この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第3号(通巻第31号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

災害時に安否確認ができる 災害用伝言ダイヤルの運用を開始

日本電信電話株式会社(NTT) 日本電信電話株式会社(NTT)は、さる3月31日から、震度6弱以上の地震や 火山噴火等の災害により、多くの電話が集中してかかりにくくなった場合に、被災者 が家族などに安否を伝えることができる「災害用伝言ダイヤル」の運用を始めた。

災害用伝言ダイヤルは、災害時に一般の加入電話や公衆電話、携帯電話、PHSな どの電話機を使って利用することができる。利用する場含は、まず「171」をダイ ヤルした後、音声ガイダンスに従って伝言の録音・再生を行う。伝言を録音するに は、「171」の後、「1」をダイヤルし、自宅などの電話番号を入力して伝言を録 音する。再生するときには、「171」の次に「2」をダイヤルし、運絡を取りたい 被災者の電話番号を入力すれば、録音されている伝言を聞くことができる。他人に伝 言を聞かれたくない場合は、事前に録音者と再生者の間で4桁の暗証番号を決めてお けば、暗証番号付きの伝言の録音・再生も可能である。

1回の伝言は30秒以内。一つの電話番号につき10件の伝言を録音できる。伝言 は2日間保存された後、自動的に消去される。伝言の録音、再生についての料金は無 料だが、発信地域から被災地までの通話料は有料である。

災害時には、被災地に向けた安否確認やお見舞い、問い含わせなどの電話が増加 し、電話がかかりにくくなる状態が起こる。1995年に発生した阪神・淡路大震災 では、全国から被災地に電話が殺到し、ピーク時には平常時の約50倍の通話量と なったため、障害が約5日間続いたという。

NTTサービス運営部災害対策室災害対策部長の橋本博明さんは、災害用伝言ダイ ヤルを開発した経緯について、「当社では、阪神・淡路大震災の後、災害時における 輻輳を避け、円滑に安否確認をすることができる通信手段の開発に取り組んできまし た。災害時には、被災地内と全国から被災地への電話回線は込み含いますが、被災地 から全国への発信回線、被災地外と全国間の電話回線には、比較的余裕があります。 そこで、災害用伝言ダイヤルでは、おおむね各都道府県に1ケ所ずつ、全国約50ケ 所に伝言蓄積装置を設置しました。

被災地内の電話番号の下3桁に応じて、あらかじ めどこの伝言蓄積装置に分散するかを決めておき、伝言を全国に分散することによっ て、輻輳を緩和することが可能になるのです」と話す。

たとえば東京で災害が発生し、「03(1234)5678」の電話番号の人が伝 言を録音する場含、仮に下3桁600から699の分散先が仙台の伝言蓄積装置であ るとすれば、回線は自動的に仙台の装置につながる。同様に、伝言の再生時にも仙台 にながる。このようにして伝言を全国に分散させ、混雑を回避する仕組みになつてい るのである。

NTTでは、震度6弱以上の地震などの大規模な災害が発生した場合、被害の状況 によつて伝言の登録・再生が可能なエリアを都道府県単位で決定し、システムを起動 させ、サービスを開始する。同時に、伝言蓄積容量は約800万件であることから、 エリア内の世帯数等によって電話番号一つ当たりの伝言登録可能数など、具体的な運 用体制を決める。

初動体制について、橋本さんは、「災害の規模だけでなく、発生した地域や時問に よって、混雑の状態は変わつてきます。そのため、当社では、さまざまな災害を想定 した上で具体的な運用計画を作り、災害に備えています」と語る。

サービスの提供開始にっいては、NTT窓口での掲示、当該番号にかけた場合に流 れる音声メッセージなどで案内される。また、提供開始後、直ちに報道機関、自治体 に周知放送が依頼され、ラジオやテレビ、防災無線などによっても、利用方法が告知 される。さらに、被災地内においては、避難所や特設公衆電話設置場所に操作方法を 説明したパンフレット等を配備することになっている。

サービスの提供開始当初は、被災者の安否確認のための利用を優先するため、被災 地外の人に対しては、再生のみの利用とする。被災地外からの伝言録音は、被災地内 の安否確認が一段落した時点でできるようになる。その後、輻輳状態の解消、あるい は避難所の臨時公衆電話等の撤去などに伴い、サービスを終了する。

実際に災害が発生した際に、災害用伝言ダイヤルを円滑に機能させるためには、平 時より普及活動を図り、利用者に情報伝逢手段として定着させておくことが重要であ る。そのため、NTTでは、請求音に同封する「ハローインフォメーション」や、6 月以降に発行する電話帳、インターネット、テレホンサービスなどを通じて、災害用 伝言ダイヤルの紹介を行っている。

また、各自治体、消防団、学校、報道機関等にも、防災活動を通して、普及活動に 協力してくれるよう呼び掛けている。橋本さんは、この点について、「当社では、さ る2月末に「忘れてイナイ?・災害伝言171」と題したビデオを作製し、全国の自 治体などに配布しました。12分間程度のドラマ形式で、災害用伝言ダイヤルの有効 性、利用方法などについて説明する内容になつていますので、防災週間などさまざま な機会に活用していただきたいと思います。

また、イベント等で実際に伝言ダイヤルを体験してもらうことも計画しており、消 防機関の訓練等で伝言ダイヤルを使用したいという場合は、できるだけ協力したいと 思っています。その際は、最寄りのNTTにお申し出いただければ、ご相談に応じま す」と話している。


サイレン音減衰技術で、救急車内を静かに

東京消防庁消防科学研究所・松下電器産業が共同開発 東京消防庁消防科学研究所は、松下電器産業と共同で、救急車内のサイレン音を滅 衰する技術を開発した。この技術を使えば、車外に向けて発するサイレン音を小さく せずに車内に伝わる音を減衰できるため、救急車内での救急活動をよりスムーズに行 うことができるようになるとのことである。

緊急走行中の救急車内では、電車内の騒音を上回る防デシベル前後のサイレン音が 聞こえるが、高レベルの騒音環境における作業では、判断力や思考力が低下したり、 疲労感が蓄積することが広く知られている。加えて、救急車内では、傷病者との会話 や聴診器の使用、指導医との無線交信などが不可欠で、サイレン音による騒音は救急 活動に支障を来すといわれている。

このため、同研究所では、3年前からサイレン音の滅衰に関する研究を進めてきた が、このたび、アクティブ騒音制御という技術を応用することによって、救急車内の サイレン音を通常の音声で会話が可能なレベルまで滅衰することに成功した。

同研究所では、新技術について、「サイレン音を減衰させるには、音の発生装置そ のものの構造を改良したり、遮音材料等を使用する方法がありますが、救急車のサイ レン音のスピーカーの場合、サイズなどの間題があり、現実的ではありませんでし た。そこで、アクティブ騒音制御方式を応用し、救急車に設置可能な小型のスピー カーを開発しました」と語る。

アクティブ騒音制御とは、滅衰したい音(ここではサイレン音)の波形と正反対の 波形の音(制御音)を電気的につくり出し、騒音を滅衰させたい空間でこつの音をぶ つけることによって、騒音レべルを下げる方法である。今回、救急車用に開発された 装置では、サイレン音用と制御音用のスピーカーが背中合わせに配置されており、そ の中央部でサイレン音と制御音がぶつかるよう設置されている。

研究は、救急車内で、通常の音声で会話が可能な65デシべルまでサイレン音を滅 衰することを目標に進められてきたが、すでに70デシべル程度まで滅衰することが できるようになつた。今後は、現行の救急車に容易に設置できるよう装置の小型化な どを図るという。この点について、同研究所では、「これまでは、屋根の上にスピー カーを取り付けているタイプの救急車を対象に研究を進めてきましたが、最近は、屋 根にスピーカーを埋め込むタイプの救急車の方が主流になつています。そのため、装 置の小型化と合わせて、埋め込みタイプの救急車にも取り付けることができるよう、 検討を重ねていきたいと考えています」と話している。


自動除動器の使用を推進する財団を設立

国際消防署長協会、国際警察署長協会 IAFC(国際消防署長協会)とIACP(国際警察署長協会)は、AED(自動 除細動器)の使用を拡大、推進する財団を設立することで合意した。両協会は100 年以上の歴史を持つが、共同で活動するのは初めてのことである。

IACP側のリーダーは、インディアン・クリーク警察署長のレオナルド・マタ レーズ氏。同署は、フロリダで初めてAEDをパトカーに搭載した警察署である。 IAFC側は、ケン・リドル氏がリーダーを務める。彼が消防署長を務めているラス べガスのカジノでは、一般市民による除細動が行われている。

「それぞれの組織でAED導入を進めるうちに、IAFCとIACPが支持するこ とによつて、AEDの信頼性が増すのではないかと感じるようになった」と、リドル 氏は語る。両協会の代表者は、咋年の夏、初めてこの活動について話し合い、その 後、それぞれの理事会に持ち込んで活動の承認を得た。現在、財団設立の活動は、事 務処理の最終段階に入っている。

マタレーズ氏によれば、財団はAED使用の訓練や教育を行い、警察や消防がAE Dプログラムをスタートするのを手助けする。さらに、ファーストレスポンダによる AEDの使用に関する研究を進める考えである。

リドル氏はまた、財団では、AED使用の国際的なガイドラインを規定したり、処 置時に問題が起こつた場合にAED使用者を保護するための州法制定を各州に働きか けていくと述ベている。これらの活動は、ファーストレスポンダだけでなく、一般市 民による除細動も広めていくという考えに基づくものである。

両協会は、財団の姿勢を支持してはいるものの、経済的な支援は行わない。そのた め、財団は代わりの資金源を探しており、AEDのメーカーや政府機関からの援助を 期待している。

「EMS INSIDER」I998年3月号より、訳/林香代子)


重篤な傷病者の救命率向上のために救急隊と消防隊がぺア出動

神戸市消防局 神戸市消防局では、さる4月1日から、重篤な傷病者に対する救急出動に際し、救 急隊と消防隊がぺアで出動する新体制をスタートさせた。これは、政令指定都市では 初めての試みである。

同消防局では現在、消防署11、出張所17の計28の救急隊により、年間約4万 6千821件(1997年中)の救急事案に対応している。今年度中にはすベての救 急車が高規格救急車となり、常に救急救命士1人が乗務するようになるが、これに伴 い、より効率的な救急活動を実現し、救命率の向上を図るため、支援隊として消防隊 を出動させる体制を整備することにしたものである。

救急現場では、人手が多ければ多いほど、より迅速に救急活動を行うことができる が、とくにCPAなど傷病者が重篤である場合には、多くの資器材が必要となり、実 施しなければならない救急処置も増える。

そこで、救急隊に加えて消防隊が出動し、資器材や傷病者の搬送などを手伝うこと によって、傷病者の安全を図り、より迅速に救急活動を実施できるようにすること が、新体制のねらいである。

さらに、消防隊員の支援があることによって、救急救命士および救急隊員が傷病者 の観察や救急処置に専念し、とくに特定行為などの高度な処置を的確に実施できるよ うになるという効果も期待されている。

同市消防局救急救助課の松山雅洋さんは、新体制の整備について、「これまでに も、現場の救急隊が消防隊に支援出動を要請し、消防隊が出動することはありました が、今回、重篤な傷病者の場合には、司令課が直ちにぺア出動を指令する体制を整備 しました。さらに、現場での両隊の連携を図るため、救急車内の資器材の配置を統一 したり、連携訓練を繰り返し実施したりしました」と語る。

ぺア出動の対象となるのは、呼吸や脈拍の停止が推測される傷病者。司令課では、 119番通報受信時に、通報者から「傷病者の呼吸や心臓が停止している」という情 報が得られるか、あるいは呼吸、脈拍が停止していると推測される場合、直ちにぺア 出動を指令する。

出動する消防隊員は4人で、主な支援内容は担架搬送、資器材搬送、応急処置の支 援、病院搬送時の安全管理となつている。具体的には、ストレッチャーの搬送(とく にエレベーターや階段の昇降がある場含などには効果が期待される)、資器材の搬送 や組み立て、人工呼吸や心臓マッサージなどの心肺蘇生法の補助などである。

さらに、救急隊より先に消防隊が現場に到着した場合には、CPRなどの一次救命 処置も実施する。このため、ぺア出動時に使用することになつているポンプ車および タンク車には、バッグマスクなどの一次救命処置に必要な資器材を積載した。

新体制の導入に先立ち、同消防局では、昨年12月1日から今年1月31日までの 2か月間、試行運用を行つた。その結果、昨年1から11月の平均が6.5%であつた 蘇生率(1か月生存)は8.9%へ、同じく10.8%であつた病院到着時の循環機能回 復率は13.0%へ向上したとのことである。

新体制を効率的に運用するには、119番通報受信時に、傷病者の意識状態や呼吸 ・脈拍の有無をできる限り正確に把握しなければならない。このため、同消防局で は、「重体の場含は、救急隊のほか、消防隊も支援出動します。119番通報のとき は、傷病者の意識状態、呼吸・脈拍の有無をみて下さい」という内容の広報活動を展 開し、市民に通報時の情報の重要性を訴えていく方針である。


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