霞が関通信

緊急消防援助隊の整備

自治省消防庁救急救助課

(プレホスピタルケア 8:4 18号 74-77, 1995)


1 これまでの広域応援体制の仕組み

 緊急消防援助隊の整備は、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助等をより効果的かつ充実したものとするため、全国の消防機関相互による迅速な広域消防応援体制を確立しようとするものであるが、まず、これまでの広域応援の仕組みについて述べる。

  1.  市町村の区域における消防についての責任は当該市町村が有しているが(消防組織法(以下「法」という)第6条)、一の市町村の消防力を超える災害に備えて法第21条第2項に基づき次のような市町村間の相互応援協定を締結している。

     {1} 隣接市町村間における相互応援協定

     {2} 都道府県内における統一応援協定

     {3} 都道府県域を超えた市町村間における

     応援協定

  2.  都道府県を超え、全国的に消防の応援が必要となる場合には、法第24条の3に基づき次のような手続きがとられることとなる。

     被災地の都道府県知事 =>(応援要請)=> 消防庁長官(応援の求め)=> 他の都道県知事 =>(応援出動等の措置の求め)=> 管下市町村長 =>(応援出動)

  3.  広域消防応援に出動する部隊については、災害の発生の都度随時編成されることとなっている。

 

2 阪神・淡路大震災での教訓

 先の阪神・淡路大震災では、地元消防本部、消防団はもとより、消防庁からの出動要請を受けて、全国41都道府県、451消防本部から延ベ32,400人が広域消防応援活動を実施し、消火、救急、救助活動に従事したところであるが、次のような教訓も残された。

  1.  早期の段階での災害情報が不足していたこと。
  2.  駆け込みでの救助の要請が多くあり、救助隊員が不足していたこと。
  3.  救助資機材の不足から耐火建物の床が破壊できず、救出活動に時間を要したこと。
  4.  自主防災組織や自衛隊は救助訓練の経験が不足していたこと。
  5.  消防の部隊は長期に活動することを想定していないので、自給自足の体制がとれていなかったこと。
  6.  多くの応援部隊が駆けつけたが、組織的・体系的応援の体制が整備されていなかったこと。特に、指揮命令系統が明確でなかったこと。
  7.  要救助者の検索・救助と連携して災害現場において医療活動を行う医療チームが整備されていなかったこと。

 

3 緊急消防援助隊の発足

  1.  阪神・淡路大震災での教訓を生かし、より一層効果的に災害初期における人命救助活動を行える体制を確立する必要があるとの議論が国会等において盛んに行われた。
  2.  1を受けて消防庁は緊急消防援助隊を平成7年度に創設することを決め、資機材の整備等必要な経費を第一次補正予算で計上した(補助金約22億5千万円 5月19日成立)。
  3.  6月30日:緊急消防援助隊発足式を挙行した。
  4.  9月5日:消防庁への部隊登録が完了した。

 

4 緊急消防援助隊の編成等の基本的考え方

 緊急消防援助隊は、次のように救助部隊、救急部隊、消火部隊、後方支援部隊および指揮支援部隊から構成される。

(1)救助部隊

    1.  原則として、各都道府県ごとに、専任の特別救助隊の中から、2隊(東京都および政令市を含む道府県においては4隊)以上を選定し、消防本部ごとの出動可能隊数を消防庁に登録するものとする。
    2.  高規格救助工作車、高度救助用資機材を装備するものとする。

(2)救急部隊

    1.  原則として、各都道府県ごとに、救急隊2隊(東京都および政令市を含む道府県においては4隊)以上を選定し、消防本部ごとの出動可能隊数を消防庁に登録するものとする。
    2.  災害対応型特殊救急自動車、高度救命用資機材を装備するものとする。
    3.  救助部隊と連携して出動するとともに、被災地において医師等と協力して活動するものとする。

(3)消火部隊

 原則として、発災当日に災害の状況に応じ、近隣都道府県域からの応援部隊によって必要なポンプ車、水槽車、化学車等が確保できるように、都道府県ごとに出動可能部隊数を確保するものとする。

(4)後方支援部隊

    1.  原則として、各都道府県ごとに、救助部隊、救急部隊、消火部隊が、被災地において現地消防本部に負担をかけることなく自給自足できるように必要な物資等を整備しておき、その属する消防本部を消防庁に登録するものとする。
    2.  被災地到着後72時間は対応できるようにするものとする。

(5)指揮支援部隊

    1.  発災覚知後、ヘリコプター等で速やかに被災地に出動し、災害の規模、現地消防本部の活動状況等を把握し、現地消防本部の指揮が円滑に行われるよう必要な支援活動を行うとともに、必要な応援部隊の規模等について消防庁へ連絡を行うものとする。
    2.  政令市等(東京都を含む)の消防本部に属する管理職員等を以てこれに充て、予め担当する地域を定めておくものとする。

(6)緊急消防援助隊の出動決定等

    1.  被災地の近隣都道府県域の緊急消防援助隊は、予め定めるところに従い、直ちに出動するとともに、災害の規模に応じ必要な数の緊急消防援助隊が出動しうるよう消防庁長官は速やかに必要な措置をとるものとする。
    2.  予め、災害の発生場所等に応じ出動計画、参集計画を定めておくものとする。

       なお、現地への隊員、資機材の搬送について自衛隊機を使用することが想定される部隊については、参集場所として当該航空機の離着陸場を指定しておくものとする。

    3.  緊急消防援助隊は被災地に到着次第、当該被災地の市町村長(または委任を受けた消防長)の指揮下に入るものとする。

 

5 緊急消防援助隊において講じられた対策

 緊急消防援助隊においては、阪神・淡路大震災での教訓について次のような対策が講じられている。

(1)救助隊等の量的な不足について

 阪神・淡路大震災のような大規模な都市型災害に対しては、高度な資機材を有し、高度な訓練を積んだ救助隊が大量に出動する必要がある。しかし、7年度当初において、救助工作車と高度な資機材を有する専任の特別救助隊は全国に355隊しか配置されていない。したがって、多くの専任の特別救助隊が早急に被災地に出動できるよう緊急消防援助隊では、消防庁登録制度を採用した。

 これは、各都道府県ごとに、都道府県と当該都道府県内の消防機関が協議して、専任の特別救助隊を緊急消防援助隊として消防庁に登録しておき、これらの救助隊の補完は各都道府県ごとに対応策を講じておくこととする。そして、消防庁に登録された救助隊は24時間いつでも出動可能な体制を整えておくのである。その結果、消防庁としては、大規模災害時においてどの救助隊が応援可能なのかが予めわかっているので、速やかな対応が可能になる。

  なお、このような消防庁登録制度は救助隊のほか、救急隊および後方支援部隊にも採用されている。

(2) 組織的な応援体制の整備、特に、指揮命令系統の明確化について

    1.  緊急消防援助隊は予め各都道府県の区域ごとに部隊を編成し(都道府県隊)、その単位で被災地に赴き、被災地でもまとまって自給自足体制の下、活動することとなる。
    2.  想定される災害の発生場所に応じ、予め出動計画を策定するとともに、随時合同訓練を行い、組織的な応援を可能とすることとする。
    3.  応援部隊は法24条の4により、被災地の市町村長の指揮の下に活動することとなるが、当該市町村長の応援部隊に係る指揮を支援するため、指揮支援部隊を編成した。

(3)災事情報の早期覚知のための方策について

    1.  指揮支援部隊は、ヘリコプターにより先行調査を行うとともに、ヘリコプターテレビ電送システムを始めとする防災情報通信ネットワークによって、消防庁等に必要な情報を報告することとした。
    2.  特に、緊急消防援助隊早期出動情報システムを整備することとした。
    3.  被災地からの要請を待ついとまがない場合等においても迅速な広域消防応援の体制を確保されるよう法24条の3を改正することとした(臨時国会提出予定)。

(4)自給自足体制の確立について

 各都道府県隊ごとに後方支援部隊を編成し、広域展開が想定される救助部隊、救急部隊の隊員に係る食料、トイレ、寝具等を備えた車両を輸送することとした。

(5)医療チームとの連携について

    1.  災害現場での蘇生行為等を行えるように救急部隊には、必ず救急救命士を含むものとした。
    2.  災害現場での検索・救助と連携した救命医療を行う医師等を現場で輸送するシステムを検討することとした。
    3.  要救助者の検索・救助と連携した救命医療に必要な資機材、携行医薬品およびマニュアル(救急救命士のものも含む)を策定するため研究会等を設置することを予定している。

 

6 緊急消防援助隊の編成結果と今後の予定

 緊急消防援助隊の編成作業については、9月5日付けで消防庁への登録が完了したところであるが、その具体的内容は、次の通りである。これからは、いかなる災害にも対応できるよう不断の精進に努めるとともに、大規模な災害の発生を想定して実戦さながらの訓練を11月下旬に東京で行うことを予定している。

  1. 消防庁登録部隊(各都道府県域ごとに隊を編成し、全国から集約的に出動)

    208消防本部 376隊

    (交替要員を含め約4,000人規模)

    (内訳)

     指揮支援部隊  13隊

     救助部隊    150隊

     救急部隊 158隊

     後方支援部隊 55隊

  2. 県外応援可能部隊(近隣都道府県において必要部隊数を確保)

     891隊(交替要員を含め約13,000人規模)

    (内訳)

     消火部隊 774隊

     特殊部隊(はしご隊、照明隊等)117隊

  3. 総計1,267隊

(交替要員を含め17,000人規模)