・救急救命士の資格を有する救急隊員に対して行う就業前教育の実施要領について

平成六年四月一日 消防救第四十二号
各都道府県消防主管部長あて 消防庁救急救助課長
〔最終改正〕 平成一〇年五月二五日 消防救第一二五号

 標記の件については、「救急救命士の資格を有する救急隊員による救 急業務の開始について」(平成四年五月十九日付消防救第六十六号各都 道府県消防主管部長あて消防庁救急救助課長通知)により、既に通知し たところであるが、救急活動現場において傷病者に対し迅速かつ的確な 特定行為を行うためには、より一層の就業前教育の充実を図る必要があ ることから、このたび、別紙のとおり就業前教育実施要領を定めたとこ ろである。

 貴職におかれては、その趣旨を十分に踏まえ、救急救命土の資格を有 する救急隊員に対する就業前における教育のより効果的な実施が図られ るようお願いする。

 ついては、貴管下市町村(消防の事務を処理する一部事務組合を含 む。)にもこの旨周知するとともに、よろしくご指導願いたい。

別 紙
   就業前教育実施要領
1 目的等

(1) 救急救命士の資格を取得した後に救急隊員が救急救命士として救 急業務を開始するに当たり、救急救命士法施行規則第二十一条に定 める救急救命処置(以下「特定行為」という。)が救急活動現場にお いて傷病者に対し迅速、的確に実践されるよう能力の更なる向上を 図るものである。

(2) 就業前教育の内容は、症例研究、資器材の習熟訓練等消防機関で 行うことが可能な教育及び医療機関の協力を得て病院実習として行 う教育とする。
 特に病院実習は、@傷病者の受入れ後の処置を含めた救急医療の 現状の理解、A救命救急セソター等での医師の指導下における特定 行為の修練等をとおし医師、看護婦等との信頼関係を築くことが研 修成果として期待される。

2 病院実習を行う医療機関  病院実習を行う医療機関は、特定行為が医師・看護婦との連携、信 頼関係のもとに始めて円滑に行われるものであることから、救急救命 士が実際に救急活動を行う地域にある救命救急センター(救命救急セ ンターが存在しない場合には、次の就業前教育カリキュラムを勘案し て、必要な教育を受けることが出来る医療機関)とする。

3 就業前教育カリキュラムの内容

消防機関において行う教育訓練

症例研究:
救急救命士による活動事例の症例研究(医師の指導)
救急自動車乗務実習等の訓練:
救急救命士以外の救急隊員との連携訓練、救急救命士が乗務している救急自動車での特定行為の実習
特定行為に係る資器材の習熟訓練:
バイタルサイン等の伝達訓練、様々な状況を想定した資器材の習熟訓練
指示を行う医師との情報連絡を想定した訓練:
バイタルサインの観察、心電図波形の観察(心停止、重症不整脈等)と伝送要領訓練
医療機関において行う病院契習
特定行為に係る資器材の習熟訓練
特に医師の指導による特定行為に関する医学知識と技術の習得
傷病者搬送時における研修
傷病者の受入れ対応要領(受入れ時に実施される各種検査等の見学を含む)
各種検査要領の実習等
各種資器材の消毒、滅菌、感染防止、手術や緊急検査の見学等(尿検査、血液検査、血液交叉試験、エックス線検査、CT及び心エコーの基礎等)
小児疾患の対応、婦人科疾患の対応、分娩介助、重症患者の監視、各種医療処置の理解
4 病院実習の細目
 実習細目実習水準目標回数
1 バイタルサインの観察(血圧、脈拍、呼吸数などI 15
2 身体所見の観察(視診、触診、聴診など)I15
3 モニターの装着(心電図、パルスオキシメーターなど)I15
4 酸素投与I10
5 バッグマスク法II3
6 気管内挿管II3
7 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスクI3
8 気道内吸引I10
9 喉頭鏡の使用I3
10 人工呼吸器の使用III1
11 胸骨圧迫心マッサージI3
12 開胸心マッサージIII1
13 抹消静脈路確保I3
14 点滴ラインの準備I10
15 中心静脈確保II1
16 輸液II10
17 輸血II3
18 除細動I3
19 緊急薬剤の使用II3
20 循環補助(ペースメーカー、IABP)III1
21 創傷の処置II3
22 骨折の処置II3
23 胃チューブ挿入II3
24 胸腔ドレナージIII1
25 ナーシングケア(清拭、体位変換など)I10
26 精神科領域の処置I3
27 小児科領域の処置I3
28 産婦人科領域の処置I3
備考1 実習水準は、以下のとおりとする。
     I:指導者の指導・監視のもとに実施が許容されるもの
     II:指導者の指導・監督のもとに医行為を行う者を介助するもの
     III:見学にとどめるもの
  2 目標回数は、実習細目の中で実施水準I、IIに係る回数であり、
この目標回数には救急救命士の養成課程中に実習を行った
回数を含めることができる。

5 就業前教育実施上の留意事項
  • (1) 症例研究は、救急救命士により特定行為の行われた事例を中心 に、医師の指導の下で行うこと。
  • (2) 救急救命士以外の救急隊員との連携訓練にあっては、救急活動を とおして特定行為等を実施する場合の活動手順について確認を行う こと。
  • (3) 救急自動車乗務実習を行うにあたって、救急自動車に救急救命士 が乗務していない消防本部の消防長は、隣接の消防本部等の協力を 得て実習を行うよう努めること。
  • (4) 病院実習はバイタルサインの観察の習熟、処置・検査等の理解及 び医師の指導下における特定行為の修練を目的として実施すること。
  • (5) 医療機関において行う病院実習で使用する資器材については、原 則として消防機関が所有する資器材を使用するものとする。ただ し、消防機関に資器材が整備されていない場合又は医療機関の資器 材を活用することにより、より実習効果があがるような場合には、 当該医療機関と協議の上で決めること。
  • (6) 消防長は、本就業前教育を免許登録後速やかに実施するよう具体 的なカリキュラム等の整備に努めること。

6 実習病院当たりの受入れ研修生数 受入れ医療機関により実習等十分な教育を受けることが可能な人員とする。 7 研修期間  研修期間は、カリキュラムの内容からしておおむね一か月ないし二 か月を必要とするが、消防機関において行う教育訓練にあっては、一 日当たり八時間以上として七日間(これにより難い場合は五十六時 間)以上実施するものとし、このうち三日間(一日当たり四時間)以 上を症例研究に当てるものとする。
 また、医療機関において行う病院実習にあっては、百六十時間以上 の実施に努めるものとする。
8 実施方法
  • (1) 研修期間中は、救急救命士が本研修に専念できるよう十分に配慮 するものとする。
  • (2) 就業前教育を実施するに当たっては、それぞれの地域の実情に応 じて、都道府県又は他の消防機関等との連携・協調を図るなどして 本教育が効率的かつ効果的に行われるようその方策について配慮す るものとする。
  • (3) 消防長は就業前教育が修了した場合には、その教育内容について 確認を行い記録、保存しておくものとする。

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