この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第1号(通巻第29号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

第2回米国災害予防・緊急時対応展示会/セミナー開催される

ミプロ国際展示場(東京・池袋) 昨年12月4日、5日の2日間に渡り、東京・池袋のミプロ国際展示場において、「第2回米国災害予防・緊急時対応展示会/セミナー」(主催:米国商務省、米国大使館商務部、米国連邦緊急事態管理庁)が、(財)製品輪入促進協金(ミプロ)の共催、通産省、郵政省、消防庁の後援により開催された。

日本では、とくにここ数年、阪神・淡路大震災や東京地下鉄サリン事件など、大規模な自然災害や事故が相次ぎ緊急かつ迅速な救出・救助活動や人道的な救援サービスなど危機管理への関心が高まっている。このような状況において、独自の緊急医療機器やサービスを開発、提供している米国企業が一堂に会して、最新の情報発信を行ったのが今回の展示会であった。

これは、同年2月に開催きれた第1回展示会に続くものであり、1年間に2回という開催実績は、この分野における日米両国の関心の高さを裏付けるものである。

師走の忙しい時期にもかかわらず、2日間の来場者数は約800人を数え、会場は両日とも熱気に包まれていた。

展示会には、災害予防および災害救助に関する米国企業47社が出展。緊急搬送用機器、緊急医療槻器、緊急対策管理・教育プログラム、緊急救助機器・衣服、緊急食料・飲料水キット、災害復旧用品 、地変計測器などの分野別に、最先端の技術や製品、教育プログラムなどが展示された.

また、同時に開催されたセミナーでは、米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)のケイ・C・ゴス局長(災害予防、訓練、演習担当)による基調講演「21世紀における災害予防」(4日)、「FEMA-災害への 敏速な対応」(5日)のほか、カリフォルニア州政府知事室緊急業務部火災救助支部副隊長・都市捜査救助コーディネーターのマーク・ギラドウィッチ氏による「災害時における指揮命令」等の講演が行 われた。

ゴス局長の講演は、FEMAの成り立ちから、組織のあり様、運営形態、平時あるいは非常時の活動等について、具体的な示唆に富むものであり、「防災社会の建設には地域祉会のすべてがかかわっており、長期的なプロジェクトとしての取り組みが欠かせないか、これには官民の密接な協力体制を構築することが不可欠です。そのため、FEMAでは、防災社会の建設や災害予防、迅速な救出・救助活動の実現、速やかな復旧活動等、災害のライフサイクルのあらゆる側面で、民間部門の積極的なかかわりを可能な限り支援しています」と話し、官民の密接なパートナ一シップの構築の重要性を指摘した。

また、出展企業によるセミナーとしては、「フィラデルフィアにおける建物倒壊時の救助技術」「企業の地震災害への対応策についてL「危機管理マニュアルの必要性と人材教育の必要性」「緊急時お よび災害時対応に於ける航空医療の多用途システム」「21世紀に向けた災害管理システムー災害時における対処訓練シミュレーター」等、具体的事例に育んだ情報が数多く紹介された。

これらはいずれも、単なる技術や商品紹介にとどまるものではなく、防災意識め向上や、専門家を育成するためのプログラムにもつながるものであり、ゴス局長の言葉の通り、防災社会づくりにかかわる米国企業の多様なあり様を示すものであった。


一般市民への口対口人工呼吸法の指導は見直しの必要あり

アメリカ心臓協会 アメリカ心臓協会の委員会は、一般市民が口対口人工呼吸法の指導を受けるべきか否かの調査が必要であるとしている。同協会の救急心臓医療委員会(Emergency Cardiac Care Committee:以下ECCC)は、9月16日発行の雑誌「Circulation」のほか三つの医療雑誌で、口対口人工呼吸法は医療従事者を含む多くの人々がCPRを試みる際の障害になっていると発表した。ECCC委員長のベッカー博士によると、実際に心停止の傷病者に接したときに、実際にはリスクは小さいにもかかわらず、感染を恐れて口対口人工呼吸法をためらう人が多いという。

一方、口対口人工呼吸法が逆効果になることもある。CPR実施傷病者のうち、口対口人工呼吸法によって胃に呼気が入り込み、胃の内容物が逆流して、呼吸困難や肺炎、死亡などを引き起こす例が、かなりの割合で見られるという報告もある。また、パイスタンダーが口対口人工呼吸法に一生懸命になり、心マッサージに十分な注意を払うことができない場合があるとも報告されている。ECCCの研究によれば、CPRのコースを修了した直後の医療従事者を含めたほとんどの人が、心マッサージの際に少要とされている1分間に最低80回という圧迫回数まで到達できないとのことである.このデータは、口対口人工呼吸法に時間を多く取りすぎて、心マッサージや心臓への血流の維持には十分な時間がかけられていないことを示している。

また、ECCCは、口対口人工呼吸法と心マッサージを組み合わせたCPRは、「指導も修得も記憶も実行も困難」であると述べている。

以上のような報告がマスコミに議論を巻き起こした後、アメリカ心臓協会はプレスリリースを発行し、同協会の見解は、CPRにおける口対口人工呼吸法の重要性を否定するものではないことを強調した。

「われわれは、人命救助におけるCPRの重要性を認識しており、より多くの市民がより有効なCPRを実施できるよう簡素化を目指している。しかしこれは、口対口人工呼吸法を否定するものではなく、わ れわれは口対口人工呼吸法を禁止するような発言はしていない。現段楷で心マッサージのみを用いたCPRを指導することは、かえって無責任なことになるだろう」(ぺツカー博士)。

またECCCは、心マッサージだけを実施された傷病者の予後が、すべての心肺蘇生法を実施された傷病者と同様に良好であるかどうかを正確に把捉する研究がなされるべきであるとも述べている。

近年、シアトルとヒューストンでは、救急隊鼻がCPRの知識がない通報者を対象に、心マッサージと口対口人工呼吸法の両方を行うよう指導した場合と、気遣を確保した後に心マッサージのみを行うよ う指導した場合の予後の遣いについての研究を行っている。この研究は、成人の心肺機能停止者のみを対象に2年前から行われているが、CPR実施傷病者の蘇生率が低いため、統計的に適切な結果を得 るためには相当数の患者が必要になるだろう。

ぺツカー博士は、「すべての救急医療関係者は、一般市民がCPRを修得し実施することができるよう、万全を期す必要がある」とも述ペている。 (「EMS INSIDER」1997年11月号より、訳/林 香代子)


応急手当を継続的に訓練するための救命技術維持講習センターを開設

東京消防庁麹町消防署 一度だけの救命講習では、CPRの技術に自信が持てない。時間がたつと、せっかく習った応急手当を忘れてしまう。継続的にトレーニングできる場所がほしい--そんな住民の要望にこたえて、東京 消防庁麹町消防署(東京都千代田区)は、各種の救命講習を修了した地域住民等の継続的な応急手当の訓練を支援するため、昨年11月、「救命技術維持講習センター」を開設した。

同センターでは、(財)東京救急協会や各消防署で実施している普通救命講習、上級救命講習、応急手当普及員講習等の修了者、およぴ日本赤十字社等の機関で同様の講習を修了した人を対象に、毎 週1回、定期的に講習会を開催する。

センター開設のきっかけは、講習修了者から、「一度習っただけでは、自信が持てない」「継続的に訓練しなければ忘れてしまう」などの声が数多く寄せられたことである。

とくに、災害時支援ボランティアとして活動している人や消防団員など、救命講習を指導する立場になる人々からは、継続的にトレーニングできる場所がほしいとの強い要望が寄せられていた。その ため、同消防署では、従来から平日の夜などに、消防団員を対象に応急手当を教える機会を設けていたが、同センターの開設はこれをさらに発展させたものと位置づけることができる。

警防課救急係の窪田哲郎さんは、センター開設の経線について、「指導するわれわれの側も、再講習を実施してみるとよく覚えていない人が多く、一度きりの講習を受けただけでは、緊急事態に迅速 に対応できないのではないかと不安に感じていました。

そこで、修了者に技術を維持してもらうために、以前から消防団員の皆さんを対象に行っていた簡単な講習を、もっと多くの人が参加できるような形に発展させることはできないかと検討を重ねた結 果、センターとして体制を整えることができました」と話している。

同センターの開講日時は、毎週火曜日の19〜21時。この時間に、同署内の防災教室あるいは体育訓練室に訓練用人形が準備されるので、受講希聾者は自由に訪れ、人形を使用してトレーニングす ることができる。事前に申し込みをする必要もなければ、2時間ずっと訓練する必要もない。好きな時間に来て、好きなだけトレニーングをする。 同センターの講習は、決められた時間に決められたカリキュラムをこなす従来の普通救命講習等とはまつたく違う、新しい方法の講習であるといえる。

「センターの目的はあくまでも、住民の自主的な訓練を支援することですから、好きな時間に来て、好きなだけトレーニングしてもらえればいい。たとえば10分しか時間が取れない人は,10分だ けの練習でもいいのです」(窪田さん)。

開講時には、同署の応急手当指義員が常時、指導に当たる。団体で受ける講習と違い、自由に質問し、納得のいくまで指導を受けることができるのも、魅力の一つといえるだろう。

11月の参加者数は平均10人程度で、参加者からは「自信がついた」「気楽に参加できるのがよい」などの声が聞かれ、評判は上々であるという。毎回40〜50人まで対応できるため、同署では 、区報にお知らせを掲戟したり、事業所にちらしを配布するなどして、同センターの普及を図っている。

今後の展開について、窪田さんは、「全国的にもあまり例のない試みですから、まずは一人でも多くの人に参加してもらうことから始め、効果や反響をじっくり見守っていきたい。と思っています」 と話している。

初心者も参加可能で、その場合は、CPR等を実演するビデオを上映した後、指導員が基本から指導に当たる。

防災や救急に対する一般市民の関心は高まりつつあり、各消防署が実施する救命講習の受講者数は年々、増加している.しかし、機会があれば応急手当を修得したいと思っていても、きっかけがない 、まとまった時間が取れないなどの理由で、講習会に参加するまでに至らない人もたくさんいる。同センターは、そんな人たちにとっても、気軽に応急手当を学べるよい場所になりそうである。


視覚障害者からの緊急通報を専用ファクスで受け付け

福岡県・八女消防本部 福岡県・八女消防本部では、昨年の11月9日より、聴覚障害者を対象にしたファクスによる緊急通報受付を開始した。急病や事故などの緊急時に、聴覚障害者がファクスにより通報できるよう専用のフ ァクス番号を設けたもので、同消防本部では「一人でも多くの人に利用してもらたい」と呼び掛けている。

同消防本部が管轄する八女市と八女郡には、約440人の聴覚障害者が住んでおり、以前から緊急ファクス設置の要望が強かった。そのため、同消防本部ではファクス用の消防緊急通報カードと、ファクス 送信後に救急車などが到着するまでの仕組みを説明したイラストを作成し、各市町村の福祉担当等を通じて聴覚障害者に配布した。 ファクスによる通報を行う場合は、消防緊急通報力-ドの火事・救急車・ガスもれなどの該当項目を○で囲み、住所、氏名、自宅近くの目印となるもの、用件等を書いて送信する。同消防本部では、 専用のファクス番号で通報を受け、出動と同時に「(ファクスを)確認しました。救急車/消防車がもうすぐつきます」という旨のファクスを返信する。同消防本部通信指令室では,緊急ファクス設置 の経緯について、「聴覚障害者を対象とした応急手当や消火器の使い方の講習会の際に、自分や家族などが急病になったり事故に遭遇した場合,電話で通報することができず、とても心配だという話をよく聞いていました。そのため、緊急ファクス設置の必要性を強く感していたのですが、今後は、緊急ファクスを一人でも多くの方々に利用していただけるよう普及に努めたいと思っています」

と指している。当面は、ファクスを持っている約30人を対象に通報を受け付ける。いまのところ、まだ通報はないが、問い合わせは数件あり、利用者の関心は高いとのことである。


警察署員が夜光反射材を靴に張り、交通事故の防止をPR

北海道・札幌方面南警察署 交通事故による死亡者数は、年々増加する傾向にあり、各都道府県の警察等ではさまざまな事故防止策を講じている。中でも北海道は、交通事故の年間死亡者数が全国で第ー位になることが多いことから、夜間の交通事故防止を目的に、夜光反射材の普及に力を入れている。そんな中、札幌方面南警察署では、昨年10月から、署員が靴に夜光反射村を張り、交通事故の防止に役立てるよう呼び掛け ている。

この夜光反射材は、同署が道路標識などを作っている業者から廃品を無料で譲り受け、適当な大きさに切ったものである。同署では、管内の小学校、町内舎、老人ホーム、老人クラブなどを対象に、(財)全日本交通安全協会が販売している反射リストバンド等の普及活動を行っているが、その際希望者には、この夜光反射材を無料で配布しているという。同署交通課企画係長の佐藤和夫さんは、「 道路標識などを作っている業者で、大量の夜光反射材の残りが処分されていると聞き、署員から「何とか交通事故の防止に役立てられないか」というアイデアが出ました。そこで、反射リストバンドの普及活動を行う際に、希望者には廃品の夜光反射材を無料で配布することにしたのです。

夜光反射材はシール状になっていますので、張る個所の表面をふいてよく乾かしてから張るとはがれにくく、長期間効果が期待できます」と話している。

同署では、昨年10月から、署員が勤務時間中に履く靴のかかと、または土ふまずに夜光反射材を張り、より一層の普及活動を展開している。

北海道において、とくに夜光反射材の普及が推進される背景には、秋から冬にかけて、夜間の交通事故が多発するという北国特有の事情がある。

「秋口を過ぎると日没時刻が早くなり、夜間に歩行者を巻き込む事故が増えてきます。中でも高齢者には、夜間の交通事故が多いため、夜光反射材を腕や靴などにつけて、目立つ服装で歩くことが大切なのです」(佐藤さん)。

同署では、とくに夜間の高齢歩行者の交通事故の防止に力を入れており、定期的に管内の老人ホームや老人クラブなどを訪れ、高齢者の交通安全に対する意識の向上を図るとともに、反射リストバン ドや夜光反射材を身につけるよう勧めている。

「老人ホームや老人クラブでは、交通事故から自分の身を守るために、次の三点に注意するよう話しています。まず第一に交通ルールを守ること、第二に自分の身は自分で守るという意識を持つこと、そして第三に、明るく目立つ色の服を着るようにすること、さらに夜光反射村を腕や靴につけるなどして、ドライバーに自分の存在を知らせるようにすることです。

実際に交通事故にあった人を見ると、夜光反射材などを身につけることもなく、自分で自分の身を守るという意識も低いように思います。私どもで配布している夜光反射材は、廃品利用で無料ですか ら、申し出ていただければどなたにでもお分けしています。一人でも多くの市民に夜光反射材を知ってもらい、交通事故の防止に役立てていただきたいと思います」(佐藤さん)。

なお、夜光反射材を使用した商品は、全日本交通安全協会が各都道府県や警察庁等と協力して販売を行っている。

同協会によると、夜光反射材を使用した商品は現在68種類あり、反射リストバンド、自転車の反射板、腕章型、たすき型、靴底に張るシールの5種類が主流ということである。


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