霞が関通信

アーバンサーチ&レスキュー

自治省消防庁救急救助課

(プレホスピタルケア 10:3 25号 70-73, 1997)


 災害による被災者の救命率を高めていくためには、救助、救急、医療の連携を図っていくことが大切である。本稿では、その1例として米国における災害時の都市検索救助システム(THE NATIONAL URBAN SEARCH & RESCUE RESPONSE SYSTEM)の仕組みを紹介することとしたい。

 1985年のメキシコ地震及び1988年のアルメニア地震において、崩壊した建物の内部に多くの人々が閉じ込められ、これらの人々を救出するには危険な被災現場で各分野の専門家と特殊な機器が必要であるとの提言が米国において出された。

 1989年のロマプリータ地震において、そのことが強く認識され、同年カリフォルニア州緊急災害対策局(OES)により、都市検索救助部隊(US&R隊)が創設された。

 1991年、17の州に設置された25の消防本部等の都市検索救助部隊に連邦危機管理庁(FEMA)が財政支援をすることにより、都市検索救助システムが構築された。

1 US&R 隊の配置

 FEMAにより全米17の州の25のUS&R隊がシステム化されている。なお、1997年中に2隊増やして27隊にする予定とのことである。

 

2 US&R隊の構成

 US&R隊の構成は、62人の専門家からなり、1つのポジションを2交替で31人が24時間活動できる体制がとられている。全体を管理するリーダー、スタッフの下に4つの機能に分類されたチームから構成される。

(1)部隊管理(6人)

 部隊リーダー、副リーダーと安全管理担当官(2人)、活動計画担当官(2人)からなり、部隊全体の管理、部隊運用の調整、活動

 計画の策定、安全配慮を行う。

(2)検索チーム(8人)

 マネージャー(2人)、救助犬による検索の専門家(4人)、機器による検索の専門家(2人)からなり、救助犬及び検索用の機器を用いて要救助者の検索を行う。

(3)救助チーム

 マネージャー(2人)と4つの救助小隊から構成される。1つの救助小隊は1人のリーダーと5人の救助専門家により編成され(24人)、装備を活用して要救助者を救出する。

 鉄筋で補強されたコンクリートを切断・分断することや突破口を作るといった能力を有する。

(4)医療チーム

 マネージャー(医師、2人)と看護婦またはパラメディックの医療専門家(4人)とから構成される。病院に運ばれる前に緊急医療を提供することになるが、クラッシュシンドロームの恐れのある要救助者へ対応、狭い空間に閉じ込められた要救助者への薬の投与といった対応が求められる。

(5)技術チーム

 マネージャー(2人)、構造物専門家(2人)、危険物専門家(2人)、吊上重機器専門家(2人)、技術情報専門家(2人)、通信専門家(2人)、兵たん専門家(4人)からなる。技術チームは全般的な検索・救助活動を支援する専門家集団で構成されている。その任務は、危険地域の評価、構造物の状況の評価、危険物の測定、被災者救助及び構造物安定化のための吊り上げ技術の提供、情報の整理、記録及び事後の分析、通信システムの管理・操作、装備備蓄等の管理(輸送・分配・保管)・調達、軍及び輸送担当官との調整などである。特に兵たん部門の重要性が再認識され、近年体制が強化されている。

 医療チームは、隊員及び要救助者の怪我、病気への対応、隊員の災害現場におけるストレスの解消、危険物にさらされた時の最小限の治療を行う。加えて、救助犬に対する手当も行う。

 また、医療チームは、国家災害医療システム(National Disaster Medical System,NDMS)として編成される災害医療支援チーム(Disaster Medical Assistance Team,DMAT)の中の特殊なカテゴリーとみなされている。米国の場合、州によって医師等の資格が異なるが、DMATと指名されることによって、チームに参加する医師等に対して災害地での必要な資格が付与される。

 なお、被災地に対する一般的な医療対応は、現存する医療機関とDMATによって提供することが予定されており、US&R隊の医療チームは、被災者一般に対する医療の提供は予定していない。したがって医療チームの対応の優先順位としては次のように考えられている。

 第1順位 隊員及びそれを支援する人への対応

 第2順位 隊員により直接救助された被災者への対応

 第3順位 救助犬への対応

 第4順位 その他必要な者への対応

 US&R隊が属する機関としては、大都市の消防機関が多いが、地方の緊急対策局(Local Emergency Management Agency)や州であってもよい。

 ニューヨーク市のUS&R隊は消防局の救助隊の外に、警察の救助犬チーム、緊急医療チーム(EMS)から構成されている。ロサンゼルス市のUS&R隊は、消防局に設置され、救助犬チームも持っているが、医療チームについては、消防局常勤の医師が事前に登録されているボランティアの医師から編成する。

US&R隊によっては、医療チームや技術チームのメンバーは、ボランティア(通常は、別の職業についているが消防局等に登録していて災害時に参集し、活動時は臨時職員といった位置づけになる)による場合も多い。

 

3 部隊運用

 24時間体制での対応とし、12時間ごとの2交替で活動する。生存者の救出に特に重要と考えられる最初の72時間は自給できるだけの装備等を持って出動し、72時間経過後に必要なものが再支給される。大規模災害が発生した場合、US&R隊に対して災害が発生した旨の警告(alert)が出される。その後、出発地点等を示した出動指令(activation)が出されるが、隊員は出動指令から6時間以内に個人装備等を持って出発地点に参集することが求められる。

 FEMAにおいて装備とトレーニングの標準化が図られており、隊員については、多様な場面を想定し複数のポジションのトレーニングを受けたものによって構成されている。

 

4 最近の主な派遣事例