この原稿は救急医療ジャーナル'96第4巻第3号(通巻第19号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

静岡県立大学で「防災総合講座」開講
〜修了者には県独自の「防災士」の称号を付与

 静岡県は、静岡県立大学(静岡市谷 田)を会場に、今年度から「防災総合 講座」を開講した。受講対象者は、(1) 静岡県および静岡県内の市町村・企 業・団体の職員、(2)県外の地方公共団 体の職員で、受講料は無料である。

 この講座の目的は、地震、暴風雨等 の大規模災害時に即戦力となる人材を 養成することである。講座の修了者に は、防災の専門知識等を修得したこと が社会的に認知されるように、「防災 士」の称号が同県知事名で付与される。

 県独自の「防災士」の称号を修了者 に付与するのは、「防災先進県しずお か」として、全国に先駆けて防災対策 を進めてきた静岡県ならではの新しい 試みといえる。

 同県は、東海地震や神奈川県西部地 震が想定される地域として、従来から、 公共施設の耐震化や自主防災組織の育 成、総合防災訓練の実施などを積極的 に進めてきた。

 また昨年度は、阪神・淡路大震災を 教訓に、各公共団体や企業等でそれぞ れの防災システムを見直し、一つでも 多くの課題を解決していこうという 「地震対策300日アクション・プロ グラム」を実施した。

 大規模災害に関する専門知識を有す る人材の育成は、かねてから課題の一 つとして提起されていたため、「300 日アクション・プログラム」の一環と して、「防災総合講座」が今年度開講 の運びとなった。

 講座の定員は50人。今年度より5年 間で250人の防災士を養成する方針 である。また、修業期間は、4月から 9月までの大学の夏休み期間を除く6 か月間で、月曜日から金曜日まで毎日、 90分授業が3時限行われる。

 講座修了者は、平常時には防災計画 や防災対策の企画立案に携わり、災害 時には所属している企業や団体の長の 直属となり、安全確保や企業活動の維 持などの活動において、参謀的な役割 を果たすことが期待されている。「防災 士」という称号は、その役割を果たす に十分な実力を備えた人材であること の証として付与されるのである。

 初年度である今年度の講座は12の科 目で構成されており、一回90分間の講 義を各科目15回程度行う予定である。 科目は、「地域防災論」や「危機管理 論」など、災害発生や防災の基礎理論 についての講座を中心に、人間の避難 行動の特徴や流言の防止方法に関する 「災害心理学」、東海地震の予知や警戒 宣言時の対応に関する「地震予知論」、 防災行政無線、電話網の問題点などの 「災害情報論」などとなっている。

 講師陣は、NHK解説委員を務める 伊藤和明・文教大学国際学部教授を講 座長に、広井傾・東京大学社会情報研 究所教授、阿部勝征・東京大学地震研 究所教授、井野盛夫・(財)静岡県防災情 報研究所所長ら多彩な顔ぶれである。

 第一期生は、4月24日に行われた開 講式を経て、5月7日より講義を受講 している。自治体職員や企業の防災担 当者を中心に、県内から45人、県外か ら1人が参加している。県外の場合、 受講対象者は自治体や地方公共団体の 職員となるが、同県では、防災に携わ る人の受講を広く呼び掛けていく方針 である。

5消防本部と5市町立病院が共同で救急救命士制度を運用

〜兵庫県・東播磨内陸地域  兵庫県の中央部に位置する東播磨内 陸地域の5消防本部と5市町立病院 は、4月1日より、救急救命士制度の 広域運用を開始した。一部、救急資器 材等が未整備な所があるため、本格的 な運用は今秋からとなるが、二次保健 医療圏域全域をカバーする広域運用は 全国でも初めてのケースである。

 東播磨内陸地域とは、西脇市、三木 市、小野市、加西市の4市と、吉川町、 社町、中町などの8町から成る、面積 900km2、人口約30万人の地域である。 地域内には、西脇多可、三木、小野、 加西、加東の5消防本部があるが、救 急資器材等の未整備や、指示医師の確 保ができないなどの理由から、これま で救急救命士制度は運用されていなか つた。

 しかし各消防本部では、来るべき制 度の運用に向けて、救急救命士の養成 や、高規格救急車の購入、救急資器材 の整備等を着々と進めていた。また、 それぞれの消防本部が個別に制度を運 用するのは非効率的で限界もあるとい う見地から、当初から広域運用を想定 し、救急資器材等の機種は5消防本部 とも同一のものを整備するという念の 入れようであった。

 そんな中、地区医師会長、市町長、 保健所長らで構成される「東播磨内陸 地域保健医療(福祉)連絡協議会」で は、救急医療委員会が中心となり、96 年4月からの制度運用に向けて検討を 始めていたが、昨年7月、消防本部側 から同協議会(本部)に対して、早期 運用確立のための強い要請があった。

 それらを受けて同協議会では、各種 事案の調整、検討を進め、今年2月23 日に、関係者23人が出席して「救急救 命士制度運用に関する会議」を開催し た。席上では、「東播磨救急救命士に 対する医師の具体的指示等に関する協 定」に対して合意が得られたことから、 3月8日に同協定を締結。4月1日か らの運用開始となった。

 運用の指示体制は次の通りである。 (1)平日の昼間(9時〜17時)

 まず管内の市町立病院に連絡し、担 当医師から指示を受ける。手術中等の 理由から指示を受けることができない 場合は、輪番制担当病院に連絡し指示 を受ける。 (2)平日の夜間(17時〜9時)

 まず管内の市町立病院に連絡し、当 直医師の判断により指示を受ける。指 示を受けられない場合は、とくに輪番 制担当病院は設けられていないが、昼 間に定められている輪番制担当病院に 連絡し、当直医師の判断により指示を 受ける。また、輪番制担当病院からも 指示が受けられない場合は、傷病者に 適した他の市町立病院に順次連絡し、 当直医師の判断により指示を受ける。 (3)休日(土・日・祝祭日等)

 前記と同様、まず管内の市町立病院 に連絡し、当直医師の判断により指示 を受ける。指示を受けることができな い場合は、輪番制担当病院が設けられ ていないため、傷病者に適した他の市 町立病院に順次連絡し、当直医師の判 断により指示を受ける。

 また、傷病者は指示病院へ搬送する ことが原則だが、傷病内容が指示病院 の診療科目に合致しない場合や、輪番 制担当病院が対応するなどして救急現 場から指示病院までが遠距離な場合な どは、消防本部と指示病院が協議し、 傷病者に適した他の医療機関を確保す る。

 傷病内容によっては、いったん最寄 りの医療機関に収容して治療した後、 傷病者に適した病院へ転送するという 方式もとられる。また現在、同地域内 には、三次救急医療施設がないため、 圏内の5市町立病院で対応できない場 合は、兵庫県立姫路循環器病センター に搬送される。

 今回の運用は管轄を超えた広域なも のであるため、いわゆる横のつながり が希薄になりがちである。そのため、 協定が締結された際、市町長ならびに 医師会、市町立病院、消防本部の長な どで構成される「東播磨内陸救急救命 士運用連絡協議会」が発足し、制度の 円滑な運用のために各種検討を行うこ とにしている。

 今後、同協議会では救急救命士に関 する情報の収集や、研修会などを実施 し、関係者同士の連携やコミュニケー ションを図る方針である。具体案とし ては、5消防本部と医療機関が合同で 実施する講習会や研修会、訓練などが 考えられている。 1996年5月1日現在、同地域に は26人の救急救命士がいるが、200 0年度までには、67人に増える見込み である。また5消防本部すべてで高規 格救急車の導入や、心電図伝送システ ムなどの体制が整う今秋以降には、制 度の本格的な運用が開始する。

 わが国で初めての、救急救命士制度 の広域運用のケースとして、各関係機 関から同地域に寄せられる期待は大き い。

災害時医療救護活動マニュアルを作成

東京都  東京都衛生局は、さる3月29日、「災 害時医療救護活動マニュアル」を決定、 一万部を作成して関係機関に配布し た。このマニュアルは、都医師会、東 京消防庁、陸上自衛隊などで構成する 「東京都災害医療運営連絡会」におい て作成されたもので、概ね震度6以上 の地震などによる大規模な災害が発生 した場合、各関係機関が緊密に連携し、 迅速かつ適切な医療救護活動を行うた めの標準的な活動指針を定めたもので ある。

 都では、すでに「東京都地域防災計 画」(平成8年修正)を策定、その具 体化に力を注いでいるが、本マニュア ルは、各関係機関の活動内容と役割分 担を明確に示したものといえる。

 大きな特徴としては、直下型地震を 想定し、「被災地内」と「被災地外」 に区分してそれぞれの対応方法を具体 的に記載したことと、主に地区医師会 や都立病院などが派遣する「医療救護 班」の活動内容と主に重症者を受け入 れる「後方医療施設」の役割を明確に 記載したことの2点が挙げられる。

 概ね震度6以上の直下型地震を想定 した場合、被災地内の医療機関の機能 は停止する可能性が高いため、被災地 外からの応援救護活動が重要な意味を 持つ。そのため、本マニュアルでは、 負傷者に対する応急処置など被災地内 での活動と、応援救護班の派遣など被 災地外での活動を明確に分け、それぞ れの活動指針を詳細に記載している。

 被災地外からの応援救護活動を迅速 に行うためには、病院等の被害状況な どを迅速に収集し、初動態勢を整える 必要があるが、その方法として、災害 発生時には、区市町村、都医師会など 関係機関と連携し、情報を一元的に都 衛生局に集めることが示されている。

 また、応援救護班の派遣については、 従来は被災地の要請があれば派遣する というシステムであったが、被害が甚 大である場合には、被災地の要請がな くても都の判断で応援救護班を派遣す ることができるとした。

 さらに、マニュアルを補足する形で 都全域の医療機関、消防機関、保健所 等関係機関の連絡先と位置を網羅した 「医療救護活動マップ」を作成した。 これにより、被災地外の医療救護班が 応援の要請を受け、普段の活動領域外 の地域に出動する場合でも、迅速に活 動することができると思われる。

 マニュアルの後半では、被災地内外 それぞれにおける後方医療施設の活動 内容が述べられている。これまでは、 医療救護所は避難所に設置する体制で あったが、災害発生直後には、負傷者 は病院などの医療施設に殺到する可能 性が高いため、本マニュアルでは、医 療施設を救護所として機能させるとい う新たな考えを取り入れている。

 そのため、ライフラインや人材の確 保、都や関係機関との連絡方法、負傷 者の受け入れ体制などの緊急時の対応 から、医薬品の備蓄や防災訓練など平 常時の準備まで、各医療施設における 活動指針が明記されている。医療救護 班の活動場所についても、初動期(被 災から概ね3日間以内)と初動期以降 に分け、初動期には災害現場および病 院を中心に、初動期以降は避難所を中 心に活動するというガイドラインが示 されている。

 都では本マニュアルとマップ、統一 トリアージ・タッグを都内の全病院に 配布した。今後は、本マニュアルを標 準として各医療機関において独自のマ ニュアルを作成し、医師、看護婦等の 研修を行うよう指導する方針である。

 4月には全病院を対象に、3回に分 けて説明会を実施し、病院関係者約6 20人が参加した。さらに、全病院に 対して「災害時医療救護活動マニュア ル研修会教材配布・講師派遣依頼書」 を配布し、各病院からの依頼に応じて 教材や講師の派遣を行っている。

 このほか、今回のマニュアル決定に 合意した各関係機関についても、それ ぞれの実情に応じた形で、説明会や研 修会を行っている。

 「東京都災害医療運営連絡会」では、 初動期には医療機関が医療活動の拠点 になるという前述の考えから、今後も 医療機関の防災能力向上の支援に取り 組む方針で、現在、「病院防災訓練マ ニュアル」や「施設・設備自己点検チ ェックリスト」の内容を検討中である。

災害時、救助にあたる職員に初の「災害心理アンケート」を実施

東京消防庁・消防科学研究所  東京消防庁・消防科学研究所は、消 防隊員などの職員が、災害時の救助活 動中に受けるストレスについて調査す るため、阪神・淡路大震災(以下、震 災とする)と、地下鉄サリン事件(以 下、サリンとする)

 の救助活動にあた った職員を対象に、初の「災害心理ア ンケート」を実施した。

 その結果、震災では27%、サリンでは 17%の職員が脱力感・疲労感、いらだ ち、不眠などのさまざまな症状に悩ま されていたことが明らかになった。

 調査が行われたのはいずれも災害か ら約1か月後。対象となったのは、震 災の被災地に広域消防応援隊として派 遣された職員205人と、サリンの被 災者の救助に地下駅構内まで進入した 職員を中心とした252人の合計45 7人で、回収率は100%。

 調査は年齢、勤続年数をはじめ、 「災害に対する衝撃度」「災害を思い出 す回数」「精神的に負担となった事 柄」「ストレスの解消法」など、19に 渡る設問に答えるという方式で行われ た。

 いずれの災害も、過去に例をみない 大規模なものだったため、非常に強い 衝撃を受けた職員が、震災では90%、 サリンでは55%に上った。なかでも、 災害時の光景を幾度となく思い出した り、救助活動の夢を見るなど、精神的 な後遺症ともいえる症状に悩まされて いる職員が多くいたことが明らかにな つた。

 また、いずれの災害の場合も、救助 にあたった職員の20%以上が、精神的 負担を感じたと答えている。

 とくに震災では、「披災地の光景」 に強いショックを受け、サリンでは、 「原因不明のまま次々と人が倒れてい く中で、救助活動を続けること」「同 僚や部下が受症したこと」「後遺症に 対する不安」などが、精神的な負担に なったという。

 これらのストレスの解消法について は、スポーツや趣味、同僚等との雑談 を通じて気分転換を図るなどの回答が 多く見られた。とくに、雑談の中で災 害や救助活動についての話題を積極的 に取り上げ、心に思ったことを語り合 う方法は、ストレスの解消にかなり効 果を上げたようである。

 このことについて、同研究所第4研 究室の熊倉孝行・研究主任は、「スト レスを受けたことを自覚し、意識的に 解消するように努めた人の方が、そう でない人よりも回復が早い」と話して いる。

 同研究室は1973年、消防職員の 災害現場における行動、および災害発 生時における一般住民の行動等に関し て、医学的および心理学的な側面から の研究活動をより充実させるために発 足したもので、災害ストレスの研究に 着手したのは94年のことである。

 すでに海外では、アメリカのニュー ヨーク市消防局などの消防組織の手 で、災害ストレスに関してのさまざま な調査・研究が進められており、災害 で救助にあたる職員の中に、活動中に 精神的なストレスを受ける事例がある ことが広く知られていた。日本におけ るこの種の本格的な調査はこれが初め てだが、日本でも災害出動によって消 防職員が精神的なストレスを受け、後 遺症が残るケースのあることが証明さ れたことになる。

 「日本では、救助する側のストレス を研究している機関がほとんどないた め、引き続き調査を継続し、データを 蓄積していくとともに、災害ストレス の実態や対応策などについて、海外か らの情報収集をさらに進めていきたい と思います」(熊倉研究主任)。

 同研究所では、これら2件の調査結 果を踏まえ、調査を継続するとともに、 ストレス軽減対策の検討に入ることに している。

救急隊員の銃の携行は是か非か〜アメリカEMSで論争される銃問題

 オレゴン州の海岸にある小さな町の 救急隊員たちが、「救急車に乗務する とき銃を携行することを許可してほし い」と求めたことから、アメリカでは いま、救急隊員の銃の携行が公の問題 となり、各地のEMSの間で活発な議 論が展開されている。

 またこの経過の中で、一部の隊員、 とくに地方で勤務する隊員はすでに何 年も前から銃を携行しているという事 実が明らかになり、話題となっている。

 オレゴン州EMSデイレクターのス キップ・カークウッド氏は、「どこの 地域でも、見て見ぬふりをしているこ とだと思います。『銃を携行してはい けない』という決まりがなければ、携 行していたとしても罰するわけにはい きません」と言う。

 カークウッド氏は、EMSデイレク ターであると同時に弁護士でもあり、 またSWAT(Special Weapons and Tactics :特別機動隊(アメリカ))の 救急隊員で、保安官代理でもある。氏 は、足首のホルスターに銃を入れてい るニュージャージー州の救急隊員たち や、ハンドバッグに銃を忍ばせ、コー ルがあるとオレゴン州の小さな町を飛 び回っている60歳代の女性救急隊員た ちを知っていると話している。

 銃の携行についての問題を最初に提 起したのは、オレゴン州フローレンス のウェスタン・レイン救急車地区の救 急隊員たちである。同地区のパラメデ ィックであるティム・へニガン氏は、

 「銃の携行は、『銃を携行してはい けないとは言われていない』という理 由で、これまでずっと黙認されてきま した。

 私たちの地区には8人の常勤と4人 のパートタイムがいますが、そのうち 少なくとも4人は武器を隠し持つこと が許されています。私たちが今回、E MS当局に正式に銃携行の許可を申請 したのは、銃の扱いについての訓練を きちんと受けたいと思ったからで、そ れを実現するには地区の支援が必要だ からです」

 と述べている。

 同地区のマネージャー、チャール ズ・ラング氏によれば、局は隊員たち の要求を拒否したが、防護服を支給す ることには同意したという。

 「この辺りは、夜遅い時間には警察 の応援が受けられません。大都市での 勤務は確かに大変だと思いますが、警 察の応援はここよりもずっと受けやす いでしょう」

 とラング氏は話している。

 EMSの安全対策セミナーを全米で 開催しているマイク・ティグマン氏は、 かつて警察が来るまでに何時間もかか るようなコロラド州の小さな町のEM Sで働いていた。氏は、「私たちは、 隠して武器を持つことが許されていま した。私自身は銃を持ちませんでした が、同僚の何人かは銃を携行していま した」と話す。

 氏は、実際に銃を携行している隊員 は少数だと思うが、たとえ少数でも、 そのような人たちは、えてして妄想家 で銃を狂信しているが、銃に関する正 しい訓練をまったく受けていない可能 性があり、大変憂慮していると話して いる。

 「銃器は多くの問題を引き起こす可 能性があります。人々は銃を問題解決 の道具だと考えますが、銃だけでなく その他の武器についても訓練を受けて いなければ、銃が問題解決の唯一の道 具だと考えてしまう危険性がありま す。

 救急隊員は、まず現場の安全に注意 を払い、たとえ暴力を振るわれそうな 状況においても、言葉で問通解決を図 るような方法を身につけることによっ て、自分自身をより安全に守ることが できます」

 NAEMT(全国救急隊員協会∧アメリカ)) の会長であるジョナサン・ベスト氏は、 多くの救急隊員が銃を携行している が、それには賛成できないとの見解を 示している。氏は、救急隊異に銃の携 行を公的に許可しているEMSはな く、多くの場合、禁止していないとい う理由で公然と黙認しているのが現状 であると述べている。

 コネティカット州やノースカロライ ナ州などいくつかの州では、EMSの 法律で、職務上救急隊員が銃やその他 の武器を携行することを禁止してい る。この点について、ノースカロライ ナ州EMSデイレクター、ボブ・ペイ リー氏は、「EMSに携わる人たちは、 人の世話をし助けることを職務として います。ですから、私たちが人を傷つ けることがあるという印象を与えない ために、この条文があるのだと思いま す」と述べている。

 氏によると、ノースカロライナ州の BLS特別委員会では最近、大激論の 末、1970年代からあるこの規制を 存続させることが決定したとのことで ある。

 一般に、公然と銃を携行しているE MSは、SWATの救急隊(ただし普 通はSWATコールのときのみ)か警 察が行っている救急車サービスであ る。たとえば、ニューヨーク州ナツソ ー郡では、EMSサービスは一般市民 の隊員と警官の隊員により構成されて おり、警官の隊員は、銃を携行したま ま救急車に乗る。

 「何年か前、ナツソーでは、酒酔い 運転で死亡事故を起こした警官が、自 分を救急車に乗せようとしていた警官 の救急隊員から銃を奪い、自分の頭を 撃って自殺するという事件がありまし た」とベスト氏は話す。

 「救急車に乗務する際に銃を携行す ることの最大の問題は、傷病者と銃の 両方を見守るのが不可能なことであ り、それを証明するような事件が、こ れまでに何度も起こっています。銃の 携行は、傷病者にとってまったく迷惑 なことなのです」

 昨年11月にこの問題がウェスタン・ レインEMS局の役員会で持ち上がっ たときには、一人のレポーターがいた だけであった。しかし、このことがい つたんニュースで報道されるや、州の EMSオフィスは、指針を求める救急 隊員やEMS管理者などからの電話の 洪水に襲われたとカークウッド氏は話 す。

 カークウッド氏は、銃を携行したい という救急隊員の要求を尊重するか否 かという問題は、各地区のEMS当局 がそれぞれで判断する必要があるとし て、特別委員会を招集し、オレゴン州 の救急隊向けに、各地域の隊員用ガイ ドラインと安全確認プログラムの開発 の支援を始めた。

 「さらに大きな問題は、警察や消防 では、第一日目から安全についての訓 練を行うのに、EMSではそれをあま り実施していないことです」

 さらに、傷病者が銃を持っている場 合はどうするかという問題もある。テ ィグマン氏は、「私自身、これまでに 40〜50丁の銃を傷病者から取り上げて います」と言う。

 氏が勤めるメドトランス社では、テ キサス州で、各救急車に搬送中の傷病 者が所持する銃の保管庫を搭載する作 業を進めているとのことである。  (訳/三上 斉)

陸上自衛隊、大災害に備えて「人命救助システム」を導入

 4月19日、防衛庁陸上幕僚監部(陸 上自衛隊)は、大災害に備えて開発し た災害派遣専用器材「人命救助システ ム」を公開した。同システムは、大災 害発生直後における人命救助活動を目 的として、全国42か所の駐屯地に配備 される。

 陸上自衛隊は、阪神・淡路大震災時 に救助活動を展開したが、初めて経験 する大規模な都市型災害であったた め、派遣された隊員たちは、(1)瓦礫に 埋まった人々を発見できない、(2)被災 者を発見できても、救助器材を持って いないために救助に手間取る、(3)救急 資器材が十分でないために、救助した 人に対して救急処置を行うことができ ない等の問題に直面した。そこで、こ れらの課題を解決するために開発され たのが、「人命救助システム」である。

 同システムは、主として災害発生後 72時間以内の人命救助活動を目的とし て設計されており、20フィートのコン テナに、油圧式カッター、チェーンソ ー、携帯用救急セット等から成る人命 捜索・救助セットを収納している。

 隊員200人分の救助セットを、2 個のコンテナに収めたものが1セット となっているが、状況によっては、2 個のコンテナをそれぞれ分けて使用す る場合もある。

 コンテナは、空(輸送用航空機)、 陸(トレーラー、鉄道)、海(船舶等)か らの輸送が可能だが、通常は、台車に 載せて中型牽引車や大型トラックで牽 引する。しかし、陸上交通網の遮断や 建物の倒壊などのために、被災地への 車両の進入が不可能な場合は、ヘリコ プター等による空輸も行われる。

 被災地へ投入されたコンテナは、救 助セットを搬出した後に、負傷者の救 急救命処置のための施設(連隊救護所) として使用されるため、担架ベッド、 足踏式吸引器、手動式の人工蘇生器セ ット等が整備されている。

 同システムは、(1)地震予知連絡会が 指定した特定地域、(2)人口50万人以上 の都市を管内に持つ部隊、(3)前記2点 に該当しない部隊のみで構成される警 備地区を担任する師団等に配備され る。

 陸上自衛隊では、このシステムを災 害等発生時の初動態勢における補助的 器材として位置づけており、空輸可能 なコンテナに器材等を収納して被災地 に早期に投入することができれば、災 害発生早期から迅速な救助活動が展開 されることが期待される。

心肺蘇生法をイラストで解説した手作り看板を海水浴場に設置

内灘町消防本部(石川県河北郡)  石川県の内灘町消防本部は、「あな たにもできる心肺脳蘇生法」というタ イトルの手作り看板を、5月3日、管 内の内灘海水浴場に設置した。

 内灘海岸は日本海と河北潟に挟まれ た砂浜で、夏になると内灘、大根布、 権現森、西荒屋の各海水浴場がオープ ンするが、金沢市内から車で約20分、 北陸鉄道で約30分という距離に位置す ることから、シーズン中は海水浴や海 豹り、ヨットなどのマリンスポーツを 楽しむ人々で賑わう。

 そのため、同消防本部にとっては、 溺水などの水難事故に対する防止対策 の充実が重要な課題の一つとなってい る。同消防本部では、1985年に水 難救助隊を発足させるなどして、救命 率の向上に努めてきたが、いまも年間 数件の水難事故が発生している。

 そこで、救命率をさらに高めるため の方策が検討されていたが、その一つ として今年から具体化したのが、海水 浴場への手作り看板の設置であった。

 水難救助隊が待機している同消防本 部は、内灘海水浴場から車で5分ほど の地区にあり、事故発生の連絡が入る と、直ちに隊員が現場へ駆けつけ、心 肺蘇生法などの救命処置を行う態勢に なっている。

 しかし、各海水浴場は内灘海岸の海 岸線に治って約9kmの間に位置してお り、たとえば、同消防本部からもっと も離れている西荒屋海水浴場の場合、 119番通報を受けてすぐに出場して も、現場到着までに7〜8分かかる。

 救命率を向上させるためには、事故 発見から初処置までの時間をできるだ け短縮させることが大切だが、この場 合は、水難救助隊が到着するまでの間、 現場に居合わせた人が心肺蘇生法を速 やかに実施できるかどうかが重要なポ イントになる。

 そこで、同消防本部は、町民を対象 とした普通救命講習会を1994年7 月から開催し、心肺蘇生法などの応急 処置の知識の普及に力を注いできた。 昨年度はおよそ300人の町民がこの 講習を受講している。 一方、内灘海岸の各海水浴場には県 内外からも多くの人が訪れる。町民に 心肺蘇生法を普及させるだけでなく、 他の地域から海水浴場を訪れた人たち にも心肺蘇生法の重要性と実際の手順 を知ってもらおうということになり、 今回、心肺蘇生法を図解した看板を作 製することとなった。

 看板は縦約90cm、横約180cmの大 きさで、「あなたにもできる心肺脳蘇 生法」とタイトルがつけられ、気道確 保、人工呼吸法、心マッサージのそれ ぞれの手順が、目立つ色合いのイラス トでわかりやすく説明されている。

 看板作りは、忙しい勤務の合間に、 同消防本部の警防課員によって行われ 4月末に完成した。

 看板は内灘海水浴場に設置された が、海水浴シーズンの始まる7月上旬 には、権現森、西荒屋の各海水浴場に も看板の設置を予定している。

東京駅に旅行者向け救急援護センターがオープン

(財)鉄道弘済会  さる3月28日、旅行者の傷病に対す る応急手当等を目的とした「東京駅旅 行者救急援護センター」が、東京駅に オープンした。同センターは、鉄道 弘済会が、東京駅の利用者に対するサ ービスの一環として開設、運営する。

 東日本旅客鉄道(JR東日本)で はすでに、"人にやさしい駅づくり" の一環として、東京駅丸の内南口を「福 祉ゾーン」と位置づけ、身障者待合室 や身障者トイレを設置している。今後 は、同センターもこれらの施設と同様、 多くの乗降客に利 用されることが期 待できる。

 同センターの設 置場所は、東京駅 丸の内南口のドー ムの一画(図1) で、広さは、42・ 3m3である。血圧計な どの簡単な医療器 具と休養ベッド2 床、それに電動車椅子利用者のための 貸出用のバッテリーと充電器などを備 えている。

 業務の内容は、身障者や高齢者に対 する旅行相談および情報の提供(駅や 宿泊施設等における車椅子用の設備の 有無など)、旅行者の病気やけがに対 する援助(応急処置、病院への移送等)、 一般案内等で、すべて無料となってい る。開設時間は、8時から20時で年中 無休。センター内には、看護婦や相談 員を含む2〜3人のスタッフが常駐し ている。

 同センターの前身は援護相談所で、 一時は上野駅や大阪駅など21か所に設 置されていたが、JR東日本管内では、 1987年6月までにすべてを廃止し た。

 その後、鉄道弘済会では、1989 年に上野駅で身障者の人々の旅行相談 や応急処置等を行うため、センターを 再開したが、地下3階の新幹線改札内 という立地の悪さと、東北・上越新幹 線の始発駅が東京駅に移ったことなど から、一般の乗降客にはあまり知られ ていなかった。そこで今回、東京駅に センターを新設し、上野駅のセンター は廃止することになったのである。

 東京駅は、一日の乗降客が約160 万人、そのうち車椅子利用者が40〜50 件を占める。また、救急車の出場件数 も年間1700件を超す、日本でも有 数のマンモス駅である。

 現在、同センターの利用は1日平均 約15人ということだが、今後、同セン ターの存在が周知されれば、利用者の 数が増えることは明らかである。また 鉄道弘済会でも、乗降客へのサービス 向上に貫献するためにもどんどん利用 してほしいとしている。


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