霞が関通信

自治省消防庁救急救助課

(プレホスピタルケア 1:2 2号 56-57, 1989)


 災害の複雑多様化、より質の高い消防サービスを求める国民ニーズ等に対応し、これまで以上に迅速かつ的確な消防活動を実施し得るよう、消防庁においては、昨年 2月、「消防におけるヘリコプターの活用とその整備のあり方」はいかにあるべきか、消防審議会に諮問しました。以来8回にわたり慎重審議をいただいてきましたが、去る3月20日その基本方針に関する答申を得たところです。答申内容は多岐にわたっていますが、救急業務へのヘリコプターの活用についてもいくつかの重要な論点が指摘されています。

 そこで、今回は、この消防審議会の答申によって示された「消防におけるヘリコプターの活用とその整備のあり方に関する基本方針」の概要について紹介したいと思います。

 

1 消防ヘリコプターの必要性

 消防の任務を的確に遂行し、国民の信頼と期待にこたえていくためには、上空からの消火や人命の救助、災害状況の把握、ヘリコプターによる救急患者の搬送など、ヘリコプターを活用した消防活動の展開がこれまで以上に要請される。したがって、消防ヘリコプターは、今日では、一部の大都市だけでなく、一般の市町村においてもその活用を図るべき近代的装備となっており、消防ヘリコプターの整備を全国的に推進し、これを活用した消火、人命の救助、救急業務等、いわゆる航空消防を積極的に展開していくことがこれからの重要な課題であるとの基本認識が示されています。

 

2 消防ヘリコプターの活用分野

 消防ヘリコプターの活用分野については、特定の消防活動に限定することなく、消火(林野火災における消火等)、人命の救助(高層建築物等における人命の救助)、災害時の情報収集、救急業務(離島、山村、へき地等からの救急患者の搬送)等、ヘリコプターの有効性が期待できる消防活動のすべてを対象とすることが適当であるとされています。

 なお、救急業務に消防ヘリコプターを活用する場合においては、救急自動車によって十分対応できる救急事実まで対象とすることは適当でなく、基本的には、ヘリコプター以外の搬送手段によっては著しく時間を要し、救急患者の治療上重大な支障をもたらすと医師又は救急隊が認める事案を対象として運用すべきであるとされています。

 

3 消防ヘリコプターの広域的運用

 ヘリコプターの広域的な活動性能、経済効率性等に配慮して、大都市以外の地域において消防ヘリコプターの整備を進めるに当たっては、広域的な運用を図る仕組みをとることを基本とし、また、大都市等が単独で整備運用する場合にあっても、これまで以上に消防ヘリコプターの広域的な活用に努めることが望まれるとされています。

 

4 消防ヘリコプターの配置目標

 消防ヘリコプターの全国的な配置のあり方については、その広域的な運用を前提として各種の消防活動と迅速、的確に実施し得るヘリコプターの有効活動範囲を基本として考えるべきであるとし、日常的な発生頻度、緊急性の度合いから、救急業務にヘリコプターを活用する場合の有効活動範囲をもって画することが適当であるとされています。

 この場合、救急自動車による搬送人員の80%以上が30分以内に医療機関に収容されていること、西ドイツ・スイス等救急ヘリコプター先進諸国の例、ヘリコプターの巡航速度(200〜250Km/h)等を勘案して、半径50〜70Km(ヘリコプター基地から救急現場におおむね15分前後で到達可能な距離)とするのが適当であるとされています。

 この半径による活動範囲は、おおむね各都道府県の区域と一致するため、21世紀初頭には各都道府県の区域に少なくとも1機以上の消防ヘリコプターの配置が整うことを目標とし、今後、約 10年の間に、現有機数に加え、新たに40〜50機の消防ヘリコプターを計画的に整備する必要があるとされています。

 

5 広域航空消防体制の整備

 消防ヘリコプターが配置されていない都道府県の区域に、消防ヘリコプターを積極的に配置していくため、各都道府県の区域ごとに消防ヘリコプターの整備を推進し、併せて広域的かつ機動的に運用し得る広域航空消防体制を地域の実情に適した形で整備していくことを求めています。

 その方式としては、市町村が協議会やこれに準じる組織を設置し、共同して消防ヘリコプターの整備運用を図る方式に加え、新たに都道府県による整備運用方式の導入を提言しています。

 

6 消防ヘリコプターに係る財源措置

 消防ヘリコプターの整備及び維持管理に対しては、国としても、国庫補助金の充実強化に努めるほか、新たな制度の創設についても検討を行い、積極的に財源措置を講じていく必要があるとしています。

 

7 消防ヘリコプターの有効活用に必要な諸条件の整備

 その他、高層建築物屋上や高次医療機関における離着陸場の確保、消防ヘリコプターを活用した広域的な救急システムの整備、夜間飛行対策、ヘリコプター搭乗要員の養成等、消防ヘリコプターの有効活用に必要な諸条件の整備を推進すべきであるとされています。

 特に、広域的な救急システムの整備については、次のように指摘されています。すなわち、救急業務は、消防活動の中でもとりわけ緊急を要し、また医療機関等との連携、調整を要するものであるので、消防ヘリコプターの出動基準、出動手続、収容医療機関の選定、消防ヘリコプターと救急自動車との連携方法等、広域的な救急システムのあり方について関係機関が十分協議し、地域の実情に応じた形でこれを整備しておく必要があるとしています。

 以上が、今回答申された消防におけるヘリコプターの活用とその整備のあり方に関する基本方針の概要ですが、消防庁では、今後、この基本方針に基づき、消防ヘリコプターの整備推進とその円滑な運用体制の確立に必要な施策を講じ、答申の具体的かつ計画的な実現に努めていきたいと考えています。特に救急業務への本格的なヘリコプターの活用を進めることはこれからの重要な課題です。消防関係者、救急医療関係者におかれても、本答申の考え方を御理解いただき、消防ヘリコプターの活用・整備について一層の取り組みをお願いしたいと思います。