この原稿は救急医療ジャーナル'94第2巻第6号(通巻第10号)「救急救命法律講座」のページ を収載したものです。本シリーズのホームページ収載にご協力をいただ きました厚生省健康制作局に深謝申し上げます。

救急救命法律講座 10


「救急救命士は勤務外に特定行為を行えるか(その2)」  第9号の質問に関連する質問です。救急救命士を勤める私が旅行中(他県)に救急事故に遭遇しました。駆け付けた高規格救急車には救急救命士が乗車しておらず、たまたま事故現場を通りかかった医師に救急救命士であることを名乗り、指示を求めました。

 その際、疑問点が2点ほどあります。(1)その医師が出した指示は法的に有効か、(2)医師に「救急救命士であると証明できるものを見せてください」といわれた。証明方法について、(1)救急救命士の所属する本部に問い合わせてもらう、(2)「救急救命士免許証明書」のコピーを提示する、(3)公務に使用している名刺(救急教令士と印刷されているもの)を提示する。(1)〜(3)のいずれでしょうか。

 ご存じの通り、救急救命士は、救急救命士法第43条第1項により、「救急救命処置を行うことができる」とされています。これは逆にいうと、救急救命士が診療の補助として行える行為が、救急救命処置のみであることを表します。さらに、厚生省令で定める救急救命処置(いわゆる特定行為)については、救急救命士法第44条第1項により、医師の具体的な指示を受けなければ行ってはならない、と規定されています。

 これは、これらの行為がいかなる状況においてなされるべきかの判断において、高度かつ専門的な知識が必要であることから、医師の適切な判断を待って、患者の生命の安全をより確実なものにする、という趣旨です。

 さて、救急救命士になろうとする者は、救急救命士国家試験に合格し、厚生大臣の免許を受けなければなりません(法第3条)。救急救命士の免許は、試験に合格した者の申請により、厚生省(指定登録機関)に備えられた救急救命士名簿に、免許に問する事項を登録することによって行われ(法第6条、第7条第l項、第16条)、その効果は、名簿に登録された日から発生します。

 すなわち、救急救命士の免許の付与は、救急救命士名簿登録という形式によって完了する様式行為といえます。したがって、名簿に登録されていれば、免許証を所持していなくても、適法に救急救命士の業務を行うことができます。

 ご質問のケースについて、お答えします。(1)まず、管轄外(他県)において、医師の指示を受けて特定行為(法第44条)を行うことの是非については、前号でお答えした通り、問題ありません(管轄は、行政上の便宣を目的としたものであるから)。また、前述の通り、救急救命士は名簿に登録されていれば、適法に救急救命士の業務を行うことができます。したがって、当該医師が、あなたを救急救命士であると認識して出した指示は、法的に有効であるといえます。(2)救急救命士であることの証明方法については、とくに定められたものはありません。どのような方法であっても、当該医師が救急救命士と認識できればよいわけです。

 したがって、(1)〜(3)の方法はいずれも可能であり、後は当該医師が救急救命士と認識して指示を出すかどうかの問題となります。いずれにせよ、患者さんの生命を救うことが第一ですので、できる限り簡単な方法で、迅速に証明することが重要であるといえます。


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