この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第4号(通巻第32号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

鹿児島救急救命士会通信

山崎修(鹿児島救急救命士会会長)

 鹿児島県内消防署の救急救命士が中心となり、199 8年5月17日、鹿児島救急救命士会が発足しました。当 会は、「救急救命に関する知識及び技術の向上を因るた め、症例等の研修、会員間の相互連絡及び情報交換、並 びに親睦を行いながら、会員個々の資質の向上を回るこ と」を日的として、さらに救命率アップを目指そうとい うもので、5月17日に鹿児島市の市町村自治会館で開か れた設立総会には、看護婦、看護士を含む救急救命士64 人が参加しました。

 午前中は、救急救命士の育ての親として皆が尊敬して いる、救急救命東京研修所の安田和弘主任教授に、「細 胞レベルでとらえる救急医療」と題して講義をしていた だきました。

 安田先生は、午後の記念講演にお招きしたのですが、 先生自ら「せっかく鹿児島に釆たのだから、救急隊員に も講義をしよう」と提案して下さり、これから救急救命 士を目指そうという救急隊員も含めて、先生独特のパフ ォーマンス豊かな講義を受けられることになりました。 教え子の救急救命士が、久しぷりの先生の講義に、研修 所時代を懐かしく思い出しながら身を乗り出すようにし て聞き入る一方で、これから救急救命士を日指す隊員 が、こんなに難しいことを勉強するのかとビックリする 様子も見られました。

 午後からは、いよいよ発会式と安田先生の記念講演が 行われました。当会は、救急救命士手づくりの私的な会 ではあるものの、顧問として、鹿児島県医師会の鮫島耕 一郎会長、鹿児島市医師会の海江田健会長、鹿児島市立 病院救命救急センターの湯浅洋部長、鹿児島市医師会病 院の有村敏明麻酔科部長の4人の先生に名を連ねていた だいています。

 発足に当たり、とくに鮫島先生から「救急の日の発祥 の地、鹿児島としては、救急救命士会の発足は遅かった くらい」と叱咤激励され、救急救命士の資質の向上を図 るためなら協力を惜しまないという先生方の情熱に、心 が引き締まる思いがしました。

 発会式に引き続き行われた安田先生の記念講演「助か るべき命を助けるために」には、医師会の幹部の先生方 はもちろん、救急医療に理解を示していただいている医 師約30人、それに看護婦(士)、看護学生、救急隊員等 200人を超える人たちの参加がありました。安田先生 には、スライドを使って救急医療の実践例を興味深くお 話しいただき、記念すべき発会式に花を添えていただき ました。

 これから、年々増加していく後輩のためにも、会員が 一丸となってこの会を育てていこうと、いろいろな夢を 抱いて船出した鹿児島救急救命士会です。


(連絡先)
鹿児島救急救命士会事務局
〒892−0862

 鹿児島県鹿児島市坂元町72−17
(事務局長・宮下康弘宅)
TEL:099−247−6586(事務局長宅)
  099−223−0119(鹿児島市中央消防署南林寺分遣隊・事務局長所属先)


オーストラリア(シドニー・メルボルン)救急視察研修

秋本豊次(船橋救輪会・船橋市消防局)
須賀秀夫(船橋救輪会・市川市消防局)
左 博之(船橋救輪会・船橋市消防局)
桜井嘉信(船橋救輪会・千葉市消防局) はじめに

 1998年3月15〜22日の8日間、船橋救輪会を中心 に、オーストラリア救急視察研修を行った。

 欧米の救急事情は諸論文等で目にする機会が多く、日 本の救急医療システムと比較、検討されるのは、必ずと いっていいほどヨーロッパ、アメリカである。われわれ も、当初はアメリカの救急発祥の地ともいえるシアトル での視察を計画していた。しかし、今回同行していただ いた船橋市立医療センター救命救急センター長の金弘先 生、帝京大学医学部附属病院救命救急センター講師の多 治見公高先生に相談したところ、オーストラリアのシド ニー、メルボルンに、ヨーロッパ、アメリカと肩を並べ る質の高い救急医療を確立したパラメディツクがおり、 また日本の救急隊もまだ訪れていないだろうということ で、オーストラリアに決定、先生方は病院内のERを中 心に視察し、救急隊員はパラメディツク視察や救急車同 乗を行うこととなった。

 今回の視察研修には救急救命士4人が参加したが、事 前のアポイントメントなど先生方の多方面に渡るご尽力 、ならぴに船橋救輪会各位の協力により、何のトラブ ルもなく、貴重な体験をさせていただくことができた。

シドニー

 成田空港から空路11時間を経て、南半球最大の都市の 一つ、ニューサウスウェールズ州のシドニー市に到着し た。到着後、観光もそこそこにシドニー市の基幹病院で あるSt.Vincents HospitalのERを見学し、その後、わ れわれ救急隊員は、Ambulance Serviceの送迎車で Ambulance Servvice of New South Walesという 救急ステーションに向かった。

 Ambulance Servvice of New South Walesは、消 防とはまったく別の公的機関であるが、ここで約3時間、 ステーション、救急車、救急バイク、積載品等を見学し、 シドニー市全体の救急医療システムの概要等について説 明を受けた。

 シドニー市は人口約400万人で、救急ステーション が51か所あり、救急関係のスタッフは約1200人、救 急事約270台、救急バイク3台、ヘリコプター3機、 セスナ1機、レスキューアンビュランス2台を所有して いる。救急出動はニューサウスウエールズ州全体で1日 当たり1300件であるが、そのほとんどがシドニー市 に集中しているという。救急出動は当然有料で、平均1 70AS$(約1万7千円)だが、外国人旅行者は無料で ある。

 救急車については、2人のパラメディック (Paramedic)が乗務して活動に当たる。パラメディツクは、 1976年にスタートした制度で、22年の歴史がある。 資格は、レベル1〜4の研修を修了した後、国家試験に 合格すれば取得することができる。資格取得後も研修が あり、また2年に1回行われる資格更新試験に合格しな ければ、資格取り消しとなる。研修の内容は、次の通り である。
・レベル1(1年間):救急に関する基埴知識とDC(直流電気除細動)
・レベル2(6週間):さらに高度な医学知識
・レベル3(1週間):IV(静脈内注射)と薬剤を使用したDC
・レベル4(期間不明):レベル3+α(挿管)
・パラメディック(病院内16週間+同乗10週間):レベル4+α(チェストチューブ)

 勤務体制については、8〜17時を2日間勤務した後、 翌日から17時〜翌8時の夜勤を2日間勤務、そして4日 間のオフとなる。

 われわれが訪問したAmbulance Servvice of New South Wales は、救急車7台、救急バイク3台で運用さ れている救急ステーションで、1階、2階がアンビュラ ンスステーション、3階がディスパッチセンター(指令 室)となっていた。

 救急車の積載品については、気管内チューブ、除細動 器(マニュアル)、チェストチューブ、薬剤等があり、 なかでも薬剤については、一般的なカテコールアミンを 中心とした救急薬剤だけでなく、麻酔薬や麻薬括抗剤(ナ ロキソン)も積載されていた。ただ、気管内チューブが 直接布の袋の中に入れてあったので、「清潔は必要ない のか」と尋ねたところ、「救急現場には必要ない、必要 ならば病院で交換する」と回答され、これは少し気にな る点ではあった。

 翌日は、朝9時に再度このステーションを訪問し、2 人はアンビュランスレスキューを見学した後、別の救急 ステーションで約3時間、救急車同乗を体験した。残り の2人はこのステーションで約4時間、救急車同乗を行 った。

 それぞれ5〜6件程度の出動に同行したが、胸痛 (Chest Pain)を主訴とする要請が非常に多いことに 驚いた。しかし、日本に比べて現地の人々の体格や食生 活を見れば、当然といえば当然のような気がする。

 このほか、緊急性のない患署や軽症患者の搬送の際に はサイレンを鳴らさないことや、CPRを必要とする傷 病者の場合には、他の救急車またはバイクが応援に駆け つけるシステムなどにも驚かされた。

 救急車内の資器材に関しても非常に効率のよいレイア ウトがなされており、たとえば、スクープストレッチヤ ーのような主に屋外で使用する器材は車外から出し入れ できるボックスに収納されていたり、酸素は車内用に3 か所、屋外用に1か所設置されているというように、常 に必要なものは手を伸ばせば届く位置にあるが、あまり 必要としないもの、使用しないものなどは、初めから積 載されていなかった。

メルボルン

 シドニーから飛行機で約2時間、メルボルン市はビク トリア州に属する人口約360万人の都市である。ここ では、救急医療システムの概要等について詳しく聞くこ とはできなかったが、救急車にはやはり2人のパラメデ イックが乗務して活動を行っており、救急バイクはない が、エアアンビュランス(飛行機とヘリコプター)が発 達しているとのことであった。

 救急の番号(エマージェンシーコール)はシドニー市 と同じく「000」であるが、シドニー市と決定的に違 うところは、「000」を受けるディスパッチセンター に消防のディスパッチも勤務している点である。また、 職員の中にはトレーニングを積んだパートタイマーがお り、彼らをカバーするための緊急時マニュアルが使用さ れていた。

 緊急時マニュアルはすべてフローチャートになってお り、たとえば「胸痛」という主訴に対していくつか質問 項目があり、その回答に基づいて重症度の判定がなされ、 最終的には考えられる疾患が導き出されるようになって いる。このマニュアルは、導き出される疾患の約80−85 %が的中するというすばらしいもので、このようなマニ ュアルが日本に導入されれば、口頭指導の効果も上がり、 より高度なディスパッチが可能になるはずであると感じ た。

 ディスパッチセンターの見学を終えた後、4人がそれ ぞれ、別々の救急ステーションにタクシーで行き、救急 車同乗を体験した。ここも消防とは異なる機関であるが、 病院を中心とした組織となっており、病院内または隣接 敷地内にあり、病院と密接な連携を保っている。

 システムは、2人のバラメディツクが乗務する1台の 救急車の管轄区域内に、7〜11台のEMT乗務の救急車 が配置されており、パラメディックの出動は、先ほどの ディスパッチセンターで重症と判断されたときなど、基 本的に重症傷病者発生時となっている。EMTの救急隊 からの要請によりパラメディックが出動することもあ り、この場合には現場でドッキングするシステムが取ら れている。このシステムは、船橋市のドクターカーシス テムとほぼ同様であった。

 パラメディックが実施する処置もシドニー市とほぼ同 じ内容であるが、一つ驚いたのは、、救急車内でパラメデ イックによる笑気ガスを使用した麻酔行為が可能なこと であった。

 約4時間の救急車同乗を行い、1人当たり4〜5件出 動したが、やはり胸痛を主訴とする事例が多かった。E MTが乗務するか、パラメディックが乗務するかを問わ ず、すべての救急車に除細動器が積載してあり、心臓疾 患の多さを物語っていた。

 次の日も、それぞれタクシーで1日日とは違う救急ス テーションに行き、約3時間の救急車同乗を体験した。

まとめ

 シドニー、メルボルンと合計3日間の救急車同乗を行 い、1人当たり平均10件の出動に同行、要請内容も胸痛 のほか、交通事故、列車事故、胸部刺創、喘息発作など さまざまな事例を体験することができた。喘息患者もか なり多く、喘息患者に対してはもちろん薬剤を使用する が、第一選択として、現在船橋市が取り入れている胸郭 外胸部圧迫法(external chest compression)を実施 しているとの回答を得た。

 今回の視察研修を通して感じたことは、まず第一に、 患者を受け入れる病院がすべて公立病院であるなど、救 急医療システムが完全に確立されていることである。ま た、パラメディックとドクターとの間に壁がなく、パラ メディックはドクターに信頼されているだけでなく、市 民にも信頼されている。

 パラメディック自身も自分の知識や技術、処置に自信 を持っており、そのプライドの高さと救命に対する熱意 に驚かされた。平均年齢も非常に若く、われわれが訪問 したような公的機関においてパラメディックとして勤務 できるのは35歳前後までで、その後はディスパッチセン ターや民間救急サービスに勤務するという。私も彼らと 一緒に出動、処置のサポートをし、一体となった活動を 経験したが、船橋市消防局の救急ステーションに勤務し ているドクターカースタッフの一面を垣間見ているよう な気がした。彼らは、それほど高度な救急活動を行って いるのである。

 ここまでのシステムと信頼は、22年という歴史によっ て培われてきたものであろう。日本の救急救命士制度は、 まだスタートしたばかりである。法の改正で、急にオー ストラリアのようなシステムになるとは思わないが、 徐々に近づいていく必要があると思う。そのためにはま ず、日本の救急救命士が市民やドクターに信頼されるこ とが急務であろう。オーストラリアのシステムがすべて ではないが、少なくとも日本の救急隊が学ぶべき点は多 くあるはずである。

 今回の視察研修を機に、これからも毎年、船橋救輪会 を中心にオーストラリア救急視察研修を行い、参加者一 人ひとりが自分なりに学ぶべきものを見つけ、今後の救 急活動の参考にしていきたい。

(文責/左 博之)


第7回船橋救輪会報告

浅香正人(船橋救輪会理事)
槙坂正道(船橋救輪会理事)

 船橋救輪会では、5月30日、船橋市消防局救急ステー ションにおいて、第7回船橋救輪会を開催しました。

 当会は、会員相互の交流を通じて、救急医療に関する 知識、技術を研鑚し、プレホスピタル・ケアの充実を図 ることを目的としており、当日は千葉県内はもとより、 茨城県、埼玉県、神奈川県、大阪府の救急隊員、消防関 係者のほか、船橋市医師会の先生、自衛隊員など多数の 参加がありました。本会の内容は、次の通りです。
(1)総会
  平成9年度会計報告および平成10年度事業計画
(2)教育講演「熱中症」
  講師:境田康二先生(船橋市立医寮センター林酔科科長)
(3)視察報告
  「オーストラリア(シドニー・メルボルン)パラメディツク視察」
(4)シリーズ応急処置
  「救急初期治療と救急搬送(デンバー市での経験)−ATLSとACLSについて」
  講師:箕輪良行先生(船橋市立医療センター救命救急センター部長)
(5)フリートーキング
  アドバイザー:冨岡譲二先生(救急救命東京研修所特別講師)

 総会では、平成9年度会計報告に引き続き、平成10年 度事業計画が検討されました。その結果、事業計画の一 つとして、新たに助成金交付要項を作成し、救急医療に 関する調査・研究およぴその他の事業に対して、助成金 を交付することになりました。これは、医療知識・技術 の研鑚を目的に、積極的に海外の救急事情を視察したり、 救急装備や資器材に関する調査・研究に役立ててもらお うという試みです。

 総会に続いて行われた教育講演では、境田先生が、夏 季に向けて増加傾向を示す熱中症について、その分類と 病態を指導して下さいました。難しく、なかなか理解で きずにいた日射病、熱射病、熟痙攣、熱疲労の分類や病 態生理、それぞれに対する応急処置を学ぶことができ、 有意義な講演となりました。

 また、視察研修の報告では、パラメディックの実際の 活動状況をビデオで見ながら、オーストラリアと日本の 救急医療システムの相違を明らかにし、われわれが解決 しなければならない問題を提起しました。エマージェン シーコールにおけるディスパッチは、緊急時マニュアル とフローチャートに基づいて実施されていること、通報 から医療機関までの救命処置にかかわる連携が確立され ていること、各機関・部門の間に障壁がなく、またパラ メディックの社会的地位が確立されており、市民や医師、 看護婦からの信頼が大きいことなど、オーストラリアの 質の高い救急医療体制に驚くと同時に、同じ救急隊員と して、さらに努力をし、レベルアップを図る必要性を強 く感じました。

 今回の「シリーズ応急処置」では、箕輪先生に、アメ リカのデンバー市立総合病院外傷センターで実際に見開 された外傷初期治療の現状について紹介していただきま した。ATLSは、外傷初期治療のトレーニングプログ ラムです。北米ではレジデント、救急医、外科医などが 参加しており、すでに1万3千人以上が受講、1年に約 750コースが開講されているということです。日本で も、昨年11月、自治医科大学附属大宮医療センターにお いて第1回目が開催され、スタンダードな外傷初期治療 の重要性が認識されつつあります。

 最後のフリートーキングでは、当会のアドバイザーと してご協力いただいている冨岡先生が、今年4月に視察 されたボリビアの医療事情について、お話しして下さい ました。冨岡先生は、7月から2年間、JICAの活動 でボリビアに赴任されるということです。健康に注意さ れ、ご活躍なさることをお祈りいたします。

 当会では、会員相互の連携の下、先生方のご指導を項 きながら、地域住民の救命・社会復帰率の向上を目指し て、より充実した研修会を行っていきたいと考えていま す。次回の研修会は、9月19日を予定しております。よ り多くの方々に参加していただき、情報交換をすること ができればと思っています。

(冨岡先生のホームページ)
http://www.geocities.com/~george-tomioka/
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/1281/

(船橋救輪会のホームページ)
http://www.asahi-net.or.jp/~YM9K-EBHR/


兵庫県下救急救命士会
第5回総会・記念講演会(第19回研修会)の結果報告と
今後の研修会のありかたについて

星野誠治(兵庫県下救急救命士会副会長) 第5回総会・記念講演会について

 兵庫県下救急救命士会では、さる5月15日、神戸市中 央区内の兵庫県職員会館1階多目的ホールにおいて、第 5回総会を開催いたしました。

 総会には、河原包行副会長(明石市消防本部消防長) を来賓に迎え、議事も無事終了、本年度の活動をスター トさせることができました。

 今回は総会後、設立5周年記念として、幸運にもビッ グなゲストを神戸にお迎えし、記念講演会を開催、大変 有意義な時間を持つことができました。ビッグなゲスト とは、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急セ ンターの山中郁男センター長と中澤暁雄医長、ならびに 神奈川救急救命士会の方々です。

 このゲストの来訪は、神奈川救急救命士会会長の倉持 日出雄氏と当会の前会長である正井潔氏とのネットワー クから実現したものです。

 倉持氏と正井氏は、救急救命士会の運営方法などさま ざまな情報交換を図るため、日頃から親交を温めていま すが、あるとき、当会の役員会終了後に親睦を深めるた めに集まった居酒屋で、次のような話が持ち上がりまし た。
「せっかくの設立5周年記念だから、何かやりたいなぁ」
「この何年かで各地に救急救命士会ができてるけど、研 修会や勉強会はどんな形で企画してるんかなあ?」
「いろいろな研修をやって、たくさん情報を持ってると ころといえば、神奈川救急救命士会かな」
「一度、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院に見学に 行ったけど、常に救急救命士が実習に入っているし、救 急救命士教育にはかなり熱心やで」
「そしたら、救命救急センター長の山中先生に神戸に釆 てもらって、講演してもらつたらどうやろ?」
「それやったら、神奈川救急救命士会の人たちにも来て もらって、懇親会で話ができたらおもしろいで。勉強に もなるし」
「一度、正井さんから倉持さんを通じて、頼んでもらお うか」

 翌日、正井氏が早速、倉持氏に連絡したところ、倉持 氏は「わかりました。一度頼んでみます」とのこと。2 日後には、正井氏から「山中先生は快諾してくれたらし い。中澤先生にも来ていただけるそうだ。それに、神奈 川救急救命士会のメンバーも何人か来てくれるぞ」との 連絡がありました。山中先生と中澤先生が、兵庫県下の 救急救命士、救急隊員のために神戸に来て下さる。そし て、神奈川救急救命士会の方々も−総会担当スタッフ は、「まさか実現するなんて」と、正直いって信じられ ない気持ちでした。

 それから当日までの間、当会の事務局となっている神 戸市救急救命士養成所には、非番のたびに訪れる会員の 姿が、必ずといっていいほど見られるようになりました。 会場の手配、依頼状・案内状の発送、総会資料・名簿・ 会報の原稿作成や印刷、当日の進行要領の検討、懇親会 の打ち合わせと、準備しなければならないことは数限り なくあり、担当スタッフは睡眠不足になりながらも、何 とか当日を迎えることができました。

 当会は私的な会であるとはいえ、役員、会員の力だけ では、これだけの準備作業をこなすことは到底できませ ん。会場手配に当たっては、庄慶浩一氏始め兵庫県知事 公室消防課の皆様に、大変お世話になりました。また、 県下消防長会、神戸市消防局救急救助課、神戸市救急救 命士養成所の陰ながらのバックアップが、本当にありが たく感じられました。

 さて、当日のプログラムと内容は次の通りでした。

(1)教育講演「救急救命士の今後−生涯教育のあり方は−」 山中先生が、ご自身の研究「救急救命士制度運用上で のMedical controlのあり方について」の結果に基づい て講演して下さいました。 (2)シンポジウム「プレホスピタルケアにおける呼吸管理 について−喘息患者におけるプレホスピタルケアを中 心に」  倉持氏による「胸郭外胸部圧迫法の全国的普及の経緯」 の講演の後、山中先生、中澤先生、そして神戸市立中央 市民病院副院長・救急部長の立道清先生をアドバイザー に迎え、症例検討が行われました。

 検討した症例は「重篤喘息患者に対する胸郭外胸部圧 迫法の効果について」と「声帯ポリープにより気道狭窄 を起こした傷病者に対する胸郭外胸部圧迫法の効果につ いて」の2例でした。

(3)講演「声帯ポリープによる気道狭窄症例」  中澤先生に、実際に経験された症例について、わかり やすく指導していただきました。
 会場は100人を超える参加者の熱気であふれ、盛り だくさんのプログラムのために予定された時間をオーバ ーするほどの盛況ぶりでした。

 記念講演会に引き続き、懇親会が開催されました。懇 親会には、山中先生、中澤先生、立道先生、神奈川救急 救命士会の方々、さらに普段お世話になっている神戸大 学医学部災害・救急医学講座講師の中山伸一先生や、賛 助会員として応援していただいている兵庫県下の各消防 長など、たくさんの方々に参加していただきました。救 急医療に限らずさまざまな話題に話が盛り上がり、情報 交換を図ることも十分にできたと思います。

 当会の会員にとって、今回の企画は、すばらしい刺激 となったに違いありません。

今後の研修会のあり方

 県外から講師を招いての研修会は、当会にとって初め ての試みでした。他の救急救命士会も、いろいろな方法 で自己研鑚のための研修会を開催されていることと思い ます。そこで、これまでの当会の活動を振り返り、研修 会のあり方について少し述べてみたいと思います。

 当会では、前年度4回の研修会(講演会を行いまし た。主な内容は次の通りです。なお、カッコ内は実施し た場所です。
(1)「救急現場における産科処置」あさぎり病院院長・藤原貞夫先生(明石市)
(2)「脊髄損傷を考える」兵庫県立総合リハビリテーションセンター附属リハビリテーション中央病院整形外科医 長・高田正三先生(神戸市)
(3)「精神科領域における救急を考える」魚橋病院院長・ 魚橋武司先生(相生市)
(4)「熱傷を考える」兵庫医科大学救急部副部長・吉永和 正先生(芦屋市)

 それぞれ充実した内容で、合貝にとつては貴重な時間 となりました。今年度も、今回の第19回を皮切りに2か 月に1回のペースで研修会を予定しています。次回は第 20回で、7月22日、「胸部・腹部外傷について」と題し、 兵庫県立淡路病院救急センター長の八田健先生に講演を 頂くことになっています。

 研修会は毎回、役員会と兵庫県下4地区(神戸・阪神・ 東播・播但)の各消防本部が順番に企画を担当して実施 しています。前述の通り、当会は私的な会ではあります が、会の力だけではどうすることもできないこともあり、 会場が管轄内にある消防本部には、多大なる協力を項い ております。

 また、会場手配やテーマの決定、講師への依頼状作成、 文書発送など、準備作業や事務も大変です。しかし、研 修会を通して、一つのことをやり遂げた担当スタッフ、 また参加した会員とお世話になった先生方との間には、 よい信頼関係ができあがります。そして、協力していた だいた消防本部の方にも、救急救命士会がどんな活動を 行っているのかを理解してもらえるようになる。このよ うな関係を築いていくことは、非常に大切です。

 当会の目的の一つは、救急救命士個人では、知識・技 術の維持・向上を図るには限界があるため、救急救命士 会に参加してお互いに研鑚し合おう、ということです。 これまでの研修会、そして今回の記念講演会、他の救急 救命士会とのネットワークは、会員にとって、どれもす ばらしい刺激になっていると思います。研修会に参加す ることで、何か一つでも自分のためになることを見つけ、 それを救急現場で救急救命士として生かしていくことが 救急救命士会の意義であり、また救命率の向上にもつな がるのではないでしょうか。

 当会も年々新会員の参加があり、本年度末には会員数 も400人を超えると予想されます。研修会のやり方に も工夫が必要になってきました。今後も、会員からの意 見や情報を基に、内容の濃い研修会を開催していくつも りですが、他の救急救命士会と「こんな方法で研修会を やっている」というような情報を気軽に交換できる場が あればと思います。そういった意味でも、今回のような 他の救急救命士会との交流は、非常に有意義であったと 思います。

 最後になりましたが、神戸まで来ていただいた山中先 生、中澤先生、そして神奈川救急救命士会の皆さん、あ りがとうございました。誌面をお借りして、お礼申し上 げます。


救急隊員のネットワークづくりと実践活動

若林和則(神奈川救急救命士会)

昨年11月に日本救急医学会総会が行われた際、各地で 設立されている救急救命士会等のグループの横のつなが りを強化し、全国的な救急隊員のネットワークづくりを 具体化すべく、第一のアクションとして、各グループの 代表者の方々に横浜市にお集まりいただき、「第1回救 急隊懇親会」を開催しました。この懇親会では、各グル ープの自己紹介を始め、抱えている問題点や救急救命士 会のあり方などが話し合われ、今後は、各グループの間 で積極的な交流を深めようということになりました。

 当会においても、昨年、福島の救友会のシンポジウム に参加するなど、全国各地の救急救命士会との交流、情 報交換を積極的に進めているところです。そして今年は、 兵庫県下救急救命士会の招きを受け、同会の研修会に参 加させていただきました。研修会では、当会の顧問であ る聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急センタ ーの山中郁男センター長と中澤暁雄先生の講演などが行 われることになり、女性2人を含む会員7人が先生方と ともに神戸を訪れました。本稿では、その際の様子をア ットホームにご紹介します。

 研修会が行われる5月15日の朝、新横浜を発ち、約3 時間で新神戸に到着、兵庫県下救急救命士会会員の方々 の丁重な出迎えを受け、会場へと向かいました。会場へ と向かう道すがら、私は昨年1月に当地を訪れたことを 思い出していました。そのときは、兵庫県下救急救命士 会の正井潔氏に、阪神・淡路大震災の爪痕の残る市内を 案内してもらい、被災者の話や神戸市消防局職員の活動 状況を聞かせてもらったのですが、その夜は「もし被災 したのが自分だったら」と思うと、まんじりとすること もできなかったものです。しかし、今回車窓から見える 景色は、とても大災害にあった街とは思えぬほどに美し く、異国情緒にあふれ、光り輝いて見えました。

 ともするうちに会場に着き、あわただしく打ち合わせ が始まりました。打ち合わせには、山中先生と中澤先生、 当会会長の倉持日出雄氏の3人が出席し、私を含む残り の6人は、資料等に目を通しながら時を過ごしました。

 研修会では、兵庫県下救急救命士会会長のあいさつ、 山中先生の講演、症例発表、中澤先生の講演とプログラ ムが進むにつれて、次第に会場内に熱気がこもり、活発 な討論がなされていました。

 引き続き行われた懇親会では、県防災消防課長、神戸 市消防局長、明石市消防本部消防長等、たくさんの方々 に歓迎していただきました。会場に集う人たちと救急談 議で活発な意見を交わしたり、それぞれが抱えている悩 みや問題、救急隊員から見た今後の展望などについて語 り合うことができ、われわれにとって、とても貴重な時 間になったと思います。趣味などの話も盛り上がり、懇 親会終了後、兵庫県下救急救命士会会員有志とわれわれ 9人は、さらに懇親を深めるため、夜の神戸へと繰り出 しました。

 夜が更け、ホテルに戻る途中、思いがけないプレゼン トを項きました。それは、国際都市神戸の夜景でした。 横浜の夜景も美しいと思いますが、神戸の夜景は絶景で した。何とも粋な計らいではないでしょうか。これには われわれも感激し、すばらしい景色に見入ってしまいま した。

 翌朝は、淡路島の野島断層(北淡町震災記念公園)へ 案内していただきました。初めて見る活断層に、これが 震源地かと背筋がぞっとする思いがしました。また、見 学に来ている人々の熱心な姿に、地震への関心の高さを 感じさせられました。しかし、土産物屋では『活断層パ イ』なるものを発見、復興を支える地元の人々のたくま しさも感じずにはいられませんでした(私もお土産に買 いました)。淡路島から神戸へ戻り、灘にある酒蔵を見学 しました。試飲した酒はとてもおいしく、考えてみれば 神戸といえば灘、灘といえば酒、酒がおいしいのも当た り前かなと思いました。そこで、NHKのドラマで有名 になった『露誉』を買って帰ろうと探し回りましたが、 とうとう見つからず、心残りに思っています。

 その後、新神戸駅まで見送っていただき、またこのよ うな機会を持つことを約束して、帰途につきました。

 最後に、手厚くもてなして下さった兵庫県下救急救命 士会の皆様方、本当にありがとうございました。誌面を お借りして、厚くお礼申し上げます。


第7回九州地区救急研修会報告

兼松圭次(宮崎市消防局)

 さる6月6日、宮崎市のMRTミック・ダイヤモンド ホールにおいて、九州各県から救急隊員、看護婦等200人余りの参加者を得て、第7回九州地区救急研修会を 開催しました。

 研修会の内容は次の通りです。
(1)特別講演
 「最近の救急トピックスと今後の展望」加来信雄先生(久留米大学医学部教授)
 「救急医療の現場から生命を考える」澤田祐介先生(東海大学医学部教授)
(2)パネルディスカッション「今後の救急救命活動について」
 助言者‥加来先生、澤田先生、矢埜正実先生(都城市郡医師会病院)、
     竹智義臣先生(宮崎市郡医師会病院)
 座長:兼松圭次(宮崎市消防局)
 パネラー:九州各県の消防の代表者(各1人)

 パネルディスカッションでは、主に「蘇生率向上に向 けて」と「救急隊員の教育(生涯教育を含む)について」 の二つのテーマについて、各県の現状報告と討論が行わ れました。「蘇生率の向上に向けて」に関しては、
・指令室での口頭指導について、早急な取り組みと質的充実を図る必要がある、
・応急手当の普及啓発について、工夫を重ね、質的、量的な充実を図る必要がある、
・日常の救急活動全般を検証することによって、知識・技術を蓄積していかなければならない、

 などの課題が挙げられていました。また、「救急隊員 の教育について」では、
・特定行為の研修のみならず、実務上必要な知識、技術を修得できるような研修、教育も大切である、
・救急救命士の就業前教育の実施要領の改正に伴い、教育システムを見直す必要がある、

 などの意見が出ました。先生方の熱心なご講義と適切 なご助言を項き、パネラー、フロアの参加者の間で忌憚 のない討議、意見交換を行うことができたと思います。

 また、本会終了後には懇親会が行われ、地域の救急医 療について語り合ったり、他県の救急隊員や看護婦と情 報交換を図るなど、積もる話に盛り上がったことを附記 します。

 最後に、ご多忙中にもかかわらず本会にご出席下さい ました諸先生方に、誌面をお借りし、厚くお礼申し上げ ます。


第1回山梨県救急救命士会総会報告

山梨県救急救命士会事務局  さる5月17日、甲府市内のアピオセレモニーホールに おいて、第1回山梨県救急救命士会総会が、山梨医科大 学附属病院救急集中治療部の三塚繁助教授、田中行夫講 師、前田宣包医師、山梨県立中央病院救命救急センター の松田潔医局長、松園幸雄医師をお迎えし、会員45人の 参加を得て行われました。

 今回の総会では、平成9年度の事業報告、決算報告な らびに平成10年度の役員の改選、同年度の事業計画およ び予算について議決されました。

 本年度の事業計画については、コ・メディカルスタッ フの一員である救急救命士として、医学知識と技術の研 鑚を積み、さらなる資質の向上に努めなければならない と再確認し、より一層の救命効果を図るためにも、各種 の研修会、医学セミナー等に会員から数名を派遣し、参 加者は後日、勉強会にて報告をしていくことになりまし た。

 会に先立ち、前田先生より、3年間の活動報告として、 「よりよい連携をめざして」と題してご講演を頂きまし た。続いて、東八代消防本部の鵜川功氏から「見落とし をなくす最適な方法」、甲府地区消防本部の石原武司氏 から「救急活動におけるACLS」等が発表され、活発 な意見交換が行われました。このような有意義な討議の 積み重ねが、県下の救急医療の発展につながるものと確 信しました。

 また懇親会では、会員同士で近況報告をし合ったり、 先生方と語り合う姿が見られ、和やかなうちに閉会とな りました。

 プレホスピタル・ケアの充実と救命率の向上におい て、応急手当の普及啓発促進は重要であり、また救急業 務の高度化を図り、救急救命士の資質を高めるには、医 療機関との連携強化が必要不可欠です。われわれ救急隊 員は、地域住民の期待と信頼にこたえ、医師の信頼を得 られるよう知識、技術の研鑚を積まなければなりませ ん。本年度も、心を新たに勉強会等に臨み、助かるはず の生命を一人でも多く救うため、努力していきたいと思 います。


平成10年度愛媛救友会総会
第6回愛媛救友会(松山大会)報告

織川真二(第6回愛媛救友会実行委員長) はじめに

 さる5月23日、愛媛県医師会館において、平成10年度 愛媛救友会総会と第6回愛媛救友会(松山大会)を開催 いたしました。

 1996年2月に発足した当会は、会員資格を限定せ ず、さまざまな職種、立場の人たちが「救命の四つの輪」 の下に集える会(詳細は本誌第20号72ページ参照)とし たため、当初は、「こんなに窓口を広げて大丈夫だろう か?」との思いもありました。しかし、会員の熱心な活 動と顧問の先生方の温かいご指導によって、現在では会 員数360人以上と大きく成長し、職域を超えた横のつ ながりや自己研鑚の場として発展してきたと感じていま す。

内容

 第6回大会は、「感電事故によりCPAに陥った症例 (特定行為実施)」など4題の自由演題発表で幕を開けま した。

 続いて行われたデモンストレーションでは、まず、日 本赤十字社愛媛県支部に、市民指導要領として「高齢者 が肉片をのどに詰めてしまった」との想定で、異物除去 をユーモラスに演じていただきました。次いで、東温消 防により、拡大9項目の中から「自動心肺蘇生装置(H LR)を使用した救急活動」が実演されました。そして、 デモの最後として、松山赤十字病院呼吸器センターの中 橋恒先生に、重症喘息発作の対処方法として、胸郭外胸 部圧迫法による呼吸補助等を指等していただきました。

 本大会のメインテーマである「呼吸管理」については、 シンポジウム形式で救急隊、養護教論、医療機関のそれ ぞれの立場から発表と討議が行われました。そして、会 の最後は、県立中央病院副院長の上田暢男先生に、総括 講演「慢性呼吸不全と在宅酸素療法」で締めくくってい ただきました。

おわりに

 今回の発表では、スライドのほかにデジタルカメラを 使用し、内容をわかりやすくするなどの工夫が見られ、 発表の技法も回を重ねるごとにレベルアップしていると 感じられました。このような発表の場で研鑚を積み、地 方あるいは全国レベルの学会等で質の高い症例・研究発 表ができるようにしていきたいと考えています。

 第7回大会は、10月31日に今治市にて実施いたします。 近県の方、興味のある方の参加をお待ちしております。


救急医療ジャーナルホームページに戻る ・ 目次リストへもどる