この原稿は救急医療ジャーナル'99第7巻第1号(通巻第35号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

高知救愛会第2回学習会報告

片岡数一(高知救愛会事務局)  高知救愛会では、昨年11月21日、高知自由民権記念館民権ホールにおいて、第2回学習会を開催しました。当会は、1998年1月22日に発足し、すでに、同年5月に高知市で開催された日本救急医学会中国四国地方会の中で第1回学習会を行っていますが、当会単独で行う学習会は今回が初めてとなりました。

 当日は、当会顧問の高知赤十字病院救命救急センター部長・西山謹吾先生と、同じく顧問の梅ノ辻病院院長・山田洋司先生を助言者にお迎えし、会員だけでなく、医師、看護婦、高知県消防学校職員、一般市民、そして遠路はるばる愛媛県より参加いただきました愛媛救友会の皆さんを含む103人の参加者を得て、盛大な会を催すことができました。

 学習会の内容は次の通りです。
第1部 「意見発表」
 助言者:西山先生、山田先生
 座長:浜窪健一(高知市消防局)

(1)「救助隊と共同で救出した事例」
 発表者:都築積代(高知市消防局)
(2)「ストレッチャーから移動時の心肺停止例について」
 発表者:小松昌一(安芸市消防本部)
(3)「高知県市町村広域救急医療無線通信システム」
 発表者:渋谷良一(仁淀消防組合消防本部)
(4)「いつか芽を出せ救急講習」
 発表者:片岡裕貴(高吾北広域町村事務組合消防本部)

第2部「救急デモンストレーション:救急救命士の特定行為
(訓練人形を使用した特定行為実施訓練)」
 高知市中消防署(救急救命士4人)

第3部「記念講演:脳血管障害の急性期治療」
 山崎正博先生、吉村公比古先生(近森病院神経内科)

 まず第1部では、高知県下の救急救命士が経験した特異事例や、県内の95%以上の地域をカバーする、全国で唯一の救急専用無線の運用報告、救急講習の実施状況もの発表がありました。助言者の先生方による適切なご指導と、会場から飛び出す活発な意見で、場内は大変盛り上がりました。

 また、第2部では、高知市消防局の救急救命士により、実際の救急現場で行われる特定行為が実演されました。消防署以外の場で救急救命士の特定行為が実演されるのは初めてだったためか、参加者の視線は、舞台で繰り広げられる特定行為に釘付けとなっていました。

 プログラムの最後には、近森病院の山崎先生、吉村先生のご協力を頂き、記念講演「脳血管障害の急性期治療」を行いました。先生方には、脳血管障害患者の救急搬送時の注意点や病院内処置等について、たくさんのCT像やスライドを使用しながら、大変詳しくかつ熱心に指導していただきました。

 第1部から予定していた時間がずれ込んでしまい、第2部以降の時間が十分に取れなかったのは残念ですが、充実した内容の学習会になったと思います。

 今後も当会では、会員相互の連携の下、コ・メディカルとしての知識や技術の研鑽に努め、地域住民の救命・社会復帰率の向上を目指して、より充実した学習会を行っていきたいと考えています。

 最後になりましたが、ご多忙中にもかかわらずご講演いただきました山崎先生、吉村先生、また、当会発足当初からご尽力いただいている西山先生、山田先生に誌面を借りて心からお礼申し上げます。


第7回島根救友会報告

西田吉治(島根救友会・松江地区広域行政組合消防局松江南消防署)  さる10月31日、島根県出雲市民会館において、第7回島根救友会を開催しました。

 今回は、「外傷」をテーマとして、教育講演と各消防本部による症例発表を行いました。半日は前回と同様に、県内各消防本部の救急隊員、看護婦、鳥取県下消防本部の救急隊員、さらには大阪府の救急隊員も含め、約90人の参加がありました。

 プログラムの内容は次の通りです。
(1)教育講演「重症外傷患者のプレホスピタルケアと救急初療」
講師:石原晋先生(県立広島病院救命救急センター部長)
(2)症例検討「外傷」
座長:目次昌章(松江地区広域行政組合消防局)
助言:松原康博先生(島根県立中央病院救命救急科)
(1)「多発外傷について」池田志信(安来市能義郡消防組合消防本部)
(2) 「多発外傷患者を搬送中CPAとなった事例」赤名馨(雲南消防本部)
(3)「交通外傷による心肺停止患者の救命事例―cruciate paralysis―」竹下勝巳(出雲市外4町広域消防組合消防本部)
(4)「胸郭変形をともなう肋骨骨折の処置について」山本智靖(大田市外2町消防衛生組合消防本部)
(3)症例検討「自由」
座長:安田康晴(出雲市外4町広域消防組合消防本部)
助言:松原先生
(1)「ショックパンツを活用し、意識状態が改善された症例」山本正美(益田地区広域市町村圏事務組合消防本部)
(2)「ショックパンツ適応の有無」吉野則雄(浜田地区消防組合消防本部)
(3)「ハチ刺傷患者にショックパンツを装着した事例」三浦義昭(江津市外7町村消防組合消防本部)
(4)「人工呼吸と胸郭外胸部圧迫法により有効換気ができ救命しえた喘息患者の呼吸停止症例」 河原健司(出雲市外4町広域消防組合消防本部)

 まず、教育講演では、石原先生に、外傷患者に対する病院内での処置を踏まえながら、私たち救急隊員がプレホスピタルでいかなる処置をすればよいのかについて、わかりやすくお話しいただきました。石原先生のすばらしい講演をお聞きし、外傷事例に際して『血胸・気胸・タンポナーデ』と呪文を唱えながら現場に向かおうと思ったのは、私だけではないと思います。

 また、自由なテーマで一般演題を募集したところ、偶然にもショックパンツについてのものが3症例集まり、活発な意見交換が行われました。救急業務の高度化が推進されていく中で、救急II課程修了者が使用できる資器材は、いわば救急隊員の武器といえます。その一つであるショックパンツは、全国的にも使用頻度が少ないことで知られていますが、今回の発表ならびに先生方のコメントによって、ショックパンツに対する認識がかなり変 わったのではないかと思います。本当に意義深い一日でした。

 最後になりましたが、ご多忙中にもかかわらず広島からおいでいただいた石原先生を始め、本会開催に当たりご尽力いただきました島根県立中央病院ならびに島根医科大学医学部附属病院の先生方に、誌面を借りて心からお礼申し上げます。


鹿児島救急救命士会第2回研修会報告

山崎 修(鹿児島救急救命士会会長)  昨年5月に発会した鹿児島救急救命士会では、昨年11月20日13時から、鹿児島市勤労青少年ホームにおいて、第2回研修会を開催した。今回は、昨秋の第14回救急救命士国家試験に見事に合格し、当会に入会していただいた救急救命土や、紅一点の"看護婦救急救命士"さん、またこれから救急救命士の資格取得に挑戦する救急隊員など、35人が参加し、瞬く間に時間が経過してしまうような熱気あふれる研修会が行われた。

 まず最初のプログラムは、1972年に鹿児島市の中心部で脳神経外科を開設して以来、救急医療に全力を注いでおられる厚地政幸先生(厚地脳神経外科病院院長)の講演「脳血管障害の予防と現代の治療法について」であった。厚地先生は、救急医療の中で大きなウエートを占めている脳血管障害をいかにして減少させるかについて、ビデオとスライドを併用してわかりやすく説明して下さった。とくに、脳ドックに話が及ぶと、参加者は自 分自身の体にも関係があると興味津々で、熱心に聞き入っていた。実は、厚地先生は、昨年の夏にゴルフ場で軽い脳血管障害を起こし、救急隊に搬送されたという経験を持っておられる。このため、傷病者が救急車に収容された早期の段階で、救急隊員が静脈路確保や、医師の指示で病気に合致した薬液投与を行うことができるようになれば、救命率はもっと向上するだろうと、傷病者の立場にも立った貴重な意見を拝聴することができた。

 続いて、昨年6月まで、鹿児島から南へ約370km離れた奄美群島にある鹿児島県立人島病院に麻酔科部長として勤務されていた大園清信先生に、「鹿児島県内のこれからの救急医療の展望」と題し、講演していただいた。

 大園先生は、長年離島救急医療に携わってこられた経験から、白分の勤務する島で輸血を必要とする傷病者が発生したときに、町内広報で呼び掛けたところ、多くの住民が輸血に協力してくれ、貴い人命を救うことができたというような事例もあるが、離島の救急医療体制には人きなハンディがあり、いろいろな問題が山積していると、現状を詳しく説明して下さった。わが国の中でも離島の数が多い当県の救急医療の展望はいかにあるべきかを、一般救急のみならず小児救急、精神科救急への対応も視野に入れて模索していかなければならない、という内容の大園先生のご講演は、目先のことだけにとらわれてしまいがちなわれわれに、大きな課題を与えてくれたのではないかと思う。

 両先生のご講演の後、阿久根地区消防組合消防本部の西園与之救急救命士が体験発表を行った。父が消防士、母が看護婦という環境の中で育った西園救急救命士は、母の影響を受けたのか、何か資格を持った仕事に就きたいという一心で看護士の道を選び、東京の病院に勤務、救急隊によって搬送されてくる傷病者の処置を行っていた。そうした折に、救急救命士制度ができたのだという。そこで、今度は父から受け継いだ血が騒いだのか、猛勉 強をして見事に救急救命士の資格を取得、さらに、どうしても救急の最先端で働きたいという思いが強くなり、消防署の採用試験に挑戦した。これも見事合格し、現在は救急隊員として活躍する毎日を送っている。

 自分が歩んできた道を振り返り、西園救急救命士は、「病院に勤務していたときは、確かにたくさんの症例を経験することができた。それに比べれば、いまは症例は少ないが、一つひとつの症例に対する自分たちの任務の重さや、消防業務としての救急の難しさを感じる」

 と、病院の看護上と救急隊員という二つの立場を比較しながら、自らの体験談を発表した。ほとんどの会員は、消防職員として救急救命士への道を歩んできているだけに、皆興味深く聞き入り、最後は西園救急救命士に、大きな拍手を送った。

 最後のプログラムは前回同様、特定行為実技訓練で、今回初めて参加した救急救命士を優先して、模擬人体で訓練を行った。新米会員たちは、先輩の熱気あふれる指導を受けて、そのコツを熱心に修得していたが、とくに紅一点の松野貴子看護婦は、コンビチューブで気道確保に挑戦し、注目を集めていた。和気あいあいと訓練を進めるうちに、いつのまにか終了予定時間を過ぎてしまい、盛会のうちに充実した研修会を終えることができた。


第6回救友会シジポジウムを終えて

柳沼 実(救友会会長) はじめに

 さる10月24日、福島市上湯温泉町の福島建設労働者研修福祉センター(サンスカイつちゆ)において、救友会総会および第6回シンポジウムを開催しました。県内各地から約150人の会員が参加し、盛大に行われましたので、その概要を報告いたします。

 まず、開催地である土湯温泉郷を簡単に紹介します。県都福島市の郊外にあるこの温泉は、吾妻川と安達太良山の山あいを流れる清流荒川の渓谷にあり、始まりは遠く神代までさかのぼるといわれています。また、温泉だけでなく「こけしの里」としても、多くの人に知られています。

シンポジウム

 シンポジウムは3部構成で行われました。 まず、救友会会長ならびに開催地である福島市消防本部の消防長のあいさつの後、第1部として、特別講演「外傷患者の観察と処置」を実施しました。講師の日本医科大学の吉田竜介先生には、外傷患者の評価や処置について、スライドを交えわかりやすく説明していただきました。救急医療の第一線で活躍しておられる先生のお話に、参加者は皆、熱心に耳を傾けていました。

 第2部は、福島・郡山・須賀川の3支部の救急救命士による高度救命処置のデモンストレーションを実施しました。また第3部では、救急車例3題について検討会を行い、それぞれアドバイザーの先生方から助言を頂きました。

 締めくくりに、「特別発言」として、福島県立医科大学の松本幸夫先生に、いま話題の「急性毒物中毒の対応」についてのご講義も頂き、予定時間を大幅にオーバーする充実した勉強会となりました。

 シンポジウム終了後、会場を移して懇親会を行いました。懇親会では、会員間および先生方との親睦を図り、大盛況のうちに全日程を終了いたしました。

おわりに

 最後になりましたが、本会開催に当たり、遠路はるばるおいでいただきました吉田先生始め県内各病院の先生方、ご協力いただきました福島県消防学校様、そして綿密に準備に当たっていただきました福島市消防本部消防長始め福島支部会員の皆様方に、誌面をお借りして心から感謝申し上げ、第6回救友会シンポジウムの報告とさせていただきます。


兵庫県下救急救命士会第21回研修会

河野 誠(兵庫県下救急救命士会会長)  兵庫県下救急救命士会では、昨年11月22日に、神戸市救急救命士養成所6階実習室において第21回研修会を開催し、約70人が参加しました。

 今回は、1992年から95年まで、神戸市救急救命士養成所で専任教員を務めていただいた神戸大学医学部附属病院第一内科非常勤講師の川合宏哉先生をお招きし、「植え込み型除細動器 :Implantable Cardioverter Defibrillator(ICD)」と題して講演していただきました。

 演題の「植え込み型除細動器」は、聞き慣れない言葉ですが、薬物治療や手術でも改善しない致死性頻拍性不整脈の患者の体内に埋め込み、不整脈の発作が起こると、自動的にそれを感知して、ペーシングまたは電気的除細動を行う装置です。神戸大学医学部附属病院では2例が施術されており、日本でも徐々に導入されているようです。

 川合先生には、植え込み型除細動器が実際に除細動を行った事例の心電図などを示しながら、この装置の構造、問題点、将来性などについてお話しいただきました。とくに、植え込み型除細動器を使用している患者には、電波(携帯電話等)、磁気を出す機器をできるだけ近づけないようにとの注意があり、参加者一同、電波発生機器等の医療機器への影響を再認織させられました。

 また今回は、講演に引き続き、医療機器メーカー数社の協力を得て設置した救急器材展示コーナーにおいて、メーカー担当者から製品の説明等を受ける時間を設けましたが、各ブースでは、メーカー担当者と活発な意見交換をする参加者の姿が見られました。

 研修会終了後には、会場を移してパーティーを開催しました。これは、川合先生がアメリカ・ニューヨーク州での留学を終えられ、帰国されたことを記念して行われたものです。パーティーでは、養成所時代の思い出話をしたり、先生の留学中の苦労話をお伺いして大いに盛り上がり、楽しいひとときを過ごしました。

 今回の研修会は、会員の多くがさまざまな思いで研修に臨んだ神戸市救急救命士養成所で行われ、とくに川合先生の教え子が多く集まったので、懐かしい場所で懐かしい恩師の講演を聞き、初心を思い出して、気持ちを引き締めた会員も多いのではないでしょうか。

 なお、第22回研修会は、すでに1月25日に播但地区において開催済みですが、次回の幕23回研修会は、尼崎市防災センターホールにおいて、3月19日に開催する予定です。皆さんのご参加をお待ちしております。


第7回愛媛救友会(今治大会)報告

菅野 悟(第7回愛媛教友会実行委員長) はじめに

 さる10月31日、今治市総合福祉センター4階大ホールにおいて、第7回愛媛救友会(今治大会)を開催しました。今回は、老人や視聴覚障害者などの生活弱者に対する救急対応をメインテーマに展開しましたが、大会には180人、その後の親睦会には90人の参加者を得て、大盛況の下に行われました。

内容

 大会は、自由演題の発表で幕を開けました。内容は、「カーディオポンプ◯Rを使用しての一考察」や、山間部の活動において悩みの種である電波の不感地帯に関する「衛星電話による不感地帯対策」など、救急隊員にとって大変興味深いものばかりで、フロアの参加者などから活発な質問が出され、熱心に討議が行われました。また、愛媛県下の消防本部の中には、さまざまな理由により、救急救命士制度の運用がいまだ実現していないところがありますが、そのような消防本部の現状についての発表では、救急救命士の悩みやジレンマを感じさせられました。

 続いて、愛媛県立今治病院麻酔科・渡辺謙一郎先生に「今治地区における救急救命現場と医療の接点」と題して、救急隊が搬送した特異な事例について講演していただきました。 その後、医療関係者からいつも好評を得ている特定行為のデモンストレーションを実施して、第2部に移りました。

 第2部では、今回のメインテーマである「生活弱者への救急対応」について「救急手話教室」「聴覚障害者対策としてのファクシミリの設置」「外国人の救急に外国人ノートの活用」など4題の発表を行いました。会場が福祉センターということもあって、希望者がいれば障害者の方々に参加、見学していただきたいと考え検討したのですが、残念なことに、手話の同時通訳ができる人がいないなどの理由で実現しませんでした。大会のテーマに応じて会員以外の人にも参加していただくことができるよう体制を整えていくことは、今後の課題であるといえます。

 引き続いて、昨年の7月20日、「海の日」の記念行事として、松山海上保安部の会員の企画、協力により、会員および家族が海上保安部巡視船「いさづ」 の体験航海をさせていただいたときの報告を、事務局がスライドで紹介しました。参加した皆さんのとても楽しそうな様子が印象的でした。

 最後に、秋田市立秋田総合病院の円山啓司先生から「秋田のプレホスピタルケア」と題して、特別講演を頂きました。円山先生のお話をお聞きし、秋田市の救命率が高いといわれている理由は、プレホスピタル・ケアの充実にあるということを実感しました。愛媛県においても、私たち救急に携わる人間が救命率の向上を目指して、プレホスピタル・ケアの充実を図る努力をしていかなければいけないと痛感しました。

おわりに

 今回は、前回の松山大会同様、司会者を女性の会員の中から選ぶなど、堅苦しくなりがちな雰囲気を少しでもソフトに感じられるよう努力した結果、和やかなムードの中で会を進行させることができたと思います。

 また、発表等で使用するスライドは、顧問の先生方に作成をお願いし、いつも大変ご苦労をお掛けしていますが、これからは自分たちの手でスライド作成などもできるように、勉強していきたいと考えています。

 当会は、参加すれば多くのことを学ぶことができる最高の自己研鑽の場です。今後も、皆さんの積極的な参加をお待ちしています。


第8回京都府救急救命士会総会を終えて

出店知之(京都府救急救命士会事務局)  1998年11月28日12時15分、東京駅発のぞみ47号が京都駅の新幹線プラットホームに到着し、その列車から、私たち救急救命士のために京都を訪れた、日本医科大学救急医学教室の山本保博先生が降りてこられました。顔いっぱいに満面の笑みを浮かべた山本先生をお出迎えするのは、私たち救急救命士に対する先生の温かい心遣いが感じられた幸せな一瞬でした。

 山本先生の今回の入洛の背景には、7年前のこんなエピソードがありました。当時、日本で初めて救急救命士養成教育を行う施設として、救急振興財回が、東京・御徒町にあるテナントビルの4・5階に現救急救命東京研修所の前身である「救急救命中央研修所」を開設しましたが、山本先生は養成教育の中心的役割を担い、多岐に渡って活躍しておられました。第1期研修生には、全国から60人の職員が集まりましたが、その大半が救急I課程を修了しただけの知識で研修に臨んでいたため、手探りの養成教育が続けられました。山本先生は研修所の主任教授として指導に当たって下さいましたが、高度な医学知識を、専門知識をほとんど持たない私たちにわかりやすく教えるのは難しく、また最初の国家試験であったため、過去問題も実績もなく、大変苦労されたことと思われます。 しかし、そのような状況の中でも、研修はあっという間に終了し、先生方のお陰で卒業式を迎えることができました。卒業式で、私たちは山本先生から次のような言葉を送っていただきました。

 「この研修を終えた皆さんは、全国各地に一人ぼっちで散らばっていきます。地方に帰ったら、各地で救急医療に頑張っておられる先生を頼って、今後は救急救命士制度育成の担い手になっていただきたいと思います。けれども、皆さんが困ったときには、いつでも私を呼んで下さい。私は、全国どこへでも飛んでいきます」

 山本先生は、7年後の11月28日に、当会の教育記念講演という形でこの約束を実現して下さったのです。

 さて、当日はまず、総会員数170人のうち出席者80人、委任状67人で総会が成立し、各議事が滞りなく進行しました。今回は、会長以下役員等の大幅な人事の改革に着手するとともに、会旗、記章、横断幕等の整備を行いました。とくに人事面では、今後もフットワークのよい会の運営を確保することに重点を置き、若い熱意のある会員に参画していただくことになりました。発足当初の運常理念である「純粋に学術研究を行い、府下の救急医療に貢献する」ことを日的に、ますます発展させていくことを会員全員で誓い、総会を無事終えることができました。

 その後の教育記念講演には、会員だけでなく顧問の先生方、賛助会貝、京都府下の救急医療を支えていただいている多くの医療スタッフおよび京都市消防局の関係者にも参加していただき、160席用意した会場は立ち見席ができるほどの盛況ぶりでした。山本先生は、「21世紀に向かってプレホスピタルケアはどう進むのか」と題して、スライドを交えてわかりやすくお話し下さいました。講義の中で先生は、「医学は生き物であるゆえに、自己研鑽に前向きに取り組む姿勢が大事である」と論じられました。このことは府下の救急救命士たちに、今後の活動のあり方について、数々の示唆を与えて下さったものと感謝しています。

 私は、7年前と同じように、わかりやすく、語り掛けるように講演を進める先生の姿に、救急救命士の"父親(おやじ)"像を見た思いでした。また、参加者が先生の言葉を一言一句聞き逃すまいと、真剣な表情で聞き入っていたのも印象的でした。

 先生のご講演を受けて、引き続き「救急救命士の生涯教育について」のパネルディスカッションに移り、京都府下で救急医療を主導していただいている先生方と救急救命士が熱い討論を繰り広げました。

 さらに、同会場で行われた立食形式での懇親会は、総会の真剣な雰囲気とはうって変わってにぎやかに進められ、和やかなムードの中でお開きとなりました。

 当会は、全国にも例を見ない京都府医師会の全面的なバックアップの下、京都市消防局の後援も頂き、府下全域を対象とした自主的な会員活動を展開しています。今年で5年日を迎えようとしていますが、その間に会員数も発足当初の9倍に達し、名実ともに府下の救急救命士等の自己研鑚の場、生涯教育の場になりつつ喜んでいます。日帰りという強行軍で入絡して下さった山本先生のご厚意にこたえるためにも、今後は新しい執行部の下で、これまでの歩みを止めることなく、地道な努力を続けていきたいと思います。


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