この原稿は救急医療ジャーナル'93第1巻第4号(通巻第4号)「TOPICSトピックス」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

赤ちゃんの名付親は救急救命士さん

大阪 大阪市○○区に住む会社員の○○○○○さんと妻の○○○さんの長女○○ちゃんの名付親は、救急救命士さんである。

○○ちゃんは今年×月18日早朝、救急隊が○○○さんを搬送中の救急車内で生まれた。出産予定日は翌19日だったが、午前5時57分に「陣痛が始まり破水した」と出場要請があり、福島消防署の救急救命士、谷川輝樹救急隊長と市川雄二消防士長、花谷耕次消防士が○○○さん宅に到着、搬送先の○区内の病院まで我慢できるということで、担架で○○○さんを救急車内に収容した。

しかし、3分ほどで出産が始まったため、谷川隊長らは車内に揃っているお産用のセットを取り出し、感染症を予防するなどの準備を整えた。まもなく、赤ちゃんが出てき始めたが、へその緒が首に巻き付いていたので、慎重に首からはずし、同6時20分に無事出産が終わった。赤ちゃんを取り上げたときあまり泣かなかったので、谷川さんが足の裏やお尻を叩くと、泣き出したという。

1週間後、○○○さんが同署を訪れ、谷川さんらに感謝を述べるとともに、名付親になるよう頼んだ。一度は辞退した谷川隊長だが、快諾。「表面的な美しさより内面からにじみ出た美しさを持って欲しい、真に輝きのある子に、という願いを込めて、○○と名付けました」(谷川さん)

谷川さんは救急車内での出産に立ち会うのは初めてだったが、実習や勉強をしていたため慌てることはなかったという。願いどおりに○○ちゃんがすくすくと育って欲しいものだ。


各地に救急救命士養成所が開所ー救急救命士の増加に期待

東京・八王子市南大沢に10月1日、全国からの研修生を受け入れる唯一の救急救命士養成施設である「救急救命東京研修所、愛称ELSTA TOKYO(エルスタ トーキョー)」(七野護所長)が開所し、同13日より消防隊員200人が参加して、研修がスタートした。

建物は鉄筋コンクリート7階建てで教室4室、実習室2室、視聴覚教室2室、講堂、研修生の個室、さらに厚生施設としてアスレチックルームやテニスコート、ラウンジ等から成る。敷地面積は約1万1千m2、総工費は約47億円に及ぶ。

救急救命東京研修所は(財)救急振興財団(皆川迪夫理事長)の研修施設で、これまで東京・台東区上野の仮校舎で1期60人(養成期間半年)、年間120人の教育や訓練を行ってきた。しかし、新築移転に伴って1期の定員が200人、年間400人と増え、約3倍の救急救命士養成が可能となった。

同研修所の町野正明研修部長は「研修生たちは、勉強をするための環境として非常に快適だ、といっています」と話す。(82ページ参照)

各区自治体でも救急救命士養成施設が誕生している。9月には札幌市と広島市に開所した。

札幌市西区の札幌市消防局研修所内に、9月9日の「救急の日」に誕生した「救急救命士養成所」は、北海道内初の養成所である。第1期生には札幌市から20人のほか、北九州市からの1人を含む道内外の救急隊員31人が入所した。

札幌市では今後5年間で100人の救急救命士を養成し、今年度中に高規格救急車5台を新たに配置する計画という。

一方、広島市消防局が中区国泰寺に開所した「救急救命士養成所」は政令指定都市の消防局が持つ全国6番目の養成所で、中国・四国・九州地方では初めてとなる。

定員は1期30人で今期は県内の23人のほか、養成所を持たない岡山、香川、福岡県などから派遣された救急隊員が半年の研修に参加する。現在、広島市の救急救命士は消防局職員の4人しかいないが、2001年をめどに100人に増員する計画だという。

同じく9月、救急救命士や救急隊員の養成教育を行うことを目的とした府内初の専門施設「市救急教育訓練センター」が京都市南区の南消防署にできた。年間で約30人を養成していく。

そして、救急救命士を目指す救急隊員らは、厚生省が定めた51科目835時間のカリキュラムを修了後、来春の国家試験に挑む。

将来全国的に、1台の救急車に1人は救急救命士を乗せたい、といわれるなか、各地で救急救命士養成の研修所がオープンしている。さらに、東京に続いて福岡県北九州市に2つ目の救急救命研修所が1995年4月、完成予定となっている。

こうした積極的な取り組みで、不足している救急救命士の増加に期待が寄せられる。


法施行にさきがけて自動車教習所でCPRの実技指導

1994年度から運転免許取得時に、CPRの受講が法律により義務づけられる。その背景には、交通事故が多発する中、呼吸や心臓停止直後のCPRが救命率の向上に大いに役立つことが明らかになったことにあるだろう。

法施行にさきがけて、大阪府堺市の堺自動車教習所では、この4月からCPRの実技講習を行っている。

「CPRに関する資料を集め始めたのが、91年ぐらいかと思います。教習所は安全に運転することを教えるところです。

しかし、ドライバーが運転技術だけでなく、安全に対する意識や交通事故発生時の救急処置も身につけることで、一人でも多くの命が救われるならば、教習所としても進んで取り組んでみようではないか、と話し合われたのがきっかけでした。

また、ドイツなどでは、教習所でCPRを学ぶことが社会に広く浸透しており、それが高い救命率につながっています。こうした例も一つの契機になりました。」

と、所長の川上哲朗氏は話す。

その後、講習を行うため、教習所の指導員が日本赤十字社で救急法と蘇生法の講習を受け、救急員の適任証を取得。現在、2名の指導員が週2回、実技中心の講習を行っている。

講習は1時限だが、50分間みっちり、訓練人形を使って、呼吸停止や心臓停止の際のCPRを中心に実技指導が行われている。

受講は無料で、自由参加である。参加希望者は、毎回、全体の2〜3割程度にあたる10〜15人ほど。男女比でみると、6対4の割合で女性が多いという。

「女性の方が関心が高いようです。受講の際、アンケートを書いてもらうと、女性は、赤ちゃんやお年寄りがのどに何かを詰まらせるなど、身近の事故に対処できることも考えて受講する人が多いようなのです。でも、どなたも熱心で実りある50分になっています」(川上氏)

来年度からは、CPRの受講時間を3時限とることが義務づけられる。「現在の50分では限度があり、法施行をさきがけたというのがはばかられてしまう」

という川上氏だが、受講者の中には「講習を受けていたおかげで、のどに物を詰まらせた人に異物を吐き出させることができた」と感謝する人もいる。

交通事故だけでなく、身近な事故への応急手当も学べることも、大きなメリットといえるだろう。


はたしてこれは動物虐待かーニューヨーク州知事、拒否権発動

ニューヨーク州のクオモ知事は、この7月、猫を使って小児挿管の訓練をすることをEMTに認める法案に対し、拒否権を発動した。

クオモ知事は動物による練習を公認することは、EMTにとってある程度の利益になると認めた。しかし、本法案では挿管される動物の持ち主が同意しなくても、EMTがその動物に挿管することを獣医が許可できるとしており、動物の権利保護活動家たちから激しく叩かれている点から、拒否したとしている。さらに、EMTに動物の解剖学と動物に対する正しい挿管法を学ぶよう要求していないことも、拒否の理由としている。

一方、法案支持者たちは成立に向けて再び行動をとると誓っている。

ニューヨーク州のEMSインストラクターでEMT-Pの資格を持つアングリム氏は次のように述べている。

「小児のマネキンに挿管するのは簡単すぎて本当の練習にはなりません。それに猫に危害を加えるのではありませんから」


救急医療対策への貢献者に厚生大臣表彰や各地域の表彰が

さる9月9日の救急の日、長年にわたり、地域の救急医療の確保や増進に貢献した団体や個人に、厚生大臣表彰が授与された。表彰は、各都道府県知事の推薦の中から選ばれた10団体、7病院、13人の医師が受けた。

厚生大臣表彰は今年で第11回目、9月9日を救急の日と定めると同時に、年に1度、行われ始めたものだ。

厚生省健康政策局指導課の福田隆氏によると、「地域全体の救急医療対策に貢献した人たちが表彰の対象です。たとえば、長年、昼夜を問わず救急患者の受け入れ等に努めてこられた医師会、医療機関、医師の方が中心ですね。

けれども、ご存じのとおり、2年前から救急救命士の活動も始まりましたので、今後は救急救命士の方々の活躍もさかんになるでしょう。ですから、救急救命士の方の大臣表彰も考えていきたいと思っています。とのこと。

しかし、地方の救急功労者表彰では、消防局の職員が表彰されている。

たとえば、和歌山県田辺市では、救急功労者の田辺市長表彰を行って10年目の今年、初めて消防本部の常勤職員2名が表彰を受けた。

消防本部の岩本徳三氏は、「田辺市は大都市と違って、人口も7万人あまりの小さな市です。ですから、年間の救急出場回数も、救急業務が田辺市で始まった1967年から今まで、2万8千件ほどになります。その中で5千回以上出場した2人が表彰されました。

5千回という数字は、今後変わる可能性がありますが、今回は総数2万8千件のうちの5千件ということで、医師や看護婦さんだけでなく、消防職員が表彰されたのです」と語る。

表彰された2人のうち1人は、先日10月に行われた救急救命士の試験に合格し、これからの活動も大いに期待されているという。今後は、救急救命士の増加に伴って、救急医療貢献者への表彰について、救急救命士などの現場での貢献も無視できないものになってくるのではないだろうか。


日本大使「命拾い」懇談中に突然倒れる・・・女性外相が"応急措置"

【リオデジャネイロ16日=共同】
コロンビアで、勲章授与式に出席した日本の塚田千裕大使(54)が体調を崩して倒れたが、女性のノエミ・サニン外相(44)の懸命の応急措置もあって、無事、回復した。大使が収容された病院の医師団は、外相の措置がなければ危ないところだったとしている。地元マスコミは「外相がマウス・ツー・マウスの人工呼吸や心臓マッサージもした」と報じたが、日本大使館関係者は「そこまではしなかったはず」と述べている。

塚田大使は離任前の十四日朝、外務省でコロンビア政府からサンカルロス大十字勲章を授与された。ところが、大臣室でサニン外相と懇談中に、突然、体の不調を訴えて倒れた。大騒ぎとなったが、外相が落ち着いて応急措置を施し、大使は救急車で市内のサンタフェ病院に収容された。(共同通信社配信 九月十七日 産経新聞夕刊)


山之内製薬、自治体へ高規格救急車を贈る

山之内製薬では、毎年9月9日に全国の自治体に救急車を寄贈する社会貢献活動を継続して行っている。今年度は創業70周年を迎えた記念事業の一貫として、社員からも寄付を募り、6台の救急車を寄贈した。寄贈先は秋田県本庄地区消防事務組合、茨城県筑南地区広域行政組合など6団体。

同社が救急医療関連事業を視野に入れ、社内で9月9日を「救急の日」と定めたのは昭和45年のことである。その際、救急を通じて社会との共生をはかるという意図のもとに、救急車を贈ろうとの声が社員からあがり、毎年自治省を窓口として数台を自治体に寄贈してきた。その台数は既に150台を超えているとのこと。

今年度は会社にとっても70周年という節目にあたる年であることから、ボラティア休暇、懸賞論文の応募など、社会への還元を念頭に置いた企画がなされた。従来から行ってきた救急車の寄贈に関しては、社員から寄付を募り、集まった1100万円に会社が3千900万円を加え、高規格救急車2台を含めた6台を贈ることになった。

社員と会社とが共同で寄付を行う方式は「マッチングギフト」と呼ばれ、社員が寄付した金額と同額を会社が負担するもので、同社では初めて取り入れられた。社員の関心も高く、95%以上の参加となった。当初は高規格救急車1台を「マッチングギフト」で購入する予定だったが、予想を上回る寄付が集まったため、高規格救急車2台の寄贈となった。

同社では、今後も高規格救急車の寄贈を継続して行っていくとしている。


パラメディックは命がけで勤務するーアメリカのある調査より

アメリカの25の大都市にあるEMSエージェンシーを対象としたこの夏の実地調査によって、仕事中に襲われるEMS従事者がかなりの数に上ることが明らかになった。20の都市のエージェンシーでは、パラメディックやEMTが仕事中に発砲を受けたと報告し、そのうち6都市では実際に体に銃弾を受けたパラメディックやEMTがいるという。

この調査は全国レベルの傾向を調べたもので、詳細な人数までは出ていない。しかし、同時に行われたシカゴ消防隊(CFD)のパラメディックを対象とした別の詳しい実地調査では、危険にさらされているEMS従事者の姿を浮き彫りにしている。

シカゴに関する調査では、回答を寄せた249人のCFDパラメディックのうち、実に92%にあたる229人が仕事中に暴行を受けた経験があると述べている。そのほとんどが過去に何度か襲われたといっており、平均すると12年間に一人あたり9.6回襲われている計算になる。156人(64%)が発砲を受け、実際に銃弾に当たったと2人が答えている。

さらに、170人は鈍器による外傷を負い、83人は切られたり刺されたりし、11人は窒息、9人は脱臼、8人が骨折、一人はやけどを負った経験があった。

CFDのパラメディックたちは、暴行の約53%と発砲の44%は報告されていないと考えている。

これら2つの調査を行ったのは、CFDのEMS局ディストリクト・コマンダー、ウォルシュ氏である。氏はかつて、EMS従事者による防護服の利用についての修士論文を書いている。

「イリノイ州ではパラメディックに対する暴行は重罪です。しかし、暴行について報告しても、実際には州の弁護士が、それは私たちの仕事の一部といって取り合ってくれないのです」

アメリカの10の大都市では、EMS従事者に防護服を渡しているが、シカゴはその中に含まれていない。回答を寄せたCFDパラメディックの33%に当たる82人が自腹を切って300〜800ドルの防護服を購入したと答えている。


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