この原稿は救急医療ジャーナル'99第7巻第3号(通巻第37号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

長野オリンピックの医療救護資料集を刊行

 日本救急医学会東海地方会は、会誌 の別冊として、昨年2月に開催された 長野オリンピックの医療救護体制に関 する報告書やマニュアル類をまとめ、 『第18回長野オリンピック冬季競技大 会医療救護資料集』を刊行した。

 同地方会の会長で、長野冬季五輪組 織委員会の医療救護ディレクターを務 めた信州大学医学部附属病院救急部・ 奥寺敬助教授は、資料集を作った理由 について、

 「オリンピックの医療体制に関する資 料は、ほとんど残っていないのが現状 で、医療体制をつくるに当たって参考 になる資料が少なく、われわれも、計 画作成に多大な時間を費やしてしまい ました。このため、長野五輪の医療体 制についての記録をまとめ、公開する 必要があると考えたのです」

 と話す。実際、長野オリンピックの 医療体制づくりは、アトランタオリン ピックの際のぽう大な文書やマニュア ルを整理し、日本語に訳すことから始 めなければならなかったという。

 資料集はA4判、本文197ぺージ。 内容は、準備状況から大会中の活動内 容までをまとめた『IOC(国際オリ ンピック委員会)医事委員会報告書 (案)』、医療救護施設やスタッフの配 置、搬送体制、食中毒や伝染病への対 応策を定めた『医療衛生実施計画』、 医療救護施設等での具体的な処置の手 順を示す『医療救護マニュアル』など のほか、医療関係の申請書の見本も掲 載されている。

 すでに、次回のソルトレークシティ ーオリンピックの組織委員会でも活用 されているとのことで、奥寺助教授は、

 「2002年のサッカーのワールド カップや、2005年の愛知万博な どの国際的なイベントはむろんのこ と、国体などのさまざまなイベント における医療体制 づくりのお役に立 てばと思っています」 と話している。

 同地方会会員外でも関心のある人には 送料込みの実費2千500円で頒布している。 問い合わせは、信州大学医学部付属病院救急部 (電話0263-37-3018

 FAX 0263-37-3028)まで。


釧路市内の企業・団体による ボランティア組織「釧路市 救命推進協議会」が活躍

北海道釧路市では、市内 の企業・団体によるボラン ティア組織「釧路市救命推 進協議会」が、普通救命講 習などの応急手当普及啓発 活動を積極的に展開、地域 の話題を集めている。

 同協議会は、昨年1月30 日、民間主導型の組織をつ くり、地域の応急手当普及 啓発活動に寄与したいとの 思いを持った市内の28事業 所によって設立された。同 協議会の秋山敏さんは、そ の経緯について、

「当協議会の前身は、1995年に市 内の19事業所によって組織された「応 急手当推進懇話会」です。懇話会では、 地震に強い街づくりをするために、防 災訓練や普通救命講習への参加を推進 していましたが、普通救命講習の受講 者が1000人を突破したことを契機 に、地域の救命率の向上を目的とした 当協議会を新たに発足させました」 と話す。

 同協議会は、自分たちの手で救命講 習を開催することと、そのために応急 手当普及員を養成することを活動の大 きな柱としており、昨年9月、釧路市 消防本部の協力の下、応急手当普及員 養成講習を実施して、14人の応急手当 普及員を養成した。秋山さんはこの点 について、

 「従来は、普通救命講習を開催する際、 受講者10人に対して救急隊員一人が講 師として指導に当たる必要があったた め、受講希望者と消防との間のスケジ ュール調整などに苦慮することがよく ありました。

 しかし、応急手当普及員が誕生した 現在では、救急隊員一人をオブザーバ ーとして派遣してもらうだけで講習を 開催できるため、受講希望者のニーズ にきめ細かく対応することが可能にな りました」

 と語る。昨年一年間で、普通救命講 習を15回開催、延ベ319人が受講し ている。

 さらに、昨年の9月8日には、消防 と同協議会、自動車団体が合同で大規 模な防災訓練を実施した。4階建ての ビルを舞台に、避難・誘導はもちろん、 消火・救出までを行う本格的な訓練で、 より実践的な内容にするために、会員 が「足を骨折した」という設定の要救 助者役も務めた。参加者からは、「予 想以上に要救助者が重かった」「要救 助者と自分の身の安全を図りながら救 出するのは、精神的にも大変なことだ と実感した」などの声が聞かれたとい う。

 会員数はすでに68事業所に上るが、 今年中に100事業所に増やすことを 目標に、PR活動にも力を注いでおり、 今後は、事業所だけでなく個人も入会 可能な組織にする計画もあるとのこ と。平田隆一会長は、 「人を助けられるのは、人以外の何者 でもありません。これからも当協議会 の活動を通して、人と人とのつながり や、人を思いやる気持ちを育て、安全 で暮らしやすい街づくりに貢献してい きたいと思います」  と話している。


アメリカ・デラウェア州、AED使用に関する指針を変更

 デラウェア州の医療委員会は、自動 除細動器(AED) の使用に関する指 針の変更を承認した。州全体にAED を普及させるために、AED使用の資 格と規制を緩和したのである。

 新しい指針で規制されているのは、 装置が、除細動に関する州のプロトコ ルに合うようにプログラムできるこ と、また使用記録を印刷できることで ある。使用者については、18歳以上で あることと、CPRを実施する資格を 持っていることが条件とされている が、救急車の乗務員であることは問わ れていない。

 また、救急車を持たない組織にもA EDを使うことを許可しているが、こ れは、組織的な対応が可能なより多く の機関や施設でAEDを導入し、かつ AEDを扱う資格のある人を配置する ことができるようにするためである。 (「EMS INSIDER」1999年1月号より、訳/林香代子)


消防用ホースに空気を入れて、大型の浮輪を作り、水難救助に活用

平塚市消防本部  平塚市消防本部では、消防用ホース を環状につないで、空気を入れる器具 「ジョイント型カップリング」を開発、 大型の浮輪を作って水難救助に活用し ている。

 平塚市には一級河川の相模川が流れ ているが、ここ十数年、年間雨量が少 なく川の水量が減ったために、レジャ ーボートや漁船の転覆事故が年に数回 起こっている。平塚市消防署海岸出張 所水難救助隊員の磯部正明さんは、消 防用ホースを活用して大型の浮輪を考 案した経緯について、 「1990年、相模川にキャンプに来 ていた大学生5人が溺れ、うち3人が 死亡するという残念な事故が起きまし た。その頃から、一度にたくさんの水 難者を救助できる資器材を作れないも のかと考えるようになり、94年には、 市の補助を得て、資器材の開発等に取 り組む自主研究グループ「歩愛野盟徒 (ファイヤーメイト)』を結成しまし た。

 消防用ホースに空気を入れて活用す る試みは、これまでにも研究されてき たことですが、ファイヤーメイトの活 動や、他の消防の方々との情報交換か ら、ホースをつないで環状にするとい うアイデアが生まれてきたのです」

 と語る。

 消防用ホースに空気を入れて環状に するためには、ホースの両端を連結し、 空気を注入、封鎖する器具が必要だが、 そのための器具として開発されたの が、「ジョイント型カップリング」。 消防用ホースの雌雄のキャップをそれ ぞれ適切な長さに切断して、背中合わ せに溶接し、空気注入用のバルブを取 り付けたものである。

 「とくに工夫を重ねたのは、バルブ の部分です。開発当初は車両タイヤ用 のバルブを再利用したため、口径が狭 く、空気を注入するのに時間がかかる のが難点でした。そこで、市販のエア ーツール用のカプラーを使うことによ って口径を広げ、空気の注入時間を短 縮しました」

 ジョイント型カップリングを使え ば、消防用ホースを何本でも接続する ことができるため、通常消防車に積載 されている20本のホースをすペて連結 させることも可能である。最大で円周 400mの巨大な浮輪を作ることがで き、大型客船転覆のような大 規模な水難事故にも対応でき るという。

 同消防本部では、ジョイン ト型カップリングだけでな く、消防用ホースに空気を入 れて直状に使用する際に用い る器具も作っており、これら の器具を「レスキユーエアー カップリング」と名付けてい る。

 消防用ホースに、レスキユ ーエアーカップリングを用い ることで、河川や海、雪上で 傷病者を安全に搬送する簡易 エアー担架や、災害時の簡易 テントの支柱などを作ること ができるし、油吸着材をホー スに巻き付ければ、石油流出 事故の際に、オイルフェンスとして利 用することもできる。

 同消防本部では、すでにレスキュー エアーカップリングを消防車に積載 し、いつでも利用できる体制を整えて いるが、今後も、消防用ホースの活用 法、とくに水難救助用賛器材としての 利用方法を積極的に開発していきたい としている。磯部さんは、

 「当消防本部では、水難救助体制を強 化するために、今年4月1日から水難 救助隊を発足、1隊5人、3部構成で 運用を開始しました。これを契機に、 レスキューエアーカップリングと消防 用ホースを利用した新しい水難救助用 資器材の開発に取り組みたいと考えて います。

 具体的には、通常のホースよりも太 いホースを使って、水上で多数の要救 助者を搬送することができるようない かだ式担架など、大型の水難救助用資 器材を考案していくつもりです」  と話している。


子どもの異物誤嚥事故は、 週末に起きやすい

−東京女子医科大学附属第二病院小児科で調査  子どもがボタンやあめ玉、タパコな どを口にし、誤って飲み込んでしまう 異物誤嚥事故は、生命にかかわる危険 な事態につながることもある。このよ うな事故の最大の予防策は、子どもの 手の届く範囲に飲み込む危険のあるも のを置かないなど、保護者が安全な生 活環境を整えることだが、子どもの異 物誤嚥事故は、保護者が子どもと一緒 に過ごす時間が長いと思われる週末に 起きやすいという意外な調査結果が明 らかになった。

 調査を行ったのは、東京女子医科大 学附属第二病院小児科の宮川真紀医師 ら。同病院では、一般外来のほか、夜 間と休日には一〜三次救急を行ってい るが、小児科外来および救急外来を受 診した異物誤嚥患児は、1996年4 月〜98年3月の2年間で218例(年 齢0〜6歳)と非常に多く、小児救急 患者全体の2〜3%を占めるという。

 宮川医師らは、これらの218例の 発生頻度について、曜日別、時刻別、 月別に調査・分析した。

 まず、曜日別に見ると、事故の発生 は金曜日〜日曜日の週末が多く見ら れ、祭日も合わせると129例で、全 体の59%であった。とくに日曜日が54 例ともっとも多く、25%を占めている。 週末は家族が家にいて、子どもと−緒 に過ごすことが多く、目も届きやすい ため、事故は起こりにくいのではない かと考えられるが、宮川医師はこの点 について、 「家族が一緒にいてくつろぐ時間が長 い休日は、平日よりも、親の子どもへ の注意力が、かえって低下するのでは ないかと考えられます」

 と分析している。

 また、発生時刻別に見ると、16〜22 時の夕食前後の時間帯が131例と全 体の60%を占め、17時55分にピークが 認められた。続いて7時と14時が多く、 それぞれ11例、12例となっている。

 7時頃や18時頃に事故が起こりやす いのは、保護者が朝の支度や夕食の準 備で慌ただしくしており、子どもへの 注意が行き届かないためとも考えられ るが、宮川医師は、14時や21〜22時に 事故が多い点については、こうした時 間帯には、保護者が休息状態にあり、 子どもへの注意力が低下するためでは ないかと分析している。

 さらに、月別の調査では、4〜6月 が70例(32%)、9〜11月が61例(28 %)と穏やかな季節に事故が多いこと がわかっており、宮川医師はこれらの 結果を踏まえた上で、 「誤嚥事故は、気候も穏やかで、家族 全員がリラックスしているときに、親 の子どもへの注意力が低下するために 発生しやすくなると思われます。事故 発生のメカニズムは、子どもを取り巻 く生活環境だけでなく、子どもや保護 者の生体リズムとの関連も深いと考え られます。

 誤嚥事故を予防するには、子どもが 安全に過ごすことができるように、保 護者が工夫して危険の少ない環境を整 えることも大切ですが、保護者が自分 白身のライフスタイルや心理・生理的 状態に注目して、注意力が低下しやす い時間帯などを把捉しておくことがで きれば、事故予防の助けになるはずで す」

 と話している。

 各地域の保健所や病院などで事故防 止のための指導を行う際にも、注意力 が低下して事故が起こりやすい時間帯 や季節などがあることを具体的に示す ことで、保護者の注意を促すことがで きれば、事故防止につながるものと考 えられる。


東京都の二次救急医療体制、 輪番制から固定制へ

約280の施設が365日・24時間体制で救急患者を受け入れ  東京都は、輪番制であった二次救急 医療体制を全面的に見直し、さる4月 1日より、指定された施設が常にベッ ドを確保し、365日・24時間体制で 救急患者を受け入れる固定制をスター トさせた。

 大都市での固定制は、全国でも初め ての試みである。

 従来、東京都の二次救急医療体制は、 都立病院や民間病院など約400の救 急病院・診療所が365日・24時間体 制で救急患者を受け入れる基本対策に 加え、急患の多い休日および夜間には、 補完対策として、休日の昼間100、 土曜・休日の夜間52の施設が診療に当 たる輪番制の休日および夜間診療事業 を実施していた。

 しかし、平日夜間の診療が手薄であ る、輪番制は毎日当番が変わるため、 救急隊や都民にわかりにくいなどの問 題が指摘されていたため、都では、1997年 12月に救急医療体制の見直し を提言した厚生省の「救急医療体制基 本問題検討会報告書」を受ける形で、 二次救急医療体制の見直しを進めた結 果、固定制をスタートさせることにし た。

 4月1日現在、固定制で救急医療に 当たる施設の数は279。少なくとも 1日当たり1件、年間365件以上の 救急患者受け入れ実績があり、内科系、 外科系の両方を受け入れることのでき る救急病院・診療所を中心に、地域性 や立地条件を考慮し協力を依頼した結 果、最終的に279施設で対応する体 制が整った。

 固定制には、緊急時に診療を受け付 ける施設がどこであるかが、救急隊や 都民にわかりやすいというメリットが あるが、都では、これらの施設が常に 3床(施設によっては1〜2床) の救 急ベッドを確保し、必ず診療に当たる よう規定することで、休日・夜間を問 わず、迅速な対応が可能な二次救急医 療体制の実現を目指している。

 固定制による成果が実際にどのよう な形で現れるかを検証するのは、来年 度以降になるが、都では、「固定的に 決まった施設が、必ずベッドを確保し 診療する体制が整ったので、これまで 手薄であった平日夜間の診療体制が強 化され、救急隊が、空きベッドがない などの理由で患者の受け入れを断わら れ、搬送先選定に苦慮するようなケー スもなくなると思われます」(衛生局 医療計画部救急災害医療課)と話して いる。


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