この原稿は救急医療ジャーナル'96第4巻第1号(通巻第17号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

通信衛星を使用し、救急車で搬送中の患者の医療画像を伝送

−松本市・救急救命業務支援システムを実験  患者を搬送中の救急車から、通信衛星を使って、医療データや情報の画像を医療機関に送る「救急救命業務支援システム」の実験が、昨年12月6,7の両日、長野県松本市を中心にとした地域で実施された。

 この実験は、信越電気通信監理局主宰の研究機関である「地域振興のための電波利用に関する調査研究会」(座長・大下眞二郎・信州大学工学部教授)が中心となって、フジテレビを主体とした 「SNG移動体通信研究会」と共に行った。

 従来の通信衛星波の場合 、車にアンテナを積んでいても、停車しなけれな画像を伝送することが出来なかった。

 これに対して、今回の実験に用いられたシステムは、走行中の伝送が可能な最新のシステムを採用しているため、移動中の救急車からリアルタイムの画像及び心電図などの情報が、救急支援センターに送ることが出来る。

 そのため、救急車内の救急救命士は、医師の迅速な支持を受けて処置を行い、病院では、患者の様態に合わせた受け入れ態勢を整えることができる。これが、このシステムの最大の狙いである。

 また現在、救急救命士と医師の情報伝達に使用している自動車電話には、電波の届かない地域やサービスエリア外では使用できないという欠点があるが、通信衛星を使えば、この欠点を補うことができるという利点もある。特に、山岳地帯など電波の届かない場所の多い地域では、このシステムのメリットは大きい。

 同研究会・画像通信教育係分科会の会長を務める信州大学の滝沢正臣助手(医学部放射線科)は、今回の実験について、「日本各地には、自動車電話の電波が届かない山岳地がたくさんあります。そうした地域では、医療機関までの距離も長く、長距離搬送になることが多いのが実情です。 さらに遠くの病院に転送しなければならないケースもあります。電波の届きにくい地域内を30〜1時間かけて搬送しているのが現状でから、患者の搬送中の救急車から、さまざまな情報をやりとりできる通信衛星を利用する方法には、非常に期待しています」と話している。

 むろん、通信衛星でも障害物にって通信が遮られることはある。たとえば、高架下やビルの陰、トンネル内では画像がとぎれてしまう。しかし「このシステムを必要としているのは、自動車電話の電波が届かない山間地や、医療施設が遠く、かなりの搬送時間を要するような所です。ですから、ビルや高架などについては、それほど大きな問題になることはありません」(滝沢助手)。

 さらに、ジャイロコープ(アンテナ)は衛生を自動的に追尾する性能を持つため、画像がとぎれる時間が非常に短い。従来のアンテナは、一度障害物によって通信が妨遮られると方向を失うため、再び通信元の方向を得るまでに時間がかかるのだが、ジャイロスコープでは、障害物がなくなれば瞬時に通信をキャッチすることができる。たとえば、トンネルに入った画像がとぎれても、トンネルをでた瞬間、再び画像が映し出される。

 実験当日は、松本広域消防局の高規格救急車も用意されたが、簡単に衛生を積むことは出来ないため、テレビ局の衛生中継車を利用した。

 数人の救急救命士が乗り込んだ実験者は、松本市街地や長野道を走行。画像は、地上から約3万6千キロメートル離れた通信衛星に送られ、信州大の医師ら十数名が注目する画面に映し出された。

 受信モニターは4分割画像で、車内外の映像を映し出す2台のカメラ映像、心電図、患者の治療歴やレントゲン写真などのデータの入ったICカードが映し出された。同様に、救急車内では、救急救命士らが指示を出す医師の画像を見ることができる。

 会議室でモニターを診た医師たちは「画像は、思いのほか鮮明。画面の切り替えやズームアップも自在なので車内様子が手に取るように分かる」と、非常に好評であった。滝沢助手も、「デジタル画像なので、患者の顔色や唇の色まではっきりと分かりました」と、その性能の良さを強調している。

 現在でも、心電図などは電送されているが、患者の様子を実際に見ることによって、さらに正確に様態を把握するという試みは、本実験が初めてであった。

 一方、実験の参加した救急救命士の間からは、「自動車電話だけのやりとりに比べ、ずっと安心感がある」という声が上がった。このシステムが本格化すれば、双方の画像が見られるため、さらに安心感が増すと思われる。

 滝沢助手は、「指示を出す医師の側も同じ印象を持ったと思います。お互いの顔を見ながらコミュニケーションができるため、音声だけのやりとりよりも、信頼感が増すのではないでしょうか」と話している。本システムの実用化には、受信機材の小型化など技術的な改良が進められなければならないが、それよりも大きな課題は資金面の問題である。今回の実験でも衛生使用料など多額な費用がかかっている。

 また、現在の高規格救急車にそのまま資機材を積むことは難しいため、システム導入の際には、新しいタイプの高規格救急車が必要になる可能性がある。

 滝沢助手は、「実用化にあったっては、国単位での取り組みが必要でしょう。しかし、移動体通信衛星を打ち上げる費用も、30年前に比べれば何十分の一になっています。救急車から通信衛星を使った医療画像を送るといった実験は、おそらくまだ世界でも初めて。

 この実験を第一歩として、今後もシステムの実験に向けて研究を進めていた」と話している。


救急患者の同意を得て新薬や医療器具の実験を行う規約をFDAが策定

 米国FDA(米食品医療薬品局)は、救急医療用の新薬や新医療器具に関する研究の規約について、その草案を昨年9月21日号の研究の「Federal Register(連邦政府発行の官報)に発表した。

 最終的に規約が確定するには、この草案に対する一般からの意見(期限は昨年11月6日まで)を、FDAで再検討した後になる。

 自分の命にかかわるような研究を行うことについて、救急患者からインフォームド・コンセントを得るのは非常に難しいことであり、不可能であるとも言われている。今回の規約は、この問題に正面から取り組むのである。

 「この新しい規約の目的は、人の命にかかわる未認可の薬や医療器具の試験をどのように進めればよいか、そのルールを明確にすることと、そのような実験を行う際に、患者を保護する手段を提供することです」と、FDAは述べている。

 新しい規約では、第三者の医師及び病院で検討会を行い、該当する研究について、人命にかかわるような状況で行わなければならないかなど、いくつかの基準に合致していることが承認されなければならない。

 また患者を守るため、研究者のたいして、その地域の人々の意見や、別のデータ安全性監視委員会の情報などを参考にするように求めている。また、患者あるいは患者の代理人から同意を得られることができるように、インフォームド・コンセントに必要な書類を手近に準備しておく。そして、研究者は速やかに、患者あるいは患者の代理人に研究について説明し、患者がその研究に参加しない自由も認めなければならない。

 今回は、一般に意見を求める期間が比較的短かった。これについてFDAは、「できる限り早急に、新しい規約を確立したいと考えています。救急医療の分野は、研究が非常に必要とされているため、そのような研究が、患者の保護を確実にした上で行われるようにしていきたいと思います」と述べている。 (訳/三上 斉)


消防団員も救急救助活動に参加

−仙台市・消防団の強化を検討  仙台市では、消防団の強化のために、「仙台市消防団のあり方に関する検討委員会」(委員長・斉藤吉雄・東北学院大学教授)を設立し、検討を重ねてきた。同委員会は、大規模災害に強い消防団育成のための提言をまとめ、昨年11月、藤井黎市長に答申した。

 提言のポイントは2点である。一つは、消防団に応急処置の方法を指導し、大規模災害が発生した際には従来の消火、水防活動のほかに救助活動も行えるようにすること。もう一つは、深刻化する団員不足の解消のために、消防団のイメージアップを図ることである

 大規模災害が発生した際、救急車が出動できる範囲は限られている。そのため、救急車が十分に対応できないときには、地元住民が力を合わせて身を守ることが必要であり、大規模災害発生時の救急救助対応としては、各地域に根ざした「市民救急」の活動が欠かせない。

 そこで今回の提言で、消防団の各分団に「市民救急部」を設置することが重要なポイントとしては指摘されている。

 これまで仙台市の消防団の分団組織は、庶務部、予防部、消防部、水防部の四つの部で構成されており、それぞれが独自の活動を行っていた。これに「市民救急部」を加え、災害時の救急救助活動を強化、業務の細分化を図るというのが骨子である。

 市民救急部には応急処置を習得した団員を配置し、災害時には、的確な応急手当を行うとともに、普段から地元住民の指導、普及に努める。

 市消防局としては、活発な活動ができる若い団員を「市民救急部」団員として育成していきたい方向である。救急救助教育は、市消防局が考案するカリキュラムに基づいて行われ、早ければ来年度から活動し、早急に完成させたいとしている。

 消防団員の不足は、全国各地変わらない悩みだが、仙台市でもこの問題は、年々深刻化している。定員団員数2千430人に対して、1995年4月1日現在の団員数は2千155人と、定員割れの状態が続いているのである。

 とにかく、市中心部での団員数は少なく、周辺部の定員充足が90%程度なのに対して、中心部では76%となっている。

 原因としては、消防団の活動や、消防団そのものについての理解不足のほか、時間的制約や拘束を嫌う風潮など、さまざまなことが考えられる。

 そこで、仙台市では、市中心部の団員確保の対策の一つとして、平成2年の条例改で、その地域に勤務している者も、消防団員になることを認めることにした。これまで、その地域の住民でなければ消防団員になることができなかったため、住民の少ないオフィス街では団員確保が難しかった。

 この問題も条例改定により、多少は解決されたようである。現在、14人が、それぞれの勤務地で消防団員として活躍している。

 また、消防団への自主参加を促進させるための方法として、消防団のイメージアップを図る様々な方法が検討されている。例えば、消防団の積極的なPR、また、制服を若者の感性に合わせたものに変えていくことなどである。

 そのほかにも、災害出場の報酬額の見直しや、従来、年功序列制であった昇格制度を見直すことも、検討課題としてテーマに上がっている。


オートバイ愛好者家たちによる災害時ボランティア活動ネットワークが各地で誕生

オートバイ愛好家たちが全国規模の災害ボランティア協会を組織化  埼玉県川口市に本部を置くモータースポーツ愛好会「スポーツキッスクラブ」が、災害ボランティア協会の設立に向けて、活動をスタートした。

 1989年に発足した同クラブは、会員数1万人を越える全国的な組織で、今までにミニバイクレースの開催やオフロードバイクの講習会などを主催し、モータースポーツの普及に努めてきた。これを発展的に解消し、災害時にオートバイによる人命救助やボランティア活動を行えるように、「日本ボランティア災害協会」(略称J−VOAD)として新たに活動を開始し、法人化を目指そうというものである。

 同協会設立のきっかけは、阪神・淡路大震災だった。地震の起きた昨年1月17日、神戸の会員からの連絡を受け、医師6人を含むメンバーが約50人が、オートバイで現地に向かった。

 同クラブの荘利光会長は次のように語る。「崩壊した建物や渋滞の間をぬって救助物資の運搬や連絡業務を行うには、オートバイが最適であるといち早く感じ、近隣だけでなく、埼玉県や神奈川県、静岡県などの会員がすぐに現地に向かったのです。ところが、さまざまな問題に直面することになりました」

 まず、医師以外の会員は「一般車両」としか見なされず、途中、交通規制で足止めされた。また現地では、指揮系統が不明瞭であるなどの問題があった。

 そのため、会員たちは、最初に訪れた神戸市役所では混乱のために指示を受けることができず、個別に避難所等を回って、現場の要請の下に活動を行うことにした。しかし、その際も、医療物資を運ぶには公的な許可が必要であるなど、規制の壁にぶつかってしまったのである。

 3日間の活動を終えて会員たちの間からは、「条件さえ整っていれば、救援活動にオートバイをもっと役立てることができたはず。緊急時に十分に活動できるような体制づくりをして欲しい」との強い要望の声が上がった。

 そこで生まれたのが法人化の発送である。荘会長は「災害時には、一般ボランティアの立場では限界があります。災害時に、警察からも緊急車両として認めてもらい、効率よく活動するためにも、協会の法人かが必要なのです」と話す。昨年末には、国土庁や自治省から、組織の構想について打診があったという。

 新組織設立に向けて、現在さまざまな方針が決定されつつあり(表1)、年間計画もスタートしている(表2)。

 これまで同クラブの講習会には約千人が参加し、運転技術の訓練が行われてきたが、今年からは、各地の消防本部による救急救命講習を組み込むことになった。講習会は1月14日の栃木県・那須モータースポーツランドを皮切りに、各地の消防本部と連携をとり、随時実施していく予定である。

 現在、同クラブには、約50人の国際A級ライセンスを持つライダーが所属している。このクラスのライダーになると、白バイ対の講習会の講師を務めることができるテクニックを持つだけでなく、ファーストエイドと呼ばれる救急救命処置の講習も受けている。

 「日本には、ホンだ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4台メーカーがあり、各メーカーがファーストエイドの講習会を行っている。これはレース中の事故を想定したものですが、一般的な救命技術としても十分通用するものです。しかし、この資格は、一般に広く認められているものでありませんので、今後は、全会員が消防本部による救急救命講習を積極的に受講していこうと話しています」(荘会長)

 組織としては、川口市に本部を、北海道、東北、北陸、関東、中部、関西、中国、四国、九州の9支部を置く予定。支部長には、救急救命講習を指導できるように、国際A級ライセンスクラスのライダーや医師をあてるとしているが、そうしたライダーたちは、すでに地元で独自の活動を行っているケースが多い。

 たとえば、静岡県浜松市では、モトクロス元全日本チャンピオンの大関昌典さんが「浜松レスキューサポート・バイクネットワーク」を組織、活動している。

 「A級ライダーは、現在所属している組織は違っても、何らかの形でつながっており、常にお互いの情報交換を行っています。浜松だけでなく、四国など各地ですでに活動を行っている団体に、支部として活動してもらうことも計画しています」(荘会長)」。

 同クラブでは、全国各地にネットワークを広げるため、一人でも多くのライダーの参加を呼びかけている。(連絡先:048−257−1031)

1 オフロードバイクによる救急救助隊を結成−(社)調布青年会議所の有志で  昨年9月、調布市在住の会社役員・国府田毅さんを中心に、(社)調布青年会議所(JC)のライダースクラブの有志約30人で、オフロードイクによる災害時救援活動支援ボランティア「調布レスキューサポート・バイクネットワーク」(通称・調布RB)を結成した。災害時には、自主防災組織や関係機関と連携しながら、情報活動、救援活動、救援活動の支援を行っていこうということである。

 調布青年会議所は、阪神・淡路大震災の発生から11日後の昨年1月28日、被災者に役立ててもらおうと、調布市内で集めた放置自転車をトラックで被災地に運搬し、配布した。国府田さんは、このとき活躍したメンバーの一人で、被災地での惨状と交通網の麻痺を目のあたりにして以来、緊急災害時のバイク救助隊を結成できないかという構想を温めてきた。

 国府田さんがバイク救助隊の結成に向けて本格的に動き出したのは、オフロードバイク専門誌の記事で、「浜松レスキューサポート・バイクネットワーク」(通称・浜松RB)の阪神・淡路大震災のは救助活動の報告を目にしたのがきっかけである。

 「オフロードバイクは、道路が寸断したり、建物が倒壊したことが原因で大渋滞が発生した場合でも、比較的速やかに走行することが可能です。阪神・淡路大震災での浜松RBの活躍ぶりを聞いて、災害救助活動にオフロードバイクが有用であることを再確認しました」と国府田さんは語る。

 昨年8月、国府田さんは単身浜松市に赴き、浜松RBが主催した150台のオートバイによる市街地の情報伝達の訓練に参加した。これをきっかけに、調布ライダースクラブのメンバーとして組織づくりを開始、このほど「調布レスキュウーサポート・バイクネットワーク」の発足にこぎ着けた。

 国府田さんらは、以前から救急救助活動には関心を持っており、調布青年会議所としては、1994年10月より「安心して暮らせる町をつくろう」というコンセプトを揚げ、救急救命についての勉強会や講習会を実施してきた。たとえば、94年10月には、日本医科大学理事長の大塚敏文先生の講演を、95年9月9日には、応急手当講習会を主催している。

 そのため、同青年会議所の会員100人のうち70人は、すでに応急手当の講習会に参加している。また、昨年8月、東京消防庁が東京都災害ボランティアを募集した際には、会員のうち約20人が、他に先駆け登録したという。

 調布RBの今後の展開としては、浜松RBと連携しながら、ミーティングや訓練、研修を重ねていくことになっている。

 訓練では、主に不整地走行、市街地走行、情報収集、伝達訓練を行い、研修では、応急手当、救助方法、医療品の知識を身につける。

 また災害時には、被災地一帯の道路、鉄道交通機関、行政、医療機関、ライフラインの被害状況を迅速かつ的確に収集し、関係機関に伝達する情報活動を中心に、初期救援活動にも携わる。

 現在調布RBのメンバーは、全員が東京消防庁の普通救命講習を終了している。今後は、市内の大学生や一般企業のツーリング愛好会のほか、広く同ネットワークへの参加を呼びかけていく予定。運転免許のない人やバイクを持たない人、調布市外在住の人でも参加が可能であり、入会した人には、日本赤十字社か消防署で救命講習を受講してもらうことにしている。

 「浜松RBには、静岡県外からも多くの参加者があると聞いています。こうした人たちが居住地域で同じ様なレスキューバイク隊を結成していくことで、将来的には、災害時の全国的な相互救援網を張ることができればいいなと思っています」と国府田さんは抱負を語っている。


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