この原稿は救急医療ジャーナル'95第3巻第5号(通巻第15号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

大阪府下救急救命研究会通信

鎌田寿彦(大阪府下救急救命研究会会長)  大阪府下では、現在373人の消防関係救急救命士 が、府民の生命を守るベく日夜活動しています。その活 動例が新聞紙上等でいくつも報じられ、府民の救急救命 士に寄せる期待はますます大きくなっているものと思わ れます。

 従来の搬送業務主体の救急から救命業務主体の救急へ と大きく様変わりし、われわれは新しい救急時代を迎え たといえるでしよう。

 府民の期待に応えるためには、救急救命士の一層の救 急救命技術・知識の向上が必要であり、救急救命士の自 己研鑚および生涯学習が強く求められます。しかし、こ れらの学習の実効をあげるためには、職制サイドの教育 体系のみでなく、救急救命士の自発的な努力が必要不可 欠です。

 そこで、救急救命士の生涯学習の一環として、救急救 命士一人ひとりが、相互に情報を交換し、関係機関との 連携を図り、救急救命技術・知識の向上を目指すことを 目的とした任意団体の設立が必要となり、本会が設立し たのです。

 本会の名称は、『大阪府下救急救命研究会』となって います。この名称は、本会を結成する際に、作業部会 で種々検討を重ねた結果、救急救命士以外の救急隊員お よび医療関係者等にも門戸を開いて、幅広い人材を募 り、会員間の情報交換によって、救急救命技術・知識の より一層の向上が望めるようにと考えたものです。

 現在はまだ、救急救命士だけの会ですが、近い将来必 ず、救急救命士以外の人たちにも会員になってもらうよ うに努力していく所存であります。

 本会は、大阪府下を3ブロックに分け、北支部、中支 部、南支部とし、会長および副会長は、支部長を兼任、 会長は、支部長の互選により選出することになっていま す。

 なぜ大阪府下を3ブロックに分割したかというと、大 阪府下の救急救命士全員が入会すると想定した場合、3 73人という大きな組織となり、任意団体としての運営 面等に問題が起こるのではないか、と懸念されたためで す。

 そこでまず、入会者数の予想をたてて三等分し、各ブロック ごとに支部を設け、小回りのきく体制をつくるこ とにしました。

 各支部ごとの活動を基本として、その地域に密接する 医療サイドの考えを導入し、勉強会、報告会、症例検討 会等を頻繁に行い、その地域に勤務する救急救命士と医 療関係者とが密接な関係を保つことで、本会の目的が達 せられると考えたのです。そして、各支部が中心になり、 もち回りで年3回の全体的な研修会等を実施する構成に なっています。

 現在、会員数は273人ですが、本会の設立に当たっ ては、いろいろな問題が噴出し困惑したことも事実です が、紆余曲折の結果、どうにか諸問題を解決し、さる7 月10日、大阪都ホテルにおいて、設立総会を開催するこ とができました。

 総会では、会員110人の出席を得て、会則、役員等 の承認を得ることができ、名実ともに本会の出発となり ました。

 また第2部では、設立記念講演として、大阪府立千里 救命救急センター所長・太田宗夫先生に「救急救命士に 期待するもの」、大阪府立病院救急診療科部長・桂田菊嗣 先生に「私と救急隊員」と題した講演をしていただきま した。そして、今後も両先生には、適切なアドバイスを いただきたいとのことから、本会の顧問にご就任いただ きました。

 本会設立に際しては、関係者各位に多大なるご迷惑を あかけし、ご支援ご助言をたまわり、深く感謝しており ます。事後は、本会が充実した組織となり、会員の救急 救命技術・知識の向上、さらには救急隊全体のレベルアップ につなげられるようになりたいと思っています。

 最後に、大阪府下の消防本部に勤務する救急救命士 で、大阪府下救急救命研究会の主旨に賛同される方の一 人でも多くの入会を待っています。

 連絡先:大阪市消防局救急救助課内
 大阪府下救急救命研究会事務局 TEL/06-532-8163


第3回京都府救急救命士会総会報告

出店知之(京都府救急救命士会会長)  第3回京都府救急救命士会総会が、1995年6月10 日、京都府医師会館で行われました。今回は、京都府医 師会理事の上原春男医師から「危険な不整脈」と題した 基調講演、府下救急救命士から、半自動式除細動器を用 いて心室細動の傷病者を救命した具体的症例が発表され ました。会の後半は、京都府医師会救急担当理事である 谷村仲一医師が座長となり、ご出席いただいた救急救命 士指示医師と救急救命士が懇談を行い、貴重な意見の交 換が行われました。
 以下はその中から一部抜粋したものです。

▼救急救命士への指示体制について

救急救命士:指示をいただく場合の条件は、CPA症例に限られますか。

谷村医師:指示事業契約としては、CPA状態の傷病者と限定していますが、実際には、CPAに近いケースに も対応することになっています。将来的には、東京消防 庁が運用している救急隊指導医制度の導入が理想と考え ます。ただ、京都府にはもともと救急専門医が少ないう え、府下の各医大に救急医学講座もないため、十分な救 急指導医の確保が難しいという事情もあります。

救急救命士:119番受信時にCPA症例と疑われる場 合は、その時点で、前もって指示医師に事前連絡を取る 方法がありますが、この方法はいかがですか。

指示医師A:事前に連絡する方が、スムーズな指示を受 けられると考えます。

指示医師B:深夜に指示する場合は、事前に連絡をもら ったほうが助かります。

京都市消防局:指令センターから救急隊に対して、出場 直後に救急無線で追加情報を提供する場合があります。 具体的にはCPA情報ですが、センターから指示医師に 対しての事前CPA情報は提供していません。現場到着 後でなければ、実際の情報が入手できないことが主な理 由です。医師に対して事前にCPA情報を流すと、現場 到着後の情報で訂正することが起きたり混乱する可能性 が生じることも理由の一つです。

救急救命士:現在の指示方法は、医師の了解の後に「は い、行なってください」という簡単な指示が出されるとい うものですが、救急救命士が行なった特定行為に対して、 それを指示した医師が責任を負うということはないので すか。もしそうであれば、現在の指示の方法では不安が 残ります。

谷村医師:当初、指示事業契約の際に、そのような問題 も出ましたが、最終的な詰めは行っていないため結論は 出ていません。しかし法的には、緊急避難的な行為とい う解釈で、問題はないと考えます。

▼就業前研修について

救急救命士:就業前研修は、各消防本部の地元基幹病院 で実施されるということで、それぞれの病院で研修内容 が異なると開いています。

谷村医師:病院研修についてはまだまだ未整備というの が現状です。また、研修には、必ず患者のインフォーム ド・コンセントが必要であり、とくに分娩介助者の実習 などは、患者の了解を得ることが難しいと聞いています。 救急救命士研修が社会的認知を得るためには、まだ時間 を要すると認識しています。

看護婦A:外来救急処置での研修を担当したことがあり ますが、救急救命士がどのような研修を求めているのか がわかりませんでした。私としては看護のことをもっと 学んでほしいと思います。

看護婦B:昼間帯の研修は救急搬入の症例が少ないた め、夜間実習を行うほうが教育効果があると思います。 谷村医師:夜間実習の場合、病院側の受け入れ体制が大 変なため難しい面があります。

指示医師A:救急救命士の中には、医療人としての自覚 に欠ける人がいます。社会的に医療人として認知される ためにも、救急救命士の日々の自己研鑚が求められます。 また、公務員という意識が強すぎることもネックになっ ているように思います。たとえば、非番日であっても病 院に出向き、研修を受けるような心構えが必要ではない でしょうか。

▼隣接県への搬送について

救急救命士:京都府八幡市は救急告示病院が2か所あり ますが、多くの搬送病院は大阪府枚方市の病院になりま す。このような場合、京都府の救急救命士指示システム 上で、何か問題がありませんか。

谷村医師:その問題については、近畿医師連絡協議会と いった会議等で申し合わせていくつもりです。ただ、こ のようなケースは法律上およびシステム上、何の問題も ないと考えます。

 今回の総会は、基調講演に始まり、症例発表、指示医 師との懇談会とバラエティーに富んだ内容となりまし た。また、救急救命士の指示医師、京都市消防局救急課 長等、多方面からの参加を得たことは、今後の全国の救 急救命士会運営のよい試金石になるものと確信していま す。

 当会が、今後も活発に活動することが、救急救命士制 度の発展につながり、尊い生命の一つでも灯すことがで きたらと念じて、今回の報告を終了します。


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