この原稿は救急医療ジャーナル'94第2巻第5号(通巻第9号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

主役登場

救急隊が逆子の分娩を介助 母子ともに助かる

清野洋一さん(秋田市秋田消防署) 19○○年○月○日早朝、○○市内のアパートで○○歳の妊婦が、救急隊の介助 により、逆子を出産した。新生児は出産時、心肺停止状態にあり、極めて危険な状態 にあったが、救急隊員の努力により、無事、救命された。逆子の分娩を救急隊が介助 するのは全国でも珍しいことである。

この貴重な体験をしたのは、秋田市秋田消防署所属の清野洋一隊長、渡部顕隊員、 千葉智広機関員の3名である。

アパートの2階で出産6時46分覚知、妊婦の母親から、市内に住む娘が、アパー トで1人で出産しそうだとの通報があった。6時53分現場到着、現場はアパートの 2階、妊婦は苦しそうに台所の柱にもたれかかって立っていた。陰部から胎児の腹 部、両足、臍帯の一部がすでに娩出。臍帯に拍動はなく、胎児の色はチアノーゼを超 えて黒みがかっていた。ただちに分娩介助セットを準備し、分娩を試みた。胎児は胸 部までは露出するが、両肘が開口部にひっかかり、娩出困難、清野さんは妊婦に呼吸 法を指示しながら励まし、渡部さんが胎児の腹部、両下肢を介助して分娩が続いた。

逆子であることがわかったとき、清野さんは足がふるえるほどあわてたという。し かし、現場の状況、母子の状態から、2人の救命のためには、その場での分娩しかな いと瞬間的に判断し、分娩後の母子搬送のために千葉さんに救助隊の出動を要請させ た。そして、いままでの正常分娩の介助の経験を生かし、介助を試みたのである。

6時56分破水、清野さんは、胎児の右側からゆっくりと膣内へ指を挿入。指が胎 児の指にかかり、そのまま体を這わせるようにゆっくりと開口部ヘ誘導すると、右 肩、右腕が出てきた。続いて頭部、左肩が娩出。6時57分、胎児分娩は終了した。

ただちに保温、臍帯切断。胎児の顔は羊水で濡れていた。このとき渡部さんはとっ さに口を合わせて羊水を吸った。足の裏を刺激するが、胎児はぐったりとして動かな い。

心肺停止である。すぐに2人で行うCPRを実施。同時に、千葉さんによる母体管 理、新生児ヘの酸素吸入、吸引器の準備等が行われた。

子どもが母親の胎内から出てきたとき、救急隊の間には一種の安堵感が生まれた が、それも束の間、新生児はアプガースコア0の状態であった。そのとき、清野さん の頭の中には、母親の救命のみに専念すベきでは、との考えがよぎったという。

しかし、清野さんの目の前には、まだ臍帯で母体とつながったままの新生児に口を 含わせて羊水を吸引している渡部さんの姿があった。子どもを助けようという気持ち が痛いほど伝わり、自分もベストを尽くさなければと逆に勇気づけられたという。

心臓が動いた、呼吸もしている。

7時心拍再開、CPR開始約3分後、心臓マッサージをしていた清野さんの指に拍 動が感じられた。人工呼吸をしていた渡部さんのマスクバックにも、わずかながら抵 抗が感じられた。心臓が動いた。呼吸もしている。「がんばれ」、祈るような気持ち でCPRを続ける清野さんの指先に拍動が感じられたとき、赤ちゃんのうすっペらい 胸が確かに動いていた。心拍再開したことを渡部さんに告げ、呼吸観察を始めると、 呼吸も微弱ながらしていた。子どもが息を吹き返したことを母親に告げると、ホッと した表情で喜んだという。

間もなく救助隊が到着。毛布で簡易担架を作成し、保温をしながら母体を車内搬 送、続けて、新生児の呼吸を補助しながら車内収容。心電図をつけると、1分間18 0回の心拍数が認められた。呼吸もだんだんと間隔がせばまり、速くなってきた。

7時15分、現場出発、新生児の呼吸アシストも続け、母子ともに経過観察を行い ながら病院ヘ向かった。

7時21分病院到普、新生児は新生児集中治療室(NICU)で医師により気管内 挿管、インファントウォーマ管理、母体は分娩室で後産が行われた。 母子が搬送された病院の医師は、「助産婦でも難しい逆子分娩を、よく介助し、また 新生児の蘇生が成功したことに驚きを感じる。いろいろな合併症も考えられるが、最 善の新生児管理にあたりたい」と話す。

マニュアル通りでない現場で何をすベきか。

病院からの帰路、3人はほとんど沈黙を守っていた。それぞれが、つい今しがた、 目の前で起こった出来事に感動していたのである。感動のあまり泣いてしまった人も いたぐらいだ。「3人のチームワークがあったからこそ母子を助けられたのだと思い ます。私と渡部隊員がCPRを行っているとき、千葉機関員は母体を励まし続けてく れました。骨盤位分娩というマニュアルにない現場に遭遇したとき、私たちは、だれ に指示されるでもなく、それぞれが自分のやるベき仕事にベストを尽くしました」と 清野さんは語る。

秋田市消防本部は、救急救命士の卒後研修に多大な力を注いでいる消防本部の一つ といえる。救急救命士資格を取得した人は、市内にある四つの三次医療機関で1か月 半を越える実技研修を行う。大学病院の麻酔科で手術室に配属され、血管確保や気道 確保の実際を学びICUでは治療の評価や観察を学ぶ。そして研修の最終段階で、救 急車に同乗した医師により救急救命士としての実力を備えたと判断された場含、めで たく救急救命士として独り立ちできるのである。

今回のような新生児に対するCPRもこの卒後研修で行われるという。救急救命士 として独立すると今度は、救急隊としての訓練が待っている。3人のチームワークを 育むために、数百時間という訓練時間が設けられ、徹底的に訓練が行われる。これに より、各人が自分のするベき仕事を判断し、べストを尽くすという先の行動ができた のであろう。

よりよい救急体制を目指して清野洋一さん(36)は、救急救命中央研修所(現・ 東京研修所)の第1期生。1991年5月に、救急救命士資格を取得した。救急隊員 時代、お風呂で転落し、心肺停止状態になった赤ちゃんを救急車で搬送していると き、子どもの手を握って泣いている母親を前にして何もできない自分、人の死を前に してそばで見ているしかできない自分のふがいなさを痛感したという。しかし、救急 救命士試験を受験するために研修所で過ごした6か月間に清野さんの救急に対する認 識は積極的なものに変わった。教授陣の救急救命に対する情熱、同じ目的をもった6 0人の仲間に接し、人の命を救うために救急隊員がやるベきこと、できることはまだ まだ沢山あるということに気づいたのである。

清野さんは、今年9月上旬から2週間かけてアメリカのシアトルで、世界最高レベ ルの救急体制を体験してきた。それは、

1 メディック・ワンへの訪問と高規格救急車ヘの同乗
2 ハーバービュー病院への訪問とミーティング
3 管制員による電話でのCPR指導等の見学
4 救急医療サービス体制構築についてのミーティング
5 市民へのCPR普及・啓発の見学
6 救急隊員および管制員に対する各種指導の見学
7 民問救急医療会社等、他の救急医療部門への訪問などである。

現在、シアトルでの一次救命処置(BLS)の市民への普及率は約60%といわれ ている。それに対し、秋田市の普通救命講習修了者数は人口30万人に対してわずか 2千人、目標は20%というのが現状である。一般市民へのCPR普及も含め、シア トルで肌で感じ、学んだことを生かし、秋田市が日本における救急医療体制の模範に なれるよう、救急システムの改革、また今後あるベき救急体制を作り上げようと清野 さんは日々活動している。(坂本愛)


「兵庫県下救急救命士会」発足

兵庫県下の救急救命士同士が親交を深めながら情報交換を行い、知識や技術の向上 を図ろうと、「兵庫県下救急救命士会」が発足し、8月3日に設立総会が開催され た。

救急救命士は免許取得後もそれぞれが研鑽に励んでいるが、これを個々人だけで行 うには限界がある。そこで、「救急救命士会」の設立によって、救急救命士間で症例 研究や救急技術の研究を行い、資質の向上を目指そうというものである。 参加したのは、兵庫県の各消防本部に勤務する救急救命士95名。初代会長には神戸 市消防局生田消防署に勤務している正井潔氏が就任した。

設立総会では、開会のあいさつに続いて、設立までの経過報告、役員選出、会則や 予算についての議事が執り行われた。

今回の救急救命士会設立に関して、兵庫県消防長会会長であり、賛助会員にも名を 連ねている上川庄二郎氏は、「平成3年の救急救命士法の施行によって、いままでの 搬送業務主体の救急から、救命業務主体の救急に大きく変革した」とし、「救命新時 代を迎え、誕生したばかりの救急救命士制度が大きく育とうとしている中で、県民の 期待と新時代のニーズに応えるために、救急救命士会の設立は非常に意義深い」と述 ベている。また、「プレホスピタルケアの向上に寄与し、助かるための命を救うとい う救急救命士としての崇高な使命が達成されることを期待している」としている。

総会に引き続いて、「神戸市救急救命士養成所第2期生第5回国家試験合格記念」 と併せて、設立記念の祝賀会も催された。なお、事務局は神戸市救急救命士養成所 (神戸市中央区北長狭通4-9-5、電話078-332-0119)に設置され た。


ニュードクターズカー登場 感染防止、消臭対策を標準装備

マツダ マツダ株式会社は、今年5月、TLプロジェクトの成果として、感染防止・消臭対 策を標準装備したドクターズカーを発表した。

TLプロジェクトは、「安心して暮らすことができる社会づくり」を目指し、岡山 大学医学部中央手術部の呼びかけに産官学の有志が協賛して1991年にスタートし たプロジェクト。現在、6つの委員会を設けて、高齢化社会に向けて解決しなければ ならないさまざまな問題を分析・検討・開発している。ドクターズカーシステム検討 委員会はその中の1つで、マッダ株式会社を始め、26企業が参加し、救急医療や地 域医療のありかたを検討し、それを支援するシステムの提案ならびに車両の開発を 行っている。

同委員会は、医師が同乗して治療が可能であることを前提とした3タイプのドク ターズカーを開発してきたが、今回発表されたのはタイプBのデモカーである。夕イ プBは、マツダアンフィニにMPVにドクターズカーの装備を搭載して改造したも の。「コンパクト」、「機動性」を特徴とし、さらに3タイプ共通の基本にコンセプ トである(1)車室内のアメニティの改善、(2)感染防止対策の充実、(3)最新技術による機 能性、安全性の向上とにコストダウンを図るにとを具体化し、標準装備している。全 長4655mm、全幅1825mm、全高2370mmというコンパクトさで、道幅が狭 く、カーブや坂道が多い日本の道路事情に対応している。一方、外面のコンパクトさ に比ベて室内はゆったりとしており、定員は5名、天井は大人が立てる高さがある。

その上、商業車ではなく普通車を改造したため乗降も簡単で、居住性に優れ、長距離 搬送にも適している。また、変速ショックを抑えるコラムシフト仕様の電子制御4速 オートマチックを搭載することで、運転席と助手席の間の通路が確保され、前席から 患者室への移動が容易である。助手席は180度回転させることができ、患者頭部か らの作業を可能にしている。

このほか、制動時の安定性を高めるリヤーABS、走行 安定性を確保するためのLSD(リミテッドスリップデフ)などが装備されている。

標準装備では、強力な消臭効果と感染対策に重点がおかれている。たとえば、世界で 初の消臭抗菌加工の素材を使用したストレッチャーやエアーマット、消臭抗菌加工を 施したエアフィルター&ダクトなどである。自動手洗い装置は感知センサーで、水、 せっけん、消毒液の3種を供給し、廃液タンクにも汚染防止対策を施してある。これ 以外にも、操作がしゃすく上下の振動のほとんどない多機能型ストレッチャーと、そ れに組み合わせて使用するエアークッション式マットがある。エアーマットは患者の 容態にあわせてエアーの充填排出が容易で、空気を抜いて心臓マッサージをした後、 搭載のエアポンプを使って、わずか1分で再注入が可能である。

このデモカーは現 在、全国の病院、医療センター、地域の医療施設、消防署等を巡回して公開中であ る。ドクターズカーとはいえ高規格救急車に準じる装備を搭載し、コンパクトで、感 染防止に優れていることから、消防署からの問い含わせも多くあるという。

現在、全国で高規格救急車の普及が急ピッチで進められているなか、タイプBの今 後の展開を注目したい。


除細動器をめぐるFDAとレールダル社の攻防、レールダル社に軍配上がる。

アメリカ、オレゴン州連邦裁判所は、5月26日、米食品医薬品局(FDA)と レールダル社との争いに関し、レールダル社に軍配を上げる決定を下した。

FDAは、レールダル社に対し、オレゴン州にアる除紬動器の工場を一時閉鎖する ように命令したが、レールダル社がこれに従わなかったため、昨年9月より両者の間 で裁判となっていた。FDAは、レールダル社が.医療用具の製造所における品質保 障(GMP)基準に違反しており、同社は除細動器に関する間題を報告しなかったと 申し立てていた。

連邦判事は、レールダル社に対するGMPに関する訴えは退けたが、同社がある特 定の医療用具に関して、報告をすぐに提出しなかったことは認めた。

シアトルのワシントン大学医学部のカミンズ教授は、「要するに、今回のレールダ ル社に対するFDAの訴えは、無意味でばかげたことだと認められたのです。まさか レールダル社が抵抗するとは思っていなかったので、FDAとしても何かでっち上げ るしかなかったわけです」と語っている。FDAは機能不全の組織であると批判する カミンズ教授は、たとえFDAに反抗したとしても、勝つことができることを示した という意味で、今回の決定は大変に重要であると述ベている。(訳/三上斉)


救急隊員に手話講習会

山口県・宇部市消防本部 宇部市消防本部では、この6月、消防隊員を対象に手話の講習会を開催した。山口 県では初めての試みである。宇部市では障害者の家庭に緊急達絡用のフアックスを導 入するなど、福祉対策に力を入れている。このフアックスは、氏名、住所、かかりっ けの病院等が記された専用用紙をあらかじめ準備しておき、急病など緊急の際に消防 本部に送信、これによって救急隊員が現場に急行するというものだが、傷病者が聴覚 障害者であった場含、隊員とのコミュニケーションがとれず、応急処置が難しくなる ことが予想される。

また、傷病者自身だけでなく、家族に聴覚障害者がいたり、事故の現場で話を聞かな ければならない場合もありうる。そのため、適切な応急処置を実施するために手話を とり入れることの必要性を考え、今回の講習会が実現する運びとなった。

講習会には救急救命士3名を含む27名の救急隊員全員と、消防署の職員20数名 が参加した。講師にはボランティアグループの宇部手話会があたり、あいさつ、傷病 者の名前や住所、痛みの部位や痛みの程度を聞くなど、応急処置に必要な、簡単な手 話を学んだ。今回は6月中に10回ほど、各1時間ずつの受講となった。

その後、消防隊員はテキストなどを参考に自主的に勉強会を続けているが、今後も 消防本部内における講習会を継続していきたいとしている。


FDA「新しい蘇生器具を試みるときは、患者の同意が必要」との方針を出す。

実際の患者に新しい蘇生器具や蘇生方法を試みる研究では、患者から事前に研究の対 象となることへの同意を得ていなければならないとの方針を米食品医薬品局(FD A)が示し、議論を引き起こしている。

ミネソタ大学のルーリー助教授らがJAMA誌の5月11日号に発表した論文は、 アンプ社のカーディオポンプの利用に関する研究である。この論文では、1992年 から93年にわたる10か月間、ミネソタ州セントポールの消防署で、救急隊が患者 の蘇生にカーディオポンプを使用して得た結果を分析している。

カーディオポンプを用いてアクティブ・コンプレツション・ディコンプレッション (能動的圧迫と減圧、ACD)CPR法を施すかどうかは、無作為に決められていた が、この件で患者またはその家族からの文句はなく、また患者に対して何らかの危害 があったとの報告もなかった。

結果は、ACD・CPRを施した53名の患者の生存率が、通常のCPR法を施し た77名の患者の生存率よりかなり高かった。しかし、患者からの事前の同意を取っ ていなかったとして、FDAが途中で研究の中止を命じたため標本数が十分ではな く、結果は統計的に有意とは言えなくなっている。

突然に心停止を起こした患者の蘇生を対象としているような研究の場含、事前に患 者から同意を得ておくことは難しい。今回のFDAの動きにより、他の研究の中で も、いったん研究を中止して事態を見守る所も出てきている。(訳/三上斉)


全国各地でシルバー請習会開かれる

1994年7月1日現在、65歳以上の高齢者の人口は1744万人。今後さらに 高齢化が進めば、21世紀初頭には「4人に1人が高齢者」になるといわれている。 来るベき高齢化社会に向けて、全国各地で高齢者を対象にした救急講習会が開かれて いる。

「シルバードライバークラブ・シルバーセーフティクラフ講習会」青森県八戸市の 場合

青森県・八戸署は、管内の老人クラブに「シルバードライバークラブ(運転免許所 有者)」「シルバーセーフティクラブ(運転免許非所有者)」を結成し、各クラブか ら要請があった場含、最寄りの自動車教習所で交通安全講習を行うことにした。

講習会は免許の有無によってクラスが分けられ、免許所有者は運転技能検査や適正 診断などを行った。一方、未所有者は講義だけでなく、実際に教習所内のコースを 使って、車の制動距離など自動車の構造や飛び出しの危険性などを見学した。

両者共 通の講習として、応急救護処置訓練があり、ダミー人形を使って気道確保、人工呼 吸、心臓マッサージを行った。これらの実習は各個人のレベルに含わせて、ほとんど 個別に行われるため、通常2時間の予定が、3時間になることもあるという。ほとん どの参加者にとって、このような講習は初めてであったことから大変好評で、「もう 一度参加したい、毎年定期的に行ってほしい」という積極的な声が多かった。

「セキュリティースクール」愛媛県温泉郡量信町の場合

愛媛県の重信町では、高齢者の自立の一助として「セキュリティースクール」が開 催された。主催は東温消防署で対象は60歳以上の高齢者。防災、救急、一般に関し ての講習を年4回予定している。第1回目のテーマは「病気と救急処置について」。 「救急医療現場から見た安全な家庭生活と対策」と題する講演のほか、救急隊員の実 演による具体的な救急処置法の説明が行われた。第2回目は「避難と応急処置、救急 車の上手な利用方法」。避難設備を実際に使用して応急処置訓錬をすることで、より リアルな体験ができたという。スクールの実行委員長である東温消防署の宇和川署長 は、「参加者は意欲的で、予定していた人数を大幅に上回る参加がありました。いま まで救急講習会というと学校や職場などで開いていたため、今回初めて応急処置を 知ったという高齢者が大半であることから、改めて高齢化への対応の必要性を感じま した」と話している。今後は開催場所を町民会館から消防署に移し、119番通報と 救急車出動の仕組みを見学するほか、入浴中の溺死など、あらゆる事故に対応できる 講習をしていきたいと語っている。

「交通安全一日シルバー大学」島根県大原郡の場合

島根県の木次誓察署と大原郡交通安全協会は、免許取得時の応急救護処置講習義務 化を機会に、同郡内の65歳以上の高齢者ドライバーを対象にシルバー大学を開校し た。5月17日に行われたシルバー大学では、道路交通法の改正点などについての法 令講習、応急救護処置法などの講義が行われた。応急救護処置法では人工呼吸と心臓 マッサージの実技を3体のダミー人形を使って行ったが、救急法はほとんどの人が初 体験ということで人工呼吸の際、うまく息を吹き込めなかったとのことだ。ただし、 入れ歯のせいでマスクを使用しての息の吹き込みが難しいという高齢者らしい理由で はあるが・・・。

以上の3地域に共通していることは、高齢者が意欲をもって講習に望んでいること である。高齢化と核家族化が相まって高齢者の一人暮らし、もしくは夫婦2人暮らし の世帯が増え、「自立」という言葉が否応なしに高齢者に向けられている。高齢者が 健全で明るい社会生活を営み、社会の一員としてその役割を果たすためにも、高齢者 向けの各種講習会を開くことが、いま必要になっている。


消防へリコプターによる救急搬送 試験事業に救急救命士搭乗

札幌 救急振興財団と札幌市消防局は、救急救命士を乗せた消防へリコプターによる救急 搬送試験事業を実施した。

救急搬送試験事業とは、救急振興財団が、ヘリコプターによる救急搬送の方向性を 見極めるため、消防へリによる救急搬送の効果、課題のデータを収集すベく1991 年から実施しているもので、広島、名古屋、神戸に次いで今回が4回目である。今回 の札幌の場合、初めて救急救命士が搭乗、活動地域もl00km半径圏内となってい る。試験事業は7月25日から8月24日までのlか月間、札幌市を含む81市町 村、32消防本部、北海道医師会等の協カにより行われた。

今回使用されたへリコプターは、札幌市消防局航空隊の消防へリさっぽろ。出動要 請の基準は、外傷部位、意識レべル等によって決まる外傷指数に基づいている。この 指数を基に、現場の救急隊員や病院の医師が、距離的・時間的にみて、救急車よりも ヘリコプターが有効と判断した場合に依頼する。搬送先は、中核医療機関として定め られた札幌医大附属病院、小樽の道立小児総合保健センター、苫小牧市立総合病院の 3施設である。試験事業の間には11件の搬送事例があったが、主なものを左記に紹 介しよう。

(1)静内:馬に頭部を蹴られた男性

8月2日午前9時25分ごろ静内の馬市で牧場従業員の29歳の男性が馬に頭部を 蹴られた。同町内の病院に収容され手当てを受けたが、あごの骨を折り、頭蓋骨骨折 の疑いもあったため、11時ごろ、静内消防署を通じて札幌市消防局にヘリコプター 出動を要請した。

「さっぽろ」11時37分、同町に到着、3分間ほどで傷病者を収容し、通常、救 急車でl時間15分程度かかるところをわずか20分で、苫小牧市内のオーロラ球場 横広場に到着した。広場では、救急隊員および地上警戒のための消防隊員等約10人 が待機、直ちに傷病者を救急車で苫小牧市立総合病院へ搬送した。

(2)岩見沢:490gの超未熟児(超低出生体重児)

8月2日午後、岩見沢市立総含病院で体重490gという超未熱児の女児が生ま れ、大変危険な状態にあった。同病院は岩見沢消防署を通じて札幌市消防局にへリコ プターの出動を依頼し、これを受け、同日午後4時45分、さっぽろが出動した。 さっぽろは岩見沢市東山総含公園陸上競技場に到着、すでに救急車で搬送されてきて いた、保育器に入った女児と付き添いの医師、看護婦を乗せ、約19分で道立小児総 合保健センターのヘリポートへと搬送した。

以上の結果からも今回の試験事業は十分な成果と試験結果をもたらしたといえる。 しかし、本格実施となると解決しなければならない課題は多い。たとえば、医療機 関、航空隊、救急隊など、各関係機関同士の連携の問題、都市部のへリポートの問題 などである。これ以外にも、都市部においては高次医療機関、救急隊の数も多いた め、管轄地域を細分化でき搬送時間が短いこと、また建物が密集していてへリコプ ターが飛びづらいことから、へリ輸送の有効性が問われる。しかし、救急車で1時間 かかるところがへリコプターでは約10分〜15分に短縮できるにとから、辺地や離 島など、広域搬送が必要な地域においてヘリ輸送はかかせないものとなっている。こ のような点からも、今後の本格運用に向け、諸問題の解決が待たれる。


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