この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第6号(通巻第34号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

広島救急救命士会症例検討会報告

広島救急救命士会事務局  広島救急救命士会では、これまで主に、市内の医療機 関の先生方から、「救急救命士や救急隊員に、○○に関 することを話したい」「おもしろい話があるから、機会 があれば救急救命士や救急隊員に聞かせたい」などの提 案を項き、教育講演およびそれに関する質疑応答を行っ てきました。しかし、本年度の研修計画の検討の場で、 「症例検討を中心に研修を行ってはどうでしょう」との 意見があり、今年は症例検討会を実施することにしまし た。当会は、県下の救急救命士有資格者を対象としてい ますが、会員数も100人以上となったため、あらかじ め開催日時や場所が決定している方が、皆が参加しやす いのではないかとの理由で、症例検討会は9月21日、11 月26日、来年の1月28日の13時から行うことにしまし た。場所は県立広島病院のご協力を項き、いずれも同院 講堂となっています。

 今回は、さる9月21日に行った症例検討会について報 告します。当日は、コメンテーターとして同院救命救急 センターの土井正男先生を迎え、13時から17時まで行い ました。発表された症例とその検討内容は、次の通りで す。

(1)交通事故による搬送例で、現場では特筆すべき症状が なかったが、病院収容後ショック症状を呈し、外傷性心 タンポナーデが発見された症例。このように、現場での 病態評価と病院選定に苦慮する症例の問題点と対応要 領。

(2)加害による腹部刺創例。その病態評価と注意事項。

(3)複数の傷病者が発生し、複数の救急隊が出動したが、 現場で各隊の統制を欠いたため、病院選定が混乱した症 例。複数傷病者発生時の問題点と対応要領。

(4)麻薬中毒者の搬送事例。その特徴的症状と対応要領。

(5)毒物中毒者の搬送事例。その特徴的症状と対応要領。

 それぞれの症例について、現場から病院収容までの経 過を救急隊員が報告し、院内での検査結果、処置、予後 について、コメンテーターの先生に解説していただき、 その後、質疑応答を行うという形で進行しました。今回 は、誰が、いつ来ていつ帰ってもよい、何を質問しても よい、検討してほしい症例があれば当日持ってきてもよ いなど、自由、気ままに参加し、自分の得たい知識を吸 収することができるような場を目指しました。おかげで、 救急救命士以外の参加者もあり、有意義な検討会となり ました。

 当会では今後も、このようにオープンな情報交換と知 識の吸収を図れる場を提供していきたいと考えておりま す。最後に、会場を提供していただいている県立広島病 院と、ご多忙にもかかわらずご指導いただいた先生方に、 誌面をお借りして厚くお礼申し上げます。


社会復帰率の向上を目指して
−講演会「救急が抱えている課題」開催

出雲地区救急業務連絡協議会  傷病者の救命率を上げるには、地域住民の協力はもと より、救急業務を行う消防機関と救急医療を担う医療機 関との連携がますます重要となっています。

 このような観点から、当地区では、関係医療機関(3 病院1医師会)と消防機関(4消防本部)により、出雲 地区救急業務連絡協議会を1996年4月25日に発足 し、救急業務の高度化の推進および救命率の向上に関す る各種の事業を展開しています。

 当会では、今年度事業の一環として、さる10月8日、 出雲市内の出雲ロイヤルホテルにおいて(財)救急振興財団 副理事長の篠田伸夫氏を講師にお招きし、講演会を開催 しました。

 篠田氏は、「救急が抱えている課題」と題し、Chain of survival運動をわが国において展開する上で、非常に参 考になるアメリカ・シアトル市の例を紹介して下さいま した。その内容は、シアトル市では心肺蘇生法の普及率 が成人の70%と高いことや、ある一定の職業に就いてい る人にCPR講習の受講と技術の修得が義務づけられて いること、受講者に対する減税措置が取られていること などでした。また篠田氏は、「単に救命率を高めるだけ でなく、社会復帰率を高める必要がある」と強調され、 通報から心肺蘇生法などの一次救命処置、除細動などの 二次救命処置が実施されるまでの時間と社会復帰率の関 係を、数値を挙げて示し、「傷病者の社会復帰率を上げ るには、バイスタンダーによるCPRが最重要課題であ り、一般市民への心肺蘇生法の普及がその鍵を握ってい る」と述べられました。

 さらに、シアトル市ではCPRを修得した市民の92% が、「口頭指導があれば心肺蘇生法などを実践すること ができる」と回答していることや、国内の例としてCP R普及活動や口頭指導に熱心に取り組んでいる秋田市の 実績を挙げ、バイスタンダーによる応急手当をサポート する口頭指導の重要性についても説かれました。

 そして最後に、このようなお話を踏まえた上で、(財)救 急振興財団も、救急救命士の養成事業、各種の調査事業 に加えて、今後は一般市民に対する応急手当普及活動の 支援にも力を注がなければならないとし、「東の秋田」 に対し「西の島根・出雲」を目指してほしいと呼び掛け られました。

 この講演会は、当会の医療機関ならびに消防機関のほ か、島根県の行政等の関係機関、島根・鳥取両県の消防 機関等からの160人余りの参加者にご聴講いただき、 盛会のうちに終えることができました。

 講演会終了後、県内の救急救命士を始めとする救急隊 員の知識や技術の研鑚を目的とし、自主運営されている 「島根救友会」の皆様の協力により、懇親会が開催され ました。懇親会には、篠田氏、医師会ならびに医療機関 の先生方、救急隊員、各消防本部の事務担当者等のご参 加を頂き、活発な意見交換が行われました。

 当会では、今回の講演会を足掛かりとし、さらなる社 会復帰率の向上を目指したいと考えています。

 最後になりましたが、ご多忙中にもかかわらず本会に ご参加いただきました皆様に、誌面をお借りし、厚くお 礼申し上げます。


東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会
研究活動研修会開催

兵庫県小野市消防本部 (東播廉内陸地域救急救命士運用連絡協議会事務局)  東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会では、さる 9月4日に、平成10年度研究活動研修会を開催しました。

 今回は、西脇多可行政事務組合消防本部のお世話によ り、西脇市立西脇病院において実施しましたが、参加者 は当地域内の病院関係者を始め、保健所の職員や救急隊 員等、約100人余りとなりました。当日は、当会の北 野昭臣会長のあいさつに引き続き、研究発表が行われま した。研究発表のテーマは次の通りです。

(1)「救急外来における重症救急患者搬送時の看護婦の動 線をかんがえる」土田早弓、松本広子、村上朝子、土本 有紀(西脇市立西脇病院看護婦)

(2)「心筋梗塞発作でVfとなった患者に除細動を行った症 例」重本嘉之(西脇多可行政事務組合消防本部救急救命 士)

(3)「CPAになった小学1年生の女児に搬送先の病院で 医師の指示の下に除細動を実施した事例について」久保 仁(三木市消防本部救急救命士)

(4)「生後46日の乳幼児に特定行為を行った症例について」 北山誠治(小野市消防本部救急救命士)

(5)「バイスタンダーによる心臓マッサージが救急隊到着 時までの間継続されていた症例について」池嶋仁介(加 西市消防本部救急救命士)

(6)「精神分裂病で入院中の患者が池で入水自殺を図りC PAとなった症例について」岸本新一(加東行政事務組 合消防本部救急救命士)

 今回は、奏功事例だけでなく、今後に向けての反省と 新たな検討を要する事例も発表されました。それぞれに 学ぶべきところが多い事例でしたが、なかでも、救急外 来における看護婦さんの動線を検討したことによって、 重症救急患者に対するスピーディーな対応が可能とな り、当直看護婦の負担の軽減を図ることができたという 発表が印象的で、どのような事例でも問題意識を持って 職務に取り組むことの大切さを再認識させられました。

 それぞれの発表について、西脇市立西脇病院外科部 長・戸嶋和彦先生から助言を項き、会場からも盛んに意 見、質問等が出され、盛況のうちに終了することができ ました。今後も当会では、会員相互の協力の下、救急救 命士としてのレベルアップを目指し、研修会を計画、開 催していく予定です。


広げよう救命の輪-第8回船橋救輪会研修会開催

水村 潔(船橋救輪会副会長)  船橋救輪会では、さる9月19日13時から、船橋市消防 局救急ステーションにて第8回目の研修会を開催いたし ました。当日は、船橋市および近隣市町村の救急関係者 はもとより、千葉県内、神奈川県、群馬県などの消防関 係者等約80入の参加があり、大盛況の下に行われました。 プログラムの内容は次の通りです。

(1)教育講演「院外心肺停止の検証」 講師:金

 弘先生(船橋市立医療センター救命救急セン ター長・船橋救輪会顧問)

(2)症例検討「多数傷病者発生事故の搬送事例」 助言者:箕輪良行先生(船橋市立医療センター救命救急 センター部長) 発表者:秋本豊次、須田公宏、白井

 修、中村孝一(船 橋市消防局)

(3)ミニレクチャー・シリーズ応急処置「止血」 講師:薬丸洋秋先生(船橋市立医療センター救命救急セ ンター形成外科部長)

(4)フリートーキング

 まず、教育講演では、金先生より院外心肺停止の救命 率が向上しているか否かについて、

(1)院外心肺停止とその治療成績の評価、
(2)母集団を統一する必要性、
(3)プレホスピタル・ケアの評価法としてのUtstein Style、
(4)Utstein Styleを日本の心肺停止に応用することは可能か、
(5)日本における院外心肺停止の治療成績、
(6)日本における院外心肺停止治療の現況と問題点、

という観点か ら、ドクターカー搭乗の経験と文献を基に、わかりやす く講演していただきました。講演の内容をまとめると、

(1)日本では、院外心肺停止に関して検討対象となるevi dence(データとして集計された事例)はまだ少ないた め、Utstein Styleに則ったpopulation base(母集団 を統一した)データを蓄積することが必要である、

(2)日本では、院外心肺停止のうち、特定行為の処置によ る効果が高いと思われるVfおよびVTの発生頻度が少ない ことが救急救命士の処置による救命率向上を阻む原因と 推定された、とのことでした。

 また、フリートーキングでは当会のホームページの開 設についての紹介もありました(ホームページアドレス: http://www.asahi-net.or.jp/~YM9K-EBHR/)。

 当会は、船橋市消防局の救急隊員が中心となり、会員 相互の交流を通して救急医療に関する知識や技術の向上 を図り、プレホスピタル・ケアの充実を実現することを 目的として、近隣の消防職員にも広く参加を呼び掛け結 成したものです。会員の対象としては、救急隊員という 職域にとらわれず、多くの人に広く門戸を開放している ため、救急隊員以外の消防職員も会員として参加してい ます。発足から早2年半が経過しましたが、会員同士が 自主的に刺激し協力し合って、知識や技術を研鑚し、問 題を提起し解決する場として年に数回の研修会を開催し ており、研修会には会員以外の人も自由に参加できるこ とが大きな特長となっています。

 次回の研修会は、来年1月30日、船橋市消防局救急ス テーションにて開催を予定しておりますので、多くの 方々の参加をお待ちしております。


救急セミナー「救急活動と法律問題」を終えて

倉持日出雄(神奈川救急救命士会会長)
臼井 英治(神奈川救急救命士会)  神奈川救急救命士会では、さる9月25日、横浜市社会 福祉会館大ホールにて、法律問題に関する救急セミナー を開催した。会場は306人を収容できるが、当日は満 員で、通路に座る人や立ち見の人も出るほどであった。 当会主催の救急セミナーで、これほど人気が集まったの は、Squeezing研修会以来のことである。

 今回は、現職の弁護士であり、横浜市弁護士会会長、 横浜市顧問弁護士の塩田省吾先生を講師にお迎えし、「救 急活動と法律問題」と題して講演会を行った。今年4月 に勲四等旭日小綬章叙勲を受けられた塩田先生は、「横 浜市救急業務委員会」の委員として、救急救命士制度の 運用以前から一人で法律問題を受け持ち、ご尽力下さっ た方である。

 満員の参加者でふくれ上がった会場は、まさに"熱気 ムンムン"で、加えて場内のエアコンが故障したため、 先生のご講演は文字通り汗だくの熱演となった。しかし、 そのような悪条件の中でも、誰一人として席を立つ者は なく、参加者は皆、約2時間に渡る講義に熱心に耳を傾 けていた。内容をメモに取る人あり、録音する人あり、 ビデオカメラに収める人ありで、法律問題に対する関心 の高さがうかがえ、大盛況であった。

 先生はまず、「救急件数は年間約337万件(1996 年)に上るにもかかわらず、訴訟問題になるケースは非 常にまれで判例が少ない。これは、救急隊の皆さんの熱 意と思いやりに満ちた活動が実を結んでいるからであろ う」とし、続いて救急活動の中で法律問題になりやすい 「不取扱」(搬送しなかった場合)について詳しく説明し て下さった。とくに、緊急性なし、搬送忌避、死亡後等 の扱いについては慎重を期す必要があり、傷病者は救急 車を必要として要靖しているため、たとえ救急隊が「軽 症」と判断しても思わぬ重症が隠れていることがあるの で、そのような場合には、救命指導医等、医師に判断を ゆだねることが重要である、とのことであった。

 さらに、「救急隊が傷病者を"死亡"と判断する場合は、 判断基準の7項目すべてに該当していることが重要であ る」「傷病者が搬送を忌避した場合の取り扱いについて は、観察結果や忌避に至った経過を、救急活動記録票に 詳細に記入しておく必要がある」などの指導を受けた。

 また、救急救命士法についても、「特別な法律であり、 この法律が皆さんを守っている。したがって、法律の適 用範囲内で活動しなければならない」とし、とくに特定 行為については「救急救命士法第44条は、医師の具体的 指示が必須要件である」と強調された。「第44条に違反 すると、救急救命士法違反として免許の取り消し、ある いは地方公務員法違反として懲戒に該当し、刑罰を受け ることもある」という言葉には、参加者が大きくうなず く姿も見られた。

 さらに、特定行為をする、しないの判断について、ま た特定行為を実施した場合としなかった場合について、 法律的に作為義務、不作為義務違反の問題が生じる可能 性があることにも触れ、「特定行為をする、しないの判 断も医師の具体的な指示によるため、救命指導医と密に 連絡を取る必要がある」と説明していただいた。

 最後には、「救急救命士は持っている知識や技能を生 かして、傷病者を救命するために最大限の努力をすべき であり、また、傷病者に対する救命行為は、救急救命士 の資格のある者が積極的に行うべきである」という内容 のお話もあり、身の引き締まる思いがした。今回は、法 律問題に関する知識の向上を図るだけでなく、法律と照 らし合わせながら救急救命士の責任の重さを再認識でき る内容の濃いセミナーとなったと思う。

掲示板ー神奈川救急救命士会か 会員バッジ・会員証を発行!

倉持日出雄 (神奈川救急救命士会会長)  神奈川救急救命士会ではこのたぴ、発足7周年を 記念して、会員バッジおよぴ会員証を発行しました。

 会員バッジは直径12mmの七宝焼で、白地に濃紺で 救急のシンボルマークである「スターオブライフ」 のマークが入っており、裏には「神奈川救急救命士 会」の9文字が刻まれています。

 また、会員証(演田喜公氏製作)は、縦5.2cmX横 8.2cmの長方形で、ライトブルーの地に救急救命士登 録番号、氏名、会長印が記され、「スターオブライフ」 のマークが、中央と左上の2か所に入っています。

 今後は、会員がバッジを身につけておりますので、 救急救命士会の救急セミナーやフォーラム、あるい は救急医学会等で見かけましたら、ぜひ声を掛けて 下さい。


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