この原稿は救急医療ジャーナル'95第3巻第4号(通巻第14号)「NETWORK救急救命士ならびに救急隊員の会から」のページを収載したものです。もしホームページを希望されない記事や訂正を希望される部分がありましたら、 web担当者までご連絡下さい。

北摂救急救命士会通信

森本 幸夫(北摂救急救命士会会長)  北摂救急救命士会は、1993年9月12日に発足し、 現在に至っています。発足のきっかけは、大阪府立千里 救命救急センター所長・太田宗夫先生のひと言でした。

 当時、千里救命救急センターではドクターカーの運用 を開始し、救急救命士は就業前研修のため、24時間体制 でセンターに常駐していました。ICUでの傷病者観察 や、医師、看護婦とともにドクターカーに同乗し、救急 現場へ出場するという現場に即した有意義な研修を実施 していたのです。また、センタ一からも救急救命士の待 機場所として、ドクターカーの車庫2階にある会議室を 提供していただいていました。

 そんなある日、当時副所長の鳩飼卓先生(現・大阪市 立総合医療センター救命救急センター所長)から、待機 室を救急救命士のサロンとして自由に使い、情報の交換 や親睦を図るための場所として利用してほしいという太 田所長の意思を聞かされたのです。それを聞いて、私た ちはその好意になんとか応える方法はないかと考えまし た。その結果、「救急救命士会を設立してはどうか」とい う声があがり、調整、検討の末、発足したのです。

 北摂救急救命士会は、北摂という地域の名称がついて いますが、救急医療に興味のある方であれば、資格や地 域を問わず入会していただき、幅広いネットワークを築 いていきたいと考えています。現在は、千里救命救急セ ンターの医師3人に顧問をしていただき、役員8人で活 動しています。すでに8回の勉強会を開さ、知識の向上 と親睦を図っており、8回目の勉強会では阪神・淡路大 震災で活躍した各救急隊の問題点や医療機関の活動につ いて討議しました。この問題については、継続的に討議 を行い、神戸市や西宮市とは違った隣接都市の観点から 震災における救急活動の問題点をまとめ、公表したいと 思っています。

 問題点といえば、私は、昨年10月に大阪府市町村職員 海外派遣共同研修の一員としてアメリカヘ渡り、パラメ ディックの活動や救急医療、システムを勉強してきまし た。国土の広さや社会性もあり、日米両国の救急事情を 比較することはできませんが、アメリカでは医療従事者 の作業環境が重視されているといえます。たとえば91 1(日本の119)を受信する指令室は、常に照明を落 とし、作業従事者のストレスを最小限に抑える工夫がさ れていたり、消防や救急のような24時間勤務体制の職場 では、各自に個室が与えられ、人権が尊重されています。

 そして、もう一つ目についたことが、女性の救急隊員 が多いということです。私が訪問した民間救急会社では 救急隊員の45%は女性が占めており、男性隊員に引けを 取らない活躍をしていました。日本でも、今年の4月か ら女性の深夜労働が許可され、一部の消防機関で女性の 救急隊員を採用していますが、もっと早くから行っても よかったのではないでしょうか。

 とくに救急車に女性隊員が乗車することで、女性の傷 病者を搬送する際、バイタルサイン等のチェックも、女 性隊員には症状も気軽にいえるなど、プラス面が多いと 思われます。ただ、体力面に関しては日米両国の女性で は、かなり開きがあるようです。しかし、救急車に搭乗 する救急隊員数を4人(男性3人女性1人)にする、も しくはアメリカのように、直近の消防署から救急隊員が 乗車した消防車等と、パラメディックが乗車した救急車 の2台以上の関係車両を救急現場に出場させれば、女性 隊員の体力面の問題は、解決されると思われます。

 現に千里救命救急センターのドクターカーには看護婦 1人、医師1人、救急救命士1人が乗り、救急現場で消 防機関の救急隊員と協力して救命活動を実施し、大きな 成果を上げています。また、北摂救急救命士会に入会し ている看護婦さんの中にも、救急現場で仕事がしたいと いう方が多く、女性が救急現場に出ることを望んでいる ということ、そして、それらが救急医療にとって大きな 意味をもっているということをこの文面から写くの方々 に知っていただきたいと思います。

 事後の活動については、会の充実を図るとともに、勉 強会でもいろいろな専門分野の方々を講師に招き、知識 と人の輪を広げていきたいと考えています。現在は、集 団救急を中心に勉強会を行っていますが、救急隊が出場 してもっとも時間が費やされる精神科救急や、救急救命 士が現場で直面するであろうDNR(do-not-resusitate:蘇生しない) の問題等も、検討する必要がある と思われます。一般的に救急隊を呼んだ家族は、救急隊 が医師と同様に死亡確認が行えて死亡診断書も書けるも のと誤解していることも多く、医師の往診制度について も同様に検討する必要があるのではないでしょうか。

 おわりに、全国の救急医療関係者、救急隊員および救 急救命士会との交流を深めたいと望んでいます。皆さん からの連絡をお待ちしております。


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