行為

 (1) 特定行為の前提条件

   救急救命士は、救急救命士法第四十四条第一項により、医師の具
  体的な指示を受けなけれは、重度傷病者のうち心肺機能停止状態の
  患者に対する@半自動式除細動器による除細動、A厚生大臣の指定
  する薬剤を用いた静脈路確保のための輪液、B厚生大臣の指定する
  器具による気道確保を行ってはならないと規定されている。

   医師が具体的な指示を救急救命士に与えるには、指示に必要な情
  報が医師に伝えられていることとともに、医師と救急救命士が常に
  連携を保っていることが必要である。

   医師が現場にいない場合は、救急救命士は医師が具体的指示を与
  えるに際して、各種の判断を下すために必要な情報を医師に伝える
  必要がある。伝送が必要な医療情報として、全身状態(血圧、体温
  を含む)、心電図、聴診器による呼吸の状況などが考えられる。

   心肺機能停止状態の判定は、原則として医師が心臓機能停止及び
  呼吸機能停止の状態を踏まえて行わなければならない。

   心臓機能停止の状態は、心電図において、心室細動、心静止、電
  導収縮解離の場合、又は、臨床上、意識がなく、頸動脈、大腿動脈
  (乳児の場合は上腕動脈)の拍動が触れない場合とすることが適切
  である。

   呼吸機能停止の状態は、観察、聴診器等により、自発呼吸をして
  いないことが確認された場合とすることが適切である。

 (2) 特定行為の内容

   半自動式除細動器による除細動は、心室細動を半自動式除細動器
  により電気的に除去することである。この場合、医師の具体的指示
  には、除細動の適否、除細動のエネルギー量、除細動が不成功の場
  合の対応方法などが考えられるが、緊急を要する状況であるので、
  必要な事項を的確に指示することが適切である。

   薬剤を用いた静脈路確保のための輸液は、留置針を使用して、上
  肢においては@手背静脈、A橈側皮静脈、@尺側皮静脈、@肘正中
  皮静脈、下肢においては@大伏在静脈、F足背静脈を穿刺し、乳酸
  加リンゲル液を用いて、静脈路を確保するために輪液を行うことが
  適切である。この場合の医師の具体的指示としては、静脈路確保の
  適否、静脈路確保の方法、輪液速度などが考えられる。

   救急救命士が、医師の具体的指示の下に実施する気道確保は、食
  道閉鎖式エアウェイ又はラリンゲアルマスクを使用して行うことが
  適切である。この場合、医師の具体的指示としては、気道確保の方
  法の選定、酸素投与を含む、呼吸管理の方法などが考えられる。

おわりに

  本委員会では、プレホスピタル・ケアの充実を図るため、救急救命処
 置の範囲と救急隊員の業務範囲の拡大内容について検討してきた。

  救急救命処置の実施に当たっては、救急救命士の教育・研修制度の整
 備・充実を図ることが重要である。特に、資格を取得してすぐの救急救
 命士が救急救命処置を適切に実施できるようにするため、現任訓練など
 研修制度の確立が必要である。

  また、救急救命士が的確に救急救命処置を実施し、救急患者の救命率
 の向上に寄与できるようにするためには、救急救命士に指示を与える医
 師の確保、医師が指示を与えるのに十分な医療情報の伝送及び指示の伝
 達を迅速かつ的確にする救急医療情報システムの整備を図ることが必要
 である。

  さらに、救急救命士制度が円滑に運用されるよう、救命救急センター
 等の医療機関、消防機関を含めて、救急搬送システムの一層の充実強化
 を図っていくことが重要である。

  一方、救急隊員の業務範囲の拡大部分については、本委員会の検討結
 果を踏まえ、自治省消防庁において必要な措置をとり、制度の適切な運
 用を図っていくことが求められる。

  これらと併行して、救急救命士の救急救命処置の範囲について、医学
 ・医術の進歩、住民の救急医療需要の変化、救急救命士の業務の実施状
 況等を踏まえ、教育内容の高度化を図りつつ、一定期間の後に見直す必
 要がある。
救急救命士 救急隊員
医師の具体的指示 半自動式除細動器による除細動
厚生大臣の指定する薬剤を用いた静脈路確保
のための輸液
厚生大臣の指定する器具による気道確保





実務経験6ヶ月
医師の包括的な指示 精神科領域の処置
小児科領域の処置
産婦人科領域の処置
聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取
血圧計の使用による血圧の測定
心電計の使用による心拍動の観察及び心電図電送
鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去
経鼻エアウェイによる気道の確保
パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定
ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定
自動式心マッサージ器の使用による
胸骨圧迫心マッサージの施行 特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持
医師の指導助言 聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取
血圧計の使用による血圧の測定
心電計の使用による心拍動の観察及び心電図電送
鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去
経鼻エアウェイによる気道の確保
パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定
ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定
自動式心マッサージ器の使用による胸骨圧迫心マッサージの施行
特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持
250
時間
口腔内の吸引
経口エアウェイによる気道確保
バッグマスクによる人工呼吸
酸素吸入器による酸素投与
口腔内の吸引
経口エアウェイによる気道確保
バッグマスクによる人工呼吸
酸素吸入器による酸素投与
135
時間
一般人でも可能 用手法による気道確保
胸骨圧迫心マッサージ
呼気吹き込み法による人工呼吸
圧迫止血
骨折の固定
ハイムリック法及び背部叩打法による異物の除去
体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観察
必要な体位の維持、安静の維持、保温
一般人でも可能 用手法による気道確保
胸骨圧迫心マッサージ
呼気吹き込み法による人工呼吸
圧迫止血
骨折の固定
ハイムリック法による異物の除去
体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観察
必要な体位の維持、安静の維持、保温

 別紙2 
    救急隊員の業務範由の拡大内容及びそのときの条件につ
    いて 

  救急隊員は、従来の応急処置に加え、今後基本となる救急標準課程二
 百五十時間以上の救急業務に関する講習の課程を修了したものにおいて
 は、新たに九項目の処置について可能となるが、その内容及び条件につ
 いて、以下のように整理した。 

 1 聴診器の使用による心音、呼吸音の聴取
  処置の内容 
   ・心音(心臓が動いているか)の確認
   ・心拍動数の確認
   ・呼吸音(呼吸しているか)の確認
   ・呼吸数の確認 
 2 血圧計の使用による血圧の測定
  処置の内容
   ・最高血圧と最低血圧の測定
 3 心電計の使用による心拍動の観察及び心電図伝送
  処置の内容
   ・心拍動(心臓が動いているか)の確認
   ・心拍動数の確認及び波形の整・不整の観察
   ・心電図の無線又は電話回線を利用しての伝送(原則としてモニ
    ター中伝送)
 4 鉗子、吸引器による咽頭、声門上部の異物の除去
  処置の内容 
   ・喉頭鏡により直視できる範囲の異物、嘔吐物の除去
 5 経鼻エアウェイによる気道の確保 
  処置の条件
   ・経口エアウェイが使用できない場合
 6 パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定
  処置の条件 
   ・一酸化炭素中毒が疑われる場合の測定値の扱いには注意を要す
   る。 
 7 ショックパンツの使用による血圧の保持及び下肢の固定
  処置の内容 
   ・骨盤骨折、下肢の骨折の固定及び下肢の出血による急激な血圧低
    下の場合 
  処置の条件 
   ・頭部外傷、胸腔内出血、心不全、肺水腫が疑われる場合は使用し
    ない。 
   ・使用は一時間以内に限る。
   ・ショックパンツの減圧は医師にまかせる。
 8 自動式心マッサージ器の使用による胸骨圧迫心マッサージの施行
  処置の条件 
   ・原則として、用手式胸骨圧迫心マッサージを優先するが、長時間
    搬送の場合等に使用 
   ・新生児、乳幼児、小児、胸部外傷及び緊張性気胸が疑われる患者
    には使用しない。 
   ・胸骨圧迫位置がずれないように使用するとともに、人工呼吸を適
    正に実施する。 
 9 特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持
  在宅中心静脈栄養、在宅化学療法、在宅酸素療法等の特定の在宅療法
 (以下「特定在宅療法」という。)を継続中の傷病者の搬送中の処置の維持
 及び異常があった場合の処置について、別紙3のとおりまとめた。

 別紙3 
    特定在宅療法継続中の傷病者の処置
  (対象) 
   (1) 特定在宅療法中の患者で、その在宅療法以外の原因により救急
    搬送が必要な場合 
   (2) 特定在宅療法そのものの異常により救急搬送が必要な場合
  (処置総論) 
   (1) 特定在宅療法中の患者で、その在宅療法に異常がなく別の原因
    により救急搬送が必要な場合は、応急処置を行うと共に可能な限
    り、以下の<特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>に注意
    し、現在継続中の在宅療法を維持すること。
   (2) 在宅療法そのものの異常により救急搬送が必要な場合は、応急
    処置を行うと共に可能な限り、以下の<異常がある場合の処置>
    を行うこと。 
   (3) 医師(主治医等)の同乗を要請すること。ただし、同乗できな
    い場合は医師(主治医等)の指示にしたがうこと。
   (4) できる限り速やかに医療機関に搬送すること。
  (処置各論) 
 I 在宅中心静脈栄養管理中のもの
  <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
  (1) 搬送する場合は、点滴回路の閉塞防止、点滴速度の維持等安全
    確保に留意する。 
  <異常がある場合の処置>
  (1) 点滴回路の接続部が外れた場合は、接続部の両側を一時的にク
    ランプする。 
  (2) 点滴回路の接続都に緩みがある場合は、硬く接合する。
  (3) カテーテル挿入部から出血した場合は、挿入部を圧迫して止血
    する。 
  (4) カテーテルが抜けた場合または抜けかかった場合は、点滴回路
    をクランプする。 
  (5) カテーテルのつまりがある場合は、抜去することなくそのまま
    搬送する。 
  (6) 留置カテーテルが固定不完全の場合は、テープ等で固定をす
    る。 
 II 在宅化学療法で点滴を行っているもの
 <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
  (1) 搬送する場合は、点滴回路の閉塞防止、点滴速度の維持等安全
   確保に留意する。 
  (2) 注入ポンプを使用している場合、点滴速度などについて主治医
   あるいは本人・家族に確認し、搬送先の医療機関に伝える。
 <異常のある場合の処置> 
  (1) 点滴回路の接続部が外れた場合は、接続部の両側を一時的にク
    ランプする。 
  (2) 点滴回路の接続部に緩みがある場合は、硬く接合する。
  (3) カテーテル挿入部から出血した場合は、挿入部を圧迫して止血
    する。 
  (4) カテーテルが抜けた場合または抜けかかった場合は、点滴回路
   をクランプする。 
  (5) カテーテルのつまりがある場合は、抜去することなくそのまま
   搬送する。 
  (6) 留置カテーテルが固定不完全の場合は、テープ等で固定をす
    る。 
  (7) 輸液剤が血管外に漏れている場合は点滴回路をクランプする。
  (8) 注入ポンプが停止している場合は、点滴回路をクランプする。

 III 在宅酸素療法中のもの 
  <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
   (1) 呼吸状態の観察、既往症の聴取と共に通常の酸素流量を聴取
    し、搬送先の医療機関に伝える。 
   (2) 全身状態(呼吸状態、チアノーゼ、意識状態等)を充分に観察
    しながら、医師(主治医等)と連絡をとり酸素流量を設定する。
  <異常のある場合の処置> 
   (1) 在宅酸素吸入が継続できる場合は、上記(2)を行い、供給できな
    い場合は、酸素吸入を行う。 
 IV 人工呼吸器使用中のもの
  <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
   (1) 人工呼吸器の設定(換気量、呼吸数、吸入酸素濃度など)を主
    治医あるいは家族に確認し、搬送期間中、設定を維持するととも
    に、搬送先の医療機関に伝える。 
   (2) 全身状態(チアノーゼ、意識状態等)を充分に観察し、上記の
    人工呼吸器の設定を維持する。 
  <異常のある場合の処置>
   (1) 人工呼吸器が作動していない場合、手動によるバッグまたは簡
    易式人工呼吸器を使用する。 

 V 在宅自己導尿管理中のもの
  <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
   (1) カテーテルの固定状態、カテーテル内腔および挿入孔より出血
    の有無、疼痛の有無、カテーテル及び接続チューブの折れ曲がり
    と緊張、バッグの位置等を観察する。
  <異常のある場合の処置> 
   (1) 尿道カテーテルが抜けている場合は、下腹部の膨隆状態を観察
    し、下腹部に圧力がかからない膝屈曲仰臥位による体位管理を実
    施する。 
   (2) 尿道カテーテルが抜け外尿道ロから出血している場合は、滅菌
    ガーゼで圧迫気味に被覆する。 
   (3) 尿道カテーテルが抜けそうな場合は、その位置でカテーテルが
    動かぬようテープ等で再固定及び引張防止の処置を実施する。
   (4) 尿道カテーテルが留置され疼痛及び出血のある場合は、膝屈曲
    仰臥位による体位管理を実施する。
 VI 在宅自己腹膜灌流を施行中のもの  <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
  (1) カテーテルの固定状態、カテーテル内腔および挿入孔よりの出
   血の有無、疼痛の有無、カテーテル及び接続チューブの折れ曲が
   りと緊張等を観察する。 
  <異常のある場合の処置>
  (1) 腹膜灌流カテーテルが抜けている場合は、挿入孔を確認し、包
   帯及び滅菌ガーゼ等で孔を被覆して搬送する。
 VII その他 
  (1) 気管切開を行っている場合
   <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
    @ 気管切開が施されている場合は、気管カニユーレが挿入さ
     れているかを確認し、呼吸の状態を観察する。
   <異常のある場合の処置> 
    @ 気管カニユーレが抜けかけていても、そのカニユーレを通
      じて気道が確保されている場合は、気管カニユーレはそのま
     まとし抜去しない。ただし、気管カニユーレ内腔が分泌物の
     付着等により狭窄して呼吸困難となっている場合は吸引を行
     う。 
    A 酸素吸入を必要とする傷病者にあっては、切開孔から酸素
      の投与を行う。 
    B 気管切開孔また瘻孔に気管分泌物が視認できる場合は、
      その分泌物の吸引を行う。 
    C 気管切開孔から出血がある場合は、吸引を行い窒息を防
      ぐ。 
    D 気管切開孔に異物が視認できる場合は、ピンセットまたは
      吸引器で除去する。 
    E 気管カニユーレが挿入されておらず、視認できない異物が
      気管内にあると考えられる場合の除去はハイムリック法を用
      いる。 
   (2) 尿管瘻・人工肛門
    <特定在宅療法に異常がない場合の留意事項>
     @ 尿管瘻・人工肛門が施されている場合は、出血・疼痛等の
      症状および瘻孔の状態の観察を行う。
    <異常のある場合の処置> 
     A 尿管瘻・人工肛門のバッグ等の脱落の場合は、滅菌ガーゼ
      等による局所被覆包帯を実施する。
  (3) 薬剤投与中のもの 
    @ 事前に医師の指示が患者に伝えられている場合は、本人ま
      たは家族にその行為を行わせてよい。

 別紙4 

    精神科、小児科、産婦人科頒域の救急救命処置

 1 精神科 
   (1) 精神障害者で身体的疾患を伴う者及び身体的疾患に伴い精神的
    不穏状態に陥っている者に対しては、必要な救急救命処置を実施
    するとともに適切な対応をする必要がある。
 2 小児科 
   (1) 基本的には成人に準ずる。
   (2) 新生児については、専門医の同乗を原則とする。
 3 産婦人科 
   (1) 墜落産時の処置      臍帯処置:臍帯結紮・切断
     胎盤処理 
     新生児の蘇生:口腔内吸引、酸素投与、保温(クベースの使用
     等) 
   (2) 子宮復古不全(弛緩出血時)
      子宮輪状マッサージ(腹部)

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