この原稿は救急医療ジャーナル'99第7巻第4号(通巻第38号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

救急救命士や救急隊員の 教育・研修施設として、 救急サポートセンターを開設

仙台市消防局  仙台市消防局では、さる6月1日よ り、救急救命士や救急隊員等の教育・ 研修、ならびに市民に対する各種救命 講習を行うための施設として、救急サ ポートセンターの運用を開始した。市 交通局庁舎の4階と7階を借り受けて 設置したもので、図書室などの一部の スぺースを開放し、救急救命士や救急 隊員の自主的な学習を支援する拠点施 設としても活用していく方針である。

 同センターは延べ床面積260m2 で、講義室、救急関係図書室・自己学 習室、訓練用教材室、実習室、市民指 導スぺースなど7室より成る。同消防 局救急救助課救急救助係の佐藤敏夫さ んは、センター開設の経緯について、 「救急救命士の知識や技術を維持する ためには、体系づけられた生涯教育を 継続的に実施する体制の整備や、個人 の自主的な学習をサポートする環境づ くりが必要です。しかし、当消防 局が従来行っていた救急救命士の 再教育は、資格取得後3年を経過 した者に対し、2週間から1か月 間に渡って行う病院内研修のみで あり、その内容は十分とはいえま せんでした。

 このため、数年前から、病院内 実習に加えて、医師による講義や シミュレーション実習などを行う 継続的な再教育システムの構築を 検討してきましたが、その中で、 効率的な教育を行うには、研修専 用の施設や、救急救命士や救急隊 員が自由に訪れ、自主的に学習に 利用することができるようなスぺ ースを確保すること が不可欠であるとし て、救急サポートセ ンターを開設するこ とになったのです」  と語る。

同センタ ーの主な業務内容 は、救急救命士生涯 教育プログラムの実 施、市民に対する各 種救命講習会の実 施、患者等搬送事業 乗務員講習会の実 施、救急隊員等の自 己学習の支援だが、 このうち救急救命士 生涯教育プログラム については、研修施設としての同セン ターの機能をフルに生かした内容にな っている。

 救急救命士生涯教育プログラムは、 同消防局が昨年より取り組んでいるも ので、すべての救急救命士に毎年、医 師による講義やシミュレーション実 習、病院内実習などの再教育を、平常 勤務から切り離した形で受けさせる研 修体制である。今年度は同センターが オープンすることから、講義やシミュ レーション実習の部分を継続教育とし て位置づけ、講義室と実習室を利用し て、集中研修を行うことになっている。  救急救命士が継続教育を受けるの は、年に1回。1回の研修期間は5日 間で、1日に8時間、講義を受けると 同時に実習を行う。内容は、1〜3日 目に、講義や症例検討、拡大9項目や 特定行為の手技の実習などを通して、 知識や技術を身につけた後、4〜5日 目に、出動から傷病者の医師引き継ぎ までの総合シミュレーショントレーニ ングを実施する構成になっている。

 講師として指導に当たるのは、救急 技術指導員と呼ばれる救急救命士と、 東北大学医学部を始めとする10医療機 関の医師だが、とくに医師との間では "顔の見える関係"を築くことができ るように、参加する救急救命士の数は 1回につき10人程度の少人数制となっ ている。

 現在、同消防局に所属する86人の救 急救命士がすべて受講できるように、 継続教育は年間で8回行われる予定だ が、第1回目は6月14〜18日、2回目 は21〜25日に実施されたとのことであ る。研修を受けた救急救命士からは、 「少人数なので、講師の先生に気軽に 質問することができる」などの感想が 寄せられているほか、同センターにつ いても、1つの施設で集中的に受講す ることができ、便利で使いやすいと好 評を得ているという。

 一方、救急救命士や救急隊員の自主 的な学習をサポートするための救急関 係図書室・自己学習室は、月曜から金 曜の9〜17時、同消防局の職員に対し て開放されている。救急に関する書籍 500冊やビデオのほか、心電図モニ ター、気道確保や静脈路確保のための 訓練用資器材が備えられているため、 特定行為などの手技の練習をすること も可能である。

 また、講義室についても、継続教育 等の予定が入っていなければ、個人や 団体で申し込み、利用することが可能 で、同消防局の救急救命士により運営 されている仙台市救急救命士会でも、 利用を検討しているという。

 スタートしたばかりであるため、個 人的な学習や救急救命士会の活動にど のように利用していくかは、今後の課 題だが、佐藤さんは、 「救急救命士だけでなく、これから救 急救命士を目指す救急隊員にも、積極 的に利用してほしいと考えています。 多くの隊員が気軽に立ち寄って情報交 換のできる”広場”のような場所にな るよう、今後の利用状況を見ながら、 救急隊員が使いやすい環境を整えてい くつもりです」 と話している。


サッカーは安全か?

−プロ遠手のけがの発生率について調査  サッカーはアメリカンフットボール よりも安全だ、と考えてはいないだろ うか?

 「British Journal of Sports Medicine」 に発表された論文によると、プロ 選手の場合、どうもそうとはいえない ようだ。

 「New York Times」では、ルーボロ ー大学の危機管理センターにおいて、 アメリカの国内外で行われた171試 合をビデオで検証した結果、プロのサ ッカー選手のおよそ3分の1が、1シ ーズンに少なくとも1度はけがをして いることがわかった、と報じた。この 研究のデイレクターであるコリン・フ ューラー博士は、
「このけがの頻度は、企業内で起こる けがの約1000倍です。すべての従 業員が、3週間に1度、労災にあって いる計算になります。これは、容認で きる話ではないでしょう」

 と、同紙上で述べている。 サッカーの試合や生徒の教育にかか わるEMS組織は、この統計を認識し、 サッカーの試合の際には、防具を使用 することや救急セットを準備しておく ことを奨励すべきである。
(「EMS INSIDER」1999年2月号より、訳/林 香代子)


州内の救急医療サービス機関を コンピュータで接続

−アメリカ・モンタナ州  モンタナ州EMS局はTENKIDSと 呼ばれるプログラムによって、州内の 救急医療サービス機関120のうち、 103の機関とコンピュータ上でつな がった。大多数の機関では、このシス テムに接続するために、パソコンを購 入した。

 モンタナ州保健システム局長のドリ ユー・ドーソン氏によれば、
 「TENKIDSのシステムは、モンタナ州 立大学のバーンズテレコミュニケーション ・センターを通してつながって います。救急医療サービス機関は電子 掲示板によって、互いに直接連絡を取 り合ったり、州EMS局と通信したり することができます」
 とのことである。州EMS局は現在、 大半がボランティアによって運営され ているこれらの機関に対して、映像の CD−ROMを使い、継続的なEMS 教育を行っている。

 「このシステムを利用すれば、すべ ての機関に、いっせいに情報を流すこ とができるので、各機関では、モンタ ナ州でいま何が起きているかが、即座 にわかるようになりました」 と語るのは、モンタナ州ポーズマン のCIT(Critical Illness and Trauma) 基金最高経営責任者であるネ ルズ・サンダール氏。同基金は、TENKIDS プロジェクトの管理をサポート している。

TENKIDSは、国立EMS児童プログ ラムと連邦地方衛生局からの助成金で 運用されている。国立医学図書館から の助成金は、1997年に、すべての 救急医療サービス機関が、インターネ ットにアクセスできるような環境を整 えるために使われた。この助成金はも う交付されていないが、ほとんどの機 関では、いまでもインターネットを便 っている。

TENKIDSについては、壮大な計画が ある。州EMS局とCITが、全州で 電子化されたデータを収集するプログ ラムを開発中で、しかもそのプログラ ムは、どの機関でも同じように働き、 州規模でのデータ収集の質を向上させ るようなものになる予定なのだ。

 サンタール氏は、 「メモリを増やし、処理スピードをア ップするだけでなく、それぞれのデス クトップコンピュータにビデオカメラ を取り付けて、ビデオ会議ができるよ うにするつもりです」

 と話す。こうしたアップグレードの 資金には、商務省からの助成金が充て られている。また、ドーソン氏は、

 「将来的には、データ入力を端末から 無線で行うことができるようにしたい と思っています。われわれにとって役 立つデータは、そのうちの一部かもし れませんが・・・。また、病院のシステ ムともリンクできるようにしたいと考 えています。そうなれば、研究の可能 性はさらに広がるでしょう」 とも語っている。
「(EMS INSIDER 1999年5日号より、 訳/林 香代子)


富士山の登下山道に 携帯電話の通話エリアを拡大

−NTTドコモ  NTTドコモ(NTT移動通信網(株) は、登山シーズンを前に、富士山の登 下山道に携帯電話の通話エリアを拡 大、サービスを開始した。山小屋付近 のみではあるが、山頂での通話も可能 で、登山愛好家の注目を集めている。

 富士山については従来から、山梨県 側の登山口のある5合目付近は通話エ リア内であったが、6合目より上では、 ほとんど通話することができなかっ た。そこで同社では、登山者のニ−ズ や地元の要望にこたえるために、今年 の7月1日の山開きに合わせて基地局 を設置、新たにサービスを開始した。

携帯電話による通話が可能になった のは、5合目の富士吉田登山口から山 頂までの登下山道と、同登山口からス バルラインに向かう周辺一帯。南都留 郡鳴沢村の基地局から富士山に向けて 電波を発信できるようにしたほか、富 士吉田市内に基地局を新設、二つの基 地局でこれらのエリアをカバーする。

 さらに7月中旬には、山頂付近の通 話状態を安定化させるため、山頂の山 小屋付近にも簡易型の基地局を設置し た。この基地局は、降雪、低温の影響 を避けるため、シーズンが終われば撤 去し、平地に下ろすとのことである。

 山岳地帯に基地局を設置するには、 コストや地形的な条件の確保などさま ざまな問題があるが、今回のサービス では、富士山に基地局を設置するので はなく、平地の基地局から山頂、つま り上方に向けて電波を発信し、通話エ リアをカバーしている。これは、混信 を避けるために、水平あるいはやや下 方に電波を飛ばすように作られる、従 来の平地をサービスエリアとする基地 局からすれば、まったく逆の新しい考 え方であるという。

富士山のような地域では、電波を上 方に飛ばしても混信の影響は少ないた め、このような方法でサービスを提供 することができるのだが、この発想の 転換が多くの困難を解決し、日本一の 高さを誇る富士山頂での携帯電話によ る通話を可能にしたのである。

さる5月には、滑落した男性が携帯 電話で救助を要請、早期発見につなが ったという事例もあり、山梨県山岳遭 難救助対策協議会等の山岳救助にかか わる団体では、今後は、携帯電話が遭 難者からの緊急時の通報などに役立つ のではないかと、大きな期待を寄せて いる。

富士山の場合、富士吉田口の登下山 道の5合目から頂上付近がサービスエ リアとなっており、エリア内では大き な起伏や深い谷間が少なく、ほぼ全域 で通話が確保されている。しかし、道 に迷うなどしてエリア外に出てしまう と、携帯電話を使うことはできなくな る。このため、同社では「通話エリア を十分に把握した上で、登山者の連絡 や救助・警備活動等に役立ててほしい」 と話している。また、他の山岳地につ いても、すべてがサービスエリアにな っている訳ではないので、エリアを十 分に把握する必要があるだろう。

中高年の登山ブームで、わが国の山 岳遭難事故は増加の一途をたどつてい る。警察庁の発表によれば、昨年一年 間の事故件数は、統計を取り始めた1 961年以来初めて1000件を超 え、1077件に上ったという。この ような現状に対処するために、各地で 山岳救助体制の充実が図られている が、今後はさらに、緊急時の通信手段 として、携帯電話や小型化の進む衛星 携帯電話が有効に利用されることが望 まれる。


応急手当普及啓発用ビデオが 日本産業映画・ビデオコンクールで 奨励賞を受賞

(財)東京救急協会か製作  (財)東京救急協会が製作した応急手当 普及啓発用ビデオ「ファーストエイド にチャレンジ2」が、第37回日本産業 映画・ビデオコンクールで奨励賞を受 賞した。昨年に続き、2度目の受賞で ある。

 日本産業映画・ビデオコンクールは、 (社)日本産業映画協議会が、文部省、通 商産業省などの後援の下、産業映画の 質の向上や産業の振興、視聴覚教育の 普及などを目的に開催しているもの で、毎年、企業紹介部門、学術研究部 門、観光部門など8部門で作品が募集 される。同協会では、平成9年度と10 年度に製作した応急手当普及啓発用ビ デオを、昨年と今年の2度に渡って教 育訓練部門に応募し、2年連続で奨励 賞を受賞した。

 同協会でビデオ製作を担当する指導 課長の塚田勝夫さんは、今回の受賞に ついて、

「応急手当の一連の手技を説明するビ デオは、従来から数多く作られていま すが、指導員がやり方を説明するだけ の内容では、CPR等の知識をまった く持たない一般の人々に興味を持って 見てもらうのは、難しいのではないか と思います。

そこで私どもでは、普段遭遇するこ との多い救急事例を基にしたミニドラ マを作り、ビデオを見た人がそのスト ーリーを通して、緊急事態はいつ、ど こで、誰の身に起こるかわからないが、 応急手当の知識や技術を修得していれ ば、的確に対応することは可能である、 という意識を持つことができるような 構成にしました。コンクールでは、そ の点が評価されたのではないかと思っ ています」

と語る。

2本のビデオは一つのシリーズで、 一作目が、主にCPRについての「フ ァーストエイドにチャレンジ 一 命を 救う心肺蘇生法・止血法」、2作目が、 異物除去事例を基に異物除去法からC PRまでを解説した「ファーストエイ ドにチャレンジ2 一気道確保・異物 除去、心肺蘇生法」となっている(い ずれも約20分)。

いずれのビデオにも、案内役として、 元マラソンランナーで現在はスポーツ キャスターとして活躍している増田明 美さんが登場、緊急事態を想定したミ ニドラマや、増田さん自身が講習を受 ける様子、パイスタンデーによる応急 手当成功事例の紹介などを通して、救 急要請の現状や応急手当の重要性、方 法を説明していく。

 「細かい手技の説明に多くの時間を 割くよりも、ビデオを見た人に、『講 習会に参加しよう』という気持ちを持 ってもらえるよう、むしろ応急手当の 重要性を訴えることに重点を置きまし た」と塚田さんが話す通り、ビデオは、 実際に救急現場に遭遇し、CPRを実 施して救命に成功した人が、「応急手 当を習っておいて本当によかった」と 語る場面などを盛り込むことで、応急 手当を学ぶことの大切さを強く訴え掛 ける内容になっている。

同協会では平成7年度より、一年に 1本のペースでビデオ製作に取り組ん でおり、受賞作品のほかにも、主に中 学生を対象に、アニメーションを取り 入れて応急手当を説明した「Mr.ファー ストエイド−心肺蘇生法」、「Mr.フ ァーストエイド2−外傷の手当」を 作っている(いずれも約20分)。

 「ファーストエイドにチャレンジ」 シリーズは都内の全高校に、「Mr.ファ ーストエイド」シリーズは全中学校に 配布されており、CPRの普及活動の 有力なツールとなっている。塚田さん は、今後の展開について、
「これまでにも、当協会の講習の際な どにビデオを紹介してきましたが、今 回の受賞を機に、より多くの人に見て いただけるよう、普及活動にも力 を入れていきたいと思っていま す」
と話している。なお、ビデオ は1巻7千円(税別)で市販さ れている。購入の問い合わせは、 日本メデイコ葛~急医療機器部まで (TEL 03-3816-3365)。


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