この原稿は救急医療ジャーナル'99 第 7 巻第 2 号(通巻第 36 号)「 NETWORK 救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら, web 担当者までご連絡下さい。

第 10 回東海救急救命士会報告

田村正人(東海救急救命士会) さる 1 月 30 日, 名古屋市女性会館において, 第 10 回東海救急救命士会を開催しました。当日は, 会員, 医師, 看護婦など, 約 130 名が参加して盛大に行われましたので, その概要を報告します。

まず, 第 1 部の教育講演では, 講師の川崎医科大学救急医療学教授・藤井千穂先生に, 「救急領域における感染症とその対策」と題し, 感染症の変遷, アメリカ合衆国の CDC(疾病予防センター)のガイドラインの紹介など, 医療従事者としては感染症対策について, 熱心に説明していただきました。先生の講演は, シアトルのパラメディックを例に挙げながら, 救急救命士が自分の身を守るための注意事項など具体的に示すもので, 大変わかりやすく, 充実した内容であったと思います。

第 2 部では, コメンテーターに愛知医科大学高度救命センター教授の野口宏先生をお迎えして, ワークショップ「 CPA 患者に対する消防機関の対応」を実施しました。このワークショップは, 事前に各会員に, CPA 事案の出動体制や特定行為の実施状況などをアンケート調査した結果を踏まえて行われたものです。調査結果に加えて, 現状の問題や改善案, すでに実施されている改善策など, さまざまな意見が出され, CPA に関して多岐にわたる意見交換が行われました。医師等からの率直な意見のほか, コテンテーターからは国の動向についての説明もあり, 非常に中身の濃いワークショップとなりました。

また, 今回は研修会に先立ち, 同会場において, 昨年度に引き続き実施される"シアトル視察研修"の壮行会も行われ, 参加する会員を激励する姿も見られました。

最後になりましたが, ご多忙中にもかかわらずお越し下さった藤井先生を始め, 本会開催にご尽力いただきました野口先生に, 紙面を借りて心からお礼申し上げます。


広げよう救命の輪-第 9 回船橋救輪会研修会開催

石橋勇雄(舟橋救輪会理事) 船橋救輪会では, さる 1 月 30 日の 13 時から, 船橋市消防局救急ステーションにおいて, 第 9 回目の研修会を開催いたしました。当日は, 千葉県内はもとより, 近県からの参加もあり, 大盛況の下に行われました。
プログラム内容は次の通りです。
(1)教育講演「精神科救急-精神科救急医療システムについて」
講師:矢走 誠先生(船橋市立医療センター精神科副部長)
(2)シリーズ応急処置「人工ペースメーカーの基礎知識」 講師:大門雅夫先生(舟橋市立医療センター循環器科)
(3)事例発表「ドミニカ共和国ハリケーン災害国際緊急援助派遣報告」 発表者:箕輪良行先生(船橋市立医療センター救命救急センター部長)
(4)症例検討 助言者:箕輪先生 「所轄救急隊単独で自発呼吸再開まで至った事例」
発表者:高品建之(船橋市消防局)
「 73 歳男性 心肺停止症例」
発表者:左 博之(船橋市消防局)

まず, 教育講演では, 精神科領域における行政救急システム及び特質的決定因子, 精神科救急ケースの定義, 千葉県精神科救急医療システムの検証, 船橋市立医療センター救命救急センターでの症例などについて, 詳しく説明していただきました。矢走先生には熱の入ったご講義を頂き, われわれ救急隊にとって, よき理解者を得ることができたと, 大変うれしく思っています。

続いて「シリーズ応急処置」では, ペースメーカーの種類と分類コード, 心電図上の所見と異常ペーシング, 電気機器等に対する注意点, 除細動実施時の注意点などについて, わかりやすく指導していただきました。今回の講義を受けて, ペースメーカーについての知識がより具体的なものになったような気がします。学んだ知識を, 今後の現場活動で役立てたいと思います。

このほか, ドミニカ共和国ハリケーン災害国際緊急援助時派遣報告は, 亜急性期の災害派遣の現状に関するものでしたが, 多数のスライドを交えた, 臨場感あふれる発表となりました。

また, 症例検討では, 同日のほぼ同時刻に管内で発生した, 二つの心肺停止症例について検証しました。この二つの症例は, いずれもバイスタンダー CPR がなかったにもかかわらず, 救急隊の救命処置により, 心拍が再開しています。しかし, 事故発生から除細動実施までの時間に有意に差があり, その予後についても明らかな差がありました。プレホスピタル・ケアにおける救命率向上には, 現状では限界があるといわれますが, 改めて, 早期心肺蘇生, 早期除細動の必要性について考えさせられた症例でした。

当会は, 舟橋市消防局の救急隊員を中心に, 近隣の市町村や県外からの参加も含め, 現在 120 人余りの会員により構成されています。今年度は発足 4 年目を迎え, 会員一同, さらなる発展を目指し努力しているところです。

次回研修会は, 5 月 22 日, 船橋市消防局救急ステーションにて開催を予定しています。研修会には, 会員以外の方々も自由に参加することが出来ますので, より多くのご参加をお待ちしております。


大阪府下救急救命研究会平成 10 年度第 2 回研修会報告

中島 静(大阪府下救急救命研究会副会長) 19998 年 12 月 16 日, 大阪市淀川区にあるメルパルク大阪において, 大阪府下救急救命研究会の平成 10 年度第 2 会研修会を開催しました。

今回の研修会は, 第 1 部として教育講演を, 第 2 部として症例研修発表をそれぞれ実施し, 教育講演の講師には, 関西医科大学高度救命救急センターの岩瀬正顕先生をお招きしました。

当日は, 予定の参加人数をオーバーして立ち見が出るほどの盛況となり, 活気あふれる有意義な研修会を行うことができたと思います。

岩瀬先生には, 「頭部救急疾患のチェックポイントとピットフォール」をテーマに, 神経学的症状の検査方法の手技を交えて, 具体的な症例を挙げながら, スライドを使ってわかりやすくレクチャーしていただけました。救急隊は頭部救急疾患の症例者に接する現場, 搬送中において, 意外にピットフォールに陥りやすい, という先生のお話を聞いて, 傷病者の自覚的な症例の訴えと客観的な所見を見極めた上で, 重傷度と緊急度を的確に判断し, それに見合った医療機関へ搬送することが非常に重要であると学びました。また, 的確な判断やトリアージを行うために, ベーシックな傷病者観察がいかに大切であるかということを再認識しました。

第 2 部の症例研究発表では, 各支部の会員の皆様に, 秦功症例のみではなく, 反省と検討を必要とする症例を含めて 4 例を発表していただきました。

教育講演に引き続き参加していただいた岩瀬先生から, 個々の症例について貴重なアドバイスがあり, 参加者一同にとって, とても充実した自己研鑚の場となりました。参加した隊員一人ひとりが, 今回の研修会で学んだことを今後の現場活動に生かすことができればと思います。


兵庫県下救急救命士会第 22 回研修会報告

河野 誠(兵庫県下救急救命士会会長) 兵庫県下救急救命士会では, 1 月 25 日に姫路市自治福祉会館において, 第 22 会研修会を開催し, 約 110 人が出席しました。

今回は, 兵庫県西部に位置する龍野市内の信原病院整形外科部長・金谷亮先生をお迎えして「頚椎, 腰椎損傷, スポーツ外傷」と題し, 公演をいただきました。

先生はまず, スライドを使用して, 脊椎の基礎的な解剖, 脊椎・脊髄損傷の初期評価, 全身管理, 初期治療についてわかりやすく説明してくださいました。なかでも, 骨粗鬆症により, 椎体の圧迫骨折において椎体の崩壊が続いた結果, 脊髄損傷に至ったという症例は, 興味深いものであったと思います。

続いて, スポーツ医学についてのお話がありました。

実は, スポーツ関係者の間では, 金谷先生の名前は広く知られており, プロのスポーツ選手も数多く診察を受けに来るそうです。そこで, 今回は, 病院敷地内に作られたマウンドを使用し, プロ野球の投手と高校野球の投手の投球フォームを撮影, 画像処理システムによって解析し, 研究された結果をお話していただきました。

金谷先生の研究によると, 高校生は投球フォームが不安定であり, 投げ終わるまでに力が分散されるため, 下半身と上半身がうまくつながらず, その結果, 肩や肘などに負担をかけて障害を起こすということでした。それに比べ, プロ野球選手の投球フォームは, 下半身, 腰, 肩, 腕と順序良く, ロケット発射のごとく加速されていき, 安定していることが証明されたそうです。しかし, たとえプロ野球選手といえども, 長年にわたり, 肩, 肘を酷使し続けると何らかの障害が発生する可能性があることも, ある選手の引退後のレントゲン写真を用いて説明していただきました。

その後, 参加者から肩の脱臼, 肘内症, 膝の前十字靭帯損傷, 大腿骨頚部骨折などの質問が続きましたが, 予定時間を大幅に超過したので, 研修会終了となりました。

今回の研修会では, 救急に直接関係ないスポーツ医学がプログラムに組み込まれましたが, 参加者の評判も良く, 救急の領域だけにとらわれず, 医学全般の知識を吸収しようと会員の意欲が感じられました。

最後のなりましたが, 今回講演していただきました金谷先生と研修会運営にご協力いただいた中播消防事務組合消防本部会員, 及び兵庫県播但地区会員の皆様に, 誌面をお借りてお礼を述べさせていただきます。


広島救急救命士会症例研究会結果報告

広島救急救命士会事務局 広島救急救命士会(会員 193 人)では, 県立広島病院で定期的に症例研究会を行っています。研究会では, 救急隊員が経験した症例に基づき, 体験や疑問点を報告し合うとともに, 参加者全員が検討や意見交換を行っています。また, 治療した医師から, 患者の診断, 治療, 予後を説明していただいた上で, 救急隊員への医学・医療情報をフィードバックしてもらい, 今後の救命活動に生かすようにしています。

さる 1 月 28 日に開催された今回の研修会には, 救急救命士はもとより, 救急隊員も含め 42 人が参加し, 助言者をお願いした県立広島病院救命救急センターの唐川真二先生を交え, 活発な意見交換を行いました。

発表・検討の概要をご紹介いたします。

〈症例 1 〉障害を残さず社会復帰したパラコート中毒患者の搬送症例。 検討結果:パラコート濃度が低かったこと, および早期治療であったことが好結果を生んだ理由である。また, パラコート中毒患者では, 腸内吸収遅延を目的に, 左側臥位で搬送することが大切である。

〈症例 2 〉心電図上 EMD(電導収縮解離)であった CPA 患者に対し CPR を実施, Vf 〈心室細動)が発生した時点で, 除細動を行った事例。

〈症例 3 〉広島市消防局における気道確保の実施状況の考察。 検討結果:心マッサージの効果の確認は, 中心静脈を触れて確認する。また, マスクベンチレーションでは, 車内収容までの間, 気道確保を継続して行うことが困難であるため, 状況によって, 現場で特定行為を行うと判断する必要がある。

〈症例 4 〉 1998 年 4 月~'99 年 1 月に県立広島病院 ICU が取り扱った CPA 症例のうち, 心疾患 2 例と脳疾患 2 例を基に, バイスタンダー CPR が患者の予後に大きく関係することを改めて確認した。

いずれの症例についても, 救急隊員の意見や医師の助言が, 活発に飛び交いました。当初の予定時間を大幅にオーバーし, 数題の症例は次回に繰り越すことになりましたが, 大変有意義な研修会となりました。

当会では, 新年度から, 症例研究会だけでなく, 「救急車や資器材の工夫」「応急処置の手技の実際」などのテーマも取り上げ, さまざまな研修会を行っていきたいと考えています。


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