霞ヶ関通信

救急業務の充実強化と平成5年度財政措置

自治省消防庁救急救助課

(プレホスピタルケア 6:1 10号 77-78, 1993)


1 はじめに

 現下の救急業務の最大の課題は、平成3年8月の制度改正による救急隊員の行う応急処置等の範囲の拡大に対応して、その実施体制を総合的に整備し、救急業務の高度化を推進することである。

 まず、拡大された応急処置等について、できるだけ早期に全国の消防機関で実施できるよう、これに必要な各都道府県の消防学校等における教育訓練を促進するとともに、救急振興財団を中心に救急救命土の養成規模の拡大を図っていく必要がある。また、これとあわせて、拡大された応急処置等を実施するために必要な高規格救急自動車及び高度救命処置用資機材の配備を促進するとともに、高度な救急業務の実施に必要な医療機関との連携体制の確保を図っていくことが必要である。

 さらに、救急隊の現場到着前に住民により適切な応急手当が施されれば、救命率の向上に大きな効果があることから、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう応急手当の普及啓発活動を促進することが重要である。このため、応急手当の指導者の養成、心肺蘇生法等の習得に効架的な普及啓発用資機材の整備等を推進し、消防機関の行う応急手当の普及啓発活動を積極的に推進していく必要がある。

 各地方公共団体においてこれらの施策を推進するために必要となる費用については、一定の財政措置が講じられているところである。以下では、平成5年度における財政措置の概要について紹介する。

 

2 救急隊員に対する教育訓練の拡充

 拡大された応急処置等のうち比較的軽易な9項目の応急処置等に対応する救急II課程の教育訓練については、平成4年度中に全国すべての消防学校で開始されているが、可能な限り早期に全ての救急隊員に対して実施されることが必要である。このため、平成5年度においては、救急II課程教育の講師となる医師の確保に資するよう、既に普通交付税で措置している講師報償費の単価の引き上げを行った。

 また、救急救命土の養成については、従来から救急振興財団の設置する救急救命東京研修所への職員派遣に要する経費について特別交付税で措置してきたところであるが、救急救命士養成規模の拡充に対応して、政令指定都市等が設置する救急救命士養成所への派遣経費についても平成4年度から措置している。

 

3 高規格救急自動車等の配備

 拡大された応急処置等を実施するためには、各消防機関において、高規格救急自動車及び高度救命処置用資機材を整備することが不可欠である。このため、消防庁においては以下のような財政支援措置を講じることにより資機材の配備を促進することとしている。

(1) 国庫補助制度

 平成3年度及び4年度においては「救急高度化推進整備事業」を実施し、救急業務の高度化に取り組むモデル的な消防機関に対し、資機材の整備についてメニュー方式による国庫補助を行ってきたところである。

 平成5年度以降は、救急II課程教育の全国的な進捗、救急救命土養成規模の拡大等教育訓練体制の整備の進展に対応して、資機材整備の面でも早期かつ計画的に高度救急業務の実施体制が整備されるよう、「救急高度化推進整備事業」に代えて、「救急業務高度化資機材緊急整備事業」を創設することにより、補助対象団体を大幅に拡大することとしている。同事業は、補助対象を高規格救急自動車及び高度救命処置用資機材に絞り、5ヵ年間に約400団体を対象として助成する予定である。

(2) 地方財政措置

 以上の国庫補助制度に加えて、地方交付税措置の充実を図り、地方債の活用等と併せて高規格救急自動車等の自主的な整備が促進されるよう取り組んでいる。すなわち、平成4年度から高規格救急自動車、高度救命処置用資機材等を各消防本部において整備する費用について普通交付税の単位費用に算入しているところであるが、平成5年度においては各消防本部に配備される、すべての救急自動車を高規格救急自動車として普通交付税措置を行った。

 

4 医療機関との連携の確保等

 救急隊員が救急救命士資格を取得するための教育訓練課程においては、病院実習が義務づけられているが、資格取得後においても、就業前研修としての病院実習のほか、救急現場で的確な対応ができるよう、知識、技能の一層の錬磨が必要と考えられる。また、救急救命士としての業務遂行にあたっては、指示を行う医師を確保するとともに、心電図伝送システムの構築等救急隊との間の情報連絡体制を整備しなければならない。

 このように、消防機関が高度な救急業務を実施するためには、医療機関との間で日頃から密接な連携体制を構築し、それに基づき、救急隊員に対する教育や救急救命士への具体的指示を行う体制を確保する必要がある。

 消防庁においては、従来から各消防機関に対し、医療機関との協力関係を強化するよう指導してきたところであるが、救急救命士に対する医師の指示、心電図伝送等救急隊と医療機関との連絡に要する経費を普通交付税の単位費用に算入するとともに、医療機関連絡調整会議の開催等医療機関との連携強化に必要な経費についても措置している。

 さらに、消防機関と医療機関との連携体制の確保に資するため、広域行政主体としての都道府県が設置する救急業務高度化推進会議の開催経費を普通交付税の単位費用において新設している。

 また、救急救命士の資格を有する救急隊員の処遇改善については、平成4年度において救急救命士が出場した場合の出場手当(1回当り510円)を地方財政計画に計上したところであるが、救急救命士の活動状況を踏まえ、平成5年度においては普通交付税の単位費用においても算入している。

 

5 応急手当の普及啓発活動の促進

 消防庁においては、救急医療及び消防関係者からなる「応急手当普及啓発活動のあり方検討委員会」(平成4年7月設置)の検討結果を踏まえ、消防機関の行う応急手当の普及啓発活動の実施要綱(「応急手当の普及啓発活動に関する実施要綱」)を制定し(平成5年3月30日付消防庁次長通知)、普及講習の標準的・効果的な実施方法、普及活動の実施体制の整備等に関して定め、全国的に積極的かつ効果的な普及啓発活動の促進を図っていくこととしている。

 この実施要綱に基づく応急手当の普及啓発活動が、各消防機関において円滑に実施されるよう、普通交付税の単位費用においては、心肺蘇生法の訓練用人形等の普及啓発用資機材の整備費(標準団体ベースで1,162千円)、普及講習会の開催経費を新たに算入している。

 また、実施要綱に定める資格要件を満たした指導員を養成するため、都道府県が開催する応急手当指導員養成講習会の実施に要する経費、当該指導員養成講習会に各市町村が消防職員を派遣する経費をともに普通交付税で措置している。

 

6 おわりに

 以上が平成5年度の財政措置の概要であるが、各地方公共団体においては、これらの財政措置を活用し、救急業務の充実強化に積極的に取り組むことが期待される。