第24回日本救急医学会総会見聞記

編集室

(プレホスピタルケア 10:1 23号 65-67, 1997)


 平成8年10月7日(月)、8日(火)、9日(水)の3日間、神奈川県横浜市のパシフイコ横浜において第24回日本救急医学会総会(会長北里大学医学部救命救急医学・大和田隆教授)が開催された。3日間を通じての参加人数は医師部会2,132人、看護部会997人、救急隊員部会は944人を数え、盛会のうちに幕を閉じた。

 会場となったパシフイコ横浜は、国際的な会議がしばしば行われるためテレビにもよくお目見えするところであるが、それだけにロビーも広々としており、講演中も一服をしてくつろいでいる参加者を数多く見かけた。会場が広すぎるのも考えものであろうか…。

 さて、今回の総会では、メインテーマとして「救急医学の学問体系へのアクセス」、サブタイトルとして「基礎医学との接点」、「救急医学と倫理」が掲げられ、初日に行われた三部会合同の特別講演では、その第一人者である木村利人先生(早稲田大学・ジョージタウン大学)より「救急医療におけるバイオエシックス(生命倫理)-生死を誰が決める?患者・家族・医療チームのあり方を問う」と題して講演が行われた。社会情勢の多様化による価値観の変化、市民の医学に対する知識の普及化などから医療のあり方が問われている昨今、プレホスピタル・ケアを担う救急隊員の聴講者にも、非常に興味深い講演となったことであろう。

 救急隊員部会では教育講演3題、シンポジウム、パネルディスカッション各1題と一般演題62題が行われた。中でも「救急業務の高度化のための医療機関との連携強化について」と題して行われたシンポジウムでは、医療機関から東海大学救急医学・澤田祐介先生、杏林大学救急医学・行岡哲男先生、行政機関から消防庁救急救助課・小濱本一課長、厚生省健康政策局指導課・上田茂課長、そして消防から横浜市消防局・石井久雄課長、京都市消防局・田邊健課長が代表して、救急隊員の教育訓練、医師の指示体制、中小都市における地域的課題について報告と問題提起をした後、それぞれの立場から救急業務の高度化に向けての活発な意見交換が行われ、予定時間を大幅に上回る盛況ぶりであった。

両医師からは、

「医師と救急隊員は、”顔の見える関係”でない限り、特定行為に対する指示を出すことに非常に不安を覚える」

あるいは、

「救急救命士は資格が全てではない。救命士の資格を持っていても、自己研鑽の努力もみられず能力も不十分という人に対しては、特定行為にOKサインを出したくない」

 という厳しい指摘もなされた。

 司会の鈴木忠先生(東京女子医科大学救命救急センター)は、

「そういった角度から考えると、救急救命士の人数がまだ少ない地域では、逆にそのことをメリットと受け止めることもできる。救命士の人数が少ないと、医師とのより密接な関係も作りやすいわけで、ぜひ地域格差を逆転の発想で利用してほしい」

 と締めくくった。

 一般演題に関して言えば、全国からいろいろな事例や研究論文が発表され、各演者の苦労の跡が感じられた。しかしながら、「学会」本来の目的に立ち返れば、最近の救急隊員部会における事例研究等は、少々「きれいごと」に終わってはいないだろうか。

 努力むなしく救命できず、その処置に重大な反省点を残して悔やまれるようなケースは本誌の誌面上でも同様であるが、学会の発表には必ずや登場しない。事例発表はお決まりのパターン化し、よかった部分だけの羅列にとどまり、討議や意見交換に至る材料さえ与えないようなものになってはいないだろうか。そんな気がしてならなかった。

 全国から救急業務に日々携わる隊員が一堂に会する総会ではまた、救急救命士養成所の同窓生あるいは同じ情熱や同じ悩みを持った仲間が集まり、議論をたたかわす絶好の機会でもある。3日間の会期中、夜の横浜では、そうした熱く語り合う人々の熱気で溢れていたに違いない。来年の東京での学会では、ぜひこの熱気を昼間の討議にも生かしてほしい。