この原稿は救急医療ジャーナル'98第6巻第1号(通巻第29号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

大阪府下救急救命研究会
 平成9年度第2回研修会結果報告

岡藤光弘(大阪府下救急救命研究会)

はじめに

 1997年12月17日、大阪市淀川区のメルパルクホールにおいて、大阪府下救急救命研究会平成9年度第2回研修会が開催されました。当日は180人収容の会場で立ち見が出るほどの盛況となり、活気あふれる有意義な研修会となりましたので、誌面をお借りして当日の模様等を紹介させていただきます。

アンケート調査

 研修会は2部構成とし、第1部は大阪大学医学部特殊救急部から鍬方安行医師をお招きして「クラッシュ・シンドローム」についての特別教育講演を、第2部は医師・救助隊・救急隊の三者によるパネルディスカッションを実施しました。

 そもそもこの研修会は、大阪大学医学部特殊救急部より「救急救命士以外の消防職員の医学的レベルはどれほどか」という問題提起を受け、当会が独自に「災害医寮」をテーマとしたアンケート調査を実施したことに始まります。当会では、このアンケート結果から、現在われわれが抱えている二つの大きな課題を導き出し、その解決を図るために本研修会を企画、実施いたしました。アンケートの対象は、大阪府下各消防本部の中から、とくに人命救助の第一線に立つことが多い専任およぴ兼務の救助隊員とさせていただきました。業務多忙な中で543人もの方がアンケートにご協力下さいました。ご協力いただいた皆さんに、誌面を借りてお礼申し上げます。

 さて、アンケート結果(次ページ表)をご覧になって、皆さんはどのようにお考えになられましたでしょうか。

 このアンケートは、切り口によりさまざまな結論が導き出されると思いますが、われわれはまず、救急無資格者と救急I課程修了者の合計が全体の62%であるという事実に注目しました(図)。災害現場にどの隊が先着するかはそのときどきによって異なるという事実を踏まえれば、消防職員全員が災害医療に関する基礎知識を持つことが望ましいといえます。しかし現状では、前述の通り救急無資格者およぴI課程修了者が62%を占めています。そのためわれわれは、災害医療に関する基礎知識の普及の必要性を痛感し、総合的に判断してII課程修了者の養成が急務であるという結論に達しました。

 理想論からすれば、消防職員全員がII課程以上であることが望ましいでしょう。しかし、市町村消防には予算等機構制度上の問題があり、現状ではII課程修了者の早期大量養成が困難であるとしたなら、何か別の方法で災害医寮に関する知識を普及させる必要があります。そこで、消防職員の中で一番災害医療を理解しているべき救急救命士が、災害医療に関する知識の普及啓発を行うことにより、機構制度上の不備をある程度補完できるのではないかというのが当会の第一の問題提起です。

 現状では、救急救命士制度自体の問題克服、自己の技術・知識の向上、その他もろもろの問題を抱えた各救急救命士にさらなる負担を強いるのは、酷ともいえますし、本来、当会は救急救命士の生涯学習を本旨としています。しかし、救急救命士一個人としてできないことでも研究会としてならできるはずだという思いと、救命率向上のためには災害医療に携わる者すべてのレベルアップが必要であるとの結論から、今回の研修会を実施することになりました。

 さらに、本研修会の目的には、救急隊と消防隊の連携を図るというもう一つの側面があります。これは、私たち救急救命士は消防職員であり、医学という学問分野に特殊化しすぎてはならないという自戒の念から釆ています。

 救急救命士は消防職員でありながら、最近の消防隊が使用する各種救助資機材に関する知識がほとんどありません。しかし、われわれは医師ではありません。常に設備の整った病院の中で、患者の搬入を待っていればよいという訳にはいかないのです。災害の現場に出向き、ドクターやナースが体験することのないような過酷な状況下で、傷病者を救い出さなくてはなりません。

 混乱した災害現場では、救急救命士が呼吸器を装着し、救助資器材を携行して救出活動に従事しなければならないことがあるかもしれません。そのためには、救急救命士が消防隊の使用する資器材や消防隊の救助技術を理解し、災害現場で救急隊と消防隊が相互に連携して1+1=2ではなく、1+1=2プラスアルファの効果を発揮できるようにしておかなければならないのではないか。これが第二の問題提起なのです。

 災害先進国であるアメリカでは、消防隊と救急隊が理想的な連携プレーを実施して救命率を向上させています。しかし本邦では、相互の連携が必ずしも理想的になされているとはいえません。同じ「救命」という主題に向かって努力している者同士、普段から十分に意思疎通を図らなければならないのではないでしょうか。

 これら二つの問題提起に加えて、阪神・淡路大震災から1000日が過ぎ去ったこの時期に、大震災で得たかけがえのない教訓を風化させてはならないとの思いから、一般の消防職員を対象とした本研修会を企画しました。災害医寮に関する基礎知識の普及啓発を図るため、対象を従前の会員のみという方針から救助隊員にまで広げ、第1部の教育講演のテーマを「クラッシュ・シンドローム」としました。また第2部では、従来行っていた症例発表の形を変えて、症例に基づいたパネルディスカッションを実施することに決定しました。

当日の内容

 特別教育講演では鍬方先生に、基礎的な解剖生理や、クラッシュ・シンドロームの歴史的背景から病態生理およぴ災害現場における対処法までを、救急資格のない人たちにもわかりやすい内容でご指導いただきました。

 またパネルディスカッションでは、実際にあった災害を基にして医師・救助隊・救急隊の三者で討論が行われました。パネルディスカッションについても鍬方先生が座長を担当して下さいましたが、われわれが普段ごく普通に実施している救助法や救急処置法にも意外な盲点があることを客観的にご指摘いただき、参加者一同深く考えさせられるものとなりました。

 今回は一般の消防職貞を対象にした初めての研修会でしたので、必ずしも満足のいく内容とはなりませんでしたが、救急・救助の連携、災害医療の普及啓発という課題に対する一つの問題提起となったものと確信しております。

おわりに

 本研修会は、会員以外も研修の対象としたことなどまったく初めての試みばかりであったため、実行委員一同、試行錯誤の連続でしたが、鍬方先生、大阪赤十字病院救急部の木村雅英先生、さらに大阪市立総合医務センター救命救急センターの鵜飼卓所長を始め、重本達弘先生、林下浩士先生、鍛冶有登先生には、研修会の開催に当たり誠に懇切丁寧なご指導を頂きました。誌面を借りて厚くお礼申し上げます。

 なお、当会では会則を改定し、所属機関のいかんを問わず救急救命士の資格をお持ちの方であれば入会できるようにしていくつもりですので、皆さんの参加をお待ちしております。

 また、本稿を読まれてご意見ご質問をお持ちの方はぜひお知らせ下さい。お待ちしております。


兵庫県下救急救命士会第16回研修会

星野成治(兵庫県下救急救命士会副会長)  兵庫県下救急救命士会では、昨年10月8日、15日の2日間に渡り、第16回研修会を開催しました。今回の研修は「脊髄損傷を考える」をテーマとし、兵庫県立総合リ ハビリテーションセンターリハビリテーション中央病院内研修ホールにおいて、同病院の整形外科医長・高田正三先生に講師を依頼し、「脊髄損傷の病態と治療」「リハビリテーションの現状」について講義を項きました。

 さらに、同施設内にある1500m3の運動療法アトリウムにおいて理学療法を見学するとともに、実際にフロ アで機能回復訓練をされている患者さんと対話する機会を設けていただきました。

 見学前にPT(Physical Therapist:理学療法士)の方からの注意事項として、「患者さんの中には、すれち がっただけでバランスを崩し倒れてしまう人もいますので、注意して下さい」という言葉があり、大変印象的でした。

 三人一組で一人の患者さんと対話した際には、患者さんに、受傷当時の状況や救急隊の搬送時の処置、受傷から現在までの心の状態等を聞かせてもらい、貴重な体験をさせていただきました。また、違う職種の医療従事者の方々の仕事を見学できたのは、とてもよい刺激になりました。この貴重な体験は、会員に「脊髄損傷」をより意識づけるきっかけになったものと思います。なお、対話させていただいた患者さんは自分の障害の程度を認識しておられ、精神的に一つの山を乗り越えられた方々で した。

 今回、研修会を同一内容で2回実施したのは、兵庫県下の消防本部が2部制であるため、より多くの人が参加できるよう配慮したものです。このため2日間の延べ参加者数は100人を超え、大変充実した研修会となりました。研修全開催に当たりご協力いただいた高田先生始め、PTの小田邦彦さん、神沢信行さん、他のPTの皆さん、本当にありがとうございました。この誌面をお借りしてお礼を述べさせていただきます。


第5回救急救命土中央地区会研修会の報告

河原克巳(救急救命土中央地区会会長)  1997年11月23日の13時から、千葉市総合医療センターの大会議室をお借りして、研修会を開催しました。 日曜日にもかかわらず、千葉県下の救急救命士を始めとする医務従事者が多数集まり、真剣にレクチャーを受けました。

 講義は一昨年に引き続き、講師として岡崎久恒先生(東京都多摩老人医療センター麻酔科医長)をお迎えし、「分かりやすい心電図Part.2」と題して実施しました。

 岡崎先生には、救急救命士に必要なモニター心電図で読む不整脈の知識について、わかりやすくレクチャーをしていただきました。早いもので一昨年の研修会から1年が過ぎ、その間に会員の皆さんもそれぞれ生涯学習を行ってきたと思います。しかし、やはり1年を過ぎると忘れている内容もあり、講義を開いて一昨年学んだ心電図の記憶がおぼろげによみがえってきたのは、私だけでしょうか?

 いいえ、大勢いたと思います。なぜならば会場で、OHPの投影画面を見つめ、先生の一言一言にうなずいている人を何人か見かけたからです。

 研修会は今回で5回目となり、当会の運営も5年目という節目の年を迎えています.今後の研修会について、いま一度会員とディスカッションをし、よりよい研修会のあり方を考えようと思いました。

 研修合終了後の懇親会は、当会の顧問になられた富岡譲二先生(日本医科大学附属多摩永山病院救命救急センター医局長)がお忙しい時間を割いて駆けつけて下さり、大変盛り上がりました。インドネシアの森林火災について貴重なお話のさわりを開くこともできました。そのうえ、お時間の都合がつけば、春の総会の際に教育講演をしていただく旨の承諾を項きました。事務局としても、できる限り日程の調整をするつもりでおります。高齢化・少子化傾向が進み、日々の救急活動で高齢者の慢性疾患が急性増悪した症例を運ぶことが多くなったと感じる今日この頃です。救急救命士にとって特定行為の手技を完全に行えるようになることも当然必要ですが、それ以前に前述のような患者さんを心肺停止にしないように搬送する知識と、それを得るための個々の努力がより必要になると考えられます。懇親会終了後、帰宅途中のJRの車内で『日々之研鑚』の言葉が、いささか酔った私の脳裏に浮かび上がり、明日からはもっと頑張るぞと自分に活を入れた一日でもありました。


第7回京都府救急救命士会総会報告

出店知之(京都府救急救命士会会長)  昨年11月29日13時30分から、あいにくの雨天の中でしたが、京都府医師会館大会議室において恒例の総会を行いました。今回で7回目となる総会では、会則の細部を定めるとともに会員制度の導入を決定し、当会の活動の充実を期して事務局員の増員を行いました。

 20人程度で発足した当会ですが、早くも4年の歳月がたち、少しずつではありますが会としての体裁が整えられてきました。当会が全国に誇りうる特色は地域医師会の後援を項き運営が行われてきたことであり、会が発展しつつあるのは、発足当初から多大なる支援や指導を項いている京都府医師会の先生方のお陰であると感謝しております。

 また出席者についても、府下の救急医療従事者を始め、救急行政に携わる職員にも多数参加していただいており、名実ともに府下一円を網羅した救急医療に携わる人々の研修の場となりつつあります。

 総会後の教育講演では、先般実施した第1回リフレッシュ研修会の継続として、御池総合法律事務所の長谷川彰弁護士から救急救命活動と法律問題についてご講演を 項きました。

 この講演では、救急救命活動を行う場合に法律の側面から心得ておかなければならないケースについて、具体的な症例を挙げながらご指導いただきました。特定行為を行う際のインフオームド・コンセントの仕方や特定行為を行う上での注意点などについて、関係法令をやさしく解説しながらご講義いただいたことは、緊迫した救急現場で活動する私たち救急救命士にとって、大きな精神的支えとなりました。

 その後のラウンド・テーブル・ディスカッションでは、パネラーとして当地域で活躍されておられる第一線の救急専門医や救急救命士を始め、遠くは東海大学医学部附属病院救命救急センターの根本学医師らにお越しいただき、京都九条病院の松井道宣医師の進行で実施しました。内容は救急活動を行う中で日頃から疑問に思っていることとし、実際の症例を挙げながら、フロアの参加者を交えて法律や救急医学の領域から討議が行われました。助言者は、法律の専門家として教育講演に引き続き長谷川弁護士に、救急医務の専門家として京都府の救急医療を主導していただいている谷村仲一医師にお願いしまし た。

 今回のディスカッションでは、法律と医務のそれぞれの分野で積極的に活動しておられる先生方と救急活動に熱意のあるフロアの参加者とが、府下の救急医務の発展という一つの目的の下に一体となり、白熱した討議がなされました。このような有意義な討議の積み重ねが、府下の救急医療の発展につながるものと確信できたことを報告いたします。

 さて現在、全国の救急救命士の間で特定行為の処置拡大が一段と叫ばれていますが、一方では、全国的な救急救命士の増加に伴い、技能レベルの均一化や救急救命士としての士気の統一、生涯教育等の問題が山積みとなっています。また、救急救命土が誕生してから5年が過ぎたばかりであり、救急救命士制度の意義が広く市民社会に浸透したとは言い難い状況にあると考えられます。

 このような状況下において、私たち救急救命士がいま実践しなければならないことは、一つひとつの救急現場を大切にし、地域住民の信頼にこたえるとともに、医師等の医療従事者との連携を深め、さらには各消防本部で地道な自助努力を行い、救急医療の一翼を担う行政人として信頼を得ることです。現在の法制度の中で最大限努力する姿勢が、必ず各方面の世論を動かし、救急救命士 の未来を開くものと考えています。

 当会はこのような思想の下、発足当初から純粋に学術研究を目的として運営を行ってまいりました。その成果は先に述べた通りです。各地の救急救命士会におかれましても、地域事情があるとは思いますが、地域医師会や各地の消防組織と連携しながら、会運営が行われること を期待しております。

 最後に、最近私がある医学講座で学んだことわざについてお話しいたします。平安時代に『医3世ならざれば、その薬を服用せず』ということわざがありました。当時の医家は家業として技術を伝承する側面があり、秘伝の薬があったようですが、このことわざは、民に信頼されるには3代続いた医家であることが必須条件であるという意味です。また、当時医師は国手とも呼ばれており、人の病を治める医師は国をも治める者であると考えられていたとも伝えられています。医師が現在の社会的地位を築き上げた裏には、医術をもつて社会に貢献してきた長い歴史的背貫と、医学に対する飽くなき研究心があればこそと再認識した講座でした。

 今後、私たちがとるべき姿勢がこのことわざにあると確信し、今回の報告を終わらせていただきます。


東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会
第1回視察研修開催

兵庫県加東行政事務組合消防本部  東播磨内陸地域救急救命士運用連絡協議会では、救命率の向上を目指して活動を行っていますが、昨年11月21日、大阪府立千里救命救急センターの視察研修を実施しました。

 このたぴの視察研修は、当会発足後初めての視察であり、また同センターは、大阪府吹田市および周辺消防本部と連携して効果的なドクターカーの運用をされていることから、救急救命士だけでなく、関係機関の医師・看護婦、保健所や行政の関係者等幅広い分野から32人の参加がありました。

 本来なら、同センター内の設備関係も見学しながら説明を受けたいところでしたが、何しろ多数の者が押しかけた上、ドクターカーが修理中であったため、施設見学は救急応急処置室のみとなったことが残念でした。

 しかし、同センターの概要、ドクターカーの出動体制、救急隊員や救急救命士の就業前研修、生涯研修などについていろいろとご指導いただき、私ども研修に参加した者には得るところがたくさんありました。今後、当地域においても取り入れられるところは取り入れ、救命率向上に役立てていきたいと思います。

 視察研修後には、万博公園内の国立民族学博物館を訪れ、世界の諸民族の社会と文化について見識を広めました。また移動のバスの中でも、参加者相互の親睦を深めることができ、楽しい時間となりました。

 次回は救急隊員の技術の向上を目的として、2月12日に、当会を構成する5消防本部の救急救命士による特定行為の発表会を予定しています。お問い合わせは、西脇多可行政事務組合消防本部(0795−22−0119) までよろしくお願いします。


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