霞が関通信

高速自動車国道における消防無線の不感地対策

自治省消防庁救急救助課

(プレホスピタルケア 7:2 13号 60-62, 1994)


1 高速自動車国道における救急業務  

 昭和38年の名神高速道路の第一次供用開始によるわが国のハイウェイ時代の幕開けから30年以上を経過した現在、その供用延長は平成6年5月末日現在5,574.3キロメートルに達し、これに伴い、高速自動車国道における救急業務の重要性もますます増大している。

 高速自動車国道は、その施設特有の特殊な閉鎖的構造を有しており、救急業務を行うに際しては、1.インターチェンジからしか進入できないこと、2.その管理については日本道路公団が専管し、かつ有料で経営されていること、3.いったん事故が発生すると大規模な救急事故となる可能性が高いこと等から、一般の救急業務とはかなり異なった側面を有しており、その実施主体、財源措置、実施方法等をめぐって関係機関の間で供用開始以来、種々の論議がなされてきた。

 その結果として昭和46年の交通安全基本計画においては、「高速自動車国道における救急業務については、日本道路公団が道路管理業務と一元的に自主救急として処理責任を有するとともに、沿線市町村としても消防法の規定に基づく処理責任を有するものであり、両者は相協力して、適切かつ効率的に人命救護に万全を期すべき」であるとされた。

 さらに昭和49年の「高速道路救急業務に関する調査研究委員会」答申により、1.一定の要件に該当する区間にあっては、日本道路公団が自主救急を行うべきこと、2.その場合については、常時24時間にわたり、重軽傷を問わず、通常生ずる救急事故に対処し得る救急隊を設置して実施すべきこと、3.1以外の区間の救急業務を地元市町村が実施する場合には、日本道路公団は一定の財政措置を講ずべきこと、さらに、4.日本道路公団と市町村は、救急業務を円滑に実施するため、連絡協議会の設置、総合的訓練の実施、通信連絡体制の整備推進など、相互間の連携強化を図るべきこと等を主な内容とした答申が出され、この答申に基づき、日本道路公団、建設省、消防庁の3者間の覚書きが締結され、高速自動車国道の救急業務が遂行されることとなった。

 

2 高速自動車国道にあける救急無線の不感問題

 ところで、救急活動を円滑に行うためには、通信連絡体制整備の確立が不可欠である。特に救急救命処置を行う場合は医師の具体的指示が必要とされている。高速自動車国道が全国くまなく伸長し、山岳地帯まで延伸してくると、山脈、トンネル等無線の不感地帯が増加し、救急活動に支障が生じてきている。現在も長大トンネルは通信設備の設置が図られているが、それに至らない規模のトンネルや救急隊と消防本部相互間の連絡に支障のある山間部の不感地帯等、早急に対策を樹立すべき地域が多く、早々に日本道路公団と市町村の相互協力による通信連絡体制の整備の充実が図られることが最も必要である。

 

3 高速自動車国道における救急無線の不感地対策の背景

 しかし、救急無線の不感問題については、前述の「高速道路救急業務に関する調査研究委員会」の答申により、日本道路公団は、高速自動車国道における救急業務を担当するインターチェンジ所在市町村との直通電話の整備をすみやかに推進するほか、市町村が行う無線通信設備の整備に日本道路公団の施設を活用できる場合には、これに協力するものとされ、各地域ごとにその実情に合わせた日本道路公団と市町村の相互協力による通信連絡体制の整備が行われてきたものの、その不感地帯解消の進捗状況は捗らないまま今日に至っていた。

 平成5年3月2日、参議院逓信委員会において、高速自動車国道における救急無線の不感地に関する質問がなされ、続いて4月5日の決算委員会及び6月4日の逓信委員会においても同様の質問と不感地の早期実態把握、対策の実施について指摘がなされたのを機に、これを真摯に受け止め早期解消に向けて関係者の認識が一致をみたところである。

 

4 高速自動車国道の救急業務検討会の設置及び活動

 この結果、早々に、消防庁、建設省及び日本道路公団の3者による「高速自動車国道の救急業務検討会」を設置して、不感地の実態調査と対応策について検討会を開始し、以後5回にわたり協議を行った。

 その間、平成5年8月には、消防庁が都道府県を経由して各市町村に対して不感地域の実態等の調査を実施し、また、この実態調査に基づき各地の公団管理事務所と各市町村によりそれぞれの地域の実情に応じた不感地域解消のための最善策について検討が始められた。

 また、平成5年10月には不感地域の現地実地調査を行い、現状の認識を踏まえ、各市町村の不感地域の実態の把握とこれに対する具体的対応策について協議を進めたところである。

 この結果、平成6年3月29日の第5回目の検討会において、消防庁、建設省及び日本道路公団の3者間において「高速自動車国道の救急業務に従事する市町村の救急用自動車と消防本部との無線通信が確保されない箇所(不感地)における通信の確保に関して」一定の合意を見たところである。

 その内容は別記のとおりであるが、これにより不感地域の解消に向けて大きく前進するものと考えられる。例えばこれまで示されていなかった自動車電話、公団道路管理用携帯電話機の使用や非常電話の使用について関係機関の合意に基づき活用が図られることになったことは、不感地域解消の方策として大きな役割を果たすことは明確であり、また、道路トンネルに設置される無線通信補助設備が活用できることになったことは、今後消防本部と高速自動車国道の救急現場とを直接結ぶ通信連絡体制を構築するにあたり、大きなハードルを越えることになるものと考える。

 

5 おわりに

 1年間検討を続け、全国の不感地域として報告された585箇所のほとんどにおいて具体的な対応策が講じられることとなったのは関係各位の熱心なご努力はもとより、適切な国会からのご指導を賜った成果として感謝申し上げるところである。

 また、今回こうした対応策について合意できたことは、一定の到達点として評価できると考えている。

 しかしながら、救急車の走行中における通信の確保といった観点からは、抜本的な解決とは言い難く、今後とも必要に応じて検討を続けていくこととされている。

 高速自動車国道における救急業務は、歴史も浅く、いまだ残された問題もあり、今後新たに生ずる問題もあると考えられる。

 今後その円滑な推進を図るために、抜本的な救急医療体制の確保をはじめ、各種の問題について、関係機関において十分協議し検討することが望ましいが、同時に日本道路公団及び市町村においても、それぞれの有する責任を十分理解し、高速自動車国道における救急業務に常に前向きの姿勢で取り組んでいくことが必要である。


別記

  1.  日本道路公団(以下「公団」という)及び市町村(「高速自動車国道における救急業務に関する覚書」(昭和55年12月1日付け建設省、消防庁及び公団締結)記1に定める市町村。以下同じ)は、「高速道路救急業務に関する調査研究委員会」による昭和49年3月15日付け答申5(4)に基づき、それぞれの通信連絡体制の整備を推進するものとする。

  2. 不感地における通信を確保するため、自動車電話、公団道路管理用携帯電話機(ジャック式)及び高速自動車国道に設置された非常電話機の活用を図るものとする。

  3. 不感地における通信を確保するため、道路トンネル非常用施設設置基準(昭和 56年4月21日付け建設省都市局長・道路局長通達。以下「非常用施設設置基準」という。)に基づき設置される無線通信補助設備については、これを不感地対策として活用することができるものとする。また、延長1キロメートル未満のトンネル坑口間明かり部を挟んで連続しているトンネル群(以下「連続トンネル群」という。)のうち、トンネル坑口間明かり部を含めた総延長が5キロメートル以上で、かつ、 非常用施設設置基準に定める防災等級がAA又はAであるトンネルを、当該連続トンネル群に含む場合は、これと同様の取り 扱いとすることができるものとする。

  4. 建設省、消防庁及び公団は、不感地対策等について、今後とも必要に応じて協議するものとする。