霞が関通信

女性救急隊員の誕生に至った経過の概要

自治省消防庁救急救助課

(プレホスピタルケア 8:2 16号 77-79, 1995)


はじめに

 欧米の先進諸国における女性の救急業務への進出状況をみると、モントリオール市では救急隊員の約10%が、また、ニューヨーク市においては、パラメディックやEMTの約25%が女性である。

 わが国においても、救急業務の高度化に伴い、看護婦の救急隊員希望者の増加や女性の能力を活用した救急業務の実施が各方面から望まれ、徐々に女性救急隊員が誕生しつつある。

 以下、当課で把握している女性救急隊員の誕生等に至った経過の概要について紹介する。

 

1 全国消防長会救急委員会第1小委員会にあける検討

 我が国における「女子に対するあらゆる形態撤廃に関する条約」批准(昭和60年7月1日)に伴う国内法の整備など社会的環境の整備も進み、21世紀に向けて、女性をとりまく環境は、高齢化、高度技術化、情報化、国際化の進展の中で大きく変容してきている。とりわけ、婦人消防吏員の救急業務への活用については、欧米先進諸都市では現に制度化されており、また、女性、幼児、高齢者等の傷病者に対しては、女性隊員である方がより適切な救急活動が期待できる等のメリットもあり、消防本部に対する実態調査結果を基に、婦人消防吏員の救急業務への活用について男女平等の実現をめざす観点から、昭和62年から63年にかけて検討を行い、「各消防本部の実情に応じ、深夜時間帯を除き試行的に実施するなど前向きに検討する必要がある」という報告をまとめた。

 

2 総務庁による勧告

 労働基準法で定めている時間外労働・深夜業に関する「女子保護規定」が意欲や能力のある女性労働者が男性と同じ雇用機会、待遇を得る上で、逆に妨げになっている場合が多いことから、総務庁は、平成3年6月14日「女子保護規定」のうち時間外労働や深夜業などに関する規制を再検討するよう労働省に勧告した。

 

3 消防本部の動き

(1)婦人消防吏員の深夜業禁止規定の適用除外についての要望

 平成3年7月29日、東京消防庁は、労働省婦人局に対し、婦人消防吏員の特性を生かした、より適切な職種への登用が困難で、能力発揮の機会が制限されるとともに、職務意欲の低下を招く虞があることから、深夜時間帯における1.指令管制業務、2.産婦人科系疾患等の救急業務、3.災害現場における情報収集・火災原因調査業務等、4.深夜営業を行っている事業所に対する査察業務、5.町会、婦人会等に対する防災指導業務、6.花火大会、年末年始等の警戒業務、7.国家的行事に対する消防特別警戒業務、8.夜間を想定した震災消防活動訓練等の業務に従事できるよう、婦人消防吏員に対する深夜業禁止規定の適用除外を要望した。

(2)女性救急隊員の誕生

 入間東部地区消防組合消防本部は、看護婦を採用し、平成3年9月1日から女性救急隊員として乗務する制度の運用を開始した。

 しかしながら、深夜業の規制があり、看護婦として医療機関に勤務しているときには認められていた24時間勤務体制も消防職員になると深夜勤務ができなくなることなどから、救急隊員として24時間の活用が不可能な実態にあった。

 

4 消防庁の動き(その1)

 女性救急救命士による高度の応急処置の実施その他幅広い業務での女性の能力を活用した高度のサービスの実施は、住民サービスの向上に資するものであり、1.救急業務、2.指令管制業務、3.災害現場における情報収集・火災原因等調査業務、4.深夜営業を行っている事業所に対する査察業務、5.夜間防災指導業務、6.花火大会、年末年始等の特別警戒業務、7.夜間早朝の消防防災訓練業務等について、女性が深夜にも従事できるよう所要の措置を講じられるよう、平成4年3月9日、労働省に対し要望した。

 

5 国会の動き

 平成4年5月28日参議院地方行政委員会において、女性を救急業務に活用することについて検討された。

 

6 労働省の動き

 労働省では、平成6年1月から婦人少年問題審議会及び中央労働基準審議会に対し「女子労働基準規則の一部を改正する省令案要綱」を諮問していたところ2月25日に「消防の業務についての女子の深夜業については、使用者において、男子用と女子用に区別した睡眠及び仮眠等の設備等を設けるとともに安全及び衛生の確保を図った上で就業させることが必要である」との答申がなされた。

 また、女子労働基準規則については、第4条関係の深夜業の禁止の例外となる業務の追加として、「国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水火災又は地震等の災害を防除し及びこれらの災害に因る被害を軽減するための消防の業務」が加わり、4月1日から施行された。

 

7 消防庁の動き(その2)

 平成6年3月28日付け消防消第51号、消防救第38号各都道府県消防主管部長あて消防庁消防課長、救急救助課長通知により女子労働基準規則の一部改正について通知し、留意事項等の徹底を図った。

 なお、女子労働基準規則第9条第1項第1号の解釈については、労働省から口頭で「救急業務において、担架上に傷病者を収容し搬送する業務は、重量物を扱う業務に該当しない。ただし、担架の重量が重量制限の範囲内に限る」との回答を得ていたものの、文書による解釈を得るために協議を重ねていた。

 今般、文書により、「女子である救急隊員が傷病者を収容した担架を取り扱う業務は、女子労働基準規則第9条第1項第1号の「重量物を取り扱う業務」に該当しない」旨の回答を得たため、平成7年3月14日付け消防救第33号各都道府県消防主管部長あて救急救助課長通知によりその内容を周知した。

 

おわりに

 このような経緯により、女性消防吏員の24時間勤務が可能となり、また、女性救急隊員が傷病者を収容した担架を取り扱う場合に重量制限が該当しないことが明確となった。

 各消防本部においても、実情に応じた活用がなされることを期待している。