この原稿は救急医療ジャーナル'95第3巻第4号(通巻第14号)「救急救命法律講座」のページ を収載したものです。本シリーズのホームページ収載にご協力をいただ きました厚生省健康制作局に深謝申し上げます。

救急救命法律講座 14


「大災害時に病院内で特定行為を行うことは法律違反になるか。」  阪神・淡路大震災のような大災害時において、患者を搬送した先の病院も被災し 、医師の手が足りない状況で、病院の医師から特定行為を指示され実施した場合、こ れは救急救命士法に反することになるのでしようか。

 救急救命士が救急救命処置を行うことができる場所は、救急救命士法第44条にお いて、救急用自動車内及び病院又は診療所への搬送のため重度傷病者を救急用自動車 へ乗せるまでの間に限られています。このように、救急救命士の業務を搬送途上に限 定し、病院内では行わないこととしている理由は、現在の救急医療体制において搬送 途上の医療の充実が大きな課題となっていること、一方、医療機関においては、医師 をはじめ既存の医療開係職種が配置されていることから、救急救命処置を行うための 新たな職種の必要がないことによるものです。

 しかし、救急救命士法は、今回の質問にあるような大災害時において病院及び医師 、看護婦等も被災し、重度傷病者に対して即時に医師による手当てを行うことができ ないような緊急事態を想定しているものではなく、こうした状況下では、救急救命士 がプレホスピタル・ケアの一環として、病院内において医師による治療が開始される までの間、搬送してきた患者等に対して救急救命処置を行うようなことも、緊急避難 的行為として認められる場合もありうると考えられます。

 しかし、どのような場合に認められるかは、病院や医師等の被災状況、救急患者の 症状等、諸々の条件を考慮して判断する必要があり、一概にいえるものではありませ ん。

 大災害時では、搬送を必要とする大量の重度傷病者が現場において待機しているこ とが予想され、第一義的には、救急救命士はそれら救急患者の搬送途上における救急 救命処置を行うべきものと考えます。


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