36号 p77

「ヘリコプターによる救急システムの推進に関する検討会報告書について」

自治省消防庁救急救助課 自治事務官 和知 治


救急ヘリコプターの出動基準等策定への取り組み

消防庁においてはヘリコプターによる救急システムの推進に関して従前から検討を重ねてきたところであるが、平成11年度には消防・防災ヘリコプターを救急業務に活用するための具体的な出動基準及び出動手順について検討を行い、報告書をとりまとめた。

救急ヘリコプター出動・要請基準

1 現 状

「ヘリコプターによる救急システムの整備・充実に向けた取り組みについて」(平成8年12月19日付け消防政第267号)では、ヘリコプターによる救急業務の出動基準として、原則として「現場到着時間又は医療機関への搬送時間を著しく短縮でき、傷病者の救命効果又はその後の回復に大きな影響を与えると判断した場合」に出動することが適当であるとされている。

ヘリコプター保有機関ではこれを基に出動基準が作成されているがヘリコプターを要請する側を含めたすべての消防機関で作成されてはいないのが現状である。また、これらの出動基準も上述の内容の域を出るものではなく、個々の事案ごとに主観的な判断をせざるを得ない場合が多いと思われる。

2 出動基準に関する検討結果

ヘリコプターによる救急業務を推進していくためには、119番通報を受信した消防機関が迅速にヘリコプターの出動判断を行いうる出動基準、すなわち客観的、画一的判断を可能とする具体的指標により作られた出動基準を整備する必要がある。また、この出動基準は、ヘリコプター保有機関及びヘリコプターを要請する側の消防機関で共有することが重要である。

@ 受傷原因・症状に関する判断項目

傷病者の症状については、119番通報がバイスタンダーにより行われることを踏まえた判断項目とする。もちろん、この判断項目は可能な限り具体的事例を示すものでなければならない。また、事故に起因する負傷で119番通報があった場合、通報者は事故の状況を先に伝えることが予想され、事故原因から重傷度や緊急度が推測され得るケースも多いと思われることから、受傷した原因についても傷病者の症状と同様に、判断項目に加える。その上で、判断の迅速性を重視して、これらの項目の1つに該当すればヘリコプターによる搬送に適しているものとした。

報告書で示した判断項目(表1)は、基本的にはAmerican College of Surgeon's Committee on Traumaの示したトリアージ基準等を参考とし、傷病者が3次救急医療機関に搬送を要する程度を想定して設定をした。これらの判断項目は、前述の通りバイスタンダーが通報できる範囲の内容から判断することを前提としており、多少のオーバートリアージは許してもアンダートリアージを避けるよう設定された。言うまでもなく、この出動基準はヘリコプターによる救急業務を積極的に行うことを目的として作成されたものであるが、一方で消防・防災ヘリコプターは、各種の消防防災業務に使用される上に、各都道府県域ごとに1機〜2機のみの配備というところが多い。消防・防災ヘリコプターを有効に救急業務に活用するためには、これらの判断項目の精度を向上させ、オーバートリアージを少なくするように継続的に努力していく必要がある。そこで、個々の判断項目について、搬送した傷病者の救命効果の向上にどの程度資するものであるかを常に検証し、その検証結果に基づいて判断項目を随時見直していくことが重要となる。また、報告書で示した判断項目のほかにも、地域特性等に応じたものを追加する必要がある。

A 地理的条件について

ヘリコプターの有効範囲を地図に示すことで、119番通報受信時に即座にヘリコプターの出動を判断できるものとする。この有効範囲とは、覚知から病院収容まで、ヘリコプターの方が救急自動車のみによるよりも搬送時間が短い地理的範囲のことをいうが、有効範囲の大小は次のような要素にも左右される。

・搬送先医療機関の離着陸場から医療機関に収容するまでの時間の長短離着陸場が医療機関の屋上又は敷地内にあり医療機関への収容に時間を要しないか、それとも敷地外にあり一度自動車による中継搬送が必要で収容にその分の時間を余計に要するか。

・現場付近の離着陸場の整備状況: 傷病者をピックアップする離着陸場が豊富に設置されているか。

・地上救急隊等との引継時間の長短・ヘリコプター離着陸前の地上隊による支援の要否、離着陸は航空隊単隊で実施可能で、飛散物防止のための地上隊による撒水等が不要か。

・救急車覚知からヘリコプターが離陸するまでに要する平均時間 ヘリコプターによる救急業務の推進により各種基盤の整備が進んで、よりスムースに搬送ができるようになれば、ヘリコプターの有効範囲は更に広がることが期待される。


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