この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第5号(通巻第33号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

17年間の夢を実現
感動と発見のオーストラリア消防・救急隊研修

高橋 修(藤沢市消防本部) はじめに

 私は、職場の職員海外派遣研修により、1998年1月20日〜2月3日、オーストラリアのメルボルン、シド ニー両市を訪問し、救急・消防隊勤務を体験した。

 私は、いまから17年前の1981年、神奈川県の県民 を対象とした研修制度「青年の翼」の団員としてオース トラリアを訪問した際に、自由時間を使いメルボルンの 消防署を見学した。その折、消防署の人々は、私のため にメイン通りに十数台の消防車両を展示して歓迎してく れた。そのときの感動は、いまも忘れられない。「今度 はぜひ、仕事で来よう」と心に誓った。今回、その夢を 果たすため、職員海外派遣研修に応募、派遣が決定した。 15日間に渡る現地でのすばらしい体験を報告したい。

メルボルン市−消防隊勤務と救急施設視察

 1月20日、数日前に降った雪の残る日本を飛び立ち、 メルボルン空港に到着。その日は、日中の気温が40度を 超える猛暑であった。ビクトリア州の州都メルボルン市 は、「ガーデンシティー」と呼ばれているように、街中 いたるところに大きな公園が点在する、落ち着いた雰囲 気の街である。私はここで、3日間の消防隊勤務と1日 の救急施設視察を行った。

消防隊勤務

 私の勤務したメトロポリタン消防局第25ステーション は、市の中心街から車で約30分ほどのオークレイという 街に所在する。消防の勤務体制は、日勤9時〜19時の10 時間を2日、夜勤19時〜9時の14時間を2日の計4日間 勤務した後、4日間のオフとなっている。さらに、公休 のほかに、年間に6〜8週間の連続した休暇が与えられ る。また、消防署員でも、ほかに職業を持つことが許さ れており、今回の研修でお世話になった消防士のマニー さんも、日本語が堪能で、消防署員、空手の師範、日本 語通訳、料理宅配サービス業者の四つの顔を持っている。 何ともうらやましい限りである。

 消防隊勤務では、救助訓練や林野火災の出動、消火作 業を体験した。この時期は林野火災が多く、そのため、 屋外での火の使用を全面的に禁止する「トータル・バー ン・ファイアー」の警報が発令されていた。ユーカリに 代表されるように、自生している樹木に油分が多く含ま れていて燃えやすいことが、大規模な林野火災になる原 因の一つであるらしく、そのような事情からか、消火作 業が徹底的に行われていたのが印象的だった。

 夜勤では、高層ビルの火災報知器が作動し、十数年ぶ りの豪雨で市街地の道路が冠水する中、安全確認のため 出動した。途中、車が水につかり、助けを求めている男 性がいたが、無視して通り過ぎてしまった。「なぜ助け ないのか?」と開くと、「車内には女性、子どもはいな い。自力避難可能で助ける必要はない」という答えが返 ってきた。お国柄なのか、少々驚いてしまった。

救急施設視察

 研修2日日、救急飛行機・ヘリコプターの施設、コン トロールセンター、救急病院を見学した。オーストラリ アでは、日本の約20倍という広い国土をカバーするため、 飛行機、ヘリコプターを積極的に活用している。同州は、 救急飛行機を6機所有し、駐機場4か所、飛行場39か所 で運用している。救急ヘリコプターについては、救急専 用機1横、警察との併用機3機の計4機を所有、ヘリポ ートは警察と併用していた。また、私が見学した救急病 院には、2階部分にヘリポートが併設されており、段差 のない床でそのままERへ傷病者を収容できる機能的な 構造となっていた。傷病者搬送に、ヘリコプターが頻繁 に活用されているように思われた。

 同州の救急システムは、隊員とパラメディックが2人 乗務する救急車に加え、薬剤、救命資器材を積載した乗 用車型の緊急車(サポートカー)に、1人のベテランの パラメディックが乗務して、救急事案サポートや現場 指揮に当たるMICA(Mobile Intensive Care Unit Ambulance) システムというものであった。 サポートカ ーは、市内の受け持ち管内を巡回しており、コントロー ルセンターの指示や自身の判断により救急現場に向か う。国内はどこも、呼び方は違っていても、MICAシ ステムとほぼ同一のシステムであるとのことであった。

 メルボルンでの4日間はすばらしく、連続勤務で体の 疲労はピークだったが、充実した研修に、その疲れも吹 き飛ぶ思いであった。

シドニー市 救急事情調査と同乗体験 ニューサウスウェールズ州の州都シドニー市では、ア ンビュランスサービス・オブ・ニューサウスウェールズ の本部で研修を行った。本部施設は、市街地から車で30 分ほどの緑に囲まれた地域に位置する。赤れんが造りの 建物は、元は精神病院だったそうだ。ここでの研修内容 は、組織、財務、人事等の担当幹部からのレクチヤーが 2日間、救急飛行機同乗が1日、さらに、サポートカー 同乗が2日間であった。

シド二−の救急事情

 同州の救急サービスは健康省の管轄で、緊急サービス 省の管轄である消防とは、別の組織となっている。原則 的には、救急活動に消防は出動しない。そのため、救急、 消防それぞれのレスキュー隊があり、この点は不経済で あると思われた。健康省は医療関係全般を管轄しており、 同省に属するアンビユランスサービスは、救急業務を専 門で行っている。その大きな利点として、救急隊の医療 行為の範囲拡大や高度な専門教育が、スムーズに行われ ているように感じた。

 パラメディックシステムは、1976年、イギリス・ ロンドンのシステムを手本にスタートしたもので、22年 の歴史がある。パラメディックの処置範囲は広く、除細 動器、気管内チューブ、薬剤(広範囲な救急薬剤)、笑気 の使用などが認められている。処置に関しては、医師の 指示を受けず、確立されたプロトコルに沿って行ってい る。救急隊員と医師等の信頼関係は厚く、処置領域の区 分を確立して、スムーズな連携体制が取られている。

救急飛行機の同乗体験

 同州では、州面積801万平方キロメートル(神奈川県の約330倍) の広大な地域をカバーするため、1967年から救急飛 行機を運用している。現在は、ビーチクラフト(スーパ ーキングエアーB200C)4機の救急飛行機のほか、 救急ヘリコプター5機(ケアフライト、チルドフライト の2種類)を所有している。救急飛行機の業務は転院搬 送と緊急搬送で、救急ヘリコプターはそのほかに救助活 動も行う。

 飛行機の機体は州が所有しており、パイロットと機体 整備は民間委託になっている。フライングナースとして は、救急の経験豊富な看護婦や助産婦の資格を持つ15人 が交替で勤務。このフライングナースたちにも、パラメ ディックのコースの受講が義務づけられている。通常は 1日8時間運用であるが、緊急時は24時間対応である。 また、通常の患者搬送には、パイロット1人、フライン グナース1人が乗務している。料金は救急車と同じで、 基本科金が136AS$(約1万2千円)、プラス1キロメートル当 たり3.47AS$(約300円)が加算される。

 救急ヘリコプターの運用については、ライフセーバー 組織がアンビュランスサービスとネットワークを組み、 海難救助等の救助活動や患者搬送を行っている。隊員の 中にはパラメディックの有資格者もおり、医療行為を行 うこともできる。

 同州の年間総救急件数は約67万件であるが、そのうち、 エアーアンビュランスの割合は約1.2%(8千51件) となっている(1996年6月−97年5月)。したがっ て、1日当たり22件の傷病者搬送が行われていることに なる。また、その内容は、転院搬送6千99件、緊急搬 送1952件となっている。

 同乗研修当日はまず、シドニー郊外のキングスフォー ドスミス空港で、パイロット、フライングナースととも に、飛行計画の確認や積載器材の点検、積み込みを行っ た。機内には、ストレッチャー2台と患者用座席2席、 フライングナース用の座席1席があり、観察器材、医療 器材、薬品庫がコンパクトに設置されていた。

 この日は、ニューキャッスルなど合計4か所の飛行場 へ行き、39歳の背部痛の男性、生後4日の男児(未熟児) と付き添いの母親など、4人の傷病者と2人の付き添い 家族を搬送した。総飛行時間2時間45分、総勤務時間6 時間25分であった。救急飛行機に初めて乗り、しかも実 際の患者搬送に同乗できたことは、私にとって大変貴重 な体験となった。また、国土の広さや美しい海岸線の眺 望に感動しただけでなく、フライングナースの笑顔を絶 やさない冷静な対応ぶりに感心させられた。飛行場での 待機時間を除いて休憩、食事時間はなく、少々ハードな 勤務であったが、感激と緊張で、朝食、昼食をとらなか ったことも忘れてしまうほどであった。

サポートカー同乗体験

 研修4、5日日は、パラメディック・スーパーバイザ ーのサポートカーに同乗し、救急現場だけでなく、ガス 管亀裂事故現場の立ち会いなども体験した。スーパーバ イザーは、薬剤、救命資器材を積載したバンタイプの緊 急車に乗務して、受け持ちの数か所の救急ステーション を回り、救急事実サポート、事務決裁、隊員のメンタル ケア、技術的アドバイスの業務を行っている。通常の救 急事案では、2人の隊員で傷病者を搬送するが、重症傷 病者、特殊事案に対しては、スーパーバイザーや他の救 急隊、レスキュー隊も出動するとのことで、救急隊員と しては心強いシステムであると思った。

 研修中、スーパーバイザーのジェフさんに、シドニー の救急事情について教えていただいたが、「非緊急事案 が緊急事案に影響を与えつつある」ということが印象に 残った。同州の年間救急件数は約67方件(神奈川県の約 2.8倍)であるが、数の多さもさることながら、その 内容に驚かされた。全体の4分の1に当たる約17万件を 転院搬送と通院搬送、自宅搬送の非緊急事案が占めてい るのだ。当地の救急サービスは高度救急医療を行い、な おかつ有料である。それにもかかわらず、なぜ、非緊急 事案の搬送が多いのか?

 少々のことでも容易に病院に 行く人が多いこと、また、任意の救急保険が普及してい ることなどが原因しているとのことであった。

 私は、日本で救急車利用を有料化すれば、非緊急事案 は減少するのではないかと思っていたが、果たしてどう なのかと考えてしまった。アメリカのように、通報受信 時にパラメディック等が緊急、非緊急を判断するように しなければ、緊急事案に効率よく対応できる救急車の運 用体制はあり得ないように感じた。

おわりに

 私は今回の派遣が決まったとき、企画、調整、実行を できる限り自分で行うこととした。自分の思いがどこま で通じるかを試してみたいと思ったからである。まず、 大使館で消防、救急施設の連絡先を探すことから始めた。 旅行会社との調整も自分で行い、限られた予算の中で最 大の成果を残すため、粘り強く交渉した。さらに、研修 先とのやりとりも、英会話の堪能な友人に頼んで、直接 行った。そして、多くの人たちの協力を得た結果、視察 だけでなく実地体験も盛り込んだ研修を実現することが できた。

 しかし、今回の研修を成功に導いた最大の要因は、「ぜ ひオーストラリアの消防、救急隊を体験したい」という 私の気持ちに、訪問先の方々が快くこたえてくれたこと であると思ぅ。私はほとんど英会話ができないが、現地 では、詳細な説明や調整のため訪問前半に通訳をつけた ものの、体験研修等では、電子辞書をたたきながら、自 分の力で会話した。そんな私に、訪問先の人々は「日本 人か?」「日本のパラメディツクか?」「その服は救急隊員 のか?」と気軽に話し掛けてくれた。隊員の中にも日本 語が堪能な人や片言の日本語を話せる人がおり、英語が できない私も、心おきなく研修を実施することができた。

 オーストラリアにもパラメディックシステムがあるこ とを知り、ぜひ行ってみたい、見てみたい、体験してみ たい−そんな強い気持ちが研修を実現させた。そして、 実際に体験したいまは、オーストラリアの救急事情を日 本の仲間に知らせたいと思っている。オーストラリアに は、アメリカに肩を並べる高度な救急医療体制やパラメ ディックが存在した。そして、日本の救急救命士と同じ 熱い心を持った仲間がいて、心から私を歓迎してくれた。 この経験を今後の自分の救急活動に生かすとともに、オ ーストラリアの仲間たちとの交流の輪を広げていきた い。それは、今回の研修でお世話になった方々への恩返 しでもあると思ぅ。皆さんにもぜひ、オーストラリアに トライしていただきたい。現地での体験は、きっとあな たの熱意にこたえてくれることだろう。最後に、この研 修の機会を与えて下さった方々、協力していただいた職 場の皆様に、誌面を借りて心よりお礼申し上げます。


救急隊員セミナーに参加して

石川 実(鹿沼地区広域行政事務組合消防本部) さる6月20日、栃木県宇都宮市のとちぎ健康の森講堂 において、救急業務の高度化および地域救急医療の向上 を図ることを目的として、「救急隊員セミナー」が開催 されました。今回のセミナーは、(財)地域社会 振興財団、自治医科大学が主催、栃木県が後 援となって開催の運びとなったものですが、 栃木県以外にも茨城県、群馬県、福島県、 埼玉県の救急隊員が来場し、参加者数200 人を超す盛況となりました。当日は、栃木県 消防防災課長補佐・石川春彦氏の司会進行の 下、以下の内容が実施されました。


(1)教育講演「急性腹症について」
  講師:小林健二先生(済生会字都宮病院救急診療科長)
(2)症例研究
  助言者:鈴川正之先生(自治医科大学救急医学教授)
      小林健二先生
  座長:中三川芳樹(芳賀地区広域行政事務組合消防本部)

  (1)「ショベルカーを媒体に電撃傷を負った事例」
    発表者:野澤和良(宇都宮市消防本部)
  (2)「CPR実施による心拍再開例」
    発表者:大美賀裕(足利市消防本部)
  (3)「肺梗塞による心肺停止を救命した事例」
    発表者:大島誠一(石橋地区消防組合消防本部)
  (4)「首吊り自殺をした傷病者の搬送事例」
    発表者:上岡健司(栃木地区広域行政事務組合消防本部)
  (5)「CPA患者による事例から改良された資器材」
    発表者:峰崎茂房(鹿沼地区広域行政事務組合消防本部)
(3)特別講習「産科救急」
  講師:松原茂樹(自治医科大学産科婦人科学助教授)

 まず、教育講演では、救急隊員にとって出動例の多い 疾患である急性腹症において、全身状態を把握する方法 や、腹痛の部位、疼痛の程度などから緊急性や重症度を 判断する方法について、小林先生にお話しいただきまし た。さらに、特別講習として、出動例は少ないが非常に 神経を使う症例の一つである産科救急について、松原先 生がビデオやスライドを使って指導して下さいました。 どちらも、救急隊員にとって貴重な講演となりました。

 また、症例研究でも、それぞれの事例について参加者 からの質問も交え、活発な意見交換がなされました。助 言者の鈴川先生、小林先生の救急医療に対する熱意がフ ロアにも伝わり、参加した救急隊員にとって、とても充 実した一日となりました。

 こうしたセミナーの開催も、昨年の7月以来3回目と なり、栃木県や近県の救急隊員の研修の場として定着し てきた感もあります。これは、自治医科大学救急医学教 室、済生会宇都宮病院、栃木県、栃木県消防長会、関係 各位の皆様のご尽力のたまものです。このように、私た ちのために多くの関係機関がかかわり、先生方がお忙し い時間を割いて指導して下さることに報いるためにも、 私自身、"日々研鑚"の思いを新たにしたセミナーであ りました。


東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会
第3回研修会開催

兵庫県小野市消防本部 (東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会事務局)

 東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会では、救命 率の向上を目指して活動を行っておりますが、平成10年 度定期研修として、さる7月10日、第3回研修会を開催 しました。

 今回は、三木市消防本部のお世話により、三木市立三 木市民病院において実施いたしましたが、参加者は当地 域内の医師、看護婦を始め、保健所、市町行政関係の職 員、救急隊員等、約70人余りとなりました。

 当日は、当会の北野昭臣会長のあいさつに引き続き、 三木市立三木市民病院循環器科部長・粟野孝次郎先生を 講師に迎え、「急性循環不全の病態と治療」と題して、 講演会を行いました。

 粟野先生には、心疾患の病態と治療について、詳細に ご講義いただきました。心血管系の疾患が、急性症状か ら24時間以内に死亡する突然死症候群の7割を占めてお り、そのうちの8割が虚血性心疾患(急性心筋梗塞、異 型狭心症等)、1割が原因不明の不整脈(心室細動等)、 残りの1割が大動脈疾患(解離性大動脈瘤等)であると いう現実を踏まえたお話で、大変意義深いものでした。

 今後も当会では、会員相互の連携の下、救急救命士と しての知識や技術の研鑚に努め、地域の傷病者の救命率、 社会復帰率の向上を目指して、より充実した研修会を行 っていきたいと考えています。


鹿児島救急救命士会第1回研修会報告

山崎 修(鹿児島救急救命士会会長)

 今年の5月17日に産声を上げたわが鹿児島救急救命士 会では、早速、さる7月10日の14時から、鹿児島市勤労 青少年ホームにて、第1回研修会を開催した。今回は、 顧問の要職をお願いしている鹿児島市医師会病院麻酔科 部長・有村俊明先生をお招きし、会員の半数以上に当た る35人が参加して行われた。

 当日のカリキュラムは、大きく三つに分けて次の通り であった。

(1)講演「札幌市救急ワークステーション視察結果に伴う
  救急救命士の生涯教育について」
   講師:有村先生
(2)「高規格救急運用隊員の現場からの声」(5人の救急救命士による発表)
(3)「特定行為実技訓練」(訓練用人形を使用した特定行為実技訓練)
 まず最初に行われた講演の内容は、さる5月29〜30日 に、有村先生が鹿児島市地域保健協議会の一員として救 急医療先進地域を視察されたときの報告である。先生は、 訪問先の札幌市救急ワークステーションで見聞されたこ とを、スライドを使って詳しく紹介して下さった。この ワークステーションの主な役割は、

(1)臨床実習等の研修を通して、救急救命士の救急活動に必要な知識や技術の向上を図る、
(2)市立札幌病院との連携を図り、救急現場への迅速な医師の指示体制を確立する、

 ことであるが、標準課程修了者の卒後教育の場として も活用されているらしい。なかでも、テレビやビデオ等 を使用し、視聴覚効果に訴えた臨場感あふれる研修を行 うことができる設備が、とくにすばらしいとのことであ った。有村先生のお話は、同ワークステーションの説明 から救急救命士生涯教育の今後のあり方へと展開、その 興味深い内容に、参加者は身を乗り出すようにして、熱 心に聞き入っていた。

 講演に引き続き行われた「高規格救急運用隊員の現場 からの声」では、5消防本部の救急救命士が、自分の救 急隊の活動状況を発表、これから高規格救急車の運用を 計画している救急救命士からの質問にも本音で答えてい た。他の救急隊のよいところは、自分の隊にもどんどん 取り入れ、救命率アップにつなげようと、積極的な情報 交換が行われた。

 最後の「特定行為実技訓練」では、現在病院に勤務し ている看護士、救急救命士の会員が、気管管理トレーナ ー、IV(静脈注射)トレーナーを使って、気道確保要 領や静脈路確保要領などについて指導した。さらに、高 規格救急運用隊の救急救命士が、揺れる車内で特定行為 を行うことの難しさを説明、手本を示しながら訓練を開 始した。参加者の中でもとくに、資格は得たものの、ま だ所属機関に高規格救急車が導入されておらず、活躍の 場のない救急救命士は、研修所で学んだことを思い出し ながら、運用開始までCPR技術の腕が落ちないように と、熱心に訓練に取り組んでいた。


兵庫県下救急救命士会第20回研修会報告

河野 誠(兵庫県下救急救命士会会長) 兵庫県下救急救命士会では、さる7月22日に第20回研 修会を開催しましたので、報告します。

 今回は、兵庫県の東播地区(明石市、淡路広域消防事 務組合、加古川市、西脇多可行政事務組合、三木市、高 砂市、小野市、加西市、加東行政事務組合)の各消防本 部の会員と、役員会が中心となり、研修会を開催した訳 ですが、この地区の目玉は何といっても世界一の長さを 誇る吊り橋「明石海峡大橋」です。ということで、すぐ に会場は淡路島・津名郡淡路町のアソンブレホールに決 定しました。当日は、県下の会員約90人の参加者を得ま したが、参加者からは、初めて明石海峡大橋を渡り、そ の大きさに感動したとの声も開かれました。

 さて、今回の研修会では、淡路島の救急医療の中心と なっている兵庫県立淡路病院の救急センター長・八田健 先生を講師にお迎えし、「胸部・腹部外傷について」と 題して講演を頂きました。

 講演はまず、通称「トップカー」と呼ばれる淡路島特 有の農業運搬車の事故症例から始まりました。トップカ ーとは、廃車になった車のエンジンをそのまま活用し、 荷台を付けて農作物や農作業用具を運搬する自家製の車 のことです。

 提示症例は、トップカー運転中の事故により、多発肋 骨骨折、両側血胸、右大腿動脈閉塞となったため、両側 に胸腔ドレーンを各2本挿入し、手術に入ろうとしたと ころでショック状態に陥り、残念ながら右下肢切断に至 った、という内容のものでした。

 八田先生にはこのほか、単車と大型トラックの衝突事 故の2日後に発症した心ヘルニアの症例や、自損による 腹部刺創症例など、計8例について、来院時、術中、術 後の写真、X線像やCT像等のスライドを駆使して、わ かりやすくお話しいただきました。参加した会員からの 質問にもていねいに答えていただき、一例一例が貴重な 勉強材料となりました。今回の研修会で、救急救命士に とっても、症例検討の積み重ねが大切であることを改め て痛感しました。

 研修会に引き続き、淡路広域消防事務組合消防本部の 職員の方々と救急救命士会会員有志で、八田先生を囲ん で懇親会を開催しました。懇親会では、明石海峡大橋の 開通に伴い、淡路島を訪れる人が増え、島外者の急病や 交通事故の増加が問題となっていることなど、さまざま な話題に話が盛り上がり、大変楽しいひとときを過ごす ことができました。

 最後に、ご多忙にもかかわらずご講演いただいた八田 先生に誌面をお借りしてお礼申し上げます。また、淡路 広域消防事務組合消防本部の職員の方々には、本会の開 催に当たり、会場確保にご尽力いただくなど、いろいろ と協力していただきました。本当にありがとうございま した。

 なお、次回の第21回研修会は、神戸方面で10月中旬に 開催する予定です。


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