この原稿は救急医療ジャーナル'97第5巻第5号(通巻第27号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

0157予防対策テストを実施

京都府環境衛生営業指導センター さる7月30日、京都府環境衛生営業指導センターは、飲食店や旅館などの調理師や衛生管理者を対象に、病原性大腸菌0157予防対 策のためのテスト講習会を実施した。0157や衛生管理に関する講習会の後にテストを行い、合格すると合格証書と「0157等予防対 策の店」と書かれたステッカーが与えられる。テストを行うことで、感染症対策の実効性を高め、顧客にも目に見える形でそのことを 示す工夫をしたのは、全国的にも初めての試みである。

京都府環境衝生営業指導センターでは、飲食店や旅館・ホテル、食肉・食鳥肉販売店などの衛生水準の維持向上を図るためにさまざ まな活動を行っているが、今年はとくに0157の予防対策の必要性を強く感じ、今回のテスト講習会を実施したという。同センタ ーの井上治馬さんは、「昨年0157の被害が大きく報じられて以来、飲食店や旅館など、大勢のお客様に料理を提供する業者にとって 、感染症対策が切実な問題になっています。とくに0157については、今年も大きな問題になっていますので、実効性のある形で予防 対策の大切さを喚起し正しい知識を身につけてほしいと思い、講習会の後でテストを実施、さらに合格証書やステッカーを発行するこ とにしたのです。

テストをすることで、調理師や衛生管理者に予防対策の大切さを再認識してもらうと同時に、お客様には、ステッカーによって"予 防対策済み"であることを知っていただき、安心して利用してもらう目安になればと 思い、企画しました」と話す。

講習金は2部構成で、前半は京都府の衛生課担当者が「0157とは」のタイトルで病理学的な視点から0157の基本について解説し 、後半は、京都市の衛生課担当者が「衛生管理と自己管理」と題して、食村の取り扱い方など、調理現場での実務的な留意点について 講義をした。その後、復習の意味を込めて各テーマについてのテストが行われた。

「衝生管理と自己管理」の講師を務めた京都市環境保健局保健衛生部生活衛生課の森田正和さんは、「今年は、高校総体や地球温暖 化防止京都会議なと大きなイベントが京都で開催されるため、大勢の人が京都に滞在します。そのため、京都市でも特別対策として、 業者向けに4月以降営業施設の監視.指導や、食中毒防止の講習会など、種々の食品衛生対策を強力に展開しています。 今回の講習会では、食材の取り扱い方、衛生管理や洗浄・消毒の徹底というように、各工程ごとの留意点をお話ししました。食中毒は 一度発生すると、市民生活に多くの影響が出ますので、現場の調理担当者には、自覚と責任を持って衛生管理を徹底していただきたい と思います」と話す。

テスト講習会への関心は高く、定員(250人)を超す270人が参加した。経営者や衛生管理者ばかりでなく、現場で調理に従事する調 理師の参加も多かったという。「講習会とテストを受ければ食中毒の危険性がゼロになる訳ではありませんが、テストを受けることで、 より前向きに責任を持って衛生管理に当たってくれるようになると思います。

今回のテストで不合格となってしまった方も引き続き補習を受け、合格するまで何度でもチャレンジしてほしいですね」(井上さん)。

講習会およぴテストは、主に同センターが営業指導を行う16の環境衛生同業組合の組合員が対象となっているが、組合員でなくて も受けることができる。同センターでは、要望が多ければ、今後も実施したいとしている。


ゴルフ場の救急医療体制の充実を図るため、担架付き救急カ-トを開発

愛媛県松山市 プレーするスポーツとして、いま、わが国の中高年の男性にもっとも人気のあるのは、ゴルフである。本誌の読者の中にも、多数の 愛好者がいるのではないだろうか.しかし近年、ゴルフのプレー中に突然倒れ、死亡に至る事故が増加しつつあり、予防対策の普及 と実行が急務となっている。

プレー中の死亡事故の原因としては、心筋梗塞、脳卒中、急性心不全などが挙げられる.これは、ゴルファーの多くが40歳代以上の中 高年で、肥満、高血圧、高脂血症などのいわゆる生活習慣病の危険困子を抱えているためと考えられる。

ゴルフは一見軽い運動に見えるが、ショットを打つ際に心拍数や血圧が著しく上昇する。そのため、肥満や高血圧など生活習慣病の 危険因子を持つ人が、自分の健康状態に注意を払わず、過労や睡眠不足などの悪条件の中でプレーした場合,ショットを打った直後に 倒れてしまうケースが多いという。

このようなプレー中の死亡事故を予防するためには、プレーヤー自身が自分の健康状態に十分気をつけると同時に、ゴルフ場の救急 医療体制を早急に整備することが不可欠である。

しかし現状では、医務室があるなど緊亀事態に対する備えが万全のゴルフ場は少なく、クラブハウスからコースの端まで数キロメート ルあるにもかかわらず、緊急時の連絡体制さえ十分に整っていないところもあるという。

このように、ゴルフ場における救急医療体制については、多くの問題点が指摘されているが、安全対策の充実に積極的に取り組んで いるところもある。たとえば、愛媛県松山市のゴルフ場「エリエールゴルフクラブ松山」は、4年前、コースで発生した救急傷病者を 迅速かつ安静に運ぶため、担架付き救急力ートを開発,使用している。

担架付き救急カートは、通常ゴルフ場で使用される市販の力ートの屋根部分を取り除き、担架を取り付けたアイデア器材である。

同ゴルフ場では従来、コース上で傷病者が発生した場合、医務室のあるクラブハウスや救急車が入れるところまで、従業員が担架で 傷病者を運んでいた。しかし、コースはアップダウンがあり、傷病者の安静を保つことができないことから、何かよい方法はないかと 従業員の間で話し合い、カートのアイデアが生まれたという。

同ゴルフ場の本田栄俊営業課長は、担架付き救急カートについて、「従業員の「日曜大工」で作った手作りカートであり、これ一つ で救急体制が整ったという訳ではありませんが、緊急事態に備えて、いますぐ何ができるかを話し合い、少しずつ救急体制を充実させ ていくことが大切だと考えています」と語る。同ゴルフ場では、今年2月、松山東消防署の職員を講師に迎え、キャディーを含む全従業員を対象にした普通救命講習を開催した。

「緊急時には、救急車を要請するだけでなく、隣接する当社の産業医が駆けつける体制になっていますが、従業員ー人ひとりが救急 処置に関する知識や技術を持つことにより、少しでもお客様の安全を確保することができればと思い、全員で救命講習を受けることに しました」(本田課長)。

同ゴルフ場では今後、このような救命講習を年に一回程度、定期的に実施していきたいとしている。

ゴルフは本来、性別、年齢などを問わず、誰でも楽しむことができる生涯スポーツである。趣味のゴルフに出かけて突然倒れ、死亡 するなどという悲しい事故を防ぐため、ゴルフ場の救急医療体制を改善・充実させるとともに、プレーする側もまた、安全対策の充実 したゴルフ場を選ぷなど「賢い」愛好者になることが求められている。


自動車事故現場の写真が治療法に与える影

アメリカにおける研究より 自動車事故の状況を口頭で説明するのは、なかなか難しいことがある。とくに、車が複数の方向から衝撃を受けている場合はなおさ らである。

このたぴ、自動車事故のポラロイド写真が、傷病者の受け入れ医師の状況理解にどのような影響を与えるのかを調査した研究が発表 された(Prehospital Emergency Care」1997年1月号)。この研究は、ポラロイド写真が、受け入れ医師による事故の重大さの把握に 与える影響と、そのような追加の情報が、治療に変化を与えるかどうかを評価したものである。すなわち、研究の焦点は、写真の持つ 情報が、救急部での治療や入院に関しての判断に及ぽす実際の影響である。

救急隊員が自動車事故現場の2枚の写真を撮る。医師は、最初に事故の状況について口頭で説明を受けた後、初期評価と可能性のある治療について書き留め、写真を見せられる。写真を見た後、最初の治療方針を変更したケースが47%あった。 そのうちもっとも多かったのは、写真からわかった追加情報に基づいて、退院ではなく入院させるように考えを変えたケースである。

医師は写真を見ると、救急隊員から口頭で説明を受けただけのときよりも事故は重大であると考える、と著者らは報告している。 本研究は母集団の数が58と少ないので、現実的かどうかはさらに検討が必要である。
(訳/三上 斉)


携帯電話の使用が運転に及ぼす影響を調べる走行実験を実施

警察庁 運転中の携帯電話の使用が原因と見られる交通事故が急増していることから、普察庁は8月、携帯電話の使用が運転に及ぽす影響を調 査するための走行実験を行った。同庁は今後、実験結果を分析、具体的な交通事故防止対策を検討する方針である。

同庁によれば、今年1〜5月末の5か月間に、ドライバーの携帯電話の使用が原因と見られる交通事故は、全国で944件発生している。 この数字は、全事故件数(30万6千61件)の約0.3%に当たり,死者は10人,けが人は1357人に上っている。こうした交通事 故が社会問題化していることから、同庁は7月、調査研究委員会を設置し、本格的な調査を行う方針を決定した。

同委員会は、座長の早稲田大学人間科学部・石田敏郎教授のほか、交通評論家や警察庁の職員ら計7人から成り、7月25日に初会 合を実施、現在は実験結果を分析中である。

走行実験は、同庁の外郭団体である特殊法人自動車安全運転センターの安全運転中央研修所(茨他県ひたちなか市)において、8月3 日と11〜14日の5日間に渡って行われた。

実験では、ドライバーが携帯電話を使用している場合と使用していない場合について、ブレーキをかけたりハンドルをきったりする 時間や操作の正確さに、どのような差が出るかを調べた。 そのほか、手を使わずに通話ができるハンズフリー装置を使った場合や、前後に車が走っているケースなどについても、携帯電話の使 用が運転にどのような影響を与えるかを調査した。

携帯電話の使用に関しては、交通事故だけなく、医療機器に及ぼす影響等も取り沙汰されている。携帯電詰はここ数年で急速に普及 し、いまやその数は1千万台を超えたとも言われるが、携帯電結の使用が運転中のドライバーにどのような影響を与えるのか、また携 帯電話が発する電磁波が電子機器等にどのような影響を及ぼすのかなどについては、まだ解明されていない部分が多い。関係機関によ る調査研究や啓発活動の今後に期待したい。


一人暮らしの高齢者に緊急時用の笛を無料配付

神奈川県・平塚市消防本部 平塚市消防本部では、さる5月、市内に住む一人暮らしの高齢者に、災害時や緊急の際に助けを求めるための笛を舞料で配付した。 笛はアウトドア用の携帯笛として市販されているものだが,筒型でふたが付いており,中には住所,氏名,既往症などの個人的なデー タを記入できるIDカードが入っている。

配付の対象となったのは、平塚市内に住む一人暮らしで65歳以上の高齢者1363人。災害時はもちろんのこと、急病の場合などに 笛を鳴らして周囲の人に助けを求めることができる。配付した平塚市消防本部防災課では「阪神・淡路大震災では、家具の下敷きになったり、建物が倒壊して中に閉じ込められたような場合、助けを求めても声が外まで届かなかったり、周囲の騒音などでかき消されてしまったと聞いています。

そのとき笛を持っていた人が笛を吹き、その音が救助のきっかけになったという話を参考にして笛を送付することにしました。

笛にはひもを通すリングが付いていますので、首から下げるなどして携帯してもらいたいと思っています」と話している。

笛はアルミニウム製で、長さ7センチ,重さは約10グラム。吹くと「ピ一」という高い音が出る。笛のふたを取ると、中に防水紙で できた長さ約30センチ、幅約3センチのIDカードが、巻かれた状態で入っている。lDカードには住所や氏名、血液型、常用薬、既往 症、アレルギーの有無、かかりつけの病院名など、救急処置を受ける際の必要事項が記入できるようになっている。

同消防本部では、笛送付の趣旨を添付して郵送したが、驚くほどたくさんの礼状とお礼の電話がかかり、反応は上々だという。 「直接消防本部に立ち寄り、「いざというときのためにいつも笛を首から下げています」とお礼を言って下さった方もいらっしやいま す。「生命の笛」として携帯していただき、いざというときにぜひ役立ててもらいたいですね」 (防災課)。

中に入っているIDカ-ドの裏面は英語でも記入することができるため、外国でも使うことができる。


救急車の高規格化に対応するため救命救急センターの出入り口を大改築

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急センター 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急センターは、同院の10周年記念事業の一環として、この春、出入り口の大改築を行 った。約2.7メートルという以前の出入り口の屋根の高さでは、救急車の高規格化に対応できなくなったためである。

実際、全高が2.7メートル以上の高規格救急車の場合、救急隊員は、出入り口の手前で救急車を∪タ-ンさせ、パックで屋根の端ぎ りぎりのところに付けた後、傷病者を下ろしてストレッチャーで運ばなければならない。

これでは時間的なロスが生じるだけでなく、傷病者が雨風や人目にさらされることから、今回の大改築が実現した。

山中郁男救命救急センター長は、今回の改築について、「高さが約3.5メートルとなっただけでなく、屋根部分だけだった出入り 口が、天井とガラス張りの壁3面から成る立派な建物になりました。病院側の迅速で手厚い対応には、非常に感謝しています」と語る。

そのほか、救急入り口に近い部分の天井には遠赤外線ヒーターを 付け、さらに壁2面には回転窓を取り付けるなど、防風や防寒、通気性などにも十分に配慮した設計になっている。シャッターで仕切る ことのできるアメニティースぺ-スも確保されたため、同救命救急センターの救急車などを駐車しておくことも可能になった。

また、夜間は「救命救急センター」の文字がライトアップされるなど、外観も以前に比べ,大変スマートな印象を受ける建物に 変化した。

「見た目にも立派な建物となったことで、市や一般の人々に対しても、当救命救急センターが、誠意を持って前向きに救急医療に取 り組んでいることをアピールしていけるのではないかと思っています」(山中センター長)。

万全を期した設計・施工に加えて、通常90日間は必要な工期を45日間に短縮したり、騒音や進藤を抑える特別な工法や資器材を 採用するなどしたため、総工費は約7千万円かかったという。

また工事中は、救急車や外来患者、さらにはその家族という具合に細かく分けて動線を設定する、時間外は警備員を配置するなどし て、救命救急センターの業務に支障が出ないようにしたり、患者の安全を確保するための対策がきめ細かく実施された。

新しい出入り口は、地元の消防署の救急隊員にも評判がよく、高規格救急車が入らないという問題が生したのが4月、工事開始が5月 という同救命救急センターの迅速な対応に、「感激した」との声が上がっている。


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