集団災害事故現場の救急・救助活動

JR高崎線列車脱線事故報告

編集室

(プレホスピタルケア 9:4 22号 8-10, 1996)


 平成8 年6 月25 日午後9 時20 分頃、岐阜県益田部下呂町三原、JR 高山線の三原トンネル北側出入ロ(高山寄り)付近に落石があり、名古屋発高山行き特急「ひだ」15号(5両編成、乗客・乗員計150 名)が、線路上の落石に乗り上げるように衝突。先頭車両及び2両目が右側線路外へ脱線し、乗客15名と機関士1名の計16名が負傷する事故が発生した。

 

1 現場状況

 事故当日は、朝から大雨洪水警報が発令され、事故現場付近では前日から降り始めた雨量が128mm に達し、事故発生当時は強い雨足で、1 時間の雨量は9mm を記録していた。

 事故現場は、飛騨川と平行して山肌を縫うように高山線と県道が走り、飛騨川のり面には竹やぶや雑木が茂るなどしており、この竹やぶに完全に脱線した先頭車両が突っ込むように止まっていた。

 また、線路上には、3m 四方(約60t )の岩があり、この岩が線路西側山肌の土砂崩れにより県道を飛び越えて線路上に落ち、事故原因となったものである。

 

2 負傷者の内訳

表1のとおり。

 

  表1 負傷者の内訳(6月26日現在)

傷病程度

男 女 別

男 性

女 性

軽傷

7名

9名

16名

 

3 搬送先医療機関

 下呂温泉病院

 

4 消防隊の活動状況

(1)地元消防本部

 益田広域事務組合消防本部下呂消防署は、事故覚知とともに救急車、タンク事等の全部隊を出動させ、現着時に脱線車両を確認するとともに、消防本部内各消防署へ救急車等の応援要請を行った(表2) 。消防隊員及び救急隊員は、脱線した車両の出入口から車両内に進入し、乗客などの救助・救護活動を行い負傷者を医療機関に救急自動車などで搬送した。

 

(2 )応援消防本部

 事故を覚知した周辺消防本部は救助工作車、救急車を救助・救急活動の応援のため出動させたが、益田広域事務組合消防本部の消防部隊などによって乗客の救助及び負傷者の医療機関への搬送が終了していたため、活動した部隊はなかった。

 

5 医療機関の出動状況

(1 )高山赤十字病院

・派遣人員13 名

 (医師3 名、看護婦7 名、薬剤師等3 名)

(2 )医療法人白水会 白水病院

・派遣人員 2 名

 (医師1 名、レントゲン技師1 名)

 

6 まとめ

 JR 高山線列車脱線事故は、現場が停車駅に近く減速していたこと、また脱線した列車がのり面の竹やぶにより飛騨川への転落を免れるなど、最悪の事態を逃れた面もあった。

 しかし、昭和41 年8 月18 日、岐阜県加茂郡白川町河岐で集中豪雨のため土砂崩れがあり、国道に立ち往生していた乗鞍登山の団体客を乗せた2 台のバスが、崩れた岩石に押し出され、飛騨川に転落、乗客104名が犠牲となった事故もあった。

 今回の事故では、周辺消防本部が過去のバス転落事故の教訓から、事故の覚知後、直ちに応援部隊を出動させるなどの消防広域応援を行ったことが特出した点であった。

 

表2 出動消防部隊等

所    属

台 数

人 員

益田広域事務組合消防本部

タ ン ク 車

消防ポンプ車

資機材搬送車

救 急 車

指 令 車

広 報 車

本部、署待機

11台

1台

1台

1台

5台

2台

1台

47名

4名

3名

2名

15名

5名

2名

16名

下呂町消防団

可搬積載車

ポンプ自動車

8台

6台

2台

135名

萩原町消防団

指 令 車

1台

1台

4名

4名

可茂消防事務組合消防本部

救 急 車

救助工作車

指 令 車

広 報 車

6台

3台

1台

1台

1台

20名

9名

4名

2名

5名

中濃消防組合消防本部

救 急 車

救助工作車

2台

1台

1台

8名

3名

5名

多治見市消防本部

救 急 車

救助工作車

3台

2台

1台

10名

6名

4名

恵北消防組合消防本部

救 急 車

救助工作車

2台

1台

1台

6名

3名

3名

飛騨消防組合消防本部

救 急 車

1台

1台

5名

医師2名

合     計

34台

235名