この原稿は救急医療ジャーナル'95第3巻第6号(通巻第16号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

仙台市救急救命士会通信

佐藤敏夫(仙台市救急救命士会会長) はじめに

 1991年に「杜の都の救急救命士」が産声をあげ、 仙台市において高度救急処置隊の運用を開始してから4 年が経過した。94年5月には仙台市救急救命士会を設 立、現在は、救急救命士26人、高度救急処置隊10隊が活 動している。ここでは、仙台市救急救命士会設立の経緯 やその活動内容等について報告したい。

模索

 救急変革期の端緒についた当時、各マスコミに大きく 取り上げられ、救命率の向上に向けての救急活動に対す る期待は、いやがうえにも盛り上がっていた。しかしそ れは、救急救命士にとって、重圧となり両肩に重くのし かかっていたのも事実である。また業務の遂行に際して は、パイオニアの宿命ともいうベき模索の状態が続いて いた。そのような状況の中で、われわれの命綱的な役割 を果たしたのが、救急救命士同士の情報交換であった。

結成の声、高まる

 その後、救急救命士も増え、1994年には10人にな ったが、研修所で得た知識、技術を救急現場に反映させ るためには、未消化の部分を残していた。その解消のた めの自己研さんの手段として、非番日に病院に行って研 修する者、あるいは専門書を何冊も取り寄せて首っ引き で調ベる者など、各人それぞれが努力していたが、個々 の対応ではおのずと限界のあることを肌で感じていた。

 そんな当時の情報交換の酒席でのこと、誰からとはな しに、「自己研さんそしてコミュニケーションを深める ため、救急救命士会を創ろうではないか」との提案があ った。結成の声は一気に高まり、全員賛成をもって仙台 市救急救命士会の設立が決定した。そして、数日後には 設立準備会が開かれたのであった。

行動開始

 設立準備会では、まず救急救命士会を設立し、運営す る上での基本理念について活発な意見が出され、その結 果、「純粋に資質の向上を希求し相互のコミュニケーシ ョンを図るため、各事業を展開する。また、処遇等の関 係については一切関与するものではない」ことを申し合 れせた。次に運営に際しての必要事項を検討した後、世 話役を選出して閉会した。

 次の段階として、消防局に趣旨および活動方針の報告 を行い、救急救助課長に顧問就任を依頼したところ快諾 していただけた。その後、市内に4カ所ある指示医療機 関へ救急救命士会の設立報告と顧問就任依頼のための訪 問を開始した。一抹の不安を抱いての訪問だったが、そ れは単なる思い過ごしだったことがわかるまでにたいし た時間は要さなかった。ある先生がらは、「むしろ遅い くらいだ」と活を入れられる始末で、まさに”叩けよさ らば開かれん”であった。

発会式

 1994年5月10日、仙台市内の勾当台会館において 発会式を催す運びとなった。

 出席者は、東北大学医学部救急医学講座・吉成教授、 同・亀山助教授(当時)、仙台市立病院救急センター・小 林センター長、同・小田倉医師、仙台オープン病院・牛 込救急部長(当時)、同・加藤内科医長、仙台循環器病セ ンター・内山副院長、同・金田外科医長、仙台市消防局 救急救助課・吉川課長、同・佐藤主幹から成る顧問と、 救急救命士10人、賛助会員3人が出席し開催された。

 各先生からは、激励やアドバイス、また斬新な提案な ども頂戴して、救急救命士一同、胸を熱くするとともに 大いに意を強くしたものである。

活動について

 これまでの活動を紹介すると、
・第1回記念講演:「救急救命士の展望−救急救命士及び救急隊員に望むもの」吉成教授
・第2回企画講演:「看護婦としての信念」仙台市立病院救急センター・松本婦長、仙台オープン病院救急部・伊藤婦長
・第3回企画講演:「阪神・淡路大震災に学ぶ−大震災時における救急救命士の役割」小林救急センター長

 の3回の講演および特定行為の手技、症例研究等を行 つている。

これから

 従来の活動の継続に加えて、シンポジウム等の目玉行 事の開催、他救急救命士会との交流会(当会の会員は全 員が東北救急救命士会にも所属している)を検討してい る。組織的には、看護婦(士)にも積極的に参加を呼び かけて、「救急救命士」の輪を広げ多角的な視野を有す る会に成長させたいと考える。

おわりに

 日ごろ、眼光鋭く人間の生命の危機と対峙している医 師が、救急救命士会の懇親会(会費制)の場でみせた、シャイ な笑顔が素晴らしかった。そして、そのとき医師と の距離が一歩近づいたように感じた。

 また、ある医師からは、「これからはけんかをしなが ら仲良くしていこう」との言葉をいただいた。これらは、 これからの医療関係者と救急隊員の関係の理想の形を示 唆しているように思えたものである。


高尾救急専門官を迎えて

−兵庫県下救急救命士会
正井 潔(兵庫県下救急救命士会会長)  兵庫拍児下救急救命士会では、今年9月26日午後1時30 分から、自治省消防庁救急救助課・高尾昭夫救急専門官 (兼)理事官を基調講演の講師にお迎えし、第6回研修 会を開催しました。

 今回の研修会は、高尾専門官の基調講演があるという ことで、近畿一円をはじめ、岡山県、香川県などからも、 救急救命士および消防長、救急関係者など約240人の 参加者を得て、会場は立ち見が出るほどの盛況ぶりでし た。

 基調講演は、「救急活動の現状と今後の課題」につい て、お話しいただきました。ここでは、誌面上すべてを ご紹介することはできませんので、高尾専門官が用意さ れましたレジュメを紹介したいと思います。

1.大災害時における消防の活躍
 ・「死闘手記」にみる活躍
  神戸市消防局が発行した「死闘手記」を読まれ、阪神・淡路大震災時の慰労と激励をいただきました。
 ・安全に対する国民の関心
2.震災後の施策視点
 ・「安全なまちづくり」等主要重点施策
 ・所謂「1兆円構想と財政支援」
3.緊急消防救助隊の編成と役割
 ・広域応援のための「消防組織法の一部改正」
 ・編成部隊の事前登録とその役割
4.救急救助業務の充実強化
 1)救急業務のレベル向上
  ・救急II課程教育の促進
  ・救急救命士養成の増強
  ・救急救命士処置範囲の質的拡大−拡大9項目・特定3行為の拡充
  ・住民によるCPR・災害ボランティアの啓蒙
 2)ヘリ航空体制・高規格救急車等ハード整備
 3)プレホスピタル・ケアの拡充
  ・蘇生率1.6倍の救命効果
  ・奏功具体例にみる救急救命士の活躍〜これらを9月9日の「救急の日」に新開発表した。
4)住民の期待とこれからの消防

 以上の項目について、約1時間30分の講演をいただき ましたが、救急救命士を奪い立たせるような激励や、将 来の処置拡大へつながる希望的なお話を拝聴することが できました。

 この基調講演から私たち救急救命士は、いま許されて いる処置について精一杯努力し、技術等を研さんしてい くことが将来の処置拡大につながり、ひいてはより多く の住民の生命を守ることになることを深く認識し、努力 していくべきだと思いました。

 なお、この研修会ではこのほかにも1月17日の大震災 当日に勤務していた救急救命士3人に、「震災時にお ける救急救命士の活動」というテーマで発表していただ きました。


第4回プレホスピタルケアフォーラム

−神奈川救急救命士会からの報告
倉持日出雄(神奈川救急救命士会会長)  第4回プレホスピタルケアフォーラムが、さる10月7 日、神奈川県社会福祉会館で開催されました。

 横浜市立大学医学部附属浦舟病院救命救急センター長 の杉山貢先生が代表世話人となり(神奈川救急救命士会 が参画)、開催されるプレホスピタルケアフォーラムも今 回で4回目を数え、盛況裡に幕を閉じました。

 本年も気道確保を中心とし、ラリンゲアルマスク使用 症例2例、EGTAの使用症例2例を救急救命士が発表 し、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急セン ター長の山中郁男先生にアドバイザーを務めていただき ました。山中先生に気道確保についてご指導をいただき、 救急の基本中の基本である「気道確保」の重要性、むず かしさを改めて肝に命じられた方も多かったのではない かと思います。

 横浜市消防局では、残念ながらまだコンビチューブの 使用症例がなく、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 救命救急センターの関先生に、スモールアダルトサイズ と従来のサイズの違いや、使用結果等について発表およ び指導を受けました。

 特別教育講演では、広島県・安佐市民病院麻酔科集中 治療部部長の石原晋先生に、「プレホスピタル・ケアにお ける気道確保の問題点と将来の展望」についてご講演い ただき、先生の救急救命士への期待と救急救命士教育に かける熱意が痛切に感じられました。私たち救急救命士 は、資格取得後の自己研さんの重要性を再認識し、先生 方の期待にこたえるべく努力を重ねていかなければなり ません。

 また、本会の”目玉”ともいうべき実習では、横浜市 立大学医学部附属浦舟病院救命救急センターの森村先 生、前出の関先生、同・中沢先生、済生会神奈川県病院 救急部の田熊先生にご指導をいただきました。先生方に は、質問を受けながら額に汗を光らせ、熱心にご指導し ていただき感謝しております。

 フリーディスカッションのコーナーでは、会場からの 種々多彩な質問に対し、済生会神奈川県病院救急部部長 の茂木正壽先生に明快で説得力ある回答をしていただ き、終了時間をオーバーするほどの熱心なディスカッシ ョンとなりました。会場には約250人が集まり、熱心 にメモをとる姿が見受けられ、救急活動に対する参加者 の熱意のほどがうかがえました。

 参加者は、県内消防本部の救急救命士は無論のこと、 湘央学園(救急救命士民間養成所)の生徒さん、救急救 命士資格を有する看護婦(士)、これから救急救命士を 目指す人々、病院の医師等で、皆さんからいろいろな話 を聞くことができました。

 なかでも、消防機関の救急救命士以外の救急救命士有 資格者の人々から、「私たちは救急救命士の資格を取得し ても、取得後の勉強をする機会と場所がない。とくにラ リンゲアルマスクや食道閉鎖式エアウェイ、除細動等は 実施することができず、人形を使って実施したこともな い」というご意見を開いたとき、このプレホスピタルケ アフォーラムのように、医師、看護婦(士)、救急隊員等 の医療関係者が一堂に会して勉強をする機会をもっと多 く作り、それを生涯教育の一環として位置づけ、ともに 学び、ともに本音で語れる場として発展させていかなけ ればならないことを痛感しました。今後は、これらを目 標に努力していきたいと思います。

 横浜救急救命士会は神奈川救急救命士会(10月1日現 在、会員143人)と名称を改めましたが、市民に愛さ れ、信頼される救急を目指して研さんしていく所存です ので、いままで以上のご指導ご鞭撻をよろしくお願い申 し上げます。


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