この原稿は救急医療ジャーナル'95第3巻第2号(通巻第12号)「救急救命法律講座」のページ を収載したものです。本シリーズのホームページ収載にご協力をいただ きました厚生省健康制作局に深謝申し上げます。

救急救命法律講座 12


「II課程修了者が個人的に所有している資器材を非番日に使用してもよいか。」  消防では、II課程を修了すれば、救急隊員として拡大9項目の資器材を使用でき ますが、もし個人的に喉頭鏡やマギール鉗子をもっていて(自費で購入)、それを他 人に対して使用した場合の違法性、また、使用に際して口腔内等を損傷した場合の補 償について教えてください。

 医療の中心的な担い手は、いうまでもなく医師ですが、今日の医療現場において 医療に従事している者には、医師以外にも看護婦、救急救命士等の職種の人々が存在 し、これらの人々が一体となって、医療の業務に従事しています。

 医療は、国民の身体・生命にかかわる重要なものです。わが国では、医師法第17条 で「医師でなければ医業をなしてはならない」と規定しており、原則として医師以外 の者が医業(医行為を反復継続の意思をもって行うこと)を行うことを禁止しており (業務独占)、医師国家試験に合格し、医師免許を得た者のみが医師として医業を行 うことができるとされています。

 しかし、医療は、医師によってのみ行われているわけではなく、また、医師にすべ ての業務に精通し、対応することを要求するのは、現実的ではありません。ことに医 学が進歩し、高度化、専門分化するにつれ、いろいろの分野で医師の補助業務を行う 人々が必要とされるとともに、これらの人々にも次第に専門性が求められるようにな ってきました。

 救急隊員の行いうる応急手当については、消防庁告示(昭和53年消防庁告示第2号 、以下「告示」と略す)によって示されており、II課程(250時間以上の救急業務 に関する講習)の修了者には、鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去、経 鼻エアウェイによる気道の確保等のいわゆる拡大9項目の応急処置が認められていま す。

 これらの応急処置は「傷病者を医療機関その他の場所に収容し、又は救急現場に医 師が到着し、傷病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、傷病者の状態その 他の条件から応急処置を施さなければその生命が危険であり、又はその症状が悪化す る恐れがあると認められる場合に」(告示第3条)業務として行いうるものです。

 したがって、業務時間外において、反復継続の意思をもって個人の所有する器材を 用いてこれらの医行為に該当する行為を行うことまで、想定しているわけではありま ぜん。なお、補償については民事上の問題であることから、個別具体例ごとに明らか になる性格のものです。


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