この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第2号(通巻第30号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

ピル解体現場で救助訓練を実施

東京消防庁立川消防署・第八消防方面消防救助機動部隊 東京都立川市の東京消防庁立川消防署と第八消防方面消 防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)は、さる1月、 立川ビルディング(旧高島屋)の解体工事現場で、大地震 を想定した救助訓練を実施した。期間は、1月12日〜23 日の土・日・祝日を除く9日間。延べ約500人の隊員が参加し 、主に建物を破壊して救助隊の進入路を確保する訓練が繰り 返された。

旧高島屋は地上8階地下1階、延ベ床面積2万9千900平方メ ートルの大規模耐火建物だったが、解体工事が進むのを見 た署員から「実際の建物を使って訓練ができれば・・・・」 との提案があり、ビル所有者の不動産全社と解体業を請け 負う建設会社の協力を得て実現した。

訓練実現までの経緯について、同署警防課消防係長の田 辺孝視さんは、「訓練場では、いつも同じ構造物を使って 訓練するため、どうしても"慣れ"が生じます。この"慣 れ"を克服し、より項実的な対応を可能にするには、日頃 から、いろいろなタイプの建物で訓練をしておくことが大 切です。

そこで、私どもでは、近隣で訓練に適した建物の解体工 事があると耳にした場合は、関係者に協力をお願いして、 これまでにも、都営住宅やアパート等の解体現場で消火訓 練や救助訓練を実施してきました。

今回は解体工事が始まってからの依頼になりましたが、 不動産会社や建設会社等の方々に迅速に対応していただき 大規模な訓練が実現しました」と話す。

また、旧高島屋は大規模耐火建物であり、火薬や重機を 使用した訓練が可能であることから、ハイパーレスキュー と合同で訓練を行うことになった。

ハイパーレスキユーは、1996年12月に東京消防庁が配 備した部隊で震災等の大規模災害、特殊災害に対応するため 、特殊な技術・能力を持つ隊員により編成されている。装備 についても、大型重機、遠距離大量送水装備(スーパーポン バー)、特殊救急車、人命探査装置等の特殊な消火・救助・ 救命用資器材を有している。今回は、これらの資器材の、う ち、各種破壊資器材と重機を使用し、救助隊の進入路を確保 する訓練が中心に行われた。

床や壁、シャッターの破壊には、コンクリート破砕器、削 岩機、ファイアーランス、エンジンカッター等の資器材が使 用されたが、現場でもっとも困難だったのは、コンクリー卜 破砕器を使用した壁の破壊であったという。

ハイパーレスキュー隊長の上條武夫さんは、訓練の様子に ついて、「壁が薄いため、コンクリート破砕器をしっかり壁 内に埋め込むことが難しく、爆破しても進入路を確保する大 きさの穴をなかなかあけることができず、苦労しました。そ のほかにも予想通りにいかないことが多々あり、試行錯娯の 連続でした。

と話す。

重機については、パワーンョベルやブルドーザーなど延べ 約10台の車両が使用された。最後の3日間には、重機オペ レーター等の工事関係者による解体要領の指導も行われ、隊 員はスぺシャリストのアドバイスに熱心に耳を傾けていたと いう。田辺さんは、「参加した隊員からは、「資器材の使 い勝手がよくわかった」という声が聞かれました。訓練場と はまったく違う実際の建物を使った訓練で、賛器材の性能を 十分に把握することができたようです」

と話す。

上條さんは、訓練の成果について、「現場でもっとも重要 なことは「相手を知る」、つまり建物をよく知った上で効果 的な対策を立てることです。

訓練場では、最初から相手を知り尽くしてしまっています から、救助活動によって予定通りの効果を上げることができ ます。しかし、災害時には、現場で対象になる建築物の様子 を探りながら、対策を立てなければなりません。

今回の訓練では、現場でいろいろな情報を得ながら建物の ことを知り、効果的な対策を立てて救助活動を進めなければ ならないことを学ぷことができました。今後も機会があれば 、関係者の方のこ協力をいただき、このような訓練を実施し ていきたいと思います」 と話している。


都内初、新生児搬送用ドクターカーを配備

東京都立八王子小児病院 東京都は、さる2月1日、都内で初めて、新生児搬送用ドクタ ーカーを都立八王子小児病院(八王子市)に配置し、運用を開 始した.

この新生児槻送用ドクターカーは、マイクロバスを改良した もので、保育器3台,患者監視装置2台、新生児用の人工呼吸器 1台,パルスオキシメータ2台が搭載されている。さらに、保 育器搬入用リフトや酸素ボンベなども装備されており、総費用 は約4千万円とのことである。

都では、昨年の10月から、NICU(新生児集中治療管理室) 等を備えた18の周産期医療施設によって、ハイリスクの新 生児や、母体・胎児などの生命に直接かかわる緊急性の高い 事例に対して、迅速かつ適切な医療を提供するための「周産 期医療対策事業」を実施しているが、そのうちの15施設が 23区内に集中しており、多摩地域には、都立八王子小児病 院、都立清瀬小児病院(清瀬市)、杏林大学医学部附属病院 (三鷹市)の3施設しかない。

都立八王子小児病院は、地域の医療機関で発生したハイリ スク新生児を自院へ搬送するだけでなく、他院への搬送も行 うなど、多摩地域における新生児救急の中心的な役割を果た してきた。

これまで、ハイリスク新生児を搬送する場合、都立八王子 小児病院では、救急車に保育器等の機器を積み込み、同院の 医師が同乗の上、搬送要請元の医療機関に迎えにいっていた が、機器の積み込みに時間がかかるほか、搬送途中での医療 管理が十分に行えないなどの課題があった。このため、都立 八王子小児病院に都内で初めての新生児搬送用ドクターカー を配置することとしたものである。

このドクターカーの導入により、搬送中にも迅速かつ適切 な治療・管理を行うことが可能となり、救命率の向上と障害 発生の予防が図られることとなった。

都の周産期医療体制の現状と新生児搬送用ドクターカーの 導入について、東京都衛生局病院事業部経営企画課で「東京 都内では、年間約10万人の新生児が誕生しますが、そのう ち約7千人が、多胎なとの原因により、体重が少ないなどの問 題を抱えています。出生数が減少しているのに対して、2千5 00g未満の低出生体重児や、仮死状態で出生したいわゆるハイ リスク新生児の割合は増加してきているのが現状です。

このようなハイリスク新生児の救急医療体制をさらに充実 させるため、今回、新生児専用のドクターカーを導入するこ とになりました。とくに、23区内に比べてNICUの少ない多 摩地域の都立八王子小児病院に配置することによって,「動 くNICU」として、適切な医療管理や搬送時間の短縮に大きく 寄与するものと考えています」

と語る.

都では、今後の新生児撒送用ドクターカーの導入について は、周産期医療の動向や都立八王子小児病院での実績などを 見た上で考えたいとしている。 新生児撒送用ドクターカーの配置によって、東京都の周産期 医療体制がさらに充実していくことを期待したい。


一般市民による除細動の効果に関する研究を実施

アメリカ心臓協会 AHA(アメリカ心臓協会)は、public access defibrillation 1 (PADI)一般市民による除細動に関する研究)への救急医療サービス 機関の積極的な参加を呼び掛けている。この大規模かつ将来的に有 望な臨床研究には10万ドルを充当する予定で、スボンサーとして レールダル社、ヒューレット・パッカード社のほか、数社が名乗り を上げている。

研究チーフのジョセフ・オルナート氏によると、PADIでは、 ファーストレスボンダとしてのトレーニングを受けた一般市 民が、心停止の傷病者に対して自動除細動器による処置を行 った場合、そうでない場合に比べて、傷病者が神経学的に障 害のない状態で退院できる可能性が高くなるかどうかを研究 する。また、一般市民による除細動を導入した場合の費用や 有効性、退院後3か月間の傷病者のQOLについても調査す る。

AED(自動除細動器)プロジエクトのAHAコーディネー ターでみるパット・ポウザー女史によれば、PADIには、約 30の救急医療サービス槻関や救急医療サービスと密接に かかわる組織の参加を得る予定で、これらの機関では、4 9歳以上の人が約250人いるビル、ショッピングモール,空 港等の各施設に、除細動を実施できる人をペアで5〜10組 配置し、調査を行う。 対象者は警備員、会社員、商店主、ボランティアの一般市民 などである。

すでにAEDに関する研究の対象となったことがある人、た とえば、パトカーに搭載されているAEDにより傷病者に救命 処置を行った経験があるというような人は、今回の研究対 象から外す。研究に参加する機関のチームリーダは医師で ある必要はなく、救急医療サービスの管理者やバラメディ ックでもよいとのことであり、この研究は5年間続けられる 予定である。
(「EMS INSIDER」1998年1月号より、 訳/林 香代子)


陸上自衛隊衛生学校救急救命士課程の学生がヘリコプターによる救助訓練を実施

さる1月、陸上自衛隊習志野演習場千葉県習志野市)にお いて、陸上自衛隊衛生学校(東京都世田谷区)救急救命士課 程の学生が、ヘリコプターによる傷病者の救出・搬送等を実 習する総合訓練を行った。同課程は救急救命士指定養成所と して、1994年4月、同衛生学校内に開講されたもので、毎年、 自衛隊病院准看護学院を修了した隊員25人が、救急救命士 として、また衛生科隊員として必要な知識や技術を学んでい る。

同課程におけるカリキュラムは、「衛生科一般」「災害派 遣」などの実践的な科目を含む独自の1年コースとなっており 、実習についても、病院実習や救急車同乗実習のほか、医官 ・看護官との合同訓練などが組み込まれている。 なかでも総合訓練は、一連の実習の「まとめ」として、199 5年より、毎年1月に実施されている。

総合訓練の主な内容は、ヘリコプターからのリぺリング卸 下(降下)、ならびに現場における救急処置およぴ傷病者の ホイスト懸吊(吊り上げ)だが、ほとんどの学生は実機での 訓練経験がない。

そのため、学生はまず、衝生学校内で一週間、資器材の取 り扱い、直斜面の降下、機内動作等の基礎的な動作を身につ ける訓練を積み、その後、習志野演習場において、1月27 日に訓練台での降下要領を、続く28日に実機からの降下要 領と吊り上げ要領を訓練した。

本番は、29日9時30分にスタート。 崖下に乗用車が転落し、傷病者一人が発生したという想定の 下、4人一組になり、指令を受けてから、ヘリで現場に向か い降下、傷病者を救出・収容して救護所に見立てたテント に搬入するまでの一連の要領を、繰り返し訓練した.今回の 訓練について、同課程の小森健史課程主任は、一人もけがを することなく、全員が降下するという総合訓練の第ーの目的 は達成することができました。また、吊り上げ要領において も、大きなミスは見られませんでした。校内で訓練を積んで いても、実機では想像以上の音と風があるため、パニックに 陥りがちなのですが、学生は皆、事前の訓練の成果を十分に 発揮したと思います」と話す。

午後には、訓練用人形に代わって、小森課程主任が傷病者 の役を務め、同様の訓練が実施された。

「処置・搬送についてはうまくいきましたが、学生が傷病 者である私に何も声を掛けずに行動するので、次に何をされ るのかがわからず、大変不安に感じました。

事前の訓練では、傷病者に処置等の説明をするよう指導し たのですが、本番では処置や搬送に一生懸命のあまり、傷病 者への心配りまでは気がまわらなかったようです。

実際の現場では搬送時間も長くなりますので、ヘリの轟音 の中では、たとえば紙に「これから病院へ向かいます」と書いてみせるなど、常に 傷病者を思いやり、不安を取り除くよう配慮しなければなりません 。今後は、接遇要領も訓練項目の-つとして、指導していく必要が あると考えています」

訓練を修了した学生からは、次のような感想が寄せられた。

「衛生料隊員として、また救急救命士として修得しておくべき知 識・技術の帽が広いことを感じた」

「今回の訓練は、「体験」程度のことかもしれないが、どのような 条件下でも全力を尽くして傷病者を救護する精神を学ぶことができ た」

学生は3月、同課程を卒業し、全国の衛生科部隊、普通科部隊、 航空科部隊等に配置される。国家試験に合格した後は、救急救命士 として現場で活躍することが期待されるが、自衛隊病院は中央病院 (東京都世田谷区)を除いて、隊員およびその家族以外の患者は受け 入れていないため、救急救命士として救急活動を行う場は限定され ているのが現状である。またいまのところ、救急車には特定行為に かかわる資器材が積載されていない。

自衛隊における救急救命士の役割について、小森課程主任は、「 現在、救急救命士は准看護士と同様の勤務をしていますが、今後の 展開については、特定行為にかかわる資器材を積載した新型救急車 の導入や、救急救命士と医官との連携システムの整備など、救急救 命士の資格を生かすことのできる勤務体制が検討されつつあります 。

また今後は、PKOや災害派遣活動、また離島からの緊急患者搬送 活動等において、救急現場の第ー線で救急活動に当たるなど、救急 救命士の活躍は広範囲に渡るようになるものと期待されています」
と話している。


聴覚障害者向け救命講習会を開催

群馬県・前橋市消防著西分署 昨年11月24日、前橋市消防署利根出張所(群馬県前橋市)で 、聴覚障害者を対象とした普通救命講習会が開催された。市内の手 話サークル「みつばの会」が中心になって開催したもので、参加者 は、聴覚障害者7人を含む25人。聴覚障害者を対象とした救命講 習会としては、群馬県内で初めての試みであった。

この救命講習会を開催することになったいきさつについて、西分 署の消防隊員で、「みつばの会」の会員でもある小針亨さんは、「 私は学生時代から手話の勉強をしているのですが、聴覚障害を持つ 知り合いから、個人的に応急手当の方法を教えてほしいと頼まれ、 救命講習会を開催したいと考えるようになりました。

その人は、以前勤めていた工場で同僚が倒れたとき、救急隊が 到着するまでの間、周りにいた人が適切な応急手当をすることが できず、その同僚を助けることができなかったという経験をして いたのです。そこで、「みつばの会」が中心となり、西分署の協 力を得て、手話通訳を付けた救命講習会を開くことにしました」

と話している。

この救命講習会では、一般の普通救命講習会と同様に、座学と 実技が行われた。西分署の救急隊員3人が、応急手当の重要性や 酸素の欠乏による人体への影響などについての講義と、心肺蘇生 法の実技を3時間に渡り実施した。実技は、呼吸の有無の確認や 協力者への呼び掛け、人工呼吸、心臓マッサージなどの一連の流 れを踏まえたもので、内容はすべて手話で同時通訳された。 「今回の救命講習会では、普段よりも図や表を多く使い、視覚的 に理解できるように工夫しました。また、参加者には、自分ー人 で応急手当をしようとするのではなく、身ぷり手ぷりを使って近 くにいる人の協力を求めるように指導してもらいました」(小針 さん)。

緊急を要するときの応急手当には、誰でも不安を覚えるもの。 聴覚障害を持つ人にとっては、さらに深刻な問題である。今回の 救命講習会を主催し、通訳も務めた「みつばの会」会長の窪谷栄 さんは、「これまでは聴覚障害者が応急手当を学ぷ機会がなかっ たため、参加者からは、「いざというときの対応の仕方がわかっ てよかった」「次回もぜひ参加したい」という感想があり、とて も好評でした。このような講習会はとても有意義なものですので 、今後も定期的に開催し、毎回違う内容について学ぶことができるようにした いと思います」
と話している。

昨年11月の救命講習会に参加できなかった人から、また開催し てほしいという要望があったため、さる3月7日には、火災予防のた めの講習会が開かれ、消火器の使い方などを学んだという。小針さ んは、聴覚障害者を対象にした救命講習会の開催は、救急隊員にと っても重要であるとして、「救急処置を受けたことのある聴覚障 害者から、「救急処置の前に十分な説明がなかったため、これか ら何をされるのか、どのような処置を受けるのかわからず、とて も怖かったしという話を聞いたことがありました。

仮に手話ができなくても、大きな動作と優しい表情で接するなど のちょっとした気配りが、聴覚膵害者を安心させることにつながり ます。聴覚障害者を交えて救命講習会を開くことによって,救急隊 員も聴覚障害を持つ傷病者への対応の仕方を学ぶことができると思 います」
と話している。

前橋市ではこのほか、1993年から、市内に住む約500人の聴覚障 害者を対象に、ファクスによる緊急通報システムを実施している。 救命講習会の開催と併せ、今後のさらなる取り組みに期待したい。


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