この原稿は救急医療ジャーナル'95第3巻第6号(通巻第16号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

大阪市消防局,OB災害協力隊を発足

−地域の自主防災活動のリーダーとして  大阪市消防局は、この9月、市内在住の消防局退職者による防災ボランティア組織「大阪市消防局OB災害協力隊(愛称・FAVOR)」を発足させた。

 阪神・淡路大震災後、震災の惨状に心を痛めた数人の退職者から、大阪市消防局に「災害時の地域内の防災活動に協力したい」という申し出が寄せられた。これをきっかけに、同消防局が、災害協力隊への協力を呼びかけたところ、市内在住の70歳未満を中心とした健康な退職者155人が名乗りを上げた。消防局の退職者による防災組織が結成されたのは、これが全国で初めてである。

 発足式は、9月5日に同市港区の海遊館ホールで開催され、約90人の協力隊員が出席。

 隊員による可搬式ポンプを使用して放水訓練や、人形を使っての人工呼吸や心臓マッサージ、三角巾による包帯法などの技術訓練が披露された。阪神・淡路大震災は、多くの人命を奪い、建物や道路を破壊した惨事であったが、大規模災害の被害を最小限に食い止めるのに、市民自身の自主的な活動が大きな力となることを印象づけた。その意味で、この経験を今後の災害活動に活かしていくことが大切である。

 住民による自主的防災活動を強化するには、大規模災害に的確に状況判断を行い、救助・消火活動全般を指揮するリーダーが各地域に存在することが必要である。

 このような点から考えても、OB災害協力隊の発足は、大規模災害時に、より迅速で的確な自主防災活動を進める足がかりとなるものと期待されている。

 これまで大阪市消防局は、震災訓練や講習会、防火の集いなどの機会に、公園に設置してある可搬式ポンプや消化器、水バケツによる消火訓練や、応急手当の方法を、市民に指導してきた。今後、隊員には、地域の防災訓練への積極的な参加を呼びかけるとともに、災害時には初期消火、応急手当、避難誘導、情報収集などの活動で、地域住民を指示するまとめ役を務めてもらうことを、同消防局は望んでいる。

 大阪市消防局OB災害協力隊の隊員は、災害に対する知識や経験、技術を持つだけでなく、地域の地理や人脈にも明るい。地域の実情に即した災害時の密な協力体制を築き上げていく可能性を持つものとして、今後の活動に期待したい。


911コールのディスパッチャーはすべて州免許が必要に

−アメリカ・ペンシルベニア州  アメリカ・ペンシルバニア州は、911コールのすべてのディスパッチャーに州免許の取得を求める最初の州になりそうである。

 この法案がきっかけとなったのは、1994年11月に起きた有名な事件で、ティーンエイジャーが集団暴行を受けているとの通報が30件以上寄せられたにもかかわらず、パトカーが最初に到着したのは通報から38分後で、そのティーンエイジャーは死亡したというものである。その後の調べで、ディスパッチャーがこれらの通報に高い優先順位を与えず、しかもパトカーは違う場所に派遣されたことが判明した。

 この法案が通れば、ディスパッチャーになるためには、最低40時間の訓練を受け、試験にパスしなければならない。また、免許取得後も2年ごとに12〜20時間の再教育講習を受けることになる。また原案では、3年以上経験のあるディスパッチャーについては試験は免除されるが、訓練と再教育講習には参加する必要があるとしている。

(訳/三上 斉)


災害時の応援協定策定

−東北救急医学会、北海道・東北地方知事会  東北6件の医師らによって構成される東北救急医学会では、大災害が発生した場合、6県の病院が県境を超えて救急医療活動にあたれる相互応援協定づくりに乗り出した。

 この協定は、今年5月、郡山市で開催された第9回東北救急医学会総会で提案されたもの。すでに学会内部には協定検討委員会が設置されており、来年5月の総会で承認を得て、スタートさせる予定である。

 阪神・淡路大震災においては、地震発生直後の対応の遅れが被害の拡大を招いた。そのため、各地で大規模災害時の相互協定づくりや医療システムの整備が急ピッチで進められているが、東北地方は、阪神・淡路大震災の直前に、三陸はるか沖地震が発生している。

 協定の発案について、同会の前田朝平会長(八戸市民病院麻酔科部長)は、「三陸はるか沖地震の時は、従来のシステムで対応することができたが、その後に起こった阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件はそれを上回る規模の災害だった。大規模災害が起これば、県内・市内の病院だけではとても対応できないという意見が数多く出され、今回の協定の発案に至りました」と話している。

 この動きに合わせる形で、10月31日には、新潟県を含む東北7県と北海道を合わせた8道県の知事会で、「大規模災害時の北海道・東北八道県相互応援に関する協定」が締結、同日から発行された。

 この自治体間の相互応援協定は、災害発生から35日後までの救援体制を重視した実践的な内容となっている。特徴は、被災道県からの要請がなくても、他動県が自主的に救援隊を出動させる仕組みにある。

 たとえば、防災ヘリコプターを所有している北海道、青森県、宮城県、新潟県の4道県は、8道県の大規模災害時に、自主的な判断で防災ヘリを飛ばし、被災地の情報収集にあたる。

 このとき、混乱を防ぐための方法として、被災道県に近い順に防災ヘリを出動させるよう優先順位を決めた(表1)。

 また、津波災害を想定、同時に被災する可能性を考慮して、太平洋側と日本海側の道県を組み合わせた出動優先順位も決定した(表2)

 自治体間の相互応援協定においては、救助活動や救援物資の輸送等が中心になっていることが多いが、これを補完する形で、医療機関間の連携や、医師や看護婦の派遣という人的な観点から応援協定を結ぼうとしているのが、東北救急医学会の動きといえるだろう。

 前田会長は、「大規模災害時には迅速な救急救助活動が重要であるが、それに連動する医療活動も必要である。現在、各道県の間で整えられつつあるシステムについて、医療サイドとしてどのようにかかわっていけるのか、つまり自治体、消防署、警察と連携しながら、病院間で医療中心の協力づくりをしていこうということなのです」と語る。

 原案として、東北大学に事務局を置くことが予定されているが、情報収集については、何らかの既存のシステムを活用していくことが予想される。

 各医療機関は、医師や看護婦、救急車、ドクターカーの数や派遣期間など、出動可能な医療活動内容を登録しておく。災害時には、情報を得た事務局が、登録されている各医療機関に、医療スタッフなどの現地派遣を要請することになる。

 さらに、個々の医療機関においても、迅速かつ効果的な医療活動が実施できるようなシステムが検討されている。たとえば、医療スタッフや設備が充実している各県の主要な病院に対して、緊急時に備えた病院内の医療チーム作りを提案していこうという構想がある。

 各病院内に、緊急時に活動できる医療チームを編成・組織化しておくことで、より効率的な医療活動を目指す。

 「各赤十字病院では災害時の医療協力体制が整っていますが、これは各病院内であらかじめ組織化されている班の活動によるところが大きいと思われます。それを参考に、今回の協定でも、各病院に対して、大規模災害に備えての医療チームづくりを推進してきたいと考えています」(前田会長)。

 10月には、各県2一ずつの代表医師らによる協定検討委員会が設置され、11月25日には、盛岡で初めてのミーティングが行われた。今後、委員会のメンバーである前田会長や東北大学医学部の吉成道夫教授(救急医学)らが中心となって、来年5月のスタートに向け、検討を重ねていく予定である。

 前田会長は「東北もいつ大災害にあうかわからない。そのときにいかに効率よく医療活動を行えるか、救急医療の立場から協定締結を目指したい」と話している。


EMT、パラメディックの業務拡大される

−アメリカ・カルフォルニア州の場合  アメリカ・カルフォルニア州では、今年8月に成立した法律により、1996年1月1日から、地方の小規模な病院の救急部内で「患者の病体が危機に瀕している場合」に限り、勤務中のEMTまたはパラメディックが、自分でできる業務の範囲内で処置を手伝うことが許される。

 ただし、EMTまたはパラメディックは、病院で訓練プログラムを終了し、毎年各自の適正を判断する講習や試験を受け、証明書を発行してもら分けなければならない。

 また、病院はそれぞれを監督する責任を持ち、事前にそのEMTまたはパラメディックが所属する民間救急の会社と契約を結んでおかなければならない。

(訳/三上 斉)


航空機事故消火救難総合訓練を実施

−新東京国際空港  10月19日、新東京国際空港において航空機事故消火救難総合訓練が実施された。この訓練は、新東京国際空港において航空機事故が発生した場合、関係機関が連携してあらゆる緊急活動をスムーズに実施することを目的として行われ、52の関係機関と地元医師会等の4協力機関が参加した。

 参加人員は、およそ900人、使用した車両はおよそ150台で、本番さながらの緊迫した訓練が広げられた。

 訓練は、新東京国際空港の整備上の一画で行われた。午後2時、○○航空19便(ボーイング747型機)が滑走路に着陸した際にエンジン付近から火災が発生。飛行機は滑走路横の緑地帯につっこんで擱座し、炎上しているという想定である。

 現場には、総合指揮を行う現場調整所(空港公団が保有する総合指揮車の中に設置)、火災防御、救助・救急活動にかかわる指揮を行う消防現場指揮所(成田消防本部が設置)、現場避難所、トリアージを行う負傷者選別所、治療を行う救護所、遺体安置所などが設けられた。

 午後1時45分、訓練開始宣言がされ、救急医療器材搬送車が出動し、設営班の手で救護所、負傷者選別所等が設営された。午後2時丁度に事故想定機が訓練場に移動してくると、周囲はとたんに慌ただしくなった。機内には、重傷者20人、無傷者40人が閉じこめられている。

 消防車両が行きき交い、随時、放水を始め消火にあたる。事故想定機からはすばやく脱出シュートが出され、乗務員に誘導された無傷者や軽傷者が次々に脱出してくる。脱出した人々は、避難誘導員の誘導で救出地点へ集められ、負傷者選別所を経由して現場避難所へ。その後、一時収容所からホテル等への後方施設へバスで搬送される。

 一方、重・中等症者は機内に突入した救助隊員に抱きかかえられて機外に搬出される。いったん救出地点に下ろされた後、担架で選別所に搬送され、そこでトリアージが行われる。負傷者はあらかじめ傷病名が書かれているカードを首からぶら下げており、これと問診を元にトリアージタッグが付けられる。

 トリアージが終わった負傷者は救護所へ搬送され、医師による治療を受けた後、地元救急隊による救急車で後方医療機関へと搬送される。死亡者は、救護者から遺体安置所へ運ばれ、検視及び身元確認が行われる。

 航空機事故では、航空会社の乗客名簿があることから、他の大規模災害に比べ被災者の身元確認を比較的容易に行うことができる。今回の訓練でも事故想定機を提供したノースウェスト航空の職員が、乗客の身元確認を意欲的に行っていた。

 また、国際空港という性格上、外国人乗客も多いことが予想されるため、通訳関係も配置された。

 新東京国際空港における航空機事故消火救難総合訓練は、年1回行われ、今回で14回を数える。例年は日本航空(株)、全日本空輸(株)の協力により、事故想定機が提供されるのだが、今回は特別にノースウェスト航空の協力があったことから、同社の保有機を使用しての訓練となった。

 当初、今回の訓練では負傷者搬送に自衛隊と千葉市消防局のヘリコプターが使われる予定であった。ところが、当日はあいにくの悪天候で、ヘリコプターの出動は見送られた。

 救急ヘリ搬送への関心が高まっているが、実際運用をすみやかに行うには、折に触れての訓練が欠かせない

 この点、新東京国際空港における訓練では、その特殊性もあり、例年、ヘリコプター搬送に組み込まれている。今回の悪天候は残念である。


航空機による救急救護搬送の研究会開催

 「第2回の日本エアーレスキュー研究会」(弘前大学医学部付属病院救急部・滝口雅博当番世話人)が10月19日、東京都新宿区のグランドヒル市ケ谷で開かれ、全国から医師、看護婦、自衛隊、消防、企業関係者など約210人が集まった。

 航空機による救急救護搬送システムの確立と普及を目的に設立された同研究会の今年の主なテーマは、阪神・淡路大震災を教訓としてた「阪神・淡路大震災時ヘリコプターによる救護搬送」、これまであまり総合的な検討が行われなかった「救急専用ヘリコプターの内装・装備について」、海外出張中の人や、旅行者の医療帰省についての「航空機搬送による患者搬送の諸問題」などで、具体的な事例を踏まえた発表と活発な討議が行われた。

 また、特別講演として米国最大大手の患者搬送組織であるエアー・メソッド社のマイケルG・プリート氏による「米国における患者搬送システムについて」の講演が行われ、救急医療サービスの紹介とエアー・メディカル・サービスの効率的な活用方法、救命率向上の成果、こそとパフォーマンスなど、すでにアメリカの医療の中で欠くことのできないものとなっている、航空機による医療サービスの現状についての説明があった。

 とりわけ国際救護搬送の非営利団体であるオペレーションブレッシングのL1101大型ジェット”フライング・ホスピタル”の映像による紹介では、四つの手術室、歯科・眼科治療やリカバリー室などを備え、同時に24人もの患者の治療を行うことができる”夢の空飛ぶ病院専用機”に、多くの参加者から、ため息と叫驚喚の声があがっていた。

 救急医療体制の中に少しでも早く救急ヘリコプターの地位が確立されることを目指して開かれた今回の研究会は、例年より参加者も増え、航空機搬送に対する関心の高さを示していた。

 なお、次回は1996年10月25日東京千代田区のスクワール麹町で開催される予定である。 (取材・悳 秀彦)


自分の意志に反して蘇生された場合は、命を助けた人に対して損害賠償の請求が可能に

−アメリカ・オアハイオ州の判例  アメリカ・オハイオ州の上訴裁判所は、患者が自分の意志に反して蘇生された場合、自分の命を助けたにとに対して損害賠償を請求できるとの判断を初めて下した。

 アンダーソン対聖フランシス・聖ジョージ病院事件として知られる本件で、予審法廷は病院側の言い分を認めたが、今回、上訴裁判所は、「ウィンター氏は自分に対する医療については明確な指示を出していたにもかかわらず、それが不注意に、または故意に無視された。ウィンター氏の治療を拒否する権利が明らかにされた」とした。

 損害賠償を起こしたことは、ウィンター氏の財政管理の弁護士であるアンダーソン氏である。

 ウィンター氏は、自分は蘇生されることを望まないとの意志をはっきりと表明し、担当医はこのことをファイルに記入したにもかかわらず、病院の人間が彼を蘇生したため、蘇生時間30時間後に脳卒中を起こし、まひに苦しむことになった。

 この判決は、善意の医療従事者の犠牲によっても、患者の意志が常に優先されるべきだある、と多くの裁判所が認め始めていることを示している。オハイオ州最高裁判所はすでにこの件の審理を受け付けたとのことである。

 (訳/三上斉)


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