この原稿は救急医療ジャーナル'94第2巻第2号(通巻第6号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

タクシー運転手もバスガイドも応急救護の講習を受ける

秋田県警 秋田県警では1月14日、秋田市内のタクシー事業管理者を対象に、応急救護処置の実技講習会を開いた。

これは、今年の5月から道路交通法が改正され、普通免許、自動二輪免許を取得しようとする人に対して、学科2時間、実技2時間の応急救護処置講習が義務付けられることを受けて行われたもの。事故現場に遭遇する可能性が多いプロのドライバーにも、こうした技術を身につけてもらい、万一の場合に応急救護処置を講じて、救命の手伝いをしてもらうのが目的である。

今回共催した秋田県ハイヤー協会では、秋田市内の19のタクシー会社すべてに声をかけた。飛び入り参加も含めて管理職を中心に30名余りが集まり、当初の予定人数を多少オーバーしたとのことである。

まず、応急救護処置の必要性についての講義のあと、日本赤十字社秋田県支部の佐々木事業推進係長を講師に、ダミー人形を使って心臓マッサージ、人工呼吸などの蘇生法の実技を3時間ほど学んだ。

参加者からは、交通事故ばかりではなく、家庭内や行楽地などでそういった機会に出会った場合にも役に立つという声があったとのこと。また逆に、蘇生法の大変さ、難しさを認識し、かえって事故を起こしてはいけないという意識を植え付けることにもなったのではないかと、ハイヤー協会では話している。

ハイヤー協会では今後、平成6,7年度にわたって県内各地を回り、こうした講習会を開いていこうという計画を立てている。

一方、三重県の三重交通では1月28日、3年以上の勤務経験のあるバスガイドを対象に、指導ガイド育成のための講習の一つとして応急救護法の講習会を設けた。

講義は、伊勢市消防本部の職員を講師に、ダミー人形を用いた人工呼吸の研修を中心に行われた。

指導ガイド講習は三重交通が独自に行っているもので、全体を通して9日間にわたって開かれる。内容としては、座禅を組んだり、現役のスチュワーデスが講師となり、後輩の育成についての現場の話を聞くなどして、社内における指導者としての立場と役割についての講義を受ける。

救急法の講義もその一環として行われ、車内で急病患者が出た場合に備えて、落ち着いて対処できるよう、心構えとして知っておくことが必要との考えから講習会に組み込まれている。3年〜4年ほど前から年に1回、3年以上のガイド全員が講習を受けており、三重交通ではこれからも継続して行っていく予定とのことである。


救急車で搬送する必要がないと判断される傷病者のための"バストークン・プログラム"

サンフランシスコのパラメディックは、救急車で病院に搬送する必要がないと判断した傷病者にバス用のトークン(乗車用チケット)を渡すサービスを始めた。患者は同時に、サンフランシスコ総合病院へのバスのルートマップも受け取る。

サンフランシスコのパラメディック部門のスポークスマンによると、このプログラムが始まったのは昨年の8月からで、今では1日に5人から7人の患者にトークンを渡している。これはこの部門のパラメディックたちが1日に見る患者数約150人の3%ほどに当たる。このシステムが軌道に乗り、救急車を呼んだ患者の10%がバスを利用することになるとすれば、年に約100万ドルの経費が削減できると期待されている。

「パラメディックの人たちが長い間待ち望んでいたシステムです。かつては、もし誰かが病院に行きたいと思えば、パラメディックは搬送せざるを得ませんでした。今は自分たちが患者を評価した上で、バスのトークンを渡すこともできるのです。」

とスポークスマンは述べている。

パラメディックが搬送を拒否する場合、メディカルコントロールの許可を得る必要はないが、必要があれば本部に相談することが出来る。また、搬送を拒否したケースは記録に残し、あとでメディカルコントロールがカルテをチェックする。パラメディックは、現場で消毒や絆創膏と言った程度の処置はするが、これらの処置料はあとで患者に請求される。請求額は搬送に比べればずっと安い。

このパラメディック部門は、別に8月に"スイープ・カー"プログラムも導入している。これは乗り合い式の救急車で、一度に複数の患者を病院に搬送する。

「たとえば縫合が必要なけがをした患者と、感染の危険のない病気を持つ患者やちょっとした病気の患者など近くであれば、1回の出動で同乗させて搬送することができます。」と先のスポークスマンは述べている。

最近の予算カットの中では、これらのシステムが助けになっているという。今のところ文句は出ていないし、何より緊急度の高い重大な要請に対応できる余裕が出来たとのことである。ただし、このようなバストークンプログラムは、社会的あるいは身体的に望ましくないと思われているような患者に対しての差別につながる危険がある、との批判もある。


「東京スキン(皮膚)バンクネットワーク」が3月1日、活動開始

杏林大学医学部附属病院と日本医科大学附属病院が中心となって、「東京スキン(皮膚)バンクネットワーク」(代表:島崎修次杏林大学教授)が1994年1月に発足し、3月1日活動を開始した。

これは、東京都内の重症熱傷患者を扱う12の病院がネットワークを持つことによって、各病院の皮膚バンクの共有化を図り、皮膚移植による治療効果を高めようと言うものである。

現在、独自のバンクを管理・維持しているのは、12病院のうち杏林大学と日本医科大学のみ。これは、皮膚を採って、摂氏零下80度で冷凍保存し、管理するためには、高度な技術やマンパワーが必要なためである。

事務局のある杏林大学救命救急センターで運営委員を務める田中秀治講師は、 「重症のやけどの場合、3度のやけどでは皮膚は再生しません。ですから、皮膚を切除して新しい皮膚を移植するという方法で、患部の感染を防ぎます。

しかし、広範囲にわたってやけどを負ってしまえば、残存する皮膚は少なくなり、本人からの自家皮膚移植が出来ず、他の人の皮膚をもらって移植する以外に方法はありません。

欧米では他人の皮膚を移植することによって、10%近く救命率が上がることが分かっています。

しかし、皮膚を提供してもらうことは、身内でもなかなか難しいので、亡くなられた方の皮膚を保存しておくことがとても重要なことで、これは現在考えられる熱傷治療の最後の手段だと思います。

ほかに、本人の皮膚を細胞培養させるという方法もあります。いくつかの熱傷治療施設ですでに臨床研究段階に入っています。

しかし、これは膨大な費用がかかるだけでなく、培養までに3週間も時間がかかり、使用できる施設は限られています。」

と話す。

皮膚は他の臓器と比べて、とてもタフな細胞だという。死んでから数時間たっても保存でき、完全な方法で一度冷凍保存すると200年ぐらいは持つそうだ。

しかし、皮膚は、腎臓や肝臓の移植とは違って、一時的な患部の被服に用いるので、拒否反応のため拒絶される運命にある。しかし、移植することによって、患者の救命率が高まる。

また、まれではあるが、やけどを負った場合、免疫力が低下し、拒否反応を示さずに、くっついてしまうケースもあるという。

「いままでは、皮膚バンクを持たない病院では、大やけどの治療のために皮膚が必要な場合、提供者探しから始めなければなりませんでした。しかし、今後はバンクからいち早く皮膚を入手できるようになります。

これで、一人でも多くの人が助かるようになればという願いをこめて、皮膚バンクの共有ネットワークを始めたのです。

こうしたシステムの構築は日本で最初ですから、全国のモデルケースになるように、皮膚バンクやネットワークシステムのノウハウを蓄積し、他の病院、他の地域に伝えていかなければならないと思っています。

と田中講師はいう。

皮膚バンクのネットワーク構想は、杏林大学の島崎教授と日本医科大学の辺見教授によって発案され、1年ほど前より準備が進められてきた。

ネットワークに参加する施設は次の12病院である(順不同)。
杏林大学医学部附属病院
日本医科大学附属病院
日本医科大学附属多摩氷山病院
慶応大学医学部附属病院
帝京大学医学部附属病院
東京医科大学附属病院
東京女子医科大学附属病院
東京大学医学部附属病院
東京都立広尾病院
東京都立府中病院
東京都立墨東病院
江東病院

皮膚バンクは、実際に皮膚を採取・保管しているところの名称だが、今後は、皮膚を提供してくれる皮膚バンク登録者を募るため、啓蒙活動や広報活動にも力を入れていくという。

「東京スキンバンクネットワーク」は、体制づくりにも力を注ぎながら、熱傷治療の全国的な向上を目指し、多くの人の理解を求めていこうとしている。まさにパイオニア的存在である。

(連絡先:東京スキンバンクネットワーク事務局 Tel0422-47-6511内線4033)


救急医療の国際化に向けて外国人対応の輪番体制を整備

在日外国人が増加する中で、医療においても言葉の壁が大きな問題となっている。そこで兵庫県では、外国人への医療サービスの充実を図ろうと、「外国人救急医療システム運営事業」を創設し、平成6年度中に医療制度を整える計画を検討中である。

対象となるのは、外国人が比較的多数滞在し、搬送件数の多い神戸、阪神、東播磨、西播磨の4地域。外国語の話せる職員やボランティアが配置されていたり、外国人の治療経験が豊富な病院などに協力を求め、輪番制で医師や看護婦に待機してもらおうというもの。県では、これによって外国人患者と医療関係者との信頼関係を確立したいとしている。

県の調べによると、平成4年4月から平成5年3月までに医療を受けた外国人は10万3千22人。このうち救急車で搬送された外国人は301人で、入院が必要な患者のうち、重篤患者が12人、重症患者が112人であった。地区別に見ると、阪神の99件を最高に、西播磨89件、神戸58件、東播磨42件、その他が13件と、都市部での搬送が圧倒的多数を占めていることが明らかになった。

国籍別では、韓国が101人、中国が59人、欧米が34人、中南米が24人。

このような救急医療の国際化に対応するため、外国語の問診票を作成し、輪番体制なる病院だけでなく他の全県の救急施設にも配布し、医療業務の一助として利用してもらう予定である。問診票は英語、ハングル、中国語、ポルトガル語、スペイン語の5カ国語を用意する計画となっている。

また、平成7年度からは外国人の未払い医療費の補てんも検討しており、県の補助も含め、各市町村にも協力を呼び掛ける方針である。

このような外国人対応の救急制度は全国でも初の試みであり、今後の体制の整備が期待されている。


現場で蘇生できない患者の搬送は?

アメリカ 現場で蘇生できない患者を病院まで搬送することに意味があるのかJAMA("Journal of the American Medical Association")の1993年の9月号に2つの論文が掲載された。

ボニン、ぺぺらの論文は、ヒューストンにおける1461例の心停止患者について詳しく分析したもので、2次心肺蘇生を続けるかどうかの判断基準について「モニターできない病院外で一次的心停止を起こした平常体温の大人が、持続性心室細動がある場合をのぞき、標準的な2次心肺蘇生を受けても25分以内に自発循環が戻らないとき、現場で蘇生処置を終了することが出来る」と結論している。

またケラーマン、ハックマンらの論文では、メンフィス消防署のパラメディックによって扱われた1068例の心停止を分析している。

結論として、「十分に病院前の2次心肺蘇生を受けたにもかかわらず反応しない大人の患者について、その患者を急いで搬送したとしても、生存率に有意な変化をもたらさない。このような場合には、オンラインで救急医が、パラメディックに対し現場で蘇生努力を中止することの許可を出すべきである」と述べている。


病院の敷地内に救急出張所を併設

札幌市 札幌市消防局では、市立札幌病院の敷地内に救急出張所を新設する構想を進めている。具体的な運用などについては、現在検討中だが、全国でも例を見ない、救急出張所と病院の併設ということで、注目を集めている。新出張所での活動開始は、移築中の市立札幌病院のオープンと同じ、1995年秋頃の予定。2階建てで、延べ約300m2程度の規模を予定している。

新出張所では通常の救急患者の搬送を行うが、それだけでなく、救急隊員の専門知識や技術の向上を目指し、救命率の向上を目的としている。

同消防局救急救助課の吉光忠則係長によると、

「病院に救急出張所があることで、今後さまざまなメリットが生まれてくると思います。が、何よりも医師が救急隊の近くにいるということで、救急救命士や救急隊が医師とコミュニケーションを取りやすく、救急活動が充実してくると思います。

たとえば、医療の高度化に伴って、救急隊員の生涯研修が必要ですから、医師の指導を受けることで、常に技術や専門的知識を高めることが出来ます。」

同消防局には現在24の救急隊があるが、出張所の救急隊長は救急救命士が交替で勤めるという。

また、救急救命士は現在4人。1994年の3月末に実施される国家試験を、研修中の隊員20人が受ける。さらに、94年度から5年間で、救急救命士を計100人に増やす予定だという。それによって、救急救命士は各救急隊に4名ずつ配属でき、常時、救急救命士が救急車に同乗する体制も計画中である。

この新しい試みにいかなる成果が現れるか、注目を集めている。


京都府医師会、専門医を夜間配置救急救命士をバックアップ

救急救命士の活動を支えるため、京都府医師会ではこの4月から、京都府中京区の京都市消防センターに専門医を配置することを決めた。センターでは救急車からの電話を一括して受け、当直の医師が指示を出す。

当面の間、消防センターでの当直は医師との連絡が難しい夜間のみとなる。昼間に関しては、6病院ほどの指定病院から指示を仰ぐことになる。

救命の事業に関しては、全府的な視野での検討が必要であるとの考えから、京都府医師会と府消防長会との間で協議を進め、平成7年度からは、これを府の事業とし、京都市だけでなく府の全域からの電話を受けられる体制を整える計画である。

医師の宿直場所も京都府南区の府救急医療情報センターに移して専用回線を設け、昼夜24時間体制で医師に常駐してもらい、救急車からの電話を受けることになる。

現在の所、京都市だけで4名の救急救命士がいるが、今春には資格取得者が増える見込み。今回の計画は、これに対してバックアップの体制を作っておこうというものである。

また、大都市を離れた小さな町では救急救命士が少なく、活動を支えるシステムが整備されておらず、救急救命士としても、取得した技術が発揮できないままになっている。

しかし、各市町村では支援体制を取ることが難しいため、すべての電話を前述の情報センターにつなげ、救急救命士の活動を支えていこうと京都府医師会では考えている。

医師の募集にあたっては、京都府医師会の会報に応募要領などを掲載し、協力する医師を募集している。3月現在40名ほどの医師を確保しているとのことである。


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